ゾイド 白の名を背負う者   作:ゆぐのーしす

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アローとスクードとミーナの話は丸っとカットしてるのでゾイドバーサスⅢをプレイしていない人だと多分頭に疑問符の山が浮かぶと思います。

後、数話で完結の予定となります。


伝説交わるとき、彼は

 レムはふむ、と空を眺めていぶかしんだ。

 遠い彼方から青い輝きと共にまっすぐにこちらに接近してくるゾイドがいたからだ。

 管制室のサイレンが幾重にも響きながらZi-ARMSの防空網は次々と突破されていく。

 

「……想像より、早いな。まさかこうも早くに"蒼"がコアを背負ってくるとはね」

 

 

 

「……軟禁、か。とは言え窓もないのか」

 ゼーガははぁとため息をつく。

 レムの考えはよく知らない。こうして自分を厳重な警備下に置くこともなく、外に監視だけつけての軟禁だ。

 

 ……利用価値がある、とは思ってはいないだろう。

 だが、ゾイテック側からしてみればゼーガは唯一"白"が認めたパイロットだ。手元に置く道理はもっともだ。

 どうしたって、逃げ出すことはできない。

 Zi-ARMSの軍事研究施設は、所在を誰も知り得ることなどないだろう。

 

 不味い、と言えるし決して楽観視できる状況ではない。

 テレビもない、パソコンなどというものはもってのほかだ。

 

 恐らくこの現状をジャッジサテライトがとらえていないはずがない。

 今頃、テラガイストはZi-ARMSとの関係が露呈しているはずであり――それを構わないと判断したのだ。あのCEOは。

 

「――、ん?」

 唐突に外があわただしくどたばたと足音が響いた。

 何か、あったのか。

 

 恐らくあったのだろう。続いて、けたたましいサイレンが響く。

 警報音から察するに恐らく空からだろうか。

 

 そうして次に、まだ何か音が聞こえる。例えばゾイドが何かを踏みつぶすような、恐ろしく大きな音だ。

 

 続いて響いたのは聞きなれた咆哮。それと共に突然、ゼーガのいた窓のない居室の壁はぶち破られた。

 

 ただ一度頭突きをされただけで、壁は叩き割れて。

 そしてその罅の合間からは――レイズタイガーがのぞいていた。

 

 

 ブルーシティの意趣返しとばかりに、ジェットレイズタイガーはZi-ARMSの防空網を音速で突っ切る。

 

 雲さえ引き裂きながら凄まじい咆哮を上げて。

 サイレンと共に迎撃のために出撃したデカルトドラゴンが対峙する。

 

 エレクトロンディスチャージャーの閃光が雷鳴を齎しながらレイズタイガーを覆う。

 

 だが、その緑色の装甲が輝くとともにまるで分解されるようにその閃光は粒子となって散って、返す刀で放たれるレーザーネストからのシャイニングインパクトが一閃する。

 

 その技術に、デカルトドラゴンのパイロットは息を呑んだ。

 それはまるで、あの凱龍輝のようではないか、と。

 

 それどころかエネルギー変換の効率もキャパシティも間違いなく凱龍輝を越えている。吸収したエネルギーの逆流に苦しんでいる様子さえない。

 コア共振のQ値限界まで出力を高め上げられたエレクトロンディスチャージャーのエネルギー総量はゼネバス砲にすら匹敵しかねないほどだったというのに。

  

 旋回と急降下、急上昇、曲芸じみた航行技術はまさしくデカルトドラゴンのパイロットの卓越した技量によるものだとさえ言ってもいい。

 だが、レイズタイガーもそれと同等のレベルの技量で宙を踊って見せる。

 

 間断なく降るレーザーの雨を潜り抜けながらも、被弾を避けきれなかったデカルトドラゴンの装甲はぶすぶすとやけていた。

 

 古代虎のコア由来のエネルギーを載せて放たれた粒子線兵器は容易に装甲を熔融する。

 対して、レイズタイガーは全くの無傷だ。

 

 相対距離は段々と縮まっていき、そしてついにレイズタイガーはデカルトドラゴンの背後をとらえる。

 コクピットさえ揺らぐような衝撃を感じた刹那、レイズタイガーのエクスプロードバイトに閃光が走る。

 

 デカルトドラゴンの首筋に突き立てられる電磁牙が、装甲を生肉のように引き裂く。それと同時にデカルトドラゴンは咆哮を上げながら、地に崩れ堕ちていく。

 

 ――勝負はもはやあった。

 今、この場でこの惑星Ziの蒼き伝説に叶うものはない。

 現状のゾイド達では太刀打ちさえ許されないだろう。

 

 そして"蒼"の担い手は今、白の担い手の前に姿を現した。

 

