クラス最弱地位の俺が異世界転生して、クラス最強になる俺物語   作:渡月 夢幻

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この章では魔族領について語られる場面があります。文章だけでは不十分だと思ったので後書きの方に簡単な地図を掲載します。是非、ご活用ください。それでは第四章 ー神なる宴ー始まりです!


〜第四章 神なる宴〜

 「時」とは人々が知恵を絞って目に見えない抽象的な物を我々の目に見えるように具現化した物、すなわち我々の想像上の中で生み出されたものである。日本やアメリカ、フランスなどの美術作品(例えば、曼荼羅や最後の審判)は全て人々が思い描いた存在である。果たしてそれは本物だと断言出来るのだろうか?神や天使、はたまた悪魔や地獄それは空想上にしかない物なのだろうか?永遠と語り継がれるこのことは、ただ一言でしか表せないのかもしれない。そう、それは《未知》という言葉でしか表せない。そして人間も未知なる存在なのかもしれない。全てを変えられるだろうか、否全てを元に戻せるだろうか?

 

 

   〜第四章 神なる宴〜

 

 

     ー某月・某日・一時三十八分ー

 

 

 一人の男が何かを成し遂げたかのような顔をしてこちらを見てこう言った。

 「やっと完成したよ!今回の球は最高傑作だ!僕ながら良くやったよ本当に。」

 「楽しそうにしてるとこ悪いんだがもう作らないでくれ。我の仕事が増える。この球全ての生誕と結末の管理は、全てを我が担っておるのだぞ。お前はさすがに作りすぎだ。今回の青い球は壊させてもらうぞ。」

そう言って、闇から姿を現した男は何かを唱え始めた。それを見て青い球を作った男は焦りながら彼の手を止めた。

 「ちょっと止めてよグレイシア!今回のは僕にとっての切り札でもあるんだ。何故なら僕の予知能力がそう言っているんだ。だから壊さないでくれ!頼むよ!僕の予知能力が正しければ、そうだなぁ・・・面白いものが見れるのは二十二時間と二十秒が経ってからかな。ちなみに、この時間になったら君の力で凍結させてくれ。君が好きそうなエンターテインメントショーが見れるはずだからさ!ねっ?」

彼はそう言って、グレイシアを説得した。

 「・・・たくっ。今回だけだからな。主の言う通り、二十二時間と二十秒が経ったら凍結させる。本当に我にとっての娯楽となるのか?」

 「もちろんだよ!そしてありがとぉぉお!グレイシア!やっぱり、君と僕は永遠の相棒だよぉぉ!」

 「おう、そうだな ケラ。とりあえず、今回で一旦球作りは終了だからな?」

 「もちろんだよ!あっ、あとさ今回の転送はどんな感じだった?魔族全滅したかな?」

ご機嫌なケラは、グレイシアにそう質問した。すると、グレイシアは一番左側にあった薄いタブレットのようなものを取り出してきてケラに見せた。すると、

「えぇ〜、もう一人死んじゃったの?雑魚じゃん!ただの雑魚じゃん!しかも味方の裏切りかよ〜。僕こういうの好きだけど、序盤すぎてなんかつまんねぇ〜や。はぁぁぁ。やっぱり、二年五組の方送ればよかったかな?」

「いや、一人の死者なんて想定内だろ。多少の死者なんて出て当たり前だからな。まぁそいつが死んだ代わりにあの勇者職に任命した奴はガンガン強くなってるから結果オーライかと。」

グレイシアのその発言にケラは勇者職に選ばれた奴のステータスを見始めた。そしてしばらくしてから、

「ほんとだ!強くなってんじゃん!それなら死んだ奴の事はもう気にしなくていいね。さてと、死んだ奴はさっさと除外しないとね〜。」

そう言ってケラはタブレットをいじり始め、その死者の生命活動報告書を破棄した。

「はい、グレイシア!これで君の仕事は減ったよ〜。いやぁ〜僕って良い事するなぁ〜。さぁてと、ジュースでも飲もぉっと!」

ケラは万遍の笑みを浮かべながら奥へと消えていった。それを見届けたグレイシアは、

 「さてと・・。転生させたアイツら情勢がどれだけ変わるかだよなぁ・・。しかも、勇者職を与えたアイツは我々の最上位に存在するあの方のお気に入りだからな。しっかり観察しておかなければ・・。」

そう言ってグレイシアは最前列の椅子に座り、モニターを起動させ記録作業を開始した。

 

 

   ー一方魔王城に滞在している翔太はー

 

 

 俺はノックをする音が聞こえたので、(はぁ〜い)と言ってシングルベットから起き上がりドアの方へ向かった。ドアを開けるとそこにはルサールカが立っていた。すると俺を見た彼女は

