まぁ、その場合ヘルカイザーは生まれず、サイバー・ダークは封印され続ける事になりますけどね!
「…これで、プロリーグにはしばらく戻れない。サイバー流の関係者として後進の指導に当たる。収入は減るが…。」
「そう…。辛かったわね。」
髪の毛を後ろでまとめた妖艶な女性が、手を伸ばして才災の頬を撫でる。
名前は、才災 月美(さいえん つきみ)。
散々悩んだ才災だが、スポンサーとの契約を白紙にされ、その後しばらく帰らなかったにも拘わらず暖かく迎えてくれた妻には感謝している。
いや、自分のメンタルケアをしてくれたマスター鮫島がいなければ、どうなっていた事やら。
「プロの世界で成功するなんて、ほんの一握り。プロになってから一勝も出来ずに引退するなんて珍しくも無い厳しい世界…。」
妻は立ち上がると、台所にいって色々と持ってくる。
「飲まない?」
「久しぶりに、頂くとしよう…ん?」
以前、スポンサーであるダーティ・ドリンクの前社長からもらった高いウィスキー。そのラインがかなり下の方まで来ている。
「飲んだ?」
「ごめんなさい。ちょっと飲んじゃった。」
そうだ、妻には連絡は取っていたが直接会っていなかった。にもかかわらず、ずっとこの家を、息子を守ってくれたのだ。
これぐらいの役得はあってしかるべきだろう。
胡椒を利かせた、シーフードたっぷりの玉ねぎとキノコのサラダ。
缶からざらざらと出てくるミックス・ナッツ。
市販のルーではなく、妻が小麦粉と牛乳から作ったシチュー。
ドレッシングが染みており、プリプリの触感の海老が実に旨い。
塩気が欲しくなれば、ナッツがある。
程よく酔ったシメに、シチュー。
「…ああ、美味かった」
夫以上に飲んでいるのに、ふらつくことなく厨房に戻って片付ける月美。
「ニュースでも見る?」
「そうしようか。」
無理に言葉を交わさず、穏やかで、優しい時間を共有する夫婦。
翌日。朝食を済ませ、息子は友人と遊びに行くと言って出かけた後。
「あなた。久しぶりにデュエルしない?」
「今から?」
「負けたらそうねぇ、お風呂掃除!」
「わかった、受けよう」
「「デュエルッ!!」」
才災 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
月美 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私の先攻、ドロー!私は魔法カード、増援を発動!デッキから一撃必殺侍を手札に加えて、召喚!」
「いきなり出て来たか…」
「永続魔法、セカンド・チャンスを発動!魔法カード、カップ・オブ・エース!コイントスを行うわ!」
出た目は、裏。
「セカンド・チャンスでコイントスをやり直すわ…あら、また裏ね」
「では、2枚ドローします。」
「んー…。カードを1枚伏せてターンエンド」
才災 ライフ4000
手7 フィールド
魔法・罠
月美 ライフ4000
手2 フィールド 一撃必殺侍
魔法・罠 セカンド・チャンス 伏せ1
「私のターン、ドロー!相手の場にのみモンスターが存在することで、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!さらに、サイバー・フェニックスを召喚!バトル、サイバー・フェニックスで一撃必殺侍を攻撃!」
「永続罠、モンスターBOXを発動!さぁ、コイントスの時間よ!まず一撃必殺侍のコイントス!表を宣言する!コイントスは…表!」
「くっ、サイバー・フェニックスが。」
「モンスターBOXで裏を宣言、こっちは外れね。まぁ、サイバー・フェニックスは破壊するわ!」
「…バトルは終了します。カードを1枚伏せてターンエンド」
才災 ライフ4000
手6 フィールド サイバー・ドラゴン
魔法・罠 伏せ1
月美 ライフ4000
手2 フィールド 一撃必殺侍
魔法・罠 セカンド・チャンス モンスターBOX
「私のターン、ドロー!モンスターBOXのライフコストを払う。」ライフ4000から3500
当然の如く、維持する月美。
「私はルーレット・ボマーを召喚!効果発動、サイコロを2回振るわ!出た目は、1と5!サイバー・ドラゴンを破壊!」
「サイバー・ドラゴンが!」
「フィールド魔法、ダイス・ダンジョンを発動!デッキからディメンション・ダイスを手札に加えて発動!」
「何?それは、ドラゴン・ダイス・&ダンジョンズの…」
にっこりと笑って、月美は告げる。
「最近手に入れたカードよ。サイコロを振る効果があるカードが私の場にある時、場のモンスターをリリースして発動!手札・デッキからサイコロを振る効果モンスターを特殊召喚!ルーレット・ボマーをリリース!デッキから迅雷の魔王−スカル・デーモンを特殊召喚!」
「罠発動!激流葬!」
ダンジョンに降り立った、迅雷の魔王は感慨深げにダンジョンを見渡す。
ややあって、足元に水が流れてきたことに気づき、電撃を流そうとするが…水量が多くなってきたことで訝しむ。
直後!鉄砲水の如き濁流が迅雷の魔王を押し流す!
