クラス最弱地位の俺が異世界転生して、クラス最強になる俺物語 作:渡月 夢幻
六月一日、俺は転送させられた。そう、ガラゴンダダンジョン最下層に。
〜第二章 覚醒と魔王城〜
意識が覚醒した。周りを見渡すと、そこは少しジメジメとした湿地帯に近い様な場所であった。特に特徴的なのは人魚らしき石像が大きな門の両脇に配置されていて、門にも人魚が描かれている事だった。不可思議なこの門の向こうに俺は違和感と恐怖感を同時に悟ったのだ。ドアを開けようかと、心の中でそう思ったが身体は恐怖に襲われそれどころではなかった。異様な危機感を放っているこの門に俺は頭より身体が先に動いた。そう、逃走だ。だがしかし、逃走したとしてもどこか逃走経路があるという算段はなく、焦りと不安しか無かった。不安の感じるまま俺はその門から急いで立ち去るかのように走った。門から離れるように走って、走って、走って走って・・・。
「うわぁぁぁぁぁ!」
俺は悲鳴をあげた。端的に言うと右腕の感覚が無くなり、確実に腕の重量が感じられなかったからだ。発狂と同時に辺りを見回した。だが、ここはダンジョン。そして、最も魔族領に近いガラゴンダダンジョン。漆黒と化したこの場所に明かりなど存在しない。唯一感じるのは自身の身体のみ。軽くなった、重くなった、足が泥濘に取られた。という感覚のみ。このような場所で何の道具もなしで生き残るのは、針山に糸を通すような難しさ、否それ以上だ。やがて、出血が酷くなっているこの右腕何とかしなければと思い、必死に考えた。《このままだと死ぬ》そう分かっていたからだ。
「なにか、なにか方法は・・・。」
これまで以上に思考の加速を肌で感じるほどに脳を集中させた。生きるために。数秒が経ち、俺はある方法を思いついた。
「そうだっ!インストールしよう。回復魔法の書を。」
俺は咄嗟にそれを思いつき、急いで自分のストレージを確認した。
「あっ、あった!」
俺は取り出して、怪我を庇いながら回復魔法の書を読み込んだ。回復魔法の所はページとしては三十ページぐらいの書物であった。しかし、その三十ページにはとても複雑な魔法陣が書き込まれており、自分で使用するのは困難だった。しかも、回復魔法は一般人及び、専門外職業の人々の場合、完全回復させるのは難しいと書いてある。なお、例外として勇者と回復術師は完全回復は可能である。また、魔術師は完全回復に近い回復魔法は行える。俺はこの文章を見て、
「終わった。俺死ぬのか・・・。異世界召喚されても何も変わらない俺にはもう、意味は無いのか・・・。」
と、一人で呟いた。しかし、俺はこの時、由姫が言っていた言葉を思い出した。そう、まだ俺にはやることがある。俺はここを抜け出して、アイツらが俺をバカにしたことを後悔させるという復讐する。殺しまでしてしまうと由姫に合わせる顔がない、だから殺しはしない。そして、由姫に告白をする。そう思い返した俺は、自分の心に火がついた。俺はまだ何か策はあると思い、右腕を押さえながら必死に考えた。すると・・・
「マスター。私がお力添えを致しましょうか?」
と、この声が脳裏をよぎった。
「お力添え?どういうことだ?説明してくれ!」
俺には訳が分からなく、質問を投げかけた。いきなり、得体の知れない女性の声がしてお力添えをするというのだ。俺は不信感を覚え、警戒していた。
「失礼しました。マスター。私は、マスターのスキル、大図書館に進化したことにより生み出されました。私の事は、メーティス・クトゥルフとでもお呼びください。さて、本題になりますが率直に申し上げるとするとマスターは回復魔法を使用できます。」
「えっ?・・・。回復魔法使えるの?」
「はい、もちろんでございます。マスターのスキルである大図書館は一度最後まで読み終えた書物の魔法はこの大図書館に保存され、いつでも取り出し可能となります。」
俺はその言葉を聞いて唖然とし、思考が一時停止した。そして、俺はふとこんな質問をした。
「・・・。えっとつまり、一度読んだ魔法の書物とかはいつでも使えるってことで良いのかな?えっとメーティスさん。」
「左様でございます、マスター。なので今からお使いになりますか?」
「えぇ!?ももも、もちろんハイだよ!こんなところで死にたくないし。」
「承知しました、マスター。では右腕の方を左手で覆ってください。」
言われるがまま、俺は右腕を左手で覆うようにした。すると、
「では、回復魔法を開始します。マスターの名により、大図書館管理者であるメーティス・クトゥルフが執行致します。大図書館第三列、H段、回復魔法の書。第一節・ヒール。」
