YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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革命なんて億劫なもので民と言う名の雛はいつだって口を開けて餌を待っている

「よく来たわね。歓迎するわ」

 

 黒いキツネの面で顔を覆う、黒のフォーマルドレスを着た女が、変身したコスモス六人を呼んだ。

 キツネの面をかぶる女は、トゥインクル意中の彼・鈴鬼小四郎を襲った枯林という双子の姉で、ヘイズの間では「レポース」と呼ばれている。

 双子の姉が恨みを込めてコスモス六人に告げる。

 

「今日という日をずっと待っていたわ。この前コケにしてくれた借り、倍にして返してあげる」

 

 姉は猫をかぶっていた。同志の前ではおくびにも出さないが、その実コスモスを殺したがっている。

 だが、顔の右半分を覆った黒い仮面をかぶる望搗という男、通称「エクリプス」が、

 

「コスモスの諸君。僕の話を、どうか聞いてくれないか?」

「エ、エクリプスさん」

 

 戦意むき出しな双子の姉を差し置いてコスモス六人に呼びかけたため、これに双子の姉が戸惑った。

 望搗という男が語る。同じ未来の使者に選ばれた者として打破を問いかける。

 

「君たちは今の日本を考えたことがあるか? 今の日本は、控えめに言っても腐っている。中国が台湾を侵略しようとし、日本の領土である沖縄にも手を伸ばしているというにも関わらず、この国の政治家や官僚は見て見ぬふりをし、私欲を満たすことしか考えていない。つい最近も政治資金パーティーを開き、裏金作りに腐心する政治家のニュースは耳にしているだろう? こんな(やつ)らに任せていたら日本は他国に売り渡される。変わらなくちゃいけないんだ、この国は」

 

 かつての江戸時代末期、西洋諸国に侵略される隣国・(しん)に危機感を抱き、日の本を変えるべく行動を起こした志士の志。

 数々の志士が命を懸けて戦い、燃え尽きるようにその命を散らした結果、志は明治維新という形で昇華されたがこれは余談。望搗という男は純粋だった。日本を憂うゆえに破壊を企てている。

 

「だから僕たちが変えるんだ、未来の使者に選ばれた僕たちが。僕たちが戦う必要なんてない、どうかその(ほこ)を収め、僕たちの仲間になることを考えてくれないか?」

 

 訴える望搗という男だが、これにサンシャインが答える。

 

「えーと、あたし〝失敗はすいとんの元〟って間違っちゃうくらいだから、日本の事いわれてもよく分からないんですけど」

「…………」

「エクリプス、でいいんですよね? なら、体に隠してる黒い玉を今すぐ捨ててください。捨てるなら応援します」

 

 サンシャインが闇の力の破棄を、望搗という男に要求した。

 黒い玉とは、名を「アリマニド」と言い、ヘイズに属する者が体に宿す未来のツールである。このツールは人智を超えた力を宿した者にもたらし、その力は空を飛べる他、常人を赤子の手をひねるが(ごと)く葬れる。そんな未来の使者より与えられた(あかし)の破棄を、サンシャインが条件として突き付けた。

 続けるサンシャイン。捨てぬのなら耳を貸さない、と言わんばかりに腕を組み。

 

「黒い玉を持つ人がこの国を変えるなんて、ものすごく怖いんです。変えちゃダメな事まで変えちゃいそうで」

「バカな。僕はそんなことしない。分別は(わきま)えているつもりだ、信用してくれ」

「信用できるわけないじゃないですか。捨てれないって言うなら、あたしたちがここで今、黒い玉をぶっ壊します」

 

 望搗という男が、サンシャインの言に一理あると感じ、押し黙ってしまった。

 変えるという事はあくまで自己満足だ。自分が良かれと思って変えた事でも、万人にとっては必ずしもそうではない。変化を許容できる基準は人それぞれであり、極論を言えば万人が納得する変化なんて無いのである。

