採点が非常に大変でしょうが…。
帝楊学園。この日、才災はデュエルモンスターズに関する試験を作るべく出勤していた。
どんな問題を出すべきか…。こういうことは鮫島師範に聞けばいいのだろうが、プロデュエリスト養成校では無い以上、自分なりに考えるべきだろう。
他の先生方は、どんな問題を作っているのだろうか?
ふと、気になった才災は他の教員に尋ねる事にした。
「そういう事であれば、歴史に関する問題はどうでしょう?」
「歴史、ですか…。」
斎王賢人先生が作ったという問題を見た才災は、数秒考えた後、一つの問題を思いついた。
その夕方。オカルトに詳しい、中部ブロックのサイバー・ランカーズの才獏はこの日、才災の所に訪れていた。
「これが、キメラテック・ランページ・ドラゴン…。事前に話は伺っていましたが。」
「サイバー・ツイン・ドラゴンが闇のカードになったという、ヘル・ポリマーの効果を受けてしまい…。才獏君。光のカードというか、そういう物は」
才獏は立ち上がると、才災に告げる。
「光と闇は、表裏一体。」
「何、を?」
「光は正義で、闇は悪。そういうイメージが広がっていても、それは『力』と言う物の側面でしか無く…闇にそまったからといって、光を与えればよいという物ではない。むしろ、かえって反発する事で闇の力が強まる可能性だってあり得る…。」
「なんと…。では、もうこのカードは廃棄するしか…」
「魔法・罠カードを除去する効果と、デッキから光属性・機械族を墓地に送る事で連続攻撃が可能な融合モンスター、廃棄処分にするにはあまりにも惜しい。」
「だが!流派の一員が闇のカードを使うというのは、外聞が悪すぎる!」
才獏はじっと才災を見つめる。
「では、マスター鮫島には報告済みなのですか?」
「それ、は…」
才災は答えなかったが、それが何よりの答えだった。
「場所を変えます。ここでは狭すぎるので。」
「は、はぁ…。」
オカルトには詳しくない才災は、専門家の意見に素直に従う。
「ここは…」
随分広い。そして、何やらコンクリート製の大きな長方形の塊が置かれている。
「古代エジプトにおいて、肉体には魂が宿っており、魂には精霊か魔物が宿る。精霊と魔物の違いは魂の善悪によって決定する…。」
「聞いたことはありますが。」
「邪悪な心から生まれた魔物は、石板に封じる事で使役できる。」
「まさか、そのコンクリートが石板の代わり、ですか?」
才獏は頷く。
「才災師範、デュエルの準備は良いですか?」
「大丈夫ですが…相手は君ですか?」
「いいえ。今から現れます。」
「現れる?」
才獏は奇妙な呪文を唱え始める。茫然と見ている才災の目の前で、コンクリートブロックに模様が浮かんでいく。
「?!コンクリートブロックに、キメラテック・ランページ・ドラゴンの絵が…」
才獏の呪文を唱える声のトーンが次第に上がっていく。絶叫のような声で呪文を唱え終わると、コンクリートブロックにはキメラテック・ランページ・ドラゴンのテキストまで浮かび上がっていた。
「これで、このカードから闇の力は」
「まだです、才災様!」
「えっ?!」
コンクリートブロックから半透明なキメラテック・ランページ・ドラゴンが現れると、才災をにらみつける。
「キメラテック・ランページ・ドラゴンに闇の力を与えていた存在を分離しただけで、まだ健在!元のカードに戻ろうと荒れ狂っている…それを阻止するためには、デュエルで叩き潰す必要があります!才災様。デュエル中にキメラテック・ランページ・ドラゴンの融合召喚を行ったうえでデュエルに勝利してください!」
「わかりました。」
キメラテック・ランページ・ドラゴンの幻影は怒り狂いながら、しっぽを叩きつける。
石板の幻影を5つ出現させ、才災の前に立ちはだかる。
「デュエルッ!!」
「ディアハッ!!」
才災 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
魔物 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
魔物の石板が一つ増え、その一枚が反転する。
「?!豊穣のアルテミス…!」
石板が4枚伏せられる。
「4伏せですか…」
才災 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
魔物 ライフ4000
手1 フィールド 豊穣のアルテミス
魔法・罠 伏せ4
「私のターン、ドロー!速攻魔法、サイクロンを発動!私が破壊するのは…。私から見て右から二番目!」
『……』
「魔宮の賄賂を撃ち抜いた、か…。魔法カード、大嵐を発動!」
『グオオオッ!』ライフ4000から2000
伏せカードが発動される。魔物のライフが大幅に減るも、大嵐のソリッドビジョンはかき消される。
「神の宣告!やはり伏せていたか!そしてアルテミスの効果で1枚ドロー…。ここで魔法カード、融合を発動!手札のサイバー・ドラゴンとサイバー・ドラゴン・ツヴァイとサイバー・ドラゴンフィーアを融合!現れろ、キメラテック・ランページ・ドラゴン!」
『?!』
「キメラテック・ランページ・ドラゴンの効果発動、その伏せカード2枚を破壊!」
キックバックと攻撃の無力化が破壊される!
