YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー 作:豚煮真珠
「来たわ! トゥインクル!」
「はい!」
ミヅキさんが呼び、彼女が身構える。空を舞う大きな白鳥がこちらに向かって
迫る白鳥。両翼を伸ばして拡大するその姿に、飛行機が突っ込んで来るような恐怖を僕が覚える。
ところが、白鳥が翼を仰いで急停止する。
「あれは、……スズキ君! トゥインクルが防ぐから大人しくしてなさい!」
ミヅキさんが僕に呼びかける。雨のような無数の何かを、白鳥がこちらに降らせたのだ。
「うわあっ!?」
「あ、うっ」
地面を
だが、無事であった。僕がかばう腕を解いて見上げると、上では浮かぶ彼女が、自分の身を盾として雨のような何かから僕を守っている。
浮かぶ彼女が僕に振り向き、ほほえみを浮かべる。
「いてて。鈴鬼くん、だいじょうぶ?」
「庚渡さん!」
下り立った彼女の姿に僕はショックを受けた。彼女の腕や体には、無数の白い羽根が
「僕は無事だよ! はやく、早く抜かなきゃ」
「平気へーき。私コスモスだから。傷も残らないし」
痛々しい彼女の姿に僕がうろたえ騒いだが、彼女は笑って羽根を抜いていた。
平然とする彼女。だが、僕が
女の子に、しかも好きな子に守られるなんて。僕が申し訳ない気持ちに駆られる。
「陽! 早く変身なさい!」
「分かってるって」
声に振り向くと、ミヅキさんも守っており、後ろでしゃがんでいるヨウという人を守りながら叱っていた。
ミヅキさんは銀の着物を脱ぎ、それを盾としていた。着物にあんな使い方があるのか、なんて感心してしまう。
着物を振り払って羽根を落とすミヅキさん。その後ろではヨウという人が、空を舞う白鳥を望みながら、
「みんな、あの鳥はあたしに任せて。あの鳥、焼きたてフレッシュなヤキトリにしてやるから」
勝利を自信満々に予告し、すくっと立ち上がった。
「さーて、いっちょやりますか~」
ヨウという人が懐からおもむろに取り出す。それは彼女やミヅキさんが持つ鏡と同じ物であり、僕が目を見張る。
ミヅキさんの変身は鮮烈で格好良かった。彼女は好きな気持ちもあって
彼女たちは戦いに身を投じている。つまり真剣だ。わくわくするなんてもっての外だろう。そんな不謹慎な気持ちに駆られている僕を知ってか知らずか、
「ふふ。少年、ビビるなよー」
ヨウという人が口角を上げて脅したため、僕が戸惑う。
「え、え?」
「トゥインクル。派手にいくから、スズキ君をお願いね」
「オーライです。鈴鬼くん、陽さんから離れて」
僕が何が何だか分からないまま彼女の促すとおりに離れると、
「シンダーエラ、ターンイントパッショナリー!」
ヨウという人が鏡に自分を映しながら彼女やミヅキさんとはまた微妙に違った口上を述べた。
やはり鏡が、ひとりでに手から離れ、
「ええっ!?」
そして起こった激しい事態に僕が仰天した。
鏡の放つ光が、ヨウという人を燃やし始めたのだ。炎は瞬く間に燃え広がり、その体を頭の天辺から爪先まで繭のごとく包み込む。
「か、庚渡さん! あのヒト、燃えてるよ!?」
「大丈夫。あれが陽さんの変身だから」
慌てふためく僕だが、彼女とミヅキさんは炎の繭を平然と見守っている。
「あの、鈴鬼くん」
「な、なに?」
「あまり陽さんの変身した姿、じろじろ見ないでね」
「え、どういう意味?」
彼女の言葉に僕が首をかしげると、炎の繭から腕が飛び出すように現れた。
左手が鏡を力強くつかむ。そして――。
「
炎が消え、中から現れた戦士の姿に、僕がまたもや仰天した。
変身とは彼女のように着飾るものだと思っていた。あるいはミヅキさんのようにまったく異なる姿に変わるものだと思っていた。彼女の神秘とミヅキさんの洗練。そのどちらでもなかった。
ヨウという人の変身を表すと「原始」、言葉のとおりに脱いだのだ。その姿は黒いビキニと少々のアクセサリを着けただけの、とてもシンプルかつ過激な格好に変わっていた。その代わりに
(これは……)
そして、僕は驚嘆の息をもらしてしまっていた。
彼女が「じろじろ見るな」と言った意味が分かった。ヨウという人の身体はスタイルが抜群に良く、特に下半身は脚線美という言葉が見事にあてはまった。日々汗を流して培われているのであろう身体は美しく、そのために視線がついつい吸い寄せられてしまう。
「鈴鬼くん、見ないでって言ったでしょ?」
「いてっ!」
「トゥインクル、遊んでないで! また羽根が来る!」
ミヅキさんの呼びかけに僕と彼女が空を見上げると、白鳥がまた両の翼を仰いでいた。
数え切れない量の白き羽根が襲い掛かる。しかし、ヨウという人が、
「あたしに任せて!」
自ら受け持つ宣言をし、意気揚々と飛び上がった。
宙を上昇する黒ビキニ姿の戦士。雨のように降り注ぐ羽根の群に自ら向かい、――僕は目を剥いた。
空高く舞い上がった戦士の体が、
「こんな羽根なんかぁ! 〝オーヴァードライブ〟!」
空を舞う戦士が気高く
熱気が僕の顔にまで伝わる。そうして羽根だが一つも降らなかった。炎が燃やし尽くしたのだろう。
炎を突き抜けた戦士が、そのまま白鳥の元まで一直線に飛び、
「とんでけぇ! 〝キャノンストレート〟!」
飛翔の速さに任せて白鳥を殴り付ける。
――ヤァクサァァイィ!
それは豪快の一言に尽きた。白鳥が
戦士が地上に下り立つ。予告通りに白鳥を軽く倒し、勝利を当然とばかりに落ち着き払うその勇姿は、まさに
戦士、いや、ヒーローが、白い歯をニッと見せて笑う。
「サンシャイン! やりましたね!」
「派手にやったわね」
すると彼女がヒーローに抱き付き、ミヅキさんがあきれた顔でほほえんだ。しかし――。
――ヤクサァァイッ!
「へっ!? あたし倒したよ!?」
「違いますサンシャイン! この
「もう一匹いるのよ! まだ、終わってない!」
動揺する三人の戦士。敵は白鳥だけではなかった。
僕と戦士三人が辺りを見回すと、ズゥン――、と地面が重々しく揺れた。