メーティスがそう言うと、俺の左手から暖かい緑色の光が放出した。たちまち右腕は出血が止まり、肉片の再生が始まった。ものの数秒で右腕が完全復活した。
「マスター、申し上げたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
右腕が戻った直後、メーティスはそう言った。
「なんだ?言ってくれ。」
俺はすぐさま返答すると、
「では、申し上げます。ただいまマスターが回復魔法を使用した事により、元々所持していた解析・鑑定により、回復魔法の全てを手に入れることに成功致しました。ただし、現段階のマスターのレベルにより使用できないものもありますが、それを含めて表示致します。」
彼女はそう言って、俺の目の前に回復魔法一覧を表示した。それはよくアニメやSFものの表示の仕方であった。緑色の光が放たれつつ、その中に白い文字で回復魔法の一覧が記載されているものである。そこには、
〜回復魔法〜
・第一節 回復《ヒール》(失われた部分または出血の酷い箇所等に使用し、元の状態に戻すことの出来る魔法。また、アンデットや魔族以外に使用可能。)
・第二節 常時回復(これは常時発動系の魔法で、剣や魔法で傷ついた場合、または出血した場合に自動で回復する魔法。)
・第三節 超速再生(これは常時回復で対応できなかった腕や足といった四肢の損失等を一瞬で回復する魔法。また、アンデットや魔族以外に使用可能。)
・第四節 範囲回復《エリアヒール》(これは第一節 回復《ヒール》を応用した魔法。範囲指定をし、その範囲内のもの全てを回復する魔法。)
・第五節 状態異常回復(これは毒や麻痺、弱体化等といった状態異常系の魔法を回復する魔法。)
・第六節 死者蘇生(これは死んだ者を生き返らせる魔法。)
・第七節 自己蘇生(これは自身を生き返らせる魔法。ただし死ぬ直前の一分前から死後一分後の間に使用しなければ、自己蘇生はできない。)
・第八節 他生回復《アナザーヒール》(これは第一節 回復《ヒール》と第五節 範囲回復《エリアヒール》の対象外であったアンデットや魔族等の回復ができる魔法。)
・第九節 範囲他生回復《エリアアナザーヒール》(これは第八節 他生回復《アナザーヒール》の範囲回復魔法。)
・第十節 ???(こ???の??・・・魔法。)
と表示されていた。続けてメーティスはこう言った。
「以上が回復魔法の一覧でございます。現在マスターが使用出来る回復魔法は第一節の回復《ヒール》、第二節の常時回復、そして第三節の超速再生でございます。なお、その他の魔法はレベルが上がる事に解放されますので、それについては随時お知らせ致します。ここまで何かご不明な点はありますでしょうか?マスター。」
「うーん・・・。そうだな、一つ質問をするとしたら、やはり第十節についてだな。なぁ、メーティス。なんで第十節は文字化けの様な感じなんだ?」
俺はそう質問した。それもそのはず、第十節には誰にも分からないような暗号?否、それよりも複雑な表示の仕方をしていたからだ。するとメーティスは、
「申し訳ございません、マスター。今は私からこのことについては答えることが出来ません。ただし、マスターのレベルが450になった時に必ずお伝えすると約束致します。」
と言って話を終えた。現在の俺のレベルは26だ。ここからレベル450まであげるのはとてつもない険しい道のりだ。こんなことを考えていると俺は二つほど疑問が浮かんだ。
「なぁ、メーティス。二つほど質問したいんだが良いか?」
「もちろんです。マスター。」
「俺が聞きたいことは、なんで、さっき右腕を失ったのにも関わらず、敵は襲ってこないのか?そして、もう一つは、何故俺が初級スキル以外の各職業のスキルが使用できるのかって話だ。」
俺はメーティスそう問いかけた。すると、メーティスは考える素振りもなく、こう語った。
「分かりました、マスター。では、後者の方の質問からお答え致します。初級スキル全般及び、中級スキルの一部は専門職でなくても使用できるのは周知の事実です。確かに回復魔法第一節 回復《ヒール》はどんな方でも使用可能です。しかし、本職の力の45%の力しか一般人そして、専門外の職業の方々発揮出来ません。だから、魔法書には完全回復は難しいと記載されています。ですが、マスターの場合はそのような事は全くもって関係ありません。何故ならば、マスターのスキル大図書館は魔法書に記載されている100%の力を発揮することが出来るからです。具体的にに説明致しますと、術者の能力や職業により見えない魔力のフィルターがかけられていると考えてください。もちろん、本職の方々はそのフィルターが存在しません。ですから、本職以外の方が使用すると魔力のフィルターにより本来の力の45%でしか発動することが出来ないのです。そしてさらにマスターの場合、私メーティスが管理し、マスターの術使用のお手伝いをしているので、120%の力が発揮されています。つまり、本職の人々より強い力で魔力の放出や回復等を行えるのです。」