 独りよがりであったことを自覚した男が、自らが嫌悪して殺害したウルカという女性を顧みる。だが、破棄はできない相談だった。黒い玉がもたらす力は、男にこれ以上とない自信を与えている。

 力は自信につながる。力があってこそ人は初めて耳を傾ける。不当な評価しか得られなかった男にとって力の破棄は受け入れられなかった。

 

「私からもいいかしら?」

「ムーンライト。いいんじゃない?」

「あなたが未来の麦、未来の食材を普及させようとしている事は聞いてるわ。でも、そんなの絶対に許さない。そのおいしい麦を作るまでに、どれだけの人がどれだけの試行錯誤を重ねたか想像しないのかしら?」

「うんうん」

「人がおいしい物を作ろうとした食の歴史って果てしないのよ。そのおいしいという結果だけを取り出してこの国を壊そうなんて、おてんと様が許しても私が許さない。お覚悟を決めなさい」

 

 板前の娘であるムーンライトが、(てのひら)を上に人差し指を立てて(たん)()を切った。

 断るサンシャインとムーンライトに、望搗という男が、

 

「決裂か。誠に惜しいが、仕方ない」

 

 説得を諦め、コスモスの殲滅(せんめつ)を同志に合図する。

 コスモスに好意的な望搗という男だが、追い(すが)ってまで交渉する男ではない。無理と分かったら諦めて次策、今のケースなら殲滅に(かじ)を切る決断力を持っている。

 指導者には決断力が不可欠だ。決断という意志は鈍れば鈍るほど下の者に迷いが生じる。この潔さがあるからこそ同志たちは望搗という男に信頼を置いている。

 コスモス六人が、サッカーのハーフコート程の距離をおいて敵の八人と相対する。

 

「さて、誰が誰と戦う?」

 

 サンシャインが皆に問うと、

 

「あの、サンシャイン」

「なーに? トゥインクル」

「私とリングレットが、ブルーマリンとハウメアと戦います」

 

 トゥインクルが親友の手を握り、敵のコスモス二人を受け持つ宣言をした。

 リングレットが握られた手を無言で握り返す。

 

「えっ。大丈夫トゥインクル? あの(あお)い人、八人の中で一番強いってべーちゃん言ってたけど」

 

 サンシャインが後輩の申し出を心配する。

 コスモス六人は、敵の八人それぞれの強さを妖精から聞いている。それによると、敵の首魁(しゅかい)の望搗という男は、強いことは強いものの黄道の精霊を有しておらず、サンシャインまたはムーンライトがあたれば十分太刀打ちできるだろう、と予測している。

 妖精は望搗という男よりブルーマリンを懸念していた。黄道の精霊・天秤座(リーブラ)を有するブルーマリンは、三年のキャリアもあって強さが頭一つ抜けており、ブルーマリンこそ最も気を払うべき強敵である旨を六人に伝えていた。

 また、トゥインクルとリングレットの二人は、以前ブルーマリンと交戦して敵わずにいる。故にサンシャインは、自分がブルーマリンを受け持つ気でいたのだが、

 

「大丈夫です、リングレットと一緒なら絶対に負けません。私、ブルーマリンに言ってやりたいことがあるんです」

 

 トゥインクルが珍しく戦意を示すので、

 

「分かった。もしダメだったら、骨は拾ってあげる」

「ありがとうございます」

 

 サンシャインが後輩の決意を()み取った。

 無謀とは思っていない。サンシャインはトゥインクルを、ここ一番では最も力のある子、と認めている。

 

「じゃ、あたしとムーンライトは、あのエクリプスって人と、この前の双子を」

「ウチとグレナデンは他三人を受け持てばいいけ? よっしゃ、任せてちょ」

 

 サンシャインとムーンライトが望搗という男と双子、キューシルバとグレナデンが他の三人を受け持つ方針で話がまとまる。

 コスモス六人が円陣を組む。

 

「この戦い、絶対に勝つぞー!」

「イエス!」

 

 サンシャインの号令に、他の五人が勇ましく呼応し、コスモス六人が一斉に飛び出した。

 

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