「……あんたは?」

『よう、白のパイロット。お嬢とあんたの"博士"のたっての望みでね。早い話、お前を救いに来た』

 操縦用のヘルメットさえもなく、素顔でその男は"白"の担い手の前に姿を現した。

 コクピットを開けて対面するその男は、ゾイテックで支給されるゾイドの起動キーを見せながら味方だと示した。

 彼こそはアロー。かつて、ゾイドバトルにおいてチームスラッシュウィングの看板として名を馳せた人物だった。

 

 ついで、少し遅れてレイズタイガーの背には空から見覚えのある赤いドラゴン型ゾイドが墜落していくのを見た。

 

「乗ってくれ、"白"のパイロット」

「待ってくれよ、俺にはワイツタイガーが……」

「だからそいつも助けに行く。……追っ手が来る前に乗れ、一度しか言う暇がない」

 がんがんと、カードキーの扉を叩く音が聞こえる。

 衝撃でひしゃげてしまったせいか、見張りの兵士たちが開けるには強行突破を要するようだ。

 

 時間はない、そう即断してゼーガは彼のコクピットへと走り、壁の壊れた部屋の断崖を飛び越えて潜り込んだ。

 

 そしてコクピットが締まると、レイズタイガーは彼らを後目に走り抜ける。

 山のように湧いてくる警備用ゾイド達を有り余る膂力で蹴散らしながらもアローは舌打ちをする。

 迎撃に現れたゾイド達の中にはキメラブロックスもところどころ混じっていた。

 

「……やれやれ、条約違反のキメラブロックスまで抱え込んでやがるとは。噂には聞いていたがこれほどとはな。よっぽど見つかると都合が悪いらしい」

「……あの」

「なんだ、"白"のパイロット。今は少しだけ手が空いているからな。ただ追っ手が来るのも時間の問題だ。……今は俺はお前とゾイテックの社長を助けにきた、とだけ覚えておくといてくれ」

「そう、じゃなくて。それもあるけど」

 ゼーガは事態を決して呑み込めていないわけではなかった

 務めて冷静ではいたつもりだった。恐らく今この状況において眼前の男はへリック共和国ではなくゾイテックの意図によって派遣された人物であろうことも分かっている。

 だが、それ以上に。

 

「この、機体」

「やっぱり分かるか、"白"に認められた奴なら」

「ああ。知ってるし分かってる。……かつて惑星Ziには白、蒼、紅の三つの伝説の古代虎ゾイドがいたんだったか。その三つのゾイドを手に入れたものはこの惑星の支配者となる権利を得る、ともな」

「眉唾も混じってるがな。……察しがいいな、こいつこそ"蒼"、お前さんの乗っていた"白"の兄弟機ともいえるだろうさ」

 そう、涼し気にいいながら尚レイズタイガーを普通に操縦する眼前の男のそれが人間業だとはゼーガは到底思えなかった。

 伝説の古代虎ゾイドのあの極めて劣悪な操縦性をいともたやすくこなして見せている事に驚きをかくせなかった。

 

「そんなビビる顔することもないだろう。元々、そっちがどうだったかは知らないが蒼の建造計画はあったさ。俺は別にそのままでも乗りこなせたが、完成の最後のピースはお宅のワイツタイガーの制御プログラムだ。そのままじゃコアが焼け付く」

「ワイツタイガーのノウハウを、レイズタイガーに転用されているということか」

「そうだ。そちらの研究チームのあの"博士"がお前を救うために協力してくれたんだ。どういう関係かを突っ込むのは野暮だが、その博士からも人越しに頼まれていてね。白のパイロットを絶対に救ってくれってな」

「……」

 協力。

 それも、ゼーガを救うためにだ。その言葉の意味と重さを理解できていないわけではなかった。少しだけ、胸が熱くなる気分だった。

 

「どうした、顔が緩んでるぞ色男」

「誰が」

「お前がだ」

 少しだけ、茶化されると僅かにゼーガは不機嫌そうになった。気まずい沈黙が流れる。

 それから、その沈黙を破ったのはゼーガが先だった。

 

「なぁ。チーム・スラッシュウィングって、知ってるか。少し昔、Sクラスのチームだった」

「……昔の話だ」

「あんたは、昔ゾイドバトルをやってた頃見たことがある」

「そういうお宅は、白いセイバータイガー乗りのモノ好きだったかな」

 言わなくても、分かる気がした。目の前のこのレイズタイガーを乗り回す彼は元同業者だったのだと。

 ゾイドバトル出身の人間は、企業所有のテストパイロットになったり、企業をスポンサーにつけたりすることがある。

 紅い疾風、そんな異名でかつて謳われた伝説のゾイド乗りがいる。その男の名をアローという。

 

「古代虎を御しきれる腕前の人間なんて、そうそういるわけがない。それこそ、かの"紅い疾風"でもなければな」

「……どうだろうな。ゾイドは心で乗るんだと治安局のガミーチーフは言っていたな。腕前だけじゃ務まらんこともあるだろう。そんなことより、だ。預かりものだ、こいつをつけろ」

