YMO ー黄色い変身ヒロインの秘密を僕だけが知ってしまってー   作:豚煮真珠

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形而上のスペキュレイティブフィクション

 多量の水がスコールのように(しの)を突く音を立てて落ち、時を置かずしてウルカと名乗る宇宙海賊の女が、獅子座(レオ)の変身を解いたサンシャインと山羊座(カプリコーン)の変身を解いたムーンライトの前に背から墜落した。

 墜落の衝撃で女の仮面がずれ落ちる。その顔はサンシャインがテレビで観たSDGsを推し進める女性と同一である。

 

「サンシャイン! ムーンライト!」

 

 トゥインクルが坎原環を背負い、彼・鈴鬼小四郎を抱えて着地した。

 環が降り立ち、続いて彼が降りる。トゥインクルの援護は当たりこそしなかったが、窮地を救う絶妙な一手であった。

 

「とぅ、といん、くる……」

「あり、ありが……」

「あ、しゃべらなくても」

 

 助けられたサンシャインとムーンライトの二人が礼を述べようとするが、先の戦いで受けた(しび)れと痛みのために呂律が回らず、そんな伏せる二人をトゥインクルが気遣って止める。

 そして、女にとどめを刺した光の戦士が宙から地に下り立ち、これにコスモス四人と彼が振り向く。

 ゆっくりと下り立った光の戦士は、裾と袖が幅広の(あお)いドレスを身にまとい、その上を水のように澄んだ衣が包んでいる。透き通った衣を表すならば、天女がまとう羽衣のよう。

 

「あなたは」

 

 年上の二人が口を利けないため、代わってトゥインクルが尋ねた。

 振り向く(あお)の戦士。ボブカットを揺らして戦士としての名称を名乗る。

 

「私は〝ブルーマリントリアイナ〟。海王星モデルのコスモスの戦士よ」

 

 目尻が切れ込んだ目は長いまつ毛を備え、顔の輪郭は引き締まっており、薄めの唇は艶やかで麗しい。蒼の戦士の容姿は、そのパーツどれ一つとっても申し分ない程に整っていた。

 更に蒼の戦士は背が高く、長い脚まで備えている。まるでモデルのようであり、その大人な女性ぶりにトゥインクルが気後れする。大人びた方のサンシャインとムーンライトよりもずっと大人な外見である。

 

「あの、おいくつなんですか?」

 

 気になったトゥインクルが迷いながらも()くと、

 

「十七。高校二年よ」

「え、高校生?」

 

 答えに四人と彼が驚く。中学生と高校生、(とし)にすればせいぜい三つの差だが、中学生からして見れば高校生は大人にして雲上の人である。

 トゥインクルにとっては四つ上。身近な人を思い浮かべる。

 

「お姉ちゃんと同じって。あ、私トゥインクルスターって言います。十二です、三月生まれの中学一年なんです」

「ふふっ」

 

 そして高校生からすれば中学生など昔通った(みち)であり、蒼の戦士ことブルーマリンが、青臭さを思い起こさせるトゥインクルに微笑(ほほえ)みを浮かべた。

 一方で環は気になっていた。仰向けに気を失っている女のことを。

 

「トゥインクル。あの女のアリマニド、早く壊さないと」

 

 女が目を覚ます前に、と環が促すが、この言にトゥインクルがビクッと身を(こわ)()らせた。

 トゥインクルも分かっていた、玉を壊さなければならないことを。だが、宇宙海賊がその身に隠す黒い玉、見つけられる自信がなくて見て見ぬふりをしており、ブルーマリンが「やってくれないかな」なんて他力本願な甘い考えを抱いていた。

 しかし玉を破壊しなければ、サンシャインとムーンライトの戦いが無駄になってしまう。それにブルーマリンに頼むのは気が引ける。よってトゥインクルが倒れている女に振り向くが、起きた事態を想定して尻込みする。

 自信がないトゥインクル。今いちど環に彼、サンシャインとムーンライトを見回すが、やはりできる者が自分しかいないため、意を決して女にしゃがみ込む。

 

「ええっと、ううっ、どこだろう……」

「がんばれ、トゥインクル」

「ああん、見つからないよぉ。たまちゃん代わってー」

「それが出来ないから頼んでるんでしょーが」

 