「キメラテック・ランページ・ドラゴンの効果発動、デッキからサイバー・ドラゴン・ヘルツとサイバー・ドラゴン・コアを墓地に送り、攻撃回数を2回増やします!バトル、キメラテック・ランページ・ドラゴンで、アルテミスを攻撃!」
『…!!』ライフ2000から1500
「キメラテック・ランページ・ドラゴンで、ダイレクトアタック!」
キメラテック・ランページ・ドラゴンの直撃を受け、崩壊していくコンクリートブロックとキメラテック・ランページ・ドラゴンの幻影。
それを、キメラテック・ランページ・ドラゴンのソリッドビジョンがじっと見つめる。
「…終わったのですか?」
「これで、そのカードは闇のカードのもぬけの殻、使用する上で問題は無いかと。闇のゲームを仕掛ける事は出来ません。ただ、闇のカードに詳しい人が見れば、以前宿っていたというのがわかりますが。」
「…ありがとうございます。旅費と食事券を渡しておきましょう」
「寿司か…。」
「おや、他に食べたいものがありましたか?」
「出来れば刺身を頂きたかったです…。」
「ありますよ。こちらを」
才災から刺身盛り合わせ定食の食事券と旅費を貰った才獏に、才災は聞く。
「ところで、近々デュエルモンスターズに関するテストを行うので問題を作ったのですが…聞いても?」
「どんな問題ですか?」
「デュエルモンスターズ黎明期において、ペガサス・J・クロフォード氏が果たした役割について2行以内で記せ。」
「…2行では足りないかと」
「ありがとう、参考にさせてもらいます。」
才獏は一礼した後、去っていく。
それを見送った後、才災の携帯に電話がかかる。
「はい、才災です…。私に、シンクロ召喚のテスターを?シンクロ召喚とは一体…?」
時は、少しさかのぼる…。
才獏が詠唱をしていた頃。複数の中年男性たちが頭を抱える。
「…なんという事だ…」
破滅の光と呼ばれる存在による干渉。表向きは『極東アジアの文化地理研究会』という看板を掲げている組織は、斎王琢磨にソレが宿った事を突き止める。
「こうならないように、『処理』したはずでは無かったのか!」
「それが、父親は娘共々放逐した事で、完了したと報告を上げており…」
手元に置いておけば命を狙われるため、あえて遠ざけたという父親の思いは、多くの悲劇を巻き込みかねない結果につながろうとしていた。
「どうすればいい?」
「…放逐した父親に対する怒り、まずはその復讐を叶えようとするかと。」
「今までの行動を分析すれば、そうなるな…。となれば、父親を守らせるか。」
「しかし、一体誰に…。」
「帝楊学園には、今は休止しているがプロリーグで活躍していた才災勝作が居たはず。彼に依頼をして…」
「いっそのこと、海馬コーポレーションが開発した新たな召喚法のテストカードも与えましょう!データを取れますし、未知の召喚法であれば意表を突ける!」
「デュエルモンスターズ黎明期において、ペガサス・J・クロフォード氏が果たした役割について記せ」
という問題って、どれぐらい行数が必要になりますかね?
簡潔に記すなら…古代エジプトの石板からインスピレーションを得て、デュエルモンスターズを大々的に広めた、デュエルモンスターズの創始者。
で良いとは思いますが。
次回は才災がシンクロ召喚をします。
どんなデッキになるかはお楽しみに!