「?!これは、ちょっと想定外…メインフェイズ2に入って魔法カード、マジック・プランターを発動、場のモンスターBOXを墓地に送って2枚ドロー!一枚カードを伏せてターンエンド」
才災 ライフ4000
手6 フィールド
魔法・罠
月美 ライフ3500
手1 フィールド
魔法・罠 セカンド・チャンス ダイス・ダンジョン 伏せ1
「私のターン、ドロー!プロト・サイバー・ドラゴンを召喚。魔法カード、融合!場のサイバー・ドラゴン扱いのプロトと、手札のサイバー・ドラゴンを融合!サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」
「通ったら終わりね…。永続罠、リビングデッドの呼び声!墓地から迅雷の魔王-スカル・デーモンを特殊召喚!」
「バトル!」
「このバトルフェイズ開始時に、フィールド魔法、ダイス・ダンジョンの効果発動!互いにサイコロを一回振り、出た目によって効果が決定する。ちなみに、偶数が良い効果よ」
互いにサイコロを振る。
「私は1か」
「私は6!ダイス・ダンジョンで1を出したらサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力が1000ポイントダウン、6を出したからスカル・デーモンの攻撃力は2倍!」
「攻撃力1800と、攻撃力5000か…。速攻魔法、サイクロンを発動!リビングデッドの呼び声を破壊する!」
「…モンスターBOXをコストにしていてもいなくても負けだったか…」
「バトル、サイバー・ツイン・ドラゴンでダイレクトアタック!」
「負け、か。」ライフ3500から1700、1700から0
負けた月美は、肩をすくめるが、直後に朗らかに笑う。
「…ダーク・サンクチュアリの代わりに入れてみたけれど失敗だったかしら?」
「まぁ、一撃必殺侍、セカンドチャンス、ダーク・サンクチュアリ、モンスターBOXが揃ってしまうと攻撃を仕掛ける気にならない…。仕掛けるタイミングを増やすのはありだと思うが。」
「ブローバック・ドラゴンがあれば、守りを固めながら除去するという方法もとれるのだけれど。無いものねだりしても仕方ないわね」
月美は三角頭巾をかぶり、掃除用具を持って風呂場に向かう。
言い出して負けた以上、素直に従う。
それを見送った才災はトイレに向かい、掃除を始める…。
同時刻。
馴染みのカードショップ。そこに才災士道と友人は訪れていた。
デッキ調整をしていると。
「あー!負けたぁ!」
「私の勝ちね。他にデュエルを挑む人はいるかしら?」
友人が負けた。士道はその現場に向かう。
「次は俺とデュエルしないか?」
「気をつけろよ、あの人結構強いぞ。」
「それでこそ、デュエルのやりがいがある。俺は才災 士道。君は?」
黒い長髪を揺らしながら、少女は名乗る。
「私は寒川。寒川 恵理子(さむかわ えりこ)よ」
「「デュエルッ!!」」
士道 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
寒川 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は私ね。私のターン、ドロー!私はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド!」
士道 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
寒川 ライフ4000
手3 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ2
「俺のターン、ドロー!相手の場にのみモンスターが存在することで、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」
「サイバー流?!火力勝負は無理ね…」
「バトルだ、セットモンスターを攻撃!」
「墓守の偵察者のリバース効果発動、デッキから墓守の暗殺者を特殊召喚!」