と、細々と分かりやすいように説明してくれた。俺はメーティスの話に《ほへぇー》と頷く他なかったのだ。そして、彼女はさらに続けて、
「では、前者の質問に答えさせていただきます。マスター、二分後に戦闘態勢をとってください。」
「え?・・・。どゆこと?」
「理由は、私はマスターのスキル大図書館の管理者。正式には、大図書館情報管理機構《ライブアドミニストレータ》と呼ばれます。ただいま私はその権限を使用してマスター防衛システムを私の上位に存在する全魔法世界管理権限最高創始神《ゴットオブオールマジックアドミニストレータ》に申請しました。申請許可がおり、ただいま魔力障壁《マジックバリア》、物理障壁《ディフェンス》、永久魔力供給の三つを展開しております。ただし、このシステムは三十分のみ使用可能で現在二十九分が経過しました。なので、マスター早く戦いの準備をしてください。そして、もう一つ。マスターのストレージに保存されていた、残り二つの魔法書を誠に勝手ながら解析・鑑定を行っております。解析・鑑定が終わり次第、随時マスターにお知らせします。」
俺は焦った。あと一分で今張られている二つの障壁が解除され、また、闇夜に放り出されるのだ。しかも、戦う相手の情報もなくこちらが負ける確率はとても高い。俺は負けの兆ししか見えなかった。今度こそ本当に終わる・・・、そう思っていた。しかし、俺のスキルを使えば勝てるのではないかとふと思いつき、大図書館情報管理機構《ライブアドミニストレータ》であるメーティスに質問した。
「なぁ、メーティス。お前の仕事結構増えるけどこの窮地を打開するためにはこの方法しかないんだが手伝ってくれるか?」
するとメーティスは戸惑うことも無く、
「もちろんです、マスター。私にとって不可能と言う言葉は存在致しませんので。しっかりとマスターの戦いをサポートしたいと思います。」
「ありがとう、メーティス。じゃあ、説明するぜ。まず、この二つの障壁が解けたと同時に敵の解析・鑑定とこの辺り一体に初級スキル発光玉《ライト》を頼む。そして、俺はバトルの経験が浅いから、これのサポートも頼む。俺自身でもできるところまでしっかり戦ってみようと思う。もしダメなところがあればすぐに指摘を頼む。あとは三十分間の魔力供給の付与を頼みたい。俺はまだ十分な魔力を持っていないと思う。だから、発光玉《ライト》を使用する時にその全魔法世界管理権限最高創始神《ゴットオブオールマジックアドミニストレータ》に再申請してもらえるか?じゃないと俺の魔力が持たないかもしれない。」
俺は口早にそう伝達した。全ての作戦を話終えると同時に二つの障壁は徐々に崩れ始めた。崩れ始めたその瞬間、俺は作戦通りに動いた。同時にメーティスは、
「マスターの権限により、初級スキル発光玉《ライト》を使用します。指定範囲は半径十メートル、等間隔の発光玉《ライト》を生成します。生成個数、十六個。達成完了の予想時刻、六秒。消費魔力140。マスターの魔力残量60。これより、大図書館情報管理機構《ライブアドミニストレータ》メーティスは、全魔法世界管理権限最高創始神《ゴットオブオールマジックアドミニストレータ》に再度、三十分間の魔力供給の使用許可を申請します。」
と言って、俺が言ったことの全てをものの十秒で済ませた。そこから十秒も経つと発光玉《ライト》は指定通りに設置され、魔力循環の許可が降りたのだ。ただし、今回も三十分という制約があった。そして、いよいよ俺の腕を喰らった相手の顔を見ることができた。俺は両手でしっかりと剣を握っていたが、武者震いが止まらなかった。解析・鑑定の結果、俺を襲ったのはレベル320のオロチであった。やつは八岐ではなく、一つの胴体から三つの首が伸びた怪物だった。俺は唖然とした。歯が立たないのが目に見えていたからだ。だがしかし、俺はここを抜けて、アイツらに後悔させてやる。いや、やはり殺すことも視野に入れておくべきかなと思っていた。そして俺は、由姫に告白をしなければならない。何としてもここを抜け出す。そう固く決心した俺だが、今の状況の打破はとても難しいことは察していた。