YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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嘘は未来への道

 空を飛ぶリングレットの瞳に、黄色い衣装をまとった女の子の姿が映った。

 リングレットには見慣れた姿にして最も大切な親友。間もなくして、黄色の衣装の子が視線に気付き、リングレットの元へ飛ぶ。

 

「リングレット!」

「トゥインクル」

 

 黄色を主としたドレスを身にまとった、背の小さな可愛らしい女の子がリングレットを呼んだ。

 リングレットの紫色とは対照的な、黄色のドレスをまとう女の子は「トゥインクル・スター」と言い、コスモスの戦士である。

 前述の通りリングレットの親友にあたる。先のセントレアとオータムの二人と同じく、このリングレットとトゥインクルの二人も組んで闇の者と戦っている。

 

「一人で行っちゃうんだから心配したよぉ」

「ごめんごめん。急がなきゃ、って思ったから」

 

 二人は組んでいる。バディを組み始めてからは常に一緒に闇の者と戦い、闇の者を退けてきた。

 闇の者に(とど)まらず同じコスモスとも戦ったことがある二人。だが、今回リングレットは単独で行動し、いつも一緒だったトゥインクルに内緒で戦った。相棒が一人で戦うなんてトゥインクルにとっては初めてのことであり、だからトゥインクルが心配している。

 

「ふん。私を置いて行っちゃうなんて。私との友情やキズナなど、所詮はただのまやかしだったと言うわけね」

「そんなプリプリしないで。……はい、いないいない、ばあ。……ばあ」

 

 リングレットが顔を隠しては舌を出した顔を現したり、両頬を横に広げたファニーな顔をお披露目する。

 

「はぁぎゅ~。って、なんでわたし赤ちゃんなの」

「めっちゃご機嫌ナナメやぁ~。ミルク変えてオムツもちゃーんと取り替えとるのに」

「泣きたいのはこっちやー。って、私までインチキ臭い関西弁しゃべっちゃった。もういい、リングレットのことなんて知らないから」

「ごめんごめん。もうしないから許して」

 

 腕を組んで頬を膨らませてそっぽを向いたトゥインクルを、リングレットがなだめた。

 しかし、「もうしない」と言ったリングレットだが、近いうちに「またする」。リングレットが心の中で親友に謝る。

 (うそ)()くリングレットにトゥインクルが首尾を尋ねる。

 

「べーちゃんから聞いてるけど、コスモスの子たち助けられたの?」

「……ううん、間に合わなかった」

「え。そんな」

「一人はその場にいなかったけど、もう一人は、着いたときにはもう死んじゃってた」

 

 トゥインクルが、コスモスの子の死亡を聞いて眉尻を下げた。

 ショックを受けるトゥインクルだが、リングレットは「しょうがない」と諦めている。闇の者との戦いは、相手がコスモスの子の命を奪えば願いが(かな)うという構造から、負ければ十中八九は命を失くす。そもそも二人はオータム・シアリーズ、つまり丙山潤奈と面識がなく、リングレットは「実力が足りなかったんだ」とシビアに考えている。

 リングレットは別の懸念を抱いていた。彼女が彼とアトラクトと名乗る男の前に現れた訳だが、「コスモスの戦士が闇の者に狙われている。相手は手ごわい上にあまり戦闘経験のない二人だから救援に向かってくれ」といった旨の報せが彼女の元に届く。それで彼女は、普段ならトゥインクルを呼ぶところを一人で向かったのである。

 程なくしてトゥインクルもコスモスの子が狙われている旨を知らされる。更にリングレットが先に向かったことも聞き、追いかけるに到っている。

 

(ホントに、見られなくてよかった……)

 

 気を落とすトゥインクルを(しり)()に、リングレットが内心でほっとしていた。

 一人先行したリングレットだが、彼女は報せを聞いたとき妙な勘が働いた。これから行く所に、トゥインクルを呼んではいけない胸騒ぎが。

 勘は的中する。顔を包帯で隠す彼を見たリングレットは、トゥインクルと彼を絶対に会わせてはいけない危機感をどうしてか覚えた。そして、「あの男の子だけは今ここで殺さなきゃ」と(しょう)(そう)感に駆られた。

 殺さなければ奪われてしまう――。しかし、(うず)いた感情はあまりにも醜悪であり、光の戦士としてもあるまじき行為だ。トゥインクルの前では曇りなきヒーローでありたいリングレットはだから急いだ。殺人を犯す自身の姿をトゥインクルに見られたくなかったのである。

 ちなみに、リングレットとトゥインクルの二人が都心に近いここにいる理由だが、東京に実家があるリングレットが帰省しており、トゥインクルはリングレットに誘われて東京に来ている。

 

「うん? ねえリングレット」

「えっ、なに?」

「その手、血?」

 

 リングレットの右手に付着した血にトゥインクルが気付いた。

 後ろめたさから(とっ)()に左手で血を覆ったリングレット。血は彼の物である。

 

「これは、なんでもないよ」

 

 ごまかしたリングレット。上手(うま)い言い訳が思い浮かばなかった。

 リングレットは彼にとどめを刺そうとしたが、トゥインクルが近付いている気配を感じたために止めた。見られずに済んだことと殺人を犯さずに済んだことに(あん)()した一方で、彼を生かしてしまったことに懸念を抱いている。

 平静を装うリングレットの瞳を、トゥインクルがジトッとした目で見つめる。

 

「ほんとー? なんか隠してない?」

「ほんとほんとほんと。ほんとだって」

「うーん、怪しい。今日のリングレットってちょっとおかしいし」

「おかしい? そ、そんなことない、いつも通りだよ。今まであたしがトゥインクルにウソついたことあって?」

 

 トゥインクルの追及にリングレットは開き直ることにした。

 実際リングレットがトゥインクルに嘘を吐いたことは一度もない。だから、今日が初めての嘘となり、今までの信用を駆け引きとして使う。

 祈るリングレットが、胸に手をあてて鼓動を必死に押さえ付け、これにトゥインクルが、

 

「……分かった、リングレットを信じるよ」

 

 怪しさは晴れないものの親友を信じることにした。

 

「ホントにごめん、心配かけて」

 

 トゥインクルはリングレットの掛け替えない親友である。それこそいなければもう生きていけない、と思うくらいに。その親友をだましているために心から謝罪する。

 申し訳ない顔を浮かべるリングレットに、トゥインクルが(くぎ)を刺す。

 

「もう一人で行かないでね?」

「うん。もう行かない、約束する」

「次一人で行ったら、リングレットがキライなピーマン、お腹いっーぱい食べてもらうから」

「それは、ますます行けないね」

 

 親友を(あざむ)いて心苦しさを感じているリングレットの本名は坎原(かんばら)(たまき)と言う。彼と()しくも因縁がある。

 そして、トゥインクルの本名は庚渡紬実佳と言う。音信不通となってしまった彼と巡り合えるチャンスを、親友に潰されてしまった。

 

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