「やぁ、翔太くん!お姉さんが遊びに来たぞぉ〜!」

と言って、勢い良く俺が滞在している部屋に入ってきた。俺はあたふたしながら、

「ルッ、ルサールカ!?な、な、なんでここに!?」

と叫んだ。俺は結構大声で叫んだので二つ隣の部屋まで響いていたと思う。俺は迷惑をかけてしまったのではないかと少しその場で反省した。

「もう、翔太くん!ルサお姉さんか、ルサ姉って呼ぶんでしょ!忘れないでよね、もぅ〜。」

彼女は少し苛立っていた。だが、俺には少し違和感に感じた。ルサールカが何の理由もなくこんなに怒るはずがないと。いや、最も違和感を覚えたのは(ルサ姉)という発言だ。俺がルサールカに膝枕をされていた時、彼女は自分のことを(お姉さん)と呼ぶように言った。いくら彼女が俺に親しくても、(ルサールカお姉さん)と多少堅苦しいような呼び方をするように強要してくると思った。そして俺は数秒考え込み、カマをかけることにした。

「なっ、なぁ〜ルサ姉。」

「どうしたんだい翔太くん?」

「お前、本当にルサールカなのか?」

「やっ、やだなぁ〜。翔太くんどうしちゃったの?なんかいつもより変じゃない?」

彼女の様子が少しばかり変化した。そう、それもマイナスな方に。すると彼女はゆっくりと後退し、左手を腰の辺りに押し付けていた。(明らかに変だ)そう思った次の瞬間、

「お兄ちゃん、伏せて!」

俺の後方からメーティスの声がした。俺は咄嗟に自分の体を思い切り下へと引きずり下ろした。完全に体を引きずり下ろし俺は上を見上げると、そこには偽物だと睨んでいたルサールカがこちらに刃渡り十五センチ程の鋭利な短剣をこちらに向けていた。(間違いない、こいつはルサールカじゃない)疑問が確信に変わった瞬間だった。すると、

「正体を現せ!偽装解除《ディスガイド》!」

メーティスはさり気なく魔法を使っていた。俺はそれに驚き、

「えっ?メーティスって魔法使えたの!?」

「いや、お兄ちゃんの魔力と全魔法世界管理権限最高創始神《ゴットオブオールマジックアドミニストレータ》の力です!詳しい事は後で説明します!とにかく、目の前の奴を。」

つまり、後方に立っていたメーティスはこの短時間で全魔法世界管理権限最高創始神《ゴットオブオールマジックアドミニストレータ》に解除系魔法《ディスペル》の申請をしていたのだ。そして、俺は彼女の忠告に答え目の前にいたルサールカの偽物に戦闘態勢をとった。

「うっ、うぅぅ!」

メーティスが放った魔法をもろに食らったルサールカは少しばかり苦しみながら地面に膝を着いた。その瞬間彼女の体はひとまわり程横に大きくなり、ガタイが良くより筋肉質になった。すらっとしていた太腿からふくらはぎはより引き締まったものとなった。更には足先は三前趾足となった。やがて背中からは漆黒の羽が生えてきて体を見るとまるで半人半鳥のような姿をしていた。顔を見ると少しタレ目で鼻が高く、口から少し牙が見えていた。また、髪は羽と同様で漆黒に染まっていた。

「おっ、お前は誰だ?」

その姿を見て俺は問いかけた。だが、俺の体は少しばかり震えていた。理由としては単純だった。それはルサールカの魔力量より大きく、強者としてのオーラが半端なく解き放たれていたからだ。

「俺・・か?お前に教える必要なんて無い。何せお前はここで死ぬからな。」

そう言うと、半人半鳥の奴は先程の短剣をこちらに向けた。そして俺が瞬きをした瞬間、奴はゼロ距離に迫っていた。それに気づいた時にはもう遅かった。短剣は俺の目の前で寸止めしていて、いわゆるチェックメイトの状況にあったのだ。

「お前、何か遺言はあるか?」

半人半鳥の奴は俺に向かってそう言った。

「お兄ちゃんに近づかないでください!四大要素魔力障壁《エレメントウォール》!」

そう言って、俺とやつのほんの少し間にメーティスは障壁を展開した。その障壁は時間が経つ毎に大きくなり、俺とやつの間に空間が生まれた。すると奴は少しニヤッとしていた。まるでこの状況を想定済みだったかのように。すると奴は一瞬で距離を詰めてきた。今度は俺ではなくメーティスの方に。それに驚いたメーティスは一歩後退りするが間に合わず首の後ろに手刀を打たれその場で気絶してしまった。やはり、奴は強い。魔力障壁が展開された時点で次の殲滅プランが組み立てられていた。

「さてと、邪魔なちびっ子魔法使いが居なくなったし、やっと殺せそうだ。もう遺言は聞かねぇ、じゃあな。」

奴はすごく冷静に事を運ぶ為にそう言った。何かに焦っているのかは分からないがとにかく、少し焦っている事は分かった。(俺はもう殺されるのか)と、走馬灯に触れることなくこの異世界人生が終わろうとしている。なのに、何故か死ぬ気がしなかった。理由は分からない。しかも、何かしら死を告げるような事も起きる気がしない。そう感じた。今までたくさんの死に直面してきた俺だったから分かるような気がした。否、これは慣れなのでは無いかと不安を覚える自分もいた。そんなこんなを考えていると時間が一秒すぎることさえ遅く感じた。

「死ね。」

そう一言放って奴は俺の首筋へと勢いよく短剣を降り下ろした。首筋へと一直線に向かってくる短剣。俺は回避行動を取ることもせず、ただただボーッとしていた。すると、ドアがミシミシという音を立てて破壊された。俺と奴の視線がドアの方へと集中させた。そして次の瞬間、

