YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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出会い頭! 注意一秒怪我一生

 昨日、光の戦士であった転校生が、同じ光の戦士の彼女に変身を強要した。

 戦って実力を見定めたかった転校生だが、争いを好まぬ彼女は変身を強い意志で断った。これに転校生は妖精に裏切られたこともあって不満げに彼女の前から去った。

 そして今日、学校で彼女と転校生は目を合わさずに過ごしていた。彼女の方はチラチラと隣をうかがって転校生を気にしてはいるが、転校生の方は徹底した無視を貫いている。このコスモス二人を仲介する勇気は情けないことに僕は持ち合わせていない。

 二人に気を()む僕だが、何もできなくて昼休み。五時間目が始まる十分くらい前の時刻に、僕と師泰と丞が廊下を歩いていると、

 

「坎原環さん! 俺と、付き合ってください!」

 

 さすがに度肝を抜かれた。他組の男子がぼーっと歩いていた僕たちの前で、転校生に交際を申し込んだのだ。

 突然の告白にびっくりする僕たちだが、転校生は迷うことなく、

 

「ごめんね。今そういう気になれないの」

 

 あしらうように交際を断った。

 告白した男子が肩を落とす。確かサッカー部で、一年ながらにレギュラーを張っており、成績も優秀で評判の男子だ。しかも顔までカッコ良く、女子の間ではしばしば話題に上る。

 転校生がフッた男子とすれ違う。すると、その先にいた僕と目が合ってしまう。

 

(……っ!)

 

 息を()んだ僕。転校生が鋭い眼つきで僕をにらんだのだ。

 僕たち三人ともすれ違った転校生が教室に戻り、それを僕たちが見届けると、

 

「なあ鈴鬼。今あの子、お前のことにらんでなかったか?」

 

 丞が目ざとく僕に確かめた。

 思い出される昨日の出来事。光の戦士の彼女と転校生が、あわや一触即発の緊張する事態に陥った。そしてただの人な僕がそれを止めに入るなんて、顧みても衝撃ある一日だった。

 転校生とのいざこざなんて話すわけにはいかない。丞にシラを切ろうとする僕だが、

 

「ま、まさか。気のせいじゃ、ないかな……?」

 

 情けないことに先の鋭い眼つきを受けてビビッてしまい、挙動不審な返事をしてしまった。

 

「そうか? まあそれにしても今の即答だったなー。あのコ告白されたこと一度や二度じゃないんだろうな」

「そ、そうだね」

「あそこまで即答だとなにか勘繰っちまうな、鈴鬼」

「え。勘繰るって?」

「ああ。例えば、恋愛禁止だ。恋愛はうまくいっている時はいい。でも仲がこじれてしまうと、取り返しのつかないことに……。だから、恋愛は絶対禁止とする。とか言われてたりしてな! ぐはっ!」

「何だよその最後の笑い」

 

 丞が一人考察を述べ、シラを気にしていないようなので僕が内心ほっとした。

 そして、今しがた転校生に(おも)いを伝えた男子。そのトボトボと歩く背には哀愁が漂っているが、僕は素直にすごいと思う。皆が見ている前で告白なんて普通できることではないし、僕は彼女に告白する勇気をまだ持っていない。

 師泰は、転校生が戻った教室の方を眺めており、

 

「しかしあの女、さっそく孤立し始めたよな」

 

 と、皆が思っているであろう感想を僕と丞に述べた。

 

「だなー。もてはやされていたのも昨日だけだったな。今日の昼休み一人でメシ食ってたし」

「女らがさ、いくら話しかけても全然笑わないし、〝カッペ〟って見下されてるみたいで(しゃく)に障るって陰で言ってたぜ」

「まあ、心ここにあらず、って感じ確かにするな。東京が恋しいのかねぇ」

「女って怖いよなー。昨日あんなにもてはやしていたのに、今日になったら手のひらクルッてハブってよー」

 

