YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー 作:豚煮真珠
彼の視界に、白色の知らない天井が映った。
目を覚ました彼が体を起こす。――ここはどこだ? と辺りを見回すより先に、
「……なっ?」
包帯がびっしりと体に巻かれており、まるでミイラのような自分の体に彼が驚いた。
驚いた拍子に右腕を動かすと、垂れ下がった透明のチューブが腕に釣られて振られる。これに彼が右腕に視線を向けると、軟質の太い針が右肘の内側に刺されていて、針から伸びている透明のチューブは点滴パックとつながっている。
辺りを見回す。モニター付きの高度な機械が設置されており、それはテレビやネット
なぜ入院しているのか。自分の身に何が起きたのか、彼が思い出そうとする。
「あっ。鈴鬼さん、目を覚まされましたか」
すると、入室した若い男性が起きている彼に気付いて呼んだ。
白いマスクで顔を覆う男は風通しの良い服を着ていた。そのサッパリとした清潔な身なりに看護師であることを彼が察する。
「鈴鬼さん、初めまして。わたし鈴鬼さんの看護を担当している
男が首から提げるIDカードを見せながら自己紹介する。
会釈をした彼に、芳騨という名の看護師が
「目を覚ましてくれてよかった。鈴鬼さん、十日の間ずっと眠ってたんですよ」
十日も気を失い続けていた事実に彼が驚いた。
黙考する彼。気を失う前を思い出そうとし、そんな彼に立ち上がった看護師が告げる。
「先生に知らせますので、鈴鬼さんはこのままお休みください」
医者に意識の回復を知らせに行く、と看護師が病室を後にしたところで彼が思い出した。
彼がいつものように学校から帰宅すると、伯父に家族全員での外食を誘われた。それでワゴン車の後部座席に座ると、隣に座っていた祖母に他人行儀をたしなめられた。
車が走ること十分ほどが経過し、燃料があまりないことに気付いた伯父がガソリンスタンドに入った。そこで従姉に続いて車から下車すると、一台の軽自動車がガソリンスタンドに入場したため、彼がその軽自動車を何気なしに眺めながら決心したときだった。
立ち止まることをやめ、前を向いて歩くことを決意した矢先の出来事だ。眺めていた軽自動車が給油せずに走り去り、その跡には銀色の円筒が置かれていた。
そして、円筒が突如として爆発した。あの筒が爆弾だったなんて彼は思いも寄らなかった。
(……みんなは!?)
思い出した彼が青ざめる。
気を失う直前に見た光景。火の海、否、炎の津波と化しており、この世の終わりと思えるような地獄だった。
車の外にいた彼ですら爆発の
居ても立っても居られなかった。彼がベッドから足を投げ出して立とうとするが、そこで違和感に気付く。
右目をつむってみる。すると、――何も見えない!?
(見えないって、……どういうことだ!?)
彼が点滴の針を抜き、病室から飛び出した。
廊下を駆けながら焦る彼。見えない左目、包帯だらけの体。自分は一体どうなってしまったのか。
程なくしてトイレの案内板が見えたため、彼がトイレに駆け込む。そして、鏡の前に立ち、顔に巻かれた包帯を急いでほどくと、
「……そんなっ」
彼が
更に左目が、ひどく傷ついている。まるで潰されたように黒ずんでおり、そして、眼球がない。
これは誰なんだ、僕なのか――。元の顔の面影などどこにもない、あまりにも醜く変わり果ててしまった自分の顔に、彼がわなわなと震える。
「……ううっ!」
そして
包帯にまみれた体。その下は顔と同じく
うずくまる彼が大泣きする。――おっ、おっ、と
――翌日、彼は医者から全てを聞いた。
彼は爆発事故における唯一の生存者だった。全身に大火傷を負った状態で病院に運び込まれ、直ちに手術したことで彼だけは一命を取り留めた。
祖父母に伯父に伯母、従姉は爆発に巻き込まれて全員死んだ。新しき家族を失い、また独りぼっちとなった残酷な現実を彼は医者から聞かされた。