「水聖刃斬《アクアブレイク》!」

無詠唱で発動された水属性の技は奴が持っていた短剣を一瞬で打ち砕いた。

「大丈夫かい?翔太くん。」

そこに現れたのはルサールカだった。ルサールカは汗を流しながら俺に声をかけた。俺はコクリと頷いた。すると、奴の視線は俺ではなくルサールカの方へと向かっていった。そして、

「おい、ルサールカ。てめぇ、何しやがる。同じ魔王軍幹部だからといって手を出していい事と悪い事があんだろ。状況判断しっかりしろ。ぶっ殺すぞ。」

奴の癪に触って、怒りと興奮の両方を兼ね備えさせてしまった。奴はそれを糧にして、

「七大罪スキル発動!火山の如き怒りの力よ、俺のもとに顕現せよ。憤怒《イラ》!」

そう唱えると、奴のステータスが約二倍ほど上昇し一時的に回復系統の魔術、超速再生と付与系統の魔術、攻撃超上昇《グレイドパワー》が付与された。どうやらこれが七大罪スキルの力らしい。

「わざわざこんな場所で本気を出すですか?マルファス。いや、あなたのスキルの偽装者《フェイカー》の可能性もあるか・・・。」

ルサールカはそう呟いた。俺はその言葉に引っかかり、鑑定を始めた。鑑定には一部文字化けしたような箇所もあるが、一つ大きなことがわかった。

「ルサールカ!油断しないで!アイツは憤怒《イラ》を使っている!しかも、トラップも何ヶ所か設置しているよ!」

と、大声で鑑定結果を叫びルサールカに警戒するように求めた。すると、

「おい、ルサールカ。アイツの言う事聞くのか?聞くのはいいが、俺がステータスを偽装《フェイク》している可能性もあるんだぜ?」

と惑わせるようなことを言ってきた。だが、ルサールカはなにか確信したかのように、

「そうですか・・・警告ありがとうございます。ですが・・・」

「ん?ですが・・何だよ、答えろ。まさか、アイツの言うこと信じるのか?お前も堕ちたもんだな、ルサールカ。まさか、俺よりあいつを信用するなんて」

とマルファスが少し嘲笑い、油断していた隙に

「翔太くんをバカにしないでください!静寂の水流道《フェネティリア・ゼロ》!」

水属性最強と謳われる魔法の一つである静寂の水流道《フェネティリア・ゼロ》を放った。この静寂の水流道《フェネティリア・ゼロ》は水属性の魔力を一点集中させ相手に撃ち込む超強力な技である。その技を発動したルサールカを見てマルファスは油断していた体を無理やり起こし0.1秒で戦闘態勢に入った。攻略方法を見出したマルファスは偽りの罠部屋《トリックルーム》を発動させ、(こい!)と言わんばかりに興奮状態で短剣を構えていた。偽りの罠部屋《トリックルーム》とは、半径一キロに様々な罠を張り自身のスピードとパワーを倍増させ有利なフィールドを生み出す技である。ここでのマルファスのパワー、スピード、魔力量等は七大罪スキル憤怒《イラ》との効果を掛け算しているのでステータス的には警戒態勢をとっていない俺が初めて会った時の温厚な魔王ルシの通常時のステータスと同等である。そのマルファスの力と最上級魔法を放つルサールカの力がぶつかり合うその瞬間、二つの力が無と化した。理由は単純だった。そう、第三者の力が消し去ったのだ。

「やめろ、マルファス!私が招き認めた人間だぞ。私は翔太を幹部と認めた。例え種族が違えども幹部は幹部だ!いつもと同じ対応をしろ。」

二人の魔力消し去りその場で説教をしたのは魔王ルシであった。彼女が降臨すると一同は静まりかえった。すると辺りの気温は僅かながら低下し、体にゾッと寒気を感じ始めた。やがてそれは俺たちの目に完全に具現化されるようになった。そう、俺が今たっている部屋の隅という隅が少しずつ凍り始めているのだ。

「申し訳ございません、魔王様。ですが私の目から見ると翔太と言うやつの実力は弱く感じます。そこから我々幹部の域に達していないと言う結論に至りこのような行為に出ました。」

「ほぅ、それが今回の翔太の暗殺というわけか?」

「いえ、決してそのようなことはございません。第一私はやつの首元で寸止めするつもりでした。」

「わかった、今回はそういう事にしておく。ただし、次同じような事があったらお前を破門とし、この国から出ていってもらう。それで良いな?」

「ははっ、仰せのままに。」

一瞬のうちにマルファスの今回の行動動機と処分とが決まった。まさかこんな一瞬で事態が片付くとは思ってもいなかった。俺はここで魔王ルシの力の強さを改めて知ることとなったのだ。すると、マルファスは魔王に一礼をして俺が泊まっている部屋から出ていったのだ。