「表示形式を変更できるモンスター…。バトルは終了、カードを2枚伏せてターンエンド」
士道 ライフ4000
手3 フィールド サイバー・ドラゴン
魔法・罠 伏せ2
寒川 ライフ4000
手3 フィールド 墓守の暗殺者
魔法・罠 伏せ2
「私のターン、ドロー!手札から墓守の司令官を捨てて効果発動!デッキからフィールド魔法、王家の眠る谷-ネクロバレーを手札に加えて発動!」
「墓地を封殺されたか…。」
「私は墓守の長槍兵を召喚!バトルよ、墓守の暗殺者でサイバー・ドラゴンを攻撃!この瞬間、マジシャンズ・サークルを発動!お互いにデッキから魔法使い族モンスターを特殊召喚!」
「俺はデッキから黒き森のウィッチを特殊召喚」
「私は墓守の長を特殊召喚。バトルは続行!」
「ここで罠発動!和睦の使者!」
「攻撃しても意味ないわね。ターンエンド」
士道 ライフ4000
手3 フィールド サイバー・ドラゴン 黒き森のウィッチ
魔法・罠 伏せ1
寒川 ライフ4000
手2 フィールド 墓守の暗殺者 墓守の長槍兵 墓守の長
魔法・罠 王家の眠る谷-ネクロバレー 伏せ1
「俺のターン、ドロー!行くぞ、永続罠発動!DNA改造手術!俺は機械族を宣言!」
「機械族に?」
「場の機械族となった3体の墓守とサイバー・ドラゴンを墓地に送り、キメラテック・フォートレス・ドラゴンを特殊召喚!」
「ああっ?!こ、攻撃力4000?!」
「サイバー・フェニックスを召喚して、バトルだ!キメラテック・フォートレス・ドラゴンでダイレクトアタック!」
「私の負け、か」ライフ0
「伏せカードは何だったんだ?」
「魔法の筒よ。サイバー・フェニックスが出てこなかったら勝っていたんだけれど。ねぇ、この店にはよく来るの?」
「ああ。」
「だったら、またリベンジさせてもらうわ」
「望むところだ」
その夕方。ダーティ・ドリンクの本社にて。
周りを見渡しながら社長の所に向かう老人。見知った顔が随分と減って、知らない顔がやたら増えている。
「才災プロとの契約を破棄したというのは、本当か!」
長期出張から帰ってきたダーティ・ドリンクの古参メンバー、初老の玉城(たまき)は前社長の長男、古酒 秀人(こさけ ひでと)に詰め寄る。
「本当だ。才災との契約を白紙にした。」
「何故だ?」
「負けが込むからだ。」
「才災は単なるプロデュエリストでは無い、経営者として先見の明がある。それにサイバー流とつながる事で我々のスポーツドリンクを始めとした飲料を大量購入してくれるという実利を齎している。」
「勝てないプロに、用は無い。父のやり方は古い、これからは私が組織を一新していく。そのために古い者は淘汰する。」
「…我が社の最大の利点は『コストパフォーマンスが高い』という事。これを維持、発展していくという方針さえ守るなら、私に異論はない。」
「それこそが、問題だ。」
立ち上がる古酒。
「我がダーティ・ドリンクの最大の問題は、安物ブランドというイメージが庶民に浸透している事だ。」
「庶民…。安くて大容量が良い、という若者を中心としたシェアを確保している、そのシェアを切り捨てるつもりか?」
「当たり前だ。若者や肉体労働者向けでは、割に合わない。もっと金を持っている層にシフトしていく。」
「飲料メーカーだぞ、うちは。リピーターの確保を優先するべきだ。なによりそういう層は喫茶店とかコーヒーメーカーなどの本格派指向だろう?そのシェアを奪うのは容易な事では無い。」
「私には心強い味方がいるのだ。経営コンサルタントという、な」
軽薄、という単語をコンピューターグラフィックで動かし、服を着せたような男が向かってくる。
「初めまして。経営コンサルタントをしておりまぁす。マネー・金蔵(かねぐら)とお呼びください。」
「…この者の意見を受け入れるというのですか?」
大きく頷く古酒。
「そうだ。才災に経営者として先見の明があるといっても、専門家に知識で劣る。」
「では、マネー金蔵。今後の我が社の方針をどう変えるつもりなのか?」
