ゾイド 白の名を背負う者   作:ゆぐのーしす

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フルーゼの出自がネオゼネバス出身者である事が、後々に重要な話になってきます。



コードネームは「白」

 惑星Zi、それは地球から六万光年先にある惑星。

 その大地において、人々は金属生命体――通称ゾイドを改造し、或いは使役し暮らしていた。

 

 しかし往々にして人の業と言うべきか、それら――否、彼らは人間達の戦争の道具として使われた。

 友――一面的には人とゾイドの関係はそう呼ぶべきものだと言えるだろう。

 しかし、戦争の道具として使われている事象、事実は変えられない。

 

 へリック共和国は、ネオゼネバス帝国は、惑星Ziの大地の覇権を賭して戦った。

 その渦中で多くの人々が――ゾイドが、その命を刹那に散らした。

 

 それは、地上に墜落していく星の輝きのように儚かった。

 

 ゴジュラスギガが、セイスモサウルスが。

 ライガーゼロが、エナジーライガーが。

 

 多くのゾイドたちが身命を賭した。

 今の我々の平和は、数限りないその鋼の屍の上にこそ成り立っている事を自覚するべきだろう。

 

 そう、故に我等は――

 

 

「帰って早々、話が長いぞフェイ」

 くどくどくどくどと、そんな講釈を聞いていい気分になる人間はいない。

 話が長いと言って捨てたのは、ゾイド研究企業「ゾイテック・インダストリー」に在籍するテストパイロット、ゼーガ・フロイトだ。

 彼は今、新型ゾイドの実地運用テストから帰ってきてゾイド頭上のコクピットから降りてきたところだった。

 対して、試験用デッキでゼーガの眼前に待ち構えていたのは、彼の駆るあるトラ型ゾイド――「ヴァイスタイガー」の主任設計者、フルーゼ・フェイだ。

 

「君のゾイドの扱いが荒すぎるから私は如何にゾイドたちが苦難の道のりを歩んできたかを歴史を交えて述べているだけだ。見たまえ、ヴァイスタイガーの駆動部の発熱を」

 

 彼らはまさに今、ゾイテックにおいて戦後初の新型ゾイドとなる――コードネーム「白」の運用テストを行っていた。

 ゾイド乗りというものは多くの場合、適正というものがある。

 

 ティラノサウルス型、ライオン型、トラ型、或いは各種水棲生物型と、ゾイドもその形は様々であり、パイロットによっても得手不得手がある。

 その中でも、タイガー型ゾイドの運用において卓越した実力を持つテストパイロットこそ、ゼーガ・フロイトだった。

 

 元はへリック共和国のゾイド乗りの血筋であり、代々彼の家系はトラ型ゾイドの運用を得手としていた。

 個人対個人の商業・興行化されたゾイドバトルと並び、テストパイロットは戦後におけるゾイド乗りの花形の一つでもある。

 

「ゾイドの穴を見つけ出すのがテストパイロットの仕事だ」

「それが徒にゾイドを苦しめていい道理にはならないと私はいつも言っている。間接が赤熱している。アレではヴァイスどころかロートタイガーと呼ばなければならなくなる」

 他方、フルーゼ・フェイもまた一流のゾイド設計者だった。

 彼女の場合はその家系はゼーガとは対照的にネオゼネバス帝国のものであり、ヴァイスタイガーの意匠はゼネバス系ゾイドの流れを組む雰囲気を醸し出していた。

 

 ネオゼネバス帝国の技術者の家系に生まれた彼女もまた、親と同様に技術者の道を志すようになったという。

 ゾイドに対する深い知識と、一見すれば風変りであるゾイドに対する慈愛の心を持つ技術者である。

 戦後を経た今でもなお、ゾイドに対する慈悲の精神を持つ人間はそう多いわけではない。この点において、彼女は変わり者だったとも言えるだろう。

 

 そんな彼女がいま携わっているゾイドの製造計画こそ「白」のコードネームを持つトラ型ゾイドだった。

 これまでのトラ型ゾイドの伝統を踏襲しながらより高次の性能を望まれており、その要求に応え得るスペックを既にヴァイスタイガーとフェイ、そしてゼーガは証明していた。

 

 かつてのバーサークフューラーやジェノブレイカーに匹敵する時速三一〇キロメートルの機動性、それを遺憾なく生かしきれる縦横無尽な運動性。

 加えて、ブロックスゾイドとのチェンジマイズを前提としたブロックスマウント機構、ジャミング遮蔽回路による電子攪乱への耐性。

 

 戦後における次世代のゾイドと呼ぶに相応しい性能としてそれは仕上がっていた。

 

 白の名を背負う、純白の躯体。

 言葉にはせずとも、フェイにとってはヴァイスタイガーは我が子も同然だった。

 同時に、ゼーガにとっても間違いなく愛機と呼べるモノだった。

 

 すなわちフェイとゼーガを繋ぐ絆の象徴とも言うべきゾイドでもあったのだ。

 このヴァイスタイガーを巡ってしばしばフェイとゼーガは衝突することがあり、それは他の技術者の間では話の的となっていた。

 

「ヴァイスタイガーはゼーガ、君の功績無しではここまで仕上がりはしなかったろう。それそのものは私は否定すべきことではないと考えている。だが、だがしかしだ――」

「そんな長い話をするためにジェノブレイカーみたいに顔を赤くしながら息が上がるぐらい俺のコクピットまで駆けてくれたのかよ。いやはや有難いよ、恩に着るさフェイ先生」

「――!!」

 そんな彼らのやりとりを、またかよという風に整備兵たちは半ば呆れながら眺めて笑いつつ、ヴァイスタイガーのメンテナンスを行う。

 

 そうして、また、彼らの一日は始まっていくのだった。

 

 




●ヴァイスタイガー
全長:19.6m 
全高:11.0m
パイロット:ゼーガ・フロイト
最高速度:310km/h
ゾイテックの開発する、次世代のトラ型ゾイド。
テスト機体であるため火器は搭載されていない、純粋な格闘を主とした機体。
高速域での抜群の運動性、操縦への追従性、ゾイドコア出力の伝達に優れた躯体設計など、次世代の名を背負うに相応しい性能に仕上がっている。
そのゾイドコアにはある秘密が隠されているが、今はまだゼーガはそれを知ることはない。
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