 田舎者を見下す高慢ちきな女。ささやかれ始めた転校生の評を師泰と丞が話していた。

 だが、昨日「何故(なぜ)あんなに好戦的なんだ」と転校生に思った僕だが、あれが本当に素の姿なのだろうか。思い直すとすごく無理をしているように感じた。

 転校生には不器用さを感じた。彼女の実力を知りたいなら友好的に接したっていいだろう。本気の実力を量るためにあえて反感を抱かせたのかもしれないが、それにしたって逆効果に過ぎる。結果彼女は変身を拒否し、実力を知るどころではなくなった。

 何故同じコスモスである彼女を敵視するのか。仲良くしたくない理由があるのか、と僕は彼女に対する拒絶のような何かを昨日の転校生から感じ取った。そう言えば彼女が昨日「似てるから?」と()いていた気がする。関係するのだろうか。

 もっとも、ただの勘なのだが。これはコスモス同士彼女と仲良くして欲しい僕の願望が多分に含まれている。

 

「コシロー。あの転校生、意外と庚渡と合うんじゃね?」

 

 師泰が僕に訊く。一人ぼっち同士という意味であろう。だが、(かな)うものならそうあって欲しい、と僕は願っている。

 

「うん、そうだったらいいね……うわっ!」

「おいコシロー」

「鈴鬼」

 

 僕が不意に後ろから押されて倒された。

 すかさず振り返る僕。すると、知らない男が薄ら笑いを浮かべている。

 誰だこの男。へらへらとバカにしたような態度の男に、僕が立ち上がりながら反感を覚える。

 

「ごめんごめん。君の背が小さくて気付かなかったよ」

 

 男はごめんと言いつつも、とても謝っているようには見えなかった。

 倒された上にコンプレックスまでなじられて。僕が怒りを覚えるが、男の態度が許せなかったのか師泰が僕より先に突っかかる。

 

「おい、ぶつかっておいてなんだよお前。コシローに謝れよ」

「は? なんで君がキレてんの? ボクは謝ったけど」

「謝ってるように見えねえよ」

「え、このボクとヤるの君? 敵うと思ってるの? 一年のくせにさ」

 

 にらみ合う師泰と知らない男。僕が、

 

「師泰、いいよもう」

 

 腹立たしい思いを(こら)えていさかいを止める。

 

「くふふっ。雑魚(ざこ)が粋がってさ」

 

 すると男が、いやらしく口をゆがめてこの場を後にした。

 軽い足取りで去る男。口笛でも吹かしそうなステップに、僕が腹から込み上げる憤りを堪える。

 

「なんだよあいつは……」

「師泰、おさえて」

 

 怒りが収まらぬ師泰を僕が抑える一方、丞が今の男について話し始める。

 

「あいつ、二年なんじゃねえかな?」

「おうススム、知ってるのか?」

「野球部の先輩から聞いた話だけどな。あいつも転入生らしくてさ、最近ヤベー(やつ)が転校してきたってハナシ聞いたんだよ」

「やべー、ってどんな意味だよ?」

「もちろん悪い意味さ。授業中急に机を(たた)きだして〝奴隷になるための教育なんてやってられるか〟つってキレ散らかしたり、女の先生がちょっとミスしたら〝教育費払ってんですけどー〟ってグチグチ問い詰めて授業を妨害するんだってよ。それで男の先生が注意したらさ、急に被害者ヅラしだして〝教育委員会に訴えるぞ〟とか騒ぎだすんだと」

「なんだそりゃ」

「動画配信のユアチューブで少年革命家とか言ってるヤツいるじゃん? それの影響を受けてんのか先生に〝学校に行く権利はあるけど義務はない〟とかほざいたみたいだぞ? だからあまり学校には来てないらしいけど、来たら来たで超迷惑な、絶対に関わりたくない奴って聞いてるぜ」

「マジかよ」

「そんな奴がなんでウチの学校に来たんだかなぁ」

 

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