「はぁい、まずは安物ブランドというイメージを一新、内部留保を確保しなければなりません。そのために生産量を徐々に減らしコストカットを行います。」
「何?!これ以上のコストカットは味に影響が出る!」
「気にする必要はありませぇん。御社はこれから、高級で親しみやすい路線の飲料メーカーになるのですから、既存の古い客など気にする必要もありませぇん」
古酒は缶珈琲を手渡す。
「そういう事だ。これが、新しい我が社の缶珈琲だ。飲んでみろ」
「…いただきます…?!な、なんだこれはっ!」
「今までより原価を大幅に抑えて、値段は据え置き。こうすれば内部留保を確保できまぁす。」
あまりの不味さに、思わず顔を歪める玉城。
「こ、これではリピーターは」
「さっきから言っているように、今までのリピーターはもはや不要。最後に利益を齎せばそれでいい。」
この若造は。今まで先達者が苦労に苦労を重ねて来た企業イメージを、信頼という財産を騙し打ちのように踏みにじって金に換えようとしている。
こんな暴挙がまかり通れば、一気に会社のイメージは失墜してしまう。
それに、高級で親しみやすいだと?どちらかに絞っておくべきだろう。
「論外ですな。」
「私の方針に反対か…。だったら、デュエルで決めるとしよう。」
「いいだろう。来い、山嵐(やまあらし)。」
その声にこたえて近づいてくるのは、整った顔立ちでウルフカットの女性。
20歳前半だろうか?豊満な体つきをしている。
「山嵐 沙耶(やまあらし さや)です。」
「既に契約先と話をつけていたか…。」
自分のデスクに近づき、カバンからデュエルディスクを取り出す玉城。
才災プロには及ばないが、彼なりに構築したデッキだ。
そんな玉城に近くのデスクで仕事をしている社員が心配そうに話しかける。
「玉城常務…」
「プロ相手では力不足かもしれない…だが、こうなったらやるしかない!」
「「デュエルッ!!」」
山嵐 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
玉城 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻、後攻、お好きな方をどうぞ。」
「ならば後攻をもらう。」
「では私の先攻、ドロー!モンスターをセット、カードを2枚セット。ターンエンド」
山嵐 ライフ4000
手3 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ2
玉城 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「それで終わりか。私のターン、ドロー!魔法カード、大嵐を発動!」
「チェーンして罠発動、和睦の使者!これで私が受ける戦闘ダメージは0になる!もっとも、伏せていた次元幽閉は破壊されるけれど。」
「…ターンエンド。」
山嵐 ライフ4000
手3 フィールド セットモンスター
魔法・罠
玉城 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー!魔法カード、封印の黄金櫃を発動。デッキからカードを1枚除外…デッキからヘル・テンペストを除外。発動から2ターン後にこのカードを手札に加える。モンスターをセット。ターンエンド」
「何だ?知らない速攻魔法だ…」
もしも玉城がプロデュエリストか、前世でOCG経験をしておりその記憶を持っていれば、彼女のこの動きだけで狙いを読み切れただろう。
山嵐 ライフ4000
手2 フィールド セットモンスター セットモンスター
魔法・罠
玉城 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
また動かない。玉城は伏せカードが無い今、ここで仕掛ける事にした。
この手札なら、あの守備モンスターが戦闘で破壊されないモンスターでなければ勝てる。
時間を与えるのは得策では無い。相手のデッキが回り始める前に…叩く!