俺はメーティスの解析・鑑定が終わるのを待ちつつ、俺が持ってきていた魔法書の使用可能か否かを探っていた。逃げ回ろうとしたその時、俺は鮮やかな濃い赤色が右腕から飛び散るのを確認した。そう、血だ。あいつはまた、同じ所を喰いに来たのだ。これは本能と言うより探りに近いのかもしれない。それもそうだ、俺があの二つの障壁にこもっている間に右腕は元通りになっているからだ。相手のオロチは怯むことなく俺が攻撃を仕掛けることに警戒しつつ、右腕の様子を観察していた。たちまち俺の腕は、回復魔法第二節 常時回復と、第三節 超速再生の同時発動により元に戻った。そして、俺の魔力量は減っても供給されるというチートスキルを使って戦いに挑んでいる。ただし、効果は三十分しか持たない。この光景を見て、オロチは少し怯んだがレベルの差によりオロチはまだ少し奢《おご》り昂《たかぶ》っていた。
「どうにかして打開しないと。」
そう思っていたが、打開するための材料やら魔力やら自分の所有スキルが足りなくて手も足も出ない状況にあった。俺が悩みに悩んでいると、突然メーティスが脳裏に語り掛けてきた。
「マスター。相手の詳しい解析・鑑定が終了致しました。相手の得意属性は水属性、土属性そして無属性の魔法でございます。ですので不利属性は、木属性、風属性、無属性でございます。そして、やつの弱点は一番右側の首の中央に刻まれているルサールカの紋章です。さらに、マスターのストレージに保存されていた魔法書の解析・鑑定も終了致しました。内容の説明に移ります。
〜魔力書〜
・第一節 魔力制御(体内にある魔素及び、魔力を自由自在に操作できる魔法。》
・第二節 魔力操作(相手又は、自身が体外に放った魔法や魔力の塊を強めたり、弱めたりすることができる魔法。ただし、相手の魔力量が極端に見合っていないものは制御することは不可能に近い。)
・第三節 魔力鑑定(相手の隠している魔力や解析・鑑定で発見できなかった魔力を知ることができる魔法。)
・第四節 魔力限界突破(これは体内の魔素及び、魔力を空にして魔力吸収の容量を大きくする魔法。)
・第五節 世???操作《ワー??マジ??オペ???ョ?》(これは???を???する??の魔法。)
以上が解析・鑑定の結果です。ちなみにマスターが使用できるのは第一節の魔力制御と第二節の魔力操作です。」
俺はその説明をオロチから逃げ回りながら聞いていた。しかし、初級スキルのファイアーボールでは全くオロチに効果がない。しかも、「おや、蚊に刺されたのか?」ぐらいの平然な態度をしているのだ。そこまで余裕を見せられると逆に心の奥底からムカついてきた。攻撃しても意味がなく、ただの無駄なあがきにしか見えない自分が悔しくて悔しくてたまらなかった。俺はそんな状況かの中、
「くそっ!どうすればオロチを倒せるんだ。俺は全力を尽くしても勝てないのか・・・。元々敵う相手では無いのはわかっていたけれど、どうにかしてこのガラゴンダダンジョンを抜け出したいのに・・・。くそっ、くそっ、くそっ、くそくそくそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
俺は嘆いた。何も解決しないことはわかっているのに。ただ、俺の死期が迫っていることを感じた。そろそろ、オロチも俺との戯れに飽きて喰い殺す頃だろうと思った。何か策をと、俺は必死に考えた。死ぬ事は分かっているのにも関わらず、最後の足掻きとして何か!すると、俺の頭には一つの方法が浮かんだ。そして、
「メーティス!ちょっといいか!」
「なんでしょうか?マスター。」
「一つあいつを倒すための方法を思いついた。それは大気中の魔素及び、魔力をさっき手に入れた魔力制御を使って体内で魔力の圧縮を行い、魔力操作で相手に解き放ち、大きな爆発を起こす!これなら勝てると思うんだ!」
俺はメーティスに必死に訴えかけた。
「確かにその方法ならオロチを倒すことができます。申請した魔力供給の効果終了までにも間に合い、ギリギリ自動回復と超速再生により生還の可能性も十分にあります。しかし、この作戦の大きな問題点はマスターの魔力の吸収できる容量が圧倒的に足りないことです。もしこの爆発を起こすのであれば、最低15000もの魔力量を吸収できる器が必要になります。しかし、現時点のマスターの魔力を吸収できる最大容量は1500。十分の一しかございません。その部分はどうするつも・・・。」
メーティスができないと語り、理由を述べているその時俺はメーティスの話を割って、
