YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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夕星への祈りと愛のひらめき

「イヤアッ!」

 

 半人半馬の武者が高く跳躍し、拳を振り上げたサンシャインの頭上を大きく飛び越えた。

 着地した武者が、跳んだ勢いを(まま)に駆け始める。足を一つ失い、緒戦に比べると明らかにスピードが鈍った武者だが、勢いは止まらなかった。武者は止まるという事を知らず、その巨体を(ひづめ)の音に合わせて軽快に躍らせている。

 

「何をまごまごしている、トゥインクルスター!」

「きゃあっ!」

 

 そして走る武者に、トゥインクルが狙いを付けられず、武者に接近を許して倒された。

 地面を転がるトゥインクル。もう何度も倒されている。

 

「トゥインクル! このおっ!」

 

 倒された後輩にサンシャインが怒りの拳を振り上げるが、

 

「甘い! アクセレイション!」

 

 並の戦士なら足一つでも十分。そう武者が加速を発動して拳をかわす。

 姿を消した武者を、サンシャインが首を振って探す。左右に後ろと、あらゆる方向に神経を(とが)らせる。しかし武者は、平面的に探すサンシャインの頭上に現れ、刀を下ろして断ち切らんとする。

 頭上から迫る気配に、サンシャインが刀をかろうじてかわすが、続く着地した武者の鋭き刺突は、

 

「ああうぅっ!」

 

 避けられずに食らい、アスファルトの地面を仰向けに滑る。

 

「うう……」

 

 痛みに(うめ)くサンシャイン。ムーンライトが敗れて以降、サンシャインとトゥインクルの二人は武者にいたぶられるが儘だった。

 目では武者を捉えられる二人だが、その速さには付いて行けなかった。黄道の精霊を発現したムーンライトだからこそ追い付けたのである。

 唯一対抗できたムーンライトは既に倒れ、もはや敵なしと見た武者が二人に刀を突き付ける。

 

「打つ手なしだな。絶対的な力の差を感じ取っただろう? 君たちが前に破壊した水瓶座(アクエリアス)の精霊でも宿してみるか?」

 

 コスモスの三人は一月前、黄道の精霊・水瓶座(アクエリアス)を破っている。この精霊は妖精が回収し、宿そうと思えば確かに宿すことはできた。

 だが、無理な話であった。妖精が解析したところ水瓶座は、サンシャインもトゥインクルも相性が良くない、とのこと。相性の悪い精霊を宿すと寿命をいたずらに食われる上、宿した者が最悪死に至る。

 武者が言い渡したように二人では打つ手がなかった。縦横無尽に走り回る馬の足を、どうにかして止めなければ二人には勝ち目がない。

 

「たとえアクエリアスを宿そうとも打ち破ってみせるが」

 

 武者が自信ありげに宣言する一方で、

 

(鈴鬼くん)

 

 四つん()いのトゥインクルが遠くの彼・鈴鬼小四郎に目を向けた。

 遠くにいる彼は祈っていた。乙女がごとく膝を突いて手を組んで。

 

「……まだ終わってない。メテオ、私たちは諦めない」

 

 祈る彼に感化されたトゥインクルが痛みを堪えて立ち上がる。

 

「そうだ。あたしたちは、あんたなんかに負けるわけにはいかない」

 

 続けてサンシャインも(あらが)うべく立ち上がる。

 

「こんなところで、くじけてるわけにはいかないですよね」

「うん。何があっても、諦めない。絶対に何とかしてみせる!」

 

 トゥインクルが共に戦う先輩に同調を尋ね、サンシャインが不屈の闘志を武者に示した。

 屹立(きつりつ)した二人に武者が(かす)かに笑う。それでこそコスモス――、と。

 武者が刀を構え、対するサンシャインが腰を落とす。

 

「はあああ……」

 

 トゥインクルは広げた両手を突き出して光を集めていた。

 

(一か八かだけど、やるしかないんだ!)

 

 覚悟を決めたトゥインクル。両手に集まる光が徐々に輝きを増している。

 トゥインクルが放つ必殺の光線。それまでの劣勢を一気に覆すコスモスの切り札にして最大火力だ。まともに浴びれば誰とてひとたまりもない。

 武者自身トゥインクルの光線には、使役する精霊を幾度となく消し去られ、苦汁を味わっている。しかし、

 

「何度試みても同じだトゥインクルスター! 私の速さに君は撃てない! アクセレイション!」

 

 武者は恐れておらず、白く凝縮される光を前に得意の加速を発動した。

 光を周るように(しっ)()する武者。そう、トゥインクルの光線は真っ()ぐにしか撃つことができない。威力は計り知れないが、その軌道はあまりにも読みやすく、故に武者は容易(たやす)くかわせると踏んでいた。

 だが、真っ直ぐを破ったら。光線の軌道を変えることができたら。破る方法を一つだけ思い付いたトゥインクルが、この奇策と言うべき方法に勝負を懸ける。

 試したことなど一度もない。ぶっつけ本番の一発勝負。光を収束するトゥインクルに、回り込みながら接近した武者が、

 

()らえいっ!」

 

 刀を振り払い、トゥインクルの首を狙う。

 

「トゥインクルブラスト〝アウト〟!」

 

 しかし、トゥインクルは手を組み、光を握りながら放った。

 

「うっ、おおおおっ!?」

「や、やったぁ!」

 

 武者が想定外の事態に驚きながら(もだ)え、奇策が功を奏したトゥインクルが思わず喜ぶ。

 真っ直ぐにしか撃てない。それならば光を握り、指の隙間を使って四方八方にまき散らしてみたらどうか。手を組む彼を見たトゥインクルが思い付いたのである。

 トゥインクルが放った光は分散し、広範囲にまき散らした光が武者に炸裂(さくれつ)した。拡散したために威力は落ちたが、それでも武者の足を止めるには事足りていた。

 

「お、おお。()(しゃく)な真似を……」

 

 光を浴びた武者がよろめいている。

 

「このチャンス、絶対に逃さない! でやあああっ!」

「ガアァッ!」

 

 後輩が作りし絶好の好機。サンシャインが渾身(こんしん)の回し蹴りを、武者の生命線たる右後ろ脚に叩きつけた。

 武者が両の後ろ脚を破壊され、馬の尻をガクッと下ろす。武者の加速は封じられた。

 

「これで最後だ! 純情乙女の炎の力! 〝キャノンストレート〟!」

 

 そして、サンシャインが炎をまとった拳を振りかぶり、自身が持ち得る最大の左ストレートを武者に放つ。

 武者が拳をまともに食らい、野球のライナーボールの(ごと)く素っ飛ぶ。サンシャインの拳は疑似的な火砲(カノン)、爆発的な運動量によって対象を破壊、あるいは射出する。

 ()まる一台の車に武者が激突し、崩れるように倒れる。射手座(サジタリウス)の変身が解けて黒ずくめの男に戻り、かぶる黒の仮面を落とす。

 サンシャインとトゥインクルが追い詰めるべく武者に駆け寄るが、

 

「あっ! この人って」

 

 (さら)した男の素顔に、トゥインクルが足を止めた。

 

「知ってるのトゥインクル?」

「思い出しました。声はどこかで聞いた覚えがあったんですけど」

「前に言ってたね」

「はい。この人、テレビで見たことがあります。名前は思い出せないですけど、前にどこかの町で選挙に立候補してた人です」

 

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