「私のターン、ドロー!永続魔法、未来融合-フューチャー・フュージョンを発動!キメラテック・オーバー・ドラゴンを宣言!」
「サイバー流?!なるほど、才災プロから手ほどきを…」
「門前の小僧習わぬ経を読む、と言う奴だ。行くぞ!」
玉城は大量の機械族をデッキから選択する。
「私はデッキから融合素材であるサイバー・ドラゴン3枚、エレクトロ軍曹3枚、可変機獣 ガンナードラゴン3枚、グリーン・ガジェット2枚、レッド・ガジェット2枚、イエロー・ガジェット2枚、機械王-プロトタイプ、魔鏡導士リフレクト・バウンダー2枚、パーフェクト機械王3枚、魔装機関車 デコイチ3枚、カード・ガンナー3枚、この計27枚を墓地に送る!魔法カード、オーバーロード・フュージョンを発動!墓地のパーフェクト機械王以外の機械族モンスター、24枚を除外して、現れろ、キメラテック・オーバー・ドラゴン!」
「攻撃力19200…」
複数の首を持つ機械竜が、山嵐を見下ろす。
『すげぇ…』
『あの火力が、サイバー流の真骨頂!』
良識ある社員が期待する中、新たな顔ぶれの面々は怯える。
『まずいんじゃないか?』
『プロが負けたりしたら、俺達は…』
『だ、大丈夫だ…山嵐プロのデッキは…。』
「キメラテック・オーバー・ドラゴンの効果で、未来融合は墓地送りになるが…ここで装備魔法、継承の印を発動!蘇れ、パーフェクト機械王!バトル!キメラテック・オーバー・ドラゴンで右のセットモンスターを攻撃!」
「こちらはニードルワーム、リバース効果発動!デッキの上からカードを5枚墓地に送りなさい!」
強欲な壺、死者蘇生、メタル化・魔法反射装甲、サイクロン、天使の施しが墓地へ送られる。
「?!で、デッキが残り1枚…。だが、お前に次のターンは無い!キメラテック・オーバー・ドラゴンでセットモンスターを攻撃!大方、そいつもニードルワームだろう!デッキを0枚にされても、ドローが出来なければ負けなのであって、そうでなけれ…ば…」
モンスターが表側表示になる。一つ目の怪物が壺の中から玉城を見つめる。
「ドロー出来なければ、敗北。その通りね。さぁ、互いに手札をすべて捨てて、5枚ドローよ」
「う、うわあああ!」
リミッター解除、リビングデッドの呼び声、ライトニング・ボルテックスが手札から零れ落ち、デッキの機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-が床に落ちる。
「私の、負けか…。」
未来融合とオーバーロード・フュージョン。これが揃ったときにキメラテック・オーバー・ドラゴンを呼び出してビートダウンをする戦術自体は間違っていない。
だがヘル・テンペストをサーチしようとしていた以上、【デッキ破壊】を警戒するべきだった。
愕然とする玉城に、社長は冷酷に告げる。
「これでお前はクビだ。出ていけ。」
「…40年、働き続けた仕打ちがこれ、か。」
渡される封筒。自分が出張から帰ってきたらそうそうに退職させるつもりだった事を悟る。
肩を落とし、荷物をまとめて老人は黙して去る。
良識ある社員は意気消沈し、一方で癇に障る笑い声をあげる一団。
去っていく老人を見送り、古酒は笑う。
勝った!古臭い、貧乏人の臭いが染みついた父の残した呪縛を、ついに打ち破ったのだ!