「大丈夫だった?翔太くん。」

「あっ、何とか大丈夫でした。ルッ、ルシ。」

俺は魔王様のことを(ルシ)と呼ぶことに今でも抵抗を感じていた。すると、

「こら、翔太くん!魔王様に向かってルシなんて呼んじゃダメでしょ!お姉さん怒るよ?」

ルサールカは俺が魔王様をルシと呼んだことを軽く注意し、俺の頭を軽く叩いた。すると、

「良いんだよ、ルサールカ。私がルシって呼んでって翔太くんに言ったんだから。」

ルシがそう言うと、ルサールカは納得していた。

「あっそうそう、翔太くん。君に伝えなきゃいけないことがあるんだけど・・・。」

ルシはそう言いながら、わざとらしく胸を強調しながら上目遣いでこちらへ近づいてきた。

「やべぇ、えっちだ。」

心の中でそう思った。やはり、魔王様の破壊力は半端なかった。色んな意味で・・・

「翔太くん、えっち。今から大事な話をしようとしてるのに。」

「えっ、いいっ、いや、そんなこと全く考えてません。」

俺は咄嗟に嘘をついてしまった。あんなもん見せられたら雄は抵抗できない。

「嘘ついたのバレてるよ。私の目誤魔化せないの知ってるでしょ?」

ルシはそう言ってその上目遣いの姿勢から少し睨んでいた。ルシは少し怒っているようだが、男の俺からしたら(可愛い)たったその一言であった。そう思っていると、心を読むことが出来るルシは顔を赤くした。理由は何となくわかった。俺が心の中で可愛いと言ったからである。多分こういう風に思われるのは新鮮なのだろう。やはり魔王としての威厳もあるため、あまりこういう風に思われることは無いのだろうと察した。すると、ルシは(おっほん)と軽く咳き払いをして俺の視線を注目させた。

「翔太くんの今の実力だと魔王軍の幹部達より劣っていることは分かるよね?」

「はい、もちろんです・・・マルファスが俺の所に奇襲しに来た際に鑑定したらレベルの差、ステータスの差が比べ物にならないくらい広かったです。・・ん?・・魔王軍の幹部?」

「うむ、翔太くんは魔王軍の幹部だよ。」

「はっ!?えっ、なんで俺なんかが魔王軍の幹部!?」

「うむ、魔王軍の幹部だよ。」

俺はその話を聞いて一瞬思考停止した。俺は魔界の住民として認められたのは知っていたがこの俺が魔王軍の幹部を務めることは初めて知った。頭には(?)と(俺が魔王軍の幹部)という二つで埋め尽くされた。考える余裕さえもなかった。

「あっ、あの・・・ルシ。俺いつから幹部扱いされてたの?」

「最初からだよ。・・・あっ、しまった。これ宴の時にサプライズで発表するつもりだったわ。てへぺろ♡」

「えっ、えぇぇぇぇぇぇえ!」

まさかのサプライズをうっかり漏らすとは思っても無く俺は驚きを隠せなかった。しかも、ルシが(てへぺろ♡)する時にあざと可愛い感じで言っていた。こんなサラッと言われるとは・・・少し残念に思う気持ちで満たされた。

「とにかく、翔太くんは魔王軍の幹部だからねっ!分かった?」

「はい・・・というか俺が魔王軍の幹部になったところで戦力になるんですか?多分というか俺は100パーセント幹部の中で一番弱いですよ!」

「うむ、その通りだよ。だから、今幹部として今一番弱いの翔太くんはレベルアップをする為に鍛錬しなければならない。だが、ただ鍛錬するだけでは幹部の皆に追いつけない。だから、今から強くなる方法を二つ教えるね。まず一つ目は、ルサールカのペット達と模擬戦をしつつ、ガラゴンダダンジョンの魔物を魔法付与やスキルを使わず普通の一本の剣だけで魔物を全て討伐すること。そしてもう一つは・・・」

ルシがもう一つの方法を言いかけると俺の部屋のドアにノックする音が聞こえた。その音にいち早く気づいたルサールカは、

「はいはぁい、ちょっと待っててねぇ」

と言ってドアを開けた。そこにはルシの側近が立っていた。

「魔王様、宴の準備が整いました。移動の方よろしくお願いします。」

そう言って一礼した。

「わかった、今すぐ向かう。」

そう言ってルシは立ち去ろうとした。だが、ルシは一度こちらに戻ってきて

「話の続きは宴で言うね。あっ、その時ルサールカも一緒に連れてきてね。」

俺の耳元にそう呟いてルシは宴会場へと向かっていった。ルシが出ていくとルシの側近は俺達に一礼をして

「翔太様、幹部昇進おめでとうございます。宴会場にてお待ちしております。」

と丁寧な言葉で祝福しその場を後にした。ドアが閉まり俺は一安心したせいかベットに横になった。するとルサールカは俺のベットに近づいてきて俺の顔を覗きながら

「ねぇ、翔太くん。さっき魔王様になんて言われたの?」

と問いかけてきた。俺はベットに横たわりながら、

「宴会場でもう一つの方法話すからルサールカと一緒に来てくれって言われたんだよ。」

そう答えた。

「そういう事ね!了解。・・・あぁ〜良かった!翔太くん魔王様に告白されたんじゃないかと思って心配したよぉぉお!翔太くんはお姉さんの物だから魔王様にも取られたくないんだよぉぉお!」