「大丈夫だ!安心してくれ、メーティス。その部分を補うこともしっかり考えてある。それは、俺のストレージだ。俺のストレージは異世界召喚された時から少しづつではあるが拡張してきた。特に意味は無かったが、ストレージを拡張しておけば、大きな獣や金銀財宝の持ち帰りも楽かなって思って。まぁ、本当の理由は勇者パーティのお荷物係なんだけどね。このダンジョンに来る前に居たあいつらが毎回俺に荷物をどっさりと預けてきてたんだ。流石に俺は全てを持ちきれなかったから、あいつらの荷物を全部しまえるようなストレージ作りをしておけば、バカにされるネタが少しでも減るかなって思って今日までしてきたことが役に立つなんてね。俺の今のストレージの容量は魔力換算すると、約16000。つまり、最低基準は突破しているからこれなら勝てるかなって思ったんだ。どうだ?メーティス。不安材料になる所はあるか?」
俺は理由を説明し、彼女の意見を求めた。すると、
「流石はマスターでございます。このような考えをお持ちでいらしたとは。私はまだまだでございますね。私も成長できるように頑張りたいと思います。では、マスターのストレージを使って大気中の魔素及び、魔力の吸収を開始します。時間は五分ほどかかりますがよろしいでしょうか?マスター。」
「あぁ!もちろんだメーティス!大量に魔力を吸収してくれ!」
俺はそう意気込んで再びオロチの攻撃を避け続けた。オロチは何かを察したかのように、攻撃手段を多くすると同時に、攻撃の威力をあげてきた。オロチの攻撃の手数の多さに驚きながらも時間を稼ぐために俺は逃げ続けた。予定時間の五分が経つと、
「マスター。魔力の収束及び、圧縮が完了致しました。魔力補填総数・17500。いつでも解放可能でございます!」
俺はその報告を聞いて、確信した。これなら、勝てる。そして、魔力供給は残り二分で終了する。
「勝負はこの一回きり。絶対に決める!」
そう思った俺はオロチの攻撃を掻い潜り、懐まで近づくいて、オロチの右首の中央に刻まれているルサールカの紋章目掛けて、
「おりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!これで終わりだぁぁぁぁあ!」
と言い放ち、魔力制御していたストレージと自身の保有魔力を自身の体外に放出させ、魔力制御から魔力操作のスキルに移動して放出した魔力の球を全て相手にぶつけた。オロチの右首にある紋章と接触した瞬間、俺が作り出した魔力の球はどんどん膨張し、やがて爆発を始めた。その威力は現代で言う《水爆》の威力と同等だった。その時、オロチは「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁあ!」と叫び、自分が相手を見下しすぎたことを後悔しているような感じであった。辺りに轟音が飛び交い、発光が繰り返されて放射線が辺りを舞って数十秒後、発光と轟音とが消え失せた。俺は魔力を全て使い果たし、魔力供給の効果が切れた。そして、魔力供給によって完全回復した魔力は第二節 常時回復、第三節 超速再生に使われ、魔力は残り40しか無かった。辺りを取り巻いていた煙は徐々に消え去り、オロチが姿を現した。オロチは右首が地面に落ちていて、中央の首は胴体とかろうじて繋がっているが、もう取れかけている。そして左首も右首同様、地面に落ちていた。
「やっ、やった・・・。」
俺は安堵して、地面に座った。するとオロチは光に包まれ分散し、原型を留めることなく消えていった。残ったのはオロチの核であっただろう大きな魔石がポツンと残されていた。大きさは約五十センチぐらいであり、色は綺麗なエメラルドグリーンであった。
「マスター、突然申し訳ございません。単刀直入に申し上げます。早く逃げましょう。嫌な気配がします。」
メーティスは俺にそう言った。メーティスはすごく焦っていて、いつもと雰囲気が違った。俺はそれを察して、
「分かった、道案内を頼めるか?」
と問い、立ち上がろうとすると
「あれれ?私の可愛い可愛いオロちゃんの気配が消えちゃったけど・・・何事?」