まだ逆らう奴は残っているが、もはや脅威ではない!散々使い倒してから処理していけばいい。
「お見事でした、山嵐プロ。今後ともよろしくお願いしまぁす。資産形成についてならいくらでも」
「私はプロデュエリストであって、投資家ではありません。」
軽薄なマネー・金蔵に対し非友好的な目を向ける山嵐。
そんな彼女の肉付きが良い太ももを凝視する古酒。
「勝ったのは良いが、あの勝ち方はどうなんだ?」
「…私は【デッキ破壊】使いであると面接の時に話したはずですが。」
「てっきり、闇のデッキ破壊ウイルスなどのカードを使う物と。」
他の役員が難色を示していたのに、自分と契約した真意はそれか。
デッキ破壊は嫌われているが、これも一つの戦術として世に認めさせるために、デッキ破壊の愛好家としてその道を進むと熱く語った。
その熱意を買ってくれていると思った山嵐は、期待を裏切られる。
古酒が見ていたのは、彼女の肉付きの良い太ももだったりする。
「話はそれぐらいにして貰おう。まだまだ、古い因習が凝り固まっている…大掃除しなければ。才災と違って君には期待している。」
「お任せください。結果を出してご覧に入れましょう。」
「よし。そうだ!たしか珈琲が好きだったはず…。サービスだ。」
そういって示されるのは、先ほど古参の幹部が「不味い」と言い放った缶珈琲。
一瞬躊躇するも、意を決して手に取る。
かつて父が不慣れなコーヒーメーカーで淹れた、失敗したインスタントコーヒー並みに不味いコーヒーを根性で飲み干し、にっこりとほほ笑む。
「慣れたら美味しいと思えるかと。」
「まぁ、慣れる前に撤退するのですけれどねぇ…」
こみ上げる嘔吐感を、山嵐は空き缶を握りつぶす事で抑え込む。
才災の嫁は、(ドラゴン・ダイス・&ダンジョンズ)の熱心なファンです。遊戯王の二次創作は多数ありますが、このゲームのファンという設定のキャラは非常に少ないです。
私が知っている限りでは…ハーメルンとpixivを合わせても二作品しかありません。
私が知らないだけで他にあるのかもしれませんが。
最近、色々D・D・D関連のモンスターがOCG化されたので、このゲームのファンという設定のキャラが増え…増えますかね?
個人的に、GX以降の遊戯王キャラがこのゲームに興じたらどうするのかは見てみたいです。
遊星さんは御伽のように召喚クエストの低い小粒モンスターを一気に序盤で展開、ジャックは召喚クエストの高いモンスターを少数出し、それまでにクエストプールに溜まったポイントを駆使して蹂躙する、という闇遊戯さんのような戦い方をしそうな気がします。
ただD・D・Dの対戦を文章で描写する、というのは難易度が高すぎる気がします。ネフティスとマジェスペクターの混成デッキを考えるより難しいのでは?
猫シンクロの世界線では離婚に伴い息子と共に実家へ帰っていましたが、この世界線では離婚せず地元に留まった事で寒川(魔法族の里使い)の姉と出会っています。
書いていて思いましたが、仮にも飲料メーカーなのに「ダーティ」は無いですよねぇ…。社名を変えるというのであれば多くの社員が受け入れそうです。
デッキ破壊は原作・アニメにおいて嫌われている戦術ですが、「デッキ破壊という批判・否定されるデッキ」を『私はこの戦い方が好き』という信念を持って突き進むという二次創作を考えていた時期があります。山嵐はその時に主人公にしようとしていたキャラクターです。
没にした理由は、似非ペクトを掲げるサイバー流どころか、レギュラーキャラからも批判・否定されると思ったからです。
十代君も「ライフを削りあうのがデュエルだろ!」と述べているので…。