YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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こんなはずじゃなかった!

 宿敵メテオが倒れ、その亡骸(なきがら)を前に、

 

「この男は、ボクが片付けておくベエ」

 

 妖精がコスモスの戦士三人に告げた。

 時を戻して人が死んでいたら大ごとだろう。また、コスモスの戦士が大怪我(けが)を負ったり、死んでしまったら大変なことになるだろう。妖精はこれを自然な形に収まるよう処理をしている。

 前例を挙げると、サンシャインとムーンライトは二か月前、精霊・山羊座(カプリコーン)との戦いで病院通いとなる怪我を負った。これは妖精が車を手配し、()き逃げに遭ったように見せかけている。車は追跡不能となるように処理し、警察がいくら捜査しても追うことができないようにしている。

 

「メテオは、感謝してたけど」

 

 美月が事切れた男を前につぶやき、

 

「うん」

 

 これに肩を貸すサンシャインが寂しげに返事する。

 

「それでも、こんなの、後味悪すぎよ……」

「そうだね。この人の言ってたこと、話が大きくて付いてけないけど、でも、話ができた。なんであたしたち、こんな人と戦わなくちゃならなかったんだろう……」

 

 美月とサンシャインの目に涙が浮かぶ。

 長らく戦い続けた敵を亡くした喪失感、話ができたのに分かり合えなかった哀惜感、結果的に殺してしまった罪悪感に二人が陥っている。

 倒さなければ自分たちが殺されていた。しかし、だからと言って殺すつもりなどなかった。男が感謝していたとは言え、目の前に訪れた死が二人を(さいな)めている。

 

「サンシャイン、美月さん」

「……なに?」

「なに、トゥインクル」

「私、涙が止まりません。どうしよう、敵だったはずなのに」

 

 泣くトゥインクルを彼・鈴鬼小四郎が慰め、サンシャインが涙をぬぐった。

 サンシャインは皆で悲しんでいてはいけない、という責任感を背負っている。そして彼女の中では、納得できない疑問がふつふつと沸き立っている。

 分からないままで済ませてはいけない。そうサンシャインが、

 

「べーちゃん」

「なんだベエ」

 

 唯一平然としている妖精を呼び、沸き上がって激しく煮立っている疑問をぶつけ始める。

 

「どうしてあたしたちが地球の人、しかも日本人と戦っているの? ブラックホール団って宇宙海賊じゃなかったの? メテオ宇宙人でも何でもない、フツーの男の人じゃない」

 

 今まで悪い宇宙人と思って戦っていた。しかし、今まで戦っていた者は日本の男性だった。

 もっとも、普通に会話が成り立っていたため、男の正体に疑問は感じていたサンシャインだったが、その正体が判明したために妖精を問い詰めた。

 サンシャインは妖精を許せなかった。もしかしてだましていたのか。あたしらを利用していたのか。そう眉間にしわを寄せるサンシャインに、

 

「ボクは宇宙人、つまり人とは一言も言っていないベエ。ブラックホール団は、宇宙に住み着く様々な意識の集合体なんだベエ」

 

 妖精が特に表情を変えることなく冷静に答える。

 

「集合体? どういうこと?」

「サンシャインは先入観に囚われているベエ。宇宙に住む者に、必ず形があるとは限らないベエ。みんなが知るとおり宇宙という環境は生命の維持に適さない場所だベエ。ブラックホール団は、闇の邪悪な意識が寄り集まった、宇宙に()む無形の集団なんだベエ」

 

 宇宙には空気も水もなく、生物は生きていけない。だから意識だけが宇宙には存在する。その理屈をサンシャインは理解した。

 では、目の前の男は何なのか。確たる証拠を前にサンシャインが問いただす。

 

「じゃあ、メテオは何なのよ。ちゃんとした形がある人じゃない」

「ちょっと待つベエ。答えを急ぎすぎだベエ。この男は、闇の意識にそそのかされた者だベエ」

「そそのかされた?」

「うむだベエ。形がない故に自分では地球の侵略が行えないブラックホール団は、地球に住む人間をそそのかして侵略を行わせているのだベエ」

 

 妖精の言に矛盾はなく、サンシャインは納得せざるを得なかった。

 サンシャインの肩を借りている美月が、

 

「でも、この人が、意識しかない者の怪しい誘いなんかに乗る……あっ」

 

 疑問を挟むのだが、先の男の発言を思い出してそれを口にする。

 

「望む物が、何でも(かな)う」

「そうだベエ。ブラックホール団は、人の欲を具現化する物質〝トゥルーダークマター〟を使って人間を操っているのだベエ」

「トゥルー、ダークマター?」

「宇宙のいずこかに眠る、とてもとても暗い物質であることから、ボクはそう呼んでいるベエ」

 

 男が誘いに乗った訳を、美月とサンシャインが仕方なしに理解した。

 妖精が告げる。なぜ宇宙海賊が人を操るという回りくどいことをしてでも地球を欲しがる訳を。

 

「闇の意識は形を欲しがっているんだベエ。だからブラックホール団は人間を操り、この地球を最終的には乗っ取ろうとしているんだベエ」

「そっか。ってことはべーちゃん」

「なんだベエ、サンシャイン」

「またブラックホール団が襲ってきたら、あたしたちはまた人と戦わなきゃいけないってこと?」

「そうなるベエ」

 

 闘争はこの先も続く。妖精が予告した未来はあまりにも残酷だった。

 欲は誰にだってある、善人にも、子供にも。例えば、恵まれない子供に愛の手を差し伸べる慈悲深い人や、戦争を純粋になくしたいと願う聖人と、戦わなければならないケースだって考えられるのだ。

 夢を欲と言い換えることだってできてしまう。いっそ敵が悪人であった方が清々した。

 

「やだよあたし。人と殺し合いなんてしたくない」

 

 辛い事実にサンシャインがぼやくと、

 

「私も……」

 

 肩を借りている美月もこれには同意する。

 

「そ、それはとても困るベエ! サンシャインとムーンライトとトゥインクルは、ボクが探したコスモスの中でも群を抜いた強さを誇る戦士だベエ! 気持ちは分かるベエが、だからと言って戦いを放棄したら、ブラックホール団に地球が乗っ取られてしまうベエ!」

「分かってる、分かってるよべーちゃん。でも、ちょっと考える時間をちょうだい。メテオが死んじゃって、今あたしの頭の中がぐるぐると回っているの……」

 

 妖精が慌てて引き止めるが、そんな妖精にサンシャインが力なく答えた。

 

「……帰ろう。トゥインクルも、スズキ君も」

 

 呼びかけたサンシャインだが、トゥインクルはいまだ泣いているため、彼が代わりに返事をした。

 以降は誰も声をかけなかった。メテオの死、そして人と人との殺し合いの事実は、この場にいる者の気を果てしなく重いものした。

 

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