YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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マブダチ! 嘘つきは告白のはじまり

「スズキ、実はオマエに謝らなくちゃならないベエ」

「え。僕に?」

 

 妖精が唐突に謝罪を伝えた。

 謝るって、何をだろう。僕は確かに妖精のせいで双子の姉弟から追いかけられるおっかない目に遭っているが、それではないだろう。

 白状する妖精。それは思い出したくもない、僕にとってのトラウマ映像。

 

「以前見せた、トゥインクルがブラックホール団の男との赤ん坊を出産する映画を覚えてるベエか?」

「……うん。もうあれは、二度と見たくないな」

「実はあれ、まっかっかなウソだベエ」

「へっ。ウソ?」

 

 でっちあげた映像と自白した妖精に、僕がつい間の抜けた声を上げてしまった。

 (うそ)と知った僕の胸が、どうしてか喜びに満たされ、同時に僕が納得する。あれを見せられた後、僕は彼女を引き止めに走ったが、彼女は僕の去就を待っていたようだった。

 僕が伊井兌という人に殺されかけたときは、彼女の幸せを願って一時は認めた。しかし、今となっては断じて認めるわけにはいかない。彼女を幸せにするのは僕である、僕じゃなければならない。

 

「エクリプスという男が(つく)る未来において、ハウメアが処刑されることと、スズキが殺されることは本当だベエが」

「それは本当なんだな」

「嘘をつくときは真実と一緒に混ぜ込むものだベエ。それで、トゥインクルに関しては捏造(ねつぞう)したベエ。本当のトゥインクルは、スズキが殺されると後を追うベエ」

「後を、追うって?」

「首を()って自殺するベエ」

「ええっ」

 

 僕が死んだら彼女も死ぬ。その言葉に僕はショックを受けた。

 ほら吹きな妖精。僕がトラウマものの映像を見せられ、どれだけ悲しんだと思っているんだ。しかもぬけぬけと、その映像が今しがたウソと自白した。

 ほら吹きの言うことなんか信じることはない。でも、僕はほら吹きと分かりつつも妖精を信じた。まったくかわいくないヤツだが、呼ぶとコスモスじゃない僕の前に現れてくれた。そんなほら吹きででたらめな妖精が、凡人の僕に、

 

「スズキ。あとオマエに礼を言わなくちゃならないベエ」

 

 意外な言葉を投げかける。

 

「僕に礼だって? なんだよ(やぶ)から棒に」

「日曜だケド、ボクは初めキューシルバとグレナデンを加えれば、あの戦いに勝てると高をくくってたベエ」

「震堂って人と己枦って子か。高をくくってた、ということは、勝つ見込みが忠四郎の中ではあったんだな?」

「もし(はな)っから勝てない戦だったらボクが止めてるベエ。ハウメアにもブルーマリンを止めるよう頼んで」

「え。忠四郎、あの子にそんなこと頼んでたのか」

「もし負ければ時間の競合が早まるどころか、コスモスを最悪六人も失うベエ。だから盤石の布陣でボクも臨んでたベエが、まさかアイツがあんなジョーカーを切ってくるとは予測できなかったベエ」

 

 ジョーカーと言われ、彼女以外のコスモスを軽く倒し、僕まで殺そうとした黒い巫女(みこ)姿の子供を僕が思い出す。

 あの子供は一体何者なのだろうか。望搗という人は終始かしずいており、妖精が珍しく焦っていた。子供でも敵における大物であることは間違いないだろう。

 

「あれが現れたときは多少の犠牲を払ってでも、と覚悟したベエ。でも、スズキがいたからトゥインクルが覚醒してあの場を何とかしのげたベエ」

「それが礼か。でも、僕は何もしてないぞ。庚渡さんだろ?」

「きっかけはスズキが作ったようなモンだベエ。スズキ、オマエがブラックホール団の襲撃に(おび)えながらもあの公園に来てくれたおかげで助かったベエ。礼を言うベエ」

「そっか。忠四郎にそう言われるなんて、悪い気はしないな」

「まあ、後々シミュレートしてみると、スズキがいなくてもリングレットがいれば、トゥインクルはたぶん覚醒してあの場をしのげたんだベエが」

「なんだよそりゃ」

 

 僕がいてもいなくても変わらない話のオチに僕は苦笑した。

 三日前の決戦では、彼女が無意識に(とど)めていた力を開放し、巫女姿の子供を撃退したのだが、あのときの彼女は恐ろしく怖かった。

 彼女は人殺しも辞さぬほど怒り狂っていた、「殺す」「死ね」などと吐いて。僕は彼女に殺人なんて犯して欲しくない。第一あの姿は違う。僕が好きな彼女は光に満ちあふれた(まぶ)しい姿の彼女だ。暴力を怒りのままに振るう闇に()ちたあの姿ではない。

 

「なあ忠四郎」

「なんだベエ?」

「ある人の今を変えられるって言うなら、敵の人の今も変えられるのか?」

「それができるなら何の苦労もいらないベエ。ブラックホール団に属する者の過去にはアイツがプロテクトをかけてるベエ」

「そうだよな。……忠四郎。僕は庚渡さんの歯止めだって言ってたよな?」

 

 僕が妖精に言われたセリフを今一度確認する。

 

「そうだベエ」

「なら、これからも歯止めとして支え続けるよ。彼女が闇に堕ちそうなときは、僕が止める」

 

 僕は、彼女のために生きることを宣言した。

 男冥利に尽きるとはこのことか。僕が誰よりも強大な力を持つ彼女を止められる唯一の男なんて。悪いがこの役目は坎原さんにも譲らない。

 僕は彼女が好きだ。誰よりも愛している。戦う彼女をこれからも見守り、支え続ける気概に満ちた僕に、妖精が背を向ける。

 そして、妖精が僕に首を振り向ける。

 

「さて、スズキに埋め合わせをしてやろうと思ったけど、やっぱやめるベエ」

「埋め合わせ? ああ、そんなこと言ってたな」

「ボクはそろそろお(いとま)するベエが、スズキ、オマエがどうするべきか、もうこれ以上は言わなくても分かるベエ?」

「……うん。分かってる。元々そのつもりだし」

 

 見つめる妖精に僕がうなずいた。

 

「スズキ」

「なに?」

「……オマエには、期待してるベエ」

「え。ハハッ、忠四郎が励ましてくれるなんて。ありがとう」

「礼を言われる覚えはないベエ。それじゃあベエ」

 

 妖精が消えた。

 そして、二日後の三月十五日金曜日。僕は彼女と一緒に下校する約束をした。

 待ち合わせ場所は体育館の裏手。坎原さんが転入する前はよく使っていた学校の裏門に近い場所。その人気のない所で僕が、胸をバクバクとこの上なく高鳴らせながら彼女を待つ。

 程なくして、彼女が現れる。チョコをもらったホワイトデーのお返しを兼ねた誕生日プレゼントを渡した後、

 

「庚渡紬実佳さん。お願いします、僕と、付き合ってください!」

 

 僕は、彼女に告白した。

 

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