 そう、言われて、アローから手渡されたのはZiコンガントレットだった。

 Ziファイターであれば標準的に所持しているゾイドの操縦端末の一つでもある。

 一般に、Ziファイターは操縦桿のみでは再現しきれない細かな指揮をゾイドに伝達させるために操縦補助装置として用いられ、今では至って標準的なモノだ。

 これによってゾイド操縦に必要な訓練期間は大戦期と比べても今のZiファイターは大幅に短縮されている。

 ゼーガの古代虎専用の重装備のパイロットもその操縦端末を内蔵している。

 

 だが今ゼーガが持っているそれは通常の規格とは異なるようなモノに見えた。

 

「……お前の博士って奴から託された。古代虎専用、だそうだ。特注品らしい」

「……なるほど。サンキューな、博士」

 そのガントレットをしっかりと嵌めるとゼーガはゴムとゴムのこすれ合う確かな感触を感じる。

 それから、唐突にレイズタイガーのレーダーに敵性機のインジケータが現れる。

 

 その姿を見た時、唐突にアローはレイズタイガーを立ち止まらせた。

 

 

「おい、白のパイロット。今すぐコクピットから降りろ。ありゃ"紅"だ。あんなものに付き合ったら俺もお前もただじゃすまない」

「……」

 そこに静謐と共に佇んでいたのは黒い重装甲に覆われた古代虎型ゾイドだった。

 装甲の隙間からは放熱用と思われる赤熱したラインが見え隠れする。レイズタイガーと比べれば曲線に富む有機的なデザインでありながら、しかし驚くべきはそこではない。

 

 その躯体に内包する熱量が常軌を逸しているのだ。

 これこそ惑星Ziに眠る最後の伝説、紅き古代虎ゾイド、ブラストルタイガーなのだから。

 

「説明は省く。だが、レイズのコアの共振が物語っている。……こいつは"紅"だ。今お前を抱えて相手できる余裕のある奴じゃない。そして"白"を目覚めさせられるのはお前だけだ」

「……分かった」

 ゆっくり、そう会釈を返すと、レイズタイガーは首を垂れ、そしてしずかにコクピットを開けてゼーガを下ろした。

 

 それを眼前のブラストルタイガーは、何もせずに見届けているかのようだった。

 

「いいか、全力で突っ走れ。ここから南側まで走れば、そこにワイツタイガーは恐らくいるだろう」

「オーケー。でもその前に、約束してくれ」

「なんだ。お前の博士の約束を果たして今度はお前と約束しなきゃいけないのか」

「なんてことはないさ。紅の疾風、伝説のZiファイター。……何もかもが終わったら、サインくれよ。これでも、ファンだったんだから」

「……そういうことなら分かったよ、ゼーガ・フロイト。オーケーだ、分かったらさっさといけ。……達者でな」

 言って、ゼーガはただ後ろを振り返らずに突っ走った。騒然となるZi-ARMSの基地の只中を突っ走って。

 そして、再びレイズタイガーとブラストルタイガーはにらみ合う。

 

 紅と蒼。膨れ上がる闘争本能の猛り、これ以上はないほどに彼らは感じ取っていた。

 その、コンマ数秒後に激突は始まり諸共に総ては吹き飛んだ。

 

 

「はぁ、はぁ、ワイツ……!! どこにいる、応えてくれ!!」

 ただただそう言うと、ワイツタイガーを探す。

 息を切らしながら、ひた走る。

 もう、レイズタイガーとブラストルタイガーは姿が見えなくなった――というよりもゼーガを巻き込むまいとしてレイズタイガーに場所を移されたのだ。

 

 だが。ゼーガの頭上をただ一閃、輝線がかすめた。

 ただの光学兵器などではない。それは間違いなく荷電粒子砲だった。

 みしみしと音を立てながら、ソレは駆動する。

 

『ゼーガ・フロイト。お前の終着駅はここだ』

「……嘘、だろ」

 そこにあったのは、デススティンガーだった。

 それも灰色のカラーリングだけではない。いくつか近代化改修を施され追加の火器を装備している。

 

 デススティンガーの拡声器からは搭乗者の声が聞こえた。

 それはかつて敵対したサーペントのものだった。

 

『ヒューイック・レムの考えなど俺は知らん。だが、お前は逃亡者だ。ここで投降しない限り生かして帰すわけにはいかんがな』

「そう、かよ」

 ここまできて、これだ。それもデススティンガーを持ち出してまでの迎撃だ。

 恐らくはワイツタイガーへの対抗策なのだろう。

 

 だがゼーガは微塵も恐れてはいなかった。

 Ziコンガントレットの甲を擦りながら、少しだけ息を整える。

 

 

『俺は傭兵だ。命乞いは聞かん』

 尾部の偏向用ブレードを開き荷電粒子砲の発射体勢に移るデススティンガー。だが、その刹那にゼーガに応えるように、そのガントレットの手の甲は白く輝いた。

 

 

 

「来い――ワイツタイガー!!!」

 

 

 

 

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