ルサールカは涙ながらに俺の胸に飛び込んできた。この状況を目の当たりにした俺は、ルサールカは甘えん坊なのか、それとも少しメンヘラ気質なのか、はたまたショタっ子なのか・・・もう分からなくなってきた。

「そういえば翔太くん、君の後ろに居るのは誰なの?」

ルサールカは疑問に思い、俺に聞いてきた。

「あぁ〜、この子は・・・」

と紹介しょうとすると

「私はお兄ちゃんの魔法とスキル大図書館の管理するメーティスです。正式には、大図書館情報管理機構《ライブアドミニストレータ》です。」

とメーティスは自分から説明した。

「なるほどねぇ〜翔太くんの魔法とスキルの管理者かぁ・・へぇ〜・・なんで人間の姿をしているの?そしてもう一つ質問!なんで翔太くんのことお兄ちゃんって呼んでるの?」

ルサールカはメーティスが俺のことを(お兄ちゃん)と呼んでることに引っかかった。そして、メーティスが人間の姿であることも・・。それもそうだ、俺が具現化した大図書館情報管理機構《ライブアドミニストレータ》がお兄ちゃんなんて呼ぶことは聞いたことがない。ましてや、大図書館というスキルすら人間の国でも聞いたことがある人は居なく特殊スキルとまで言われたものだから疑うのも無理はない。

「では、ルサールカさんの質問に簡単に答えさせていただきます。まず、私が具現化できている理由としては、お兄ちゃんの魔力のおかげです。お兄ちゃんの魔力を媒体としてこの世界に私を認知させているのです。二つ目の質問の答えは私の姿を見たお兄ちゃんが妹ぽいからお兄ちゃんと呼べと強制したからです。ぐすん・・・。」

「はっ?・・えぇぇ?」

俺はメーティスの言葉を疑った。俺はメーティスに一言もお兄ちゃんと呼べなんて言っていないからだ。変な誤解をされる。俺はその時とてもパニックになりあたふたしていた。すると、

「翔太くん・・・こんなちっちゃな女の子になんてことしてるの!!」

ルサールカは怒り出した。俺はとりあえず謝ることしか出来なかった。謝罪に謝罪を重ねることしか出来なかった。

「メーティスめ、俺のことをハメやがってぇ。」

俺は心の中でそう呟いた。多少の怒りの感情と共に。

五分後、ようやくルサールカの怒りは収まり俺の部屋の時計を見て

「あっ、翔太くん!もうすぐ宴の時間じゃない?急がないと!」

そう言って俺のことを催促した。俺はますますルサールカが謎の存在に思えた。さっきまで泣いていたのに時計を見るやいな(宴が始まる)と少しワクワクしながら俺のことを急かす。だが、(可愛い)これは普遍の事実であった。その事を考えてボーッと一点を見つめていると、

「翔太くん、大丈夫?」

「・・・えっ、あっ!?大丈夫だよルサ姉。」

「へっ・・・ルサ姉・・もう一回言って翔太くん!」

「えっ・・大丈夫だよ」

「いや、そこじゃないよ、その次に言ったことだよ!」

「えっ、あぁ〜ルサ姉ってこと?・・・」

俺はその時はっと気づいた。無意識にルサールカのことを(ルサ姉)と呼んでいたことに・・・俺は顔を赤らめて咄嗟に顔を隠した。いつも感じる時の流れがだんだん遅くなっているように感じた。少し静寂という名の前線が訪れ、体内時計で五分が経つと少しずつ北上し過ぎ去っていった。顔を隠していた指の隙間から目の前に立っていたルサールカを見ると、彼女も俺と同様で顔を赤らめていた。だが、俺とはいってん違う点があった。そうそれは、恥ずかしがりつつも喜んでいたことだ。彼女は隠しているつもりでも態度に出てしまっているので察するのが容易であった。それをまじまじと見つめていた俺の視線にルサールカは気づき顔を合わせようとするが、俺もルサールカも恥ずかしくなってしまいまた互いに顔を赤らめ隠れてしまった。そして再び静寂という名の前線が訪れた。

「ねぇ、お兄ちゃん。この状況何回繰り返すの?」

静寂を打ち切り場の空気を変えたのはメーティスだった。メーティスは俺のことをゴミを見るような目でこちらを見ていた。それに気づいた俺は冷静さを取り戻し、メーティスの視線に少しビビっていた。それを見たメーティスは(はぁー)と一息ため息をついて

「お兄ちゃん私先行ってるから。ルサールカさんと一緒に来てね。お兄ちゃんは迷子になりかねないから。」

「いや、俺は迷子になんねぇよ!」

「・・・ふぅーん。」

そう告げてメーティスは俺たちの部屋をあとにした。そして部屋には俺とルサールカの二人取り残された。暫く沈黙が続くのでは無いかと思い俺は(何か良い話題はないか)と頭をフル回転させて考えようとした。しかし、その必要は無かった。

