YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー 作:豚煮真珠
「もらったぞムーンライト! フアッ!」
半人半馬の武者が光の戦士ムーンライトの背後を捉え、刀を払う。
だが、ムーンライトが
舞い上がったムーンライトが宙をくるりと翻り、右のガントレットを
「切る! マッソルカッティング!」
銀にきらめく鋭い縦の弧を描く。
三日月のごとく描かれた弧を、武者が刀を横に構えてかろうじて受け止める。
「うぬうっ! アクセレイション!」
「逃げる気!? 逃さないわ!」
姿を消す武者だが、ムーンライトが左へ回り込むように移動したことで、武者はムーンライトの前にて姿を現さざるを得なかった。
接近した両者。共に刀とガントレットを振り下ろして
武者の加速は常人や並のコスモスなら翻弄するに充分だった。しかし、今のムーンライトは黄道の精霊・
「トゥインクル!」
「はい! はあああっ!」
幼くとも気迫ある声が響き渡る。ムーンライトに呼ばれたトゥインクルが高い位置から蹴りを繰り出した。
武者の左側面を狙った突き刺すようなキック。これに武者が鍔競り合いをやめ、右に跳んでかわすが、
「逃がすもんか! どりゃあああっ!」
「うぐはあっ!」
この回避を読んでいたサンシャインが利き手の左ストレートを放ち、武者の右脇腹を
撃たれた武者が
「ぐっ、お……」
「ムーンライト! チャンスだよ!」
「ええ! 仕留める、〝ギルティーメインディッシュ〟!」
三人の連携が初めての好機を生み出した。ムーンライトが右のガントレットを剣のように研ぎ澄ませ、武者の左
引き抜くムーンライト。競走馬のごとく発達した武者の左後ろ脚が折れ曲がる。これに武者がすかさず体勢を戻すが、左後ろ脚は震えている。
ムーンライトが加速を止め、呼応したトゥインクルがそこを突き、回避した先をサンシャインが詰めて有効打を与える。この見事なチームワークに武者が憎さ余って賛辞を送る。
「おのれ、コスモスめ。やるではないか」
「侍ごっこは終わりよ、メテオ!」
「たかが脚一つ! アクセレイション!」
武者が加速する。だが、そのスピードは明らかに落ちていた。
脚を一つ失えど黄道の精霊、以前コスモスが戦ったヤマネコなら
亡霊のごとき闇討ちが不可能となった武者を、ムーンライトが厳しく追い詰める。
「はああああっ!」
武者が連撃を振り切らんと駆けるが、ムーンライトはまとわりつき、武者を決して逃さない。山羊座を行使するムーンライトだけは武者の落ちたスピードに追い付けた。
斬撃と刺突を絶え間なく繰り出すムーンライトに、自慢の足を殺された武者が防戦一方を余儀なくされる。ところが、形勢は徐々にだが武者に傾く。武者とムーンライト、両者が持つある物が明暗を分かつ。
「見切った! フンッ!」
「あぅっ!」
武者が一瞬の隙を見出し、ムーンライトの振り下ろすガントレットを刀で弾き返した。
反撃だ。そう言わんばかりに目を光らせる武者に、ムーンライトが攻勢を止め、武者と一度距離をおく。
「はあっ、はあ……ぐっ」
吐く息を
鼓動が大きく脈を打ち、肺が酸素を求めて呼吸を急がせる。蓄積した疲労を隠せないムーンライトを、
「どうしたムーンライト? 辛そうではないか」
武者が余裕ありげに挑発する。
「あ、あなたは、辛くないの? 同じ精霊を、宿しているというのに」
たまらずに弱音を吐いたムーンライト。黄道の精霊の発現は肉体にとてつもない負荷がかかる。これは精霊と宿す者の相性がどれだけ良くとも逃れられない。
しかし、武者は涼しい素振りをしていた。疲労がほとんど見受けられない。条件は同じ、否、ムーンライトが山羊座を発現する前から武者は射手座を発現しているのに。
同じ黄道の精霊を宿すムーンライトの質問を、
「フッ、惰弱な。君の限界はその程度か」
武者が失望したようにあざ笑う。
しかし、武者も辛かった。体内の熱は煮えくり返っており、腹の中から胃液をもらしそう。まして武者は射手座を緒戦から行使している。それなのに武者が平然としていられる理由は、
あざ笑った武者だが、それはフェイクであった。とどのつまり武者は痩せ我慢しているのである。しかし、今のムーンライトにこの効果は絶大だった。同じ条件なのにメテオは余力を残している。こう思わせることは限界が近いムーンライトに大きな失意を与えた。
精神力。言い換えれば忍耐。中学生の未熟なそれに、大人の踏まれて育った雑草のごときそれが勝った。そうして優位に立った武者が刀を
「終わりにしよう。さらばだムーンライト」
武者が握り拳を作った左手を突き出し、弓の弦を引くように右腕を引く。
「……っ!」
息を
そして、武者が引く右手に光の矢が生まれ、ムーンライトの胸を狙う弓矢が武者の腕に形成される。
――いけない。危険を感じ取ったムーンライトが銀の着物を脱ぎ捨てながら下がる。しかし、
「我が全霊を受けよ! 〝サジタリウスビシャモンテンアロウ〟!」
「あっ、ああああぁっ!」
逃れることは不可能であり、武者から放たれた光の矢にムーンライトが
「ムーンライト!」
吹き飛ばされたムーンライトが地面を転がり、サンシャインとトゥインクルが呼びながら駆け寄る。
突っ伏すムーンライトだが、気を失えど息はしていた。銀の着物は盾としての機能もあり、これをとっさに投げて矢にかぶせたことで致命傷は免れていた。
山羊座による変身が解け、続けてムーンライトの変身も解けて巽島美月に戻る。仲間が敗れた事実に、サンシャインとトゥインクルの二人がショックを受けている。
「仕留め切れなかったか。だが、最も厄介な者は片付けた。残るは君たち二人だ。覚悟」
動揺する二人に、武者が刀を抜いて突き付けた。