オロチの魔石が転がってる奥の方から声が聞こえた。それも女性の声だ。その声はとてもミステリアスで聖女が聖歌を歌う時のような高い声をしていた。徐々にその声の主が近づいてくる。俺は《逃げなきゃ》と思ったが、足が動かなかった。その理由は大きすぎる魔力故、その魔力がオーラとなって具現化されているからである。俺は震えが止まらなかった。それも、オロチの時より数十倍震えていた。どんどん声の主が近づいて来ると同時に、何故か分からないが高さ五十から六十センチぐらいまで水が張っていた。俺は急いで立ち上がって、ゆっくり後退りをした。バレないようにと思っているが実際はバレてしまうのは明確だと思っていたので、少しでも逃げるための距離を稼ごうとした。すると、声の主の姿が見えた。驚いた事に悪魔ではなく、普通の人間であった。髪は茶髪で胸の位置までの長さがあった。スタイルはいわゆる、ナイスボディってやつだ。このダンジョンの最下層のボスは邪悪な魔王軍の幹部の悪魔だと思っていたが、姿は人間であった。だから、魔王軍の幹部では無いのでは?と心の中で思っていた。しかも、敵意が無いように感じた。しかし、魔力量は俺がここに来る前に鍛えてもらっていた宇宙の十新星《コズミック・ノヴァ》の第一の席 ディアブロ・フェルナンデスよりも高かった。俺はその魔力に震えて、その場から動くことが出来ずその人間に見つかってしまった。
「ねぇ、君。私さ魔王軍の幹部なんだけど、質問するね?君が私のオロちゃんを倒したの?答えて?」
そう言って俺に詰め寄ってきた。威圧感が感じられた。流石、魔王軍の幹部だと俺は感心しつつ、震えていた。すると彼女は俺の姿を見て何かを察しこう言った。
「うーん・・・。君が私のオロちゃんを倒したのは確かだと思うんだよね〜。でもさ、一つ聞いていい?言っちゃ悪いけど、なんで君みたいな雑魚がここまで来れたの?だって一個上の階層にはオロちゃんより強ぉぉぉいシーサーペントのシーちゃんを放ってるんだよね!今の君を見ると私のオロちゃんを倒すので精一杯だったと思うから、おかしいと思うんだよね?だから、ここに来た理由教えてくれる?」
俺は、とりあえず話してみるかと思い、今までの経緯をありのままに伝えた。
「えっと、俺がここに来た経緯としてはその・・・。」
「あっ、ちょっと注意点。ちなみに嘘ついたら首飛ぶから気をつけてね?」
彼女は話を割って、そう言うと彼女の目は赤から緑色に変わり、《さっ、話の続きをして?》と言わんばかりに催促してきた。俺は言われるがまま経緯を再び説明した。
「俺がここに来た理由は、仲間の裏切りによる転移です。あいつらは俺のレベルアップを手伝ってくれるといい、レストレージ山脈の魔鉱石採取の依頼と同時に、モンスター狩りをしていました。奥に進み、広い場所に出るとあいつらは、俺のことを信じてくれた由姫って言う女の子を気絶させ、俺の動きを封じ、そして転移陣を作りこのガラゴンダダンジョンの最下層に飛ばしたのです。俺は今のレベルのままだと確実に死ぬことは分かっていたので早く逃げようと出口に向かっていたところ、オロチに襲われてギリギリ勝てたという感じです。」
「なるほどねぇ、君も大変だったんだね・・・。」
彼女は頷きながら同情した。俺は続けて、
「だから、俺はあいつらに復讐してやるんだ!」
俺の心の奥底から思っていることをぶちまけた。
「殺した後、どうするの?」
彼女は不意に問いかけてきた。俺はその問いになんの感情も持たずに、
「えっ?」
と心の底からの本音を呟いた。
「だから、殺した後はどうするの?他の人も殺すの?例えば目撃者とか。それって、ホントに意味ある行為なの?殺して満足、はい終わり。って訳じゃないんだよ?ここからが本番だよ。人は、殺されたらその殺した相手を地の果てまで追い詰めて復讐する。するとまた、その殺された側の人は殺した相手を殺すだろう。つまり、負の連鎖だ。これが数年後、数十年後には民族同士や派閥同士の争い事の火種となる。今はこれで終わりかもしれないけど、後々大きなことになりかねない。だから、相手を殺して復讐する、なんて考え方は捨てた方がいいぞ。そんな考えをしてる奴が人には多い。やがて権力者が争いに介入してきて、奴隷や市民を使ってなんの関係も無い人々を巻き込んでいく。まぁ、この事も踏まえて殺し合いをおっぱじめるのは良いよ。ただし、後世への責任は必ず取れるものならね。だが、人はそんなに長く生きられないから後世への責任は100%取れないだろう。古代遺産物《アーティファクト》の使用者を除いては・・・。だから、責任の取れない戦いはするな。関係ない人を巻き込むな。無益な争いの結果は結局なんだ?富か?名声か?英雄か?そんなんじゃ、英雄もへったくれもない。ただの自己満だ。戦争で犠牲になった人の責任は取れるのか?意味の無い争いに他人を巻き込む勇気はいらない。むしろ、あるやつほど人とは呼べない。言い換えるならば、クソと呼んでやるべきだ。そこをよく踏まえるんだな。」
彼女はそう言い捨てて、俺にもう一度問いた。
「んで、君はホントに復讐したいか?」