「ねっ、ねぇ翔太くん。そろそろ宴会場行こうか。翔太くんには魔王軍幹部としてのケジメをつけなきゃいけないからね。」

「けっ、ケジメ?」

「うん、魔王軍の幹部になるってことは魔界の領地の一部保有や警備、運営をしていかなくてはならないんだよ。まぁ領地の運営が良く、安全で治安が良いと判断されると魔族の移住する魔族が増えるんだよ!じゃあここで魔族領のことについて軽く説明するね。あっもうすぐ宴会始まるから会場に向かいながら説明するね。」

そう言って俺たちは部屋をあとにした。ルサールカは廊下を歩く際、俺との二人きりを楽しんでいるように見えた。足取りが軽くとても笑顔が眩しかった。

 

 

「んじゃ、手短に説明するね!まず率直に言うと、今いるこの場所は中央都市ベルセリオンって言うんだ。ちなみに、今一番安全で治安が良いと言われてるのは中央都市ベルセリオンから見て東側にあるマルファスの統治下でエイナ、ファラス、エンヨウ、デトラの四国だよ。逆に、今一番危険で治安が悪いと言われるのは中央都市ベルセリオンから見て南側に位置する無法地帯のグシャク、アルバドーラ、リクセンオルビア、ヤクビューダの四国だね。」

「南側か・・・中央都市から南側って確か人間の国との境界だったと思うけど・・・ってか、マルファスの領地って一番治安いいの!?意外なんだけど・・・。」

「意外だよねぇ、あんな見た目してる癖にこーゆーのは一番なんて・・なんかちょっとムカついてきた。」

と、軽くヤキモチを焼いたルサールカは少し歩くスピードをあげた。ルサールカの早歩きについて行くこと十分、ようやく宴会場に着いた。俺は結構息切れが激しかった。それもそうだ、前居た世界では(クラス最弱地位)という称号さえあったから勉強はもちろん、運動もクラス最弱地位なのだ。しかし、女子には負けていない。そこだけが唯一誇れる(?)ようなところであった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

呼吸が乱れ体温は上昇し、汗までも出てきた。ルサールカの早歩きの速度は一般男性の早歩きの速度の1.5倍ほどのスピードであった。

「翔太くん、大丈夫?疲れちゃった?お姉さん意外と歩くスピード早いからね・・・あはははは!」

少し高笑いをしながら、俺に手を差し伸べる。

「もっ、もう少し歩くスピード遅くしてよねルサ姉・・はぁはぁ・・・。」

俺は完全に息を切らし、なんなら咳き込みそうになっている。

「とっ、とりあえず中に入ろうか。」

ルサールカはそう言い、悪魔なのか分からないが何か生き物が彫られた鉄製の両扉を開けた。中に入るとそこはある意味絶景であった。広さは学校の教室が縦四つ分、横六つ分とというとても大きな空間である。左から右の壁沿いに、サラダや魚料理、ローストビーフのような食べ物が所狭しと並べてあった。そして、最大の魅力は宴会場中央に設置されたワイルドボアの丸焼きであった。轟々とたちこめる炎に包まれたワイルドボアはたくさんの香草を使用しており、空腹を刺激する素晴らしい食べ物であった。また、宴会の席は中世の丸机で白のテーブルクロスがかけられており、椅子はそれに見合った背もたれ付きの木製椅子が一つのテーブルにつき四から五脚設置されていた。壁にはスワッグが一メートルおきに設置されていた。照明は言うまでもなく、シャンデリアであった。

「さっ、翔太くん!お姉さん達も取りに行こうか!」

ルサールカが俺をリードして飯を取りに行くのを誘ってくれた。俺たちはビュッフェの列に並び、二人で会話を弾ませながら料理を取っていった。ちなみに俺が取った料理は、フランスパンに似た物とサラダ、アクアパッツァみたいな料理と、ローストビーフ、ワイルドボアの丸焼きのもも肉の部分・・・言葉に表すのは難しいがとにかく前の世界と似た料理を取っていった。ルサールカもまた俺と同じようなものを取っていた。そして、俺たちは席に着いた。俺たちが座っている場所は中央のワイルドボアの丸焼きが行われている場所から左側で前方にあるステージの目の前のところである。その席は四人席であった。俺はルサールカと向かい合う形で席に着いた。すると、先に部屋を出ていったメーティスが遅れて俺の右側の席に着いた。それを見たルサールカは、

「メーティスが翔太くんの右側に座るなら、私は翔太くんの左側に座る!」

そう言ってルサールカは俺と向かい合わせになっていた席から移動して俺の左の席へと移ってきた。

「あと一席余っている。俺の目の前には誰が座るんだろう?」

ふと考えていると、後ろから声がした。

「おぉ〜、翔太くん、やっと来たかぁ〜。もぅ、待ちくたびれじゃないかぁ!」

ついさっき俺の部屋で聞き覚えのある声がした。そう俺の後ろにいたのは・・・魔王ルシであった。

「ルッ、ルシ!?」

「ルシ様!?」

俺とルサールカは各々反応の仕方は違かったけれども驚いていたことには変わりなかった。

「二人とも、飯を食うている場合じゃないよ。ほら、前のステージに一緒についてきて!」

ルシは俺たちを催促した。そして、俺たちがステージ向かう途中、

「あなたもついて来て、メーティスさん!」

と、メーティスを呼んだ。俺は驚いた。俺はルシに一言もメーティスの話はしていないはずなのに・・と頭を悩ませていると、

「翔太くんの心を読んだからだよ。だからメーティスのことはわかるの!」

「あっ、なるほど・・。」

俺は魔王の一言に納得した。確かに魔族や人の心を読める魔王にとってはメーティスのことを知ることも容易いことだ。

 