 泣き言を訴えるトゥインクルに環が頭に手をあてた。

 環も一緒に探したかった、親友が泣いているから。だが、黒い玉は光の戦士だからこそ触れる。壊した経験がある環は、黒い玉から常人が触れない異様な魔力を感じ取っていた。

 コスモスは一度変身が解けてしまうとしばらくは変身できない。だから環が、()れ物を触るようにして女の体をまさぐるトゥインクルをやきもきしながらも励ます。しかし今のトゥインクルに励ましは重圧にしかならず、皆の期待に応えられない不甲斐(ふがい)なさに涙を浮かべながら探していると、

 

「……あっ!」

「ふふっ、トロくて助かったわ」

 

 目を覚ました女が、体を起こしながらトゥインクルの探す右手をつかんだ。

 立ち上がった女がトゥインクルを盾に言い渡す。

 

「あなたたち、この子の命が惜しければ大人しくすることね」

 

 首に腕を回されているトゥインクルに、彼と環が、サンシャインとムーンライトが動揺するが、そんな四人をブルーマリンが手で制した。

 ブルーマリンが無言で女に歩み寄る。女は状況を分かっていなかった。蠍座(スコーピオ)を失ってもう戦えない自身の体と、ブルーマリンという健在な光の戦士がここにいることを。その健在な戦士ブルーマリンが交渉を開始する。

 

「無駄なあがきはやめなさい。もう戦える状態じゃないでしょう?」

「…………」

「その子に何かして見なさいな。その時点であなたは終わりよ。言っておくけど私は強いから」

「……クッ」

「その子を放して。放してくれるなら、見逃してあげてもいい」

 

 意外なブルーマリンの提案に女が驚いた。

 だが、にわかには信じがたい。女が疑わしく見つめるが、この視線をブルーマリンが見つめ返す。

 程なくしてブルーマリンが静かに首を縦に振り、これに女が尋ねる。

 

「本当に、私を見逃すのね?」

「ええ。安心して」

「……分かったわ。放そうじゃない」

 

 先の水の噴出に反応できる位置まで離れた女が、半信半疑でトゥインクルを解放した。

 後ずさる女。用心に用心を重ねてブルーマリンを凝視するが、ブルーマリンは動かず、これに女が背を向けて跳躍する。

 女が再起を図って高く飛ぶ。そんな女の後ろ姿を見届けたブルーマリンが、

 

「大丈夫?」

 

 解放されたトゥインクルに尋ねる。

 

「はい。あ、あの、すみません」

「いいよ、謝らなくて」

「でも、大丈夫だったんでしょうか」

 

 女を逃がしてしまったことに不安を覚えるトゥインクルに、

 

「……平気よ」

 

 ブルーマリンが目を伏せてから答えた。

 逃げた女に一抹の不安を覚える四人と彼だが、ひとまず撃退には成功した。この結果に皆が息を()くと、

 

「久しぶりだベエ、ブルーマリン」

 

 妖精が現れた。

 なに食わぬ顔してふよふよと浮かぶ妖精に、

 

「出たわね」

 

 ブルーマリンが目を鋭くして言い放つ。

 明らかな敵愾心(てきがいしん)。抜き差しならぬ視線のブルーマリンに四人と彼が驚くが、更に驚くべき衝撃の事実をブルーマリンが暴露する。

謎に包まれた妖精の正体が、今ブルーマリンによって明かされる。

 

「みんな、(だま)されないで。こいつの言ってること全部ウソ、こいつは私たちを利用しているの」

 

 ブルーマリンが妖精を指して非難した。

 続けるブルーマリン。憎しみと軽蔑が入り混じった、不信感あふれる()つきで。

 地球の侵略を目論(もくろ)む宇宙海賊、そしてそれを阻むコスモス。妖精が説く二つの概念が根底から覆る。

 

「宇宙海賊なんてみんなこいつのデタラメ、ブラックホール団なんて存在しないの。みんな知ってるでしょう? ブラックホール団なんて言ってるのは私達コスモスだけなのを。こいつの正体は、タイムマシンが完成した未来から転送されてきた、日本を無くすために生み出された自律型AIよ」

 

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