YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー 作:豚煮真珠
「とっ」
空を
ここはどこだ。僕が辺りを見回し、一面に広がる枯れたススキを目にして思い出す。ここは
随分と山の中に入ったものだ、帰れるのだろうか。そんな心配をする僕が転校生に振り向くと、転校生は空を見上げていた。彼女が現れるのを待っているのか。
「坎原さん」
僕が呼びかけるが転校生は無視した。
だが、諦めるわけにはいかない。前に転校生は彼女に変身を迫って拒まれたが、その強硬手段として僕をさらうなんてやり過ぎだ。同じ光の戦士なのに彼女を目の敵にする真意を問いたださなければ、僕がさらわれた立場としても納得できない。
「どうして庚渡さんと戦うことに、そんなこだわるんだ?」
「…………」
「こんな真似までして。彼女戦いたくないって言ってるじゃないか。コスモス同士、仲良くできないのか?」
強い口調で僕が問うと、その憤りが通じたのか転校生が振り向いた。
振り向いた代わりに
転校生が僕に体を向けて答える。
「弱いコスモスは、要らないからよ」
「……でも、彼女は一緒に戦いたいって」
「弱いコスモスなんて要らない。足引っ張るだけだし」
僕の言葉を遮った転校生が、そのサイドテールを払って僕に尋ねる。
「君さ、逆に
「い、いや、友達だよ」
「でも好きなんでしょ? でなきゃあの日、後を
「う、うん……」
「でさ、これが一番訊きたいんだけど、君さ、好きな子に戦って欲しいの?」
念を押すように告げた転校生の言葉に、僕の頭がガツンと殴られた。
戦いなんてして欲しくない。だって、あまりにも危険だから。それは彼女と友達になってからずっと思っていた。
思っていたけれど、彼女は既に宇宙海賊と戦う光の戦士で、妖精や先輩二人から期待されていた。閉口した僕に転校生がもう一度問う。
「なに黙ってるの。君は好きな子に戦ってほしいの?」
「戦って、欲しくない……」
「男として好きな子に戦わせて恥ずかしくないの?」
「……そんなこと、分かってるよ。でも、どうしろって言うんだよ。誰かが戦わなければいけないんだろ、世界が宇宙海賊とやらに侵略されちゃうんだろ。そんな戦いを僕に、どう止めろって言うんだよ」
「……はんっ。なに開き直ってるの、なっさけな」
問い詰められて逆ギレしてしまった僕を、転校生があきれた口調で突き放した。
悔しいけど何も言い返せない、転校生の言うとおりだ。僕は世界の
しかし、どうすればいい。僕はコスモスの戦いを知る、この世界で極めて
何度願ったか分からない。僕にも力があれば――、と。情けない事実を突き付けられて涙があふれそうになる。けれど、うつむく僕に転校生が、
「だからね、あたしがあの子を負かせて、コスモスから降りさせるの」
慰めるように告げたため、僕が思わず顔を上げた。
「えーと、鈴鬼くん、だよね?」
「う、うん」
「言い過ぎたよ、ホントごめん。世界の危機とか言われちゃ、誰だって止められるわけないよね」
「坎原さん」
転校生の優しさが
「鈴鬼くん!」
「庚渡さん」
黄色を主としたドレス姿の、僕が心を奪われた明星の
枯れススキが広かる大地に下り立った彼女。この戦士としての姿に、
「それがあんたの変身した姿、トゥインクルスターね。……こんなところまで似るなんて」
転校生が目を鋭くする。
「リングレット、鈴鬼くんを返して!」
「いつでも返すよ、あたしに勝てたら!」
転校生が飛び込み、突き出した拳を、彼女が斜めに交差した両腕を上げて防いだ。
始まってしまった戦士同士の戦い。すかさず転校生が体を翻し、後ろ回し蹴りを流れるように繰り出す。この蹴りも防ぐ彼女だが、即座に転校生が左足を
蹴りを食らった彼女が枯れススキの上を仰向けに滑り、そんな痛がる彼女に僕の胸が締め付けられる。
「こ、このおっ」
立ち上がった彼女が反撃とばかりに飛び込むが、
「食らうもんか! 〝リフレクティブサークル〟!」
「きゃあっ!」
悲鳴を上げて倒れた彼女。転校生が飛び込む彼女に対して手のひらで丸を描くと、この丸が彼女の突き出した拳を跳ね返したのだ。
なぜ彼女の攻撃が跳ね返されたのか。僕が目を凝らす。すると、転校生の前に淡く光る鏡のような円が存在している。
尻もちをつく彼女に転校生が言い渡す。
「あたしの
「やだ! 私はゼッタイ勝つ! 勝って鈴鬼くんを取り返す!」
「このっ、弱いくせに!」
諦めない彼女に転校生が拳を振り上げた。
立って拳を防いだ彼女。すかさず殴り返すが空を切り、かわした転校生が回し蹴りを
蹴りを
彼女が負ければ、もう彼女は戦わなくて済む。今の痛め付けられている彼女は見ていられないが、世界を守るコスモスの使命からは解放される。
「うああっ!」
「庚渡さん!」
耳を貫く彼女の悲鳴に僕が思わず叫んだ。転校生の振り下ろした
「ふん、話にならないね。これであたしと一緒に戦おうなんてよく言えたよね」
横に倒れた彼女に向かって言い放つ。だが、
「まだ、まだまだ……」
彼女はくじけない。体をどうにか起こし、脚を震えさせながらも立ち上がる。
立った彼女に転校生が構え、そんな転校生に彼女が両手を突き出す。その小さな手に光が集まり、光が徐々に輝きを増している。
「ああ、あんたビームを撃つんだっけ? いいよ、撃ってきなよ」
「はあああぁ……」
光に動じない転校生。きっと妖精から聞いているのだろう。
僕は、彼女が負ければ戦いから解放されると思っていた。でも戦う彼女を見てその考えを改める。なぜなら彼女は、僕を助けるために傷付き、僕を助けるために戦っている。この
戦いから降りて欲しい。危険だから。でも今は、
「庚渡さん! 負けないで!」
彼女を応援した。
「鈴鬼くん! いっけえ、〝トゥインクルブラスト〟!」
「リフレクティブサークル!」
彼女が放った光に対して転校生が右手で丸を描き、淡く光る鏡のような円をまた形成した。
光が転校生の盾と言うべき円と衝突する。そしてせめぎ合うが、いま僕は彼女の戦士としての素質を改めて知った。
転校生は強い。格闘戦では明らかに分があり、彼女は手も足も出ずに耐える一方だった。だが、そんなリードなどひっくり返してしまう
もっとも、転校生の油断もあるだろうが。転校生としては彼女の光を防いでしまえば、もう負けを認めると踏んでいたのだろう。転校生の誤算は彼女が弱いと思い込んでいたこと。先輩二人が仲間と認め、妖精が選ぶ強さが彼女には秘められていた。
「うそっ、あたしの
転校生が