「俺は・・・。すみませんでした!後先考えず、ただ今の自分の事だけを考えて。俺はあいつらを殺した所でなんの意味もないことに気づきました。馬鹿な事をする前に止めていただき、ありがとうございます!」
と謝って、俺は彼女に問いだ出された事により冷静な自分に戻れた。
「うん、良い事だ。そういう人が増えてくれるといいんだけどね・・・。」
そう彼女はボソッと呟いた。声が小さかったので俺はその事に気づけなかった。
「あの・・・。ひとつ伺っていいですか?」
俺はふとした疑問があったのだ。そうそれは、
「お名前なんて言うんですか?」
至って真面目であり、シンプルな質問だった。魔王軍の幹部含め魔族は《悪者》で人間は《正義》というのが世の中の常識であるのに俺の事を殺さずに諭してくれたからである。これもひとつの偏見だと俺は心の中で思いながら聞いた。
「あぁ、私の名前?私は魔王軍幹部、水神の人魔 ルサールカよ。私の事は、ルサールカって呼んでもいいし他の幹部たちは、ルサって呼んでるね。あっ、君の名前も教えて!」
と、彼女ルサールカは答えつつ、質問を投げ返してきた。
「俺は翔太、中山翔太って言います。」
俺はそう咄嗟に答えた。すると、ルサールカは納得したのか相槌をしてこう言った。
「ねぇ、提案したいことがあるんだけど翔太君さ、魔王軍入らない?」
彼女は、なんの前触れなく言った。そして、俺の思考は瞬く間に停止した。そう、俺の心の中はこうなっていた。
「えっ?魔王軍の仲間。それはありがたいけどいきなりすぎる。なんで?えっ?えっ?えっ?・・・。」
俺は激しい戸惑いの中、彼女にこう告げた。
「えっと、俺なんかが魔王軍に入っちゃっていいんですか?第一俺は魔族にとって敵である、人間。それも、異世界から召喚された人間なんですよ?」
「それがどうした。魔王様ならきっとそんなの関係ないだろって言うよ。魔王様は再び人々や妖精、竜と仲良くなり共存関係を作りたいって考えてるお方だぞ。」
そう彼女は言った。彼女にとって魔王様は心が寛容で優しい方なのだ言うことがわかった。だが、一つ話が矛盾する点があった。そう、魔王が今頂点に立ち、ほかの王達を牽制していると言う話を人間国の王に聞いた事だ。
「あの、ルサールカさん。俺ここに来る前、ラザミールの国王グレリオに魔王がほかの種族に牽制しているって言うのを聞いたんですけど・・・。」
俺は彼女に本音をズバリと言った。すると、
「それは半分正解かな。魔王様の前○○王の話は聞いたよね?○○王は全ての種族の協力と平和を願っていたんだ。だけど、この考えに反対したのが、ドラゴン族、神、そして人族だった。ドラゴン族は自分たちの威厳が無くなると言っていたが○○王に言われて仕方なくという感じで賛成をした。しかし、神と人間は違った。神と人族は悪魔や魔族と仲良くなるのは絶対嫌だと陰で嫌っていた。このことは○○王の前では言えないから表向きは賛成。裏面では大反対。だから、○○王が居なくなったあと人族と神は協力して異世界召喚をし、我々を討ち取ろうとしているのだ。私たちには戦う意思は無いのにね。」
彼女は悲しそうな声でそう言っていた。その話を聞いた俺は辻褄が合うことに気づき彼女の話を信じた。しかし、信じたと言っても何がホントで何が嘘かは未だに分からない。何か、何か真実を知る方法はないか、そう思っていると
「マスター、世界の真実を知る方法が一つだけ存在します。」
と、メーティスは言い、続けて
「その方法はレベル750で手に入るスキル・世界網羅で知ることができます。世界網羅のスキルは過去から今までに起こった出来事を全てありのままに映し出し、未来に起こることも映し出されます。」
「えっ?そんなスキルがあるの!?でもレベル750なんて種族ホントに居るの?滅多に会えなそうだなぁ。」
俺は疑った。そんなにレベルが高いやつなんて指で数えられるほどしかいないだろうと思っていたからだ。しかも、そこまで到達している種族がいればむしろ弟子入りしたいくらいだ。
「居ますよ。目の前に。魔王軍の幹部である彼女、ルサールカのレベルは795です。」
そう、サラッとメーティスは言った。俺は驚きが隠せず、
「れっ、レベル795!?」
と大々的にダンジョン内で騒いでしまった。その声に驚いたルサールカは、
「ちょっと、いきなりどうしたんだい?ってか、私のレベル分かるの?」
と、彼女も彼女で焦っていた。
「はっ、はい・・・。一応、鑑定師なんで。」
俺は一言彼女に申した。
「こんなにすごい鑑定師、初めて見た・・・。って事は、あのスキルが使えるかもしれないなぁ。よし、翔太くん。ちょっと眠っててね。」