 

 俺たちは黙々とステージ上へと向かった。ステージに上がろうとすると既に先客がおり俺たちを見ていた。そして、

「やぁ、ルサールカ。まぁたショタっ子攫ってきたのぉ?」

「お姉さんはショタっ子は攫いません!もうこのネタ何回やるの!全くぅ・・。」

「あははは、ごめんごめん。」

簡単なジョークを混じえた会話が行われた。その会話の相手は誰かわからなかったので、俺は密かに鑑定を使った。すると、

 

 名前・オノケリス 性別・女

 異名・契約の馬魔 レベル・796

 得意属性・光   魔術系統・契約召喚 契約条

 その他・魔王軍の幹部

 

俺はその情報を見て、

「まっ、魔王軍の幹部!?」

と心の中で少し発狂してしまった。声に出すと何かと絡まれる気がしたからだ。また彼女の風格は、鮮明な紅色の髪の毛でこめかみの上部から角が生えていた。また、上半身は人間で容姿はルサールカに劣らないくらいとても綺麗だった。だが、一番驚いたのは下半身であった。なんと彼女の下半身はロバの足をしているのだ。二足歩行をしているので人間の足かと思いきや、ロバの足・・・。これが彼女の全貌である。すると、

「お主ら、席についてくれ。あっ、翔太は皆に挨拶をする予定だから考えておいてくれ。」

いつもと違う口調でルシがステージ上にいた俺とほかの魔族に言った。

「御意!」

その一言を放ち、各自席に着いた。俺はどこに座っていいのかわからず、あたふたしていたがルサールカが(こっちだよ)と手招いて教えてくれた。俺は小走りでルサールカの元へ向かいその場に着席した。すると俺の後ろにいたメーティスも俺に着いてきて隣に着席した。

 

 

 舞台が一段と明るくなった。すると、ステージ上にいた魔族たちの容姿が顕になった。

「会場におる我が魔族達よ!皆楽しんでおるか!」

ルシのその一言で会場にいた魔族たちは(うぉぉぉお!)と歓声を上げた。

「では、いつも通り魔王軍の幹部を紹介する!だが、今回は新しい幹部を追加することにした!そやつには、今一番危険で治安の悪いあの無法地帯を統治してもらうことにしておる!」

その話を聞いた俺はまたもや心の中で(ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!)と叫ばざるを得なかった。それもそのはず、ルサールカがここに来る前に言っていた無法地帯を俺が治める!?そんな無理だろ!と思いながら話を聞いていた。しかも、俺は挨拶を考えなければ行けないのに今の話で頭で考えていたスピーチが一瞬で飛び去ったのだ。

「では、いつも通り紹介していくぞ!まずは、ベルセリオンから見て北側を治めているアザゼル!」

ルシの一言でまたもや会場がざわめき出した。アザゼルは席から立ち上がり皆に姿を見せた。彼の容姿は、オノケリスと似ていて鮮明な紅色の髪の毛でこめかみの上部から角が生えてる。だが違う点はアザゼルは完璧と言っていいほどの悪魔の姿をしているのでシッポが生えていて地獄の門番的な存在感を放っていた。

「次はぁ!ベルセリオンの東を治めているマルファス!」

これもまた歓声が鳴り止まない。奴はすごい人気を誇っていたのだ。

「続いてぇ、ベルセリオンの北西を治めているイフリート!」

イフリートは皆が想像するような容姿をしている。全身を炎に包まれた悪魔だ。

「続いてぇ、ベルセリオンの西南西を治めているメフィスト!」

メフィストとは人間の体で魔女のように長い爪をしているまた肩甲骨の辺りから悪魔特有の大きな羽が生えている。また、メフィストは女性である。

「そしてそしてぇ、ベルセリオンの南南西を治めているオノケリス!」

「最後に!ベルセリオンの南東を治めているルサールカ!」

ルサールカとオノケリスについては以前話した通りである。

「サプライズ発表の新幹部はぁぁぁぁあ!」

ルシのその一言に会場にいる悪魔たちは最高潮に興奮している。新しい幹部はどのような実力者なのかと・・。

「人間の国のラザミール王国からきた中山翔太くんです!ちなみに補佐としてメーティスさんという方がいます!メーティスさんはとっても頭がいいです!では、翔太くんに挨拶してもらいましょう!」

ルシがそう告げるが会場の最高潮の興奮は一瞬で地に落ちた。なんてったって、新幹部が人間だからである。人間は悪魔の敵そういう認識をしている悪魔は多いからだ。俺はステージ中央へ行き、スピーチをした。

「えっと、人間の中山翔太です。魔族の皆さんは俺のことをよく思っていない人も多いと思います。ですが、俺はその人間たちに裏切られここまで追いやられました。ええっと、こんな話で同情してもらうつもりではありません。俺は俺なりにこの魔界で強くなっていきたいと思います。頼りない幹部かもしれませんが応援してください!お願いします!」