彼女はそう言うと、俺の後ろに瞬間移動し、首に手刀でガツンと刺激して俺を気絶させた。俺はそこから意識が無くなった。
〜二日後〜
俺はやっと意識が覚醒し始めた。最初は肌と肌が接触している感覚がした。《柔らかい》そう感じながら、段々と意識が覚醒し始めてものの数秒で意識の完全覚醒をした。完全覚醒すると、目の前には大きな二つの山らしき物がそびえ立っていた。そして、後頭部には柔らかい太ももらしき感覚がした。これはもしやと思い、段々状況を理解し始めると山の向こう側から
「おはよ!翔太くん。やっと目覚ましたね〜。どうだったお姉さんの膝枕は。」
「おっ、お姉ちゃん!?えっ?どゆこと!?」
俺は焦ってその場を飛び起きた。すると、膝枕をしてくれていたルサールカがこちらを見ていた。俺には状況の理解が追いついていなかった。頭が今まで以上に回転して悩みに悩みまくっていると、
「あはは!ごめん、ごめん。でも、お姉ちゃんっていうのはある意味ホントだよぉ〜。あはは!」
とルサールカは言うが、俺はますます意味がわからなくなった。
「混乱してるのは分かるけど、とりあえず私の話聞いてもらっていい?」
彼女はそう言った。だから、俺は一回考える事をやめて彼女の話を聞くことにした。俺が今焦って物事を理解するよりも、彼女の話を聞いてからの方がよっぽど早く理解できると思ったからだ。
「よし、じゃあ話すね。翔太くんが眠っていた二日間の間に私が何をしたか。まず、私は翔太くんをあのガラゴンダダンジョンで気絶させた後、私がよく魔王城とその城下町がある所と行き来する時に使う魔法陣で魔王城に移動。そして魔王城に移動した後、魔王様に翔太くんの話をしたんだ。例えば、レベルとか職業とか私のペットのオロちゃんを倒した事とかもね。魔王様はやっぱり理解してくれたよ。君を受け入れてくれることに。そして、その話が終わったあとに約一日私は翔太くんに膝枕を提供してたって訳さ。勝手に魔王軍に入らせちゃってごめんね。」
彼女は今までの経緯を全て話し、俺に謝ってきた。
「いやいや、むしろありがたい話ですよ!行くあてのない僕をこの様な形で保護してくれるなんて。ほんとにありがとうございます!でも、丸一日膝枕って大変ですよね?あはは・・・。」
俺は全身全霊で感謝した。そして膝枕の件についてもだ。俺は魔王軍についていく。そう固く決心した。まだあの話の真偽は分からないが、兎に角ここまで優しくしてくれる魔王様やルサールカに感謝し、貢献しようとも思った。自分に気合を入れて頑張ろうとしたその時、
「あっ、言い忘れてた。今から魔王城で面接するから一緒に来て!」
「えっ?」
彼女にそう言われると、俺は咄嗟のことで心からの声がダダ漏れになってしまった。
「大丈夫、心配しないで。面接って言っても君がホントに安心できる人間か確かめるだけだから。」
そう言って彼女は魔王城に向かう支度を始めた。俺も急いで準備しなければと思い早急に支度を始めた。ものの五分で支度が終わり、彼女の部屋を出て階段を下り、ドアを開けるとそこには馬車が一台止まっていた。馬車と言っても引き馬は普通の中世ヨーロッパにいた馬ではなく、ザ・ファンタジーとも言える種族、ケンタウロスが引いていた。俺らはそれに乗り込むと、彼女は
「ケンタウロス達、魔王城まで頼む。」
そう言うと、ケンタウロス達はこくりと頷き走り始めた。俺はその道中素晴らしいものを見た。道路端で遊ぶ魔族の子供たち、市場や武器商業を行う魔人等が行き交っていた。そこは人間の街並みとは変わらないものであった。そしてその街並みはほとんど中世ヨーロッパと同様なものであった。その街を抜けると、魔王城までの道が一直線で繋がれていた。そこはとても長かった。街並みを抜けるのに十分しか掛からなかったのに対し、魔王城までの直線を抜けるのには三十分ほど掛かった。ようやく魔王城に着いた。そこはとても広く、ラザミール王国の王城よりも二、三倍広かった。俺らが降りるとルサールカは、近くにいた門番のミノタウロスにこう伝えた。
「魔王様に伝えてくれ。中山翔太を連れてまいりました。と。」
十分ほど経つと、門が開いた。
「私が送れるのはここまでだ。後は門番であるミノタウロスくんが案内してくれるだろう。じゃあ、頑張ってね、翔太くん!」
と言い、彼女は俺の背中を押してくれた。
「よし、お前ついてこい。」
ミノタウロスはイカつい声で俺の事を呼び、案内しようとした。すると、門は閉まってルサールカと隔てられた。俺は再び気を引き締めて、面接会場へと足を運んだ。
「さぁ、しっかり合格しなければ!」
第二章 覚醒と魔王城 ー完ー