俺は今思っていることを全て正直に話した。だが、皆唖然としてしまったのか静まり返ってしまった。拍手も何も無い。シーンと静まり返った会場に所々でざわつき始める。

「おい、新しい幹部は本当に人間で良いのかよ?」

「人間なんかすぐ裏切ったりするだろ。信じらんねぇぜ。」

ざわめきの波が大きくなる中、とある魔族の言葉で雰囲気が一転した。

「おい、お前ら。魔王様が幹部にすると認めたやつに文句あんのか?魔王様直々に面接なさり下した判断だ。つまり魔王様の意見を否定することになるぞ。それでもお前たちは魔族か?主従関係をはき違えるな。愚か者たちが!」

そう言ったのはステージ上に立っていた魔王軍の幹部イフリートであった。彼は永遠と燃える炎の如く厚き忠誠心を持ち合わせているのだ。彼の信念は(魔王様の意見は絶対)と言っても過言ではなかった。その言葉に皆の心が打たれ、

「たっ、確かにそうだな。」

「魔王様は絶対だから・・。」

そんなこんなで会場全体に拍手が湧いた。皆俺のことを幹部と認めてくれたらしい。だが、マルファスのように俺の事をよく思わないやつもいるだろうと考えていると、

「皆、この人間の中山翔太をよく思わないやつもいるだろう。だから私は、彼に今無法地帯である土地を統治させるように命じたのである。そこを統治するのは誰がやろうとしても難しいであろう。だが、もし彼があの無法地帯を治めることが出来たら皆快く彼を受け入れて欲しい。頼む。」

そう言ってルシは自ら頭を下げた。その光景を目の当たりにした魔族たちは、

「もちろんです、頭をあげてください、魔王様!魔王様が頭を下げることなんてないですよ!」

と歓喜の声が混じり合い始めた。

「皆の者、ありがとな!」

その一言を放つと同時にルシはとても笑顔でにっこりしていた。その顔を拝めることが出来た魔族たちはいわゆる(キュン死)というやつで倒れてしまった。慌てる魔王に少し喜ばしい俺。これからもいい関係が築けるかもしれない。そう思っていた。幹部の発表が終わるとステージ上にいた幹部は皆降段し、飯を囲み始めた。俺らが降段するのと同時にサキュバスやダークエルフがステージ上に上がり舞いを舞い始めた。俺らも席に戻ると、

「翔太くぅぅぅぅん!発表めちゃくちゃ良かったよぉぉお!いやぁ泣かせてくれるねぇお姉さんのこと。」

「あはは、ありがとう・・・ってか、なんで拍手も何もしてくれなかったんですか!?こんなに感動してるのに!」

俺はルサールカに問い詰めた。今も感動しているのにルサールカは何もしないわけないと思ったからだ。

「あぁ、それはね・・・」

とルサールカが説明しようとすると、

「それは私が説明するねぇ〜。」

そう言って俺の前に現れたのはルシだった。

「ごめんね、翔太くん。私が何もするなってルサールカに言ったんだ。ルサールカが君を助けちゃうと君のためにならないと思ったんだ。まぁ、あそこでイフリートが出てくるとは思ってなかったんだけどね。」

軽く微笑しながら説明してくれた。要は俺を成長させる為の訓練のようなものだったらしい。まぁある意味感謝をすべきなのか・・・。そうこう考え込んでいると、

「そうだ、翔太くん!君の部屋で言ったもう一つの方法教えるからついてきて!」

ルシからお誘いが来た。俺はルシが言っていたことを半分忘れかけていたがルシの発言により記憶が完全によみがえった。俺は分かったと頷き、席を立ち彼女について行こうとした。すると、

「お兄ちゃん!そういえば、マルファスが襲来した時のことまだ話してない!」

ふと思い出したかのようにメーティスが俺に呼びかけた。だが先約はルシの要件なので、

「悪い、ルシとの話が終わって俺が戻ってきてからにしてくれ。その間ルサ姉とゆっくり食事しててくれ!」

俺はそう言い残しルシについて言った。彼女はまずこの宴会場から出て俺をルシが俺の面接をしてくれた部屋に案内した。俺はこの部屋に秘密があるのかと思い、

「なぁ、ルシ。この部屋に何かあるのか?」

そう問うと、

「いや、この部屋はただの応接室のようなものだよ。そして、この部屋では君が強くなる為に必要なものが揃っている。」

彼女はにやけながら、俺に言った。不穏な空気が立ちこめる。俺は少し恐怖を感じた。何が起こる?俺の強化に必要なもの?意味が分からなかった。一体ここで何が始まるのか・・・。俺には予測がつかなかった。が、次の瞬間ルシの中からあるものが出てきた。魔族特有のものか?否、そんなものではなかった。もっと・・こう、何かすごい・・・ダメだ。俺の語彙力では言い表せなかった。窓の外では暗雲が立ち込め、雷がどよめいている。一体、何が起こるというのか?・・・

 

 

 

            第四章 神なる宴   ー完ー

 

 

 

 

 

 




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