ゾイド 白の名を背負う者   作:ゆぐのーしす

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Q、この世界では重力砲やZOSの扱いってどうなってるの?
A、現実で言うABC兵器のように重力効果兵器(重力砲)、限定時空間操縦兵器(ZOS)は封印すべき技術として、現状開発は行われていません。


不愉快なる戦後

 Zi-ARMSという企業が存在する。

 へリック共和国とネオゼネバス帝国の戦後、ゾイテック内のネオゼネバス派の者達が独立し立ち上げたゾイド研究企業だった。

 

 彼らを束ねたのはゾイテック在籍当時、ゾイドバトル部門の長であったヒューイック・レムという人物だった。

 彼はネオゼネバス帝国においてはセイスモサウルスの操縦を担い、第一線で戦い続けた古強者であり、戦後彼はゾイテックに招聘された。

 へリック寄りの企業であったゾイテックに対し彼の齎したネオゼネバス製ゾイドの技術の数々は、ゾイテックのさらなる躍進に繋がった。

 

 ネオゼネバス帝国の亡き研究者ザルカに端を発する完全制御型のオーガノイドシステム、キメラユニットの高度戦術的運用アルゴリズムがその主たるものとしてあげられる。

 

 彼はネオゼネバス帝国に軍籍を持っていた当時は比類なき愛国者とも知られており、とりわけ彼の領分はデスザウラーやセイスモサウルスといった高度な管制システムの制御を要求される旗艦級ゾイドだった。

 帝国のエースとしてその名を知られるジーニアス・デルダロスとは、方向性の違いはあれ彼もまた間違いなく帝国を代表するパイロットだ。

 

 ジーニアス・デルダロスであれ、アクア・エリウスであれ、戦後ネオゼネバス帝国に軍籍を残す者もいれば、己の新天地を求めてゾイドバトルやゾイド研究企業に籍を移す者もいた。

 

 何より、ネオゼネバス帝国皇帝ヴォルフ・ムーロアは彼らをこれまでの戦争を戦い抜いてきた事こそ彼らの最大の功績であったとして、戦後彼らを引き留める事は決してしなかった。

 

 ヒューイックはゾイテックに転籍すると、そんなネオゼネバス帝国の彼らを引き抜き積極的に再就職の道を与えた。

 ……ただし当然、この動きを危険視する動きは当然あり――そして、ヒューイックはZi-ARMSとしてゾイテックから正当な手続きを踏み、独立に至った。

 

 早い話がゾイテックのネオゼネバス派こそがZi-ARMSである。

 

「さて、"君"はいつ、目覚めてもらおうか」

 ヒューイックは、Zi-ARMSのある秘匿開発区画の一角で、建造中のゾイドを眺めていた。

 特に感情を交える事もなくそう言う。

 

 そこに在ったのは、ある黒いトラ型ゾイド。

 そして、かつて共和国を震撼させた旗艦ゾイド、その改良型のデスザウラー――メガザウラーだった。

 

 

「――お断りいたします、ヒューイック准将。いえ、今はヒューイック・レム、ゾイドバトル部門技術顧問、でしたでしょうか」

 ゼネバス人であったはずの彼女、フルーゼ・フェイはそう言って私の提案を両断した。

 

 ある日の昼の事だった。

 私は――ヒューイック・レムはゾイテックより独立し、新たな企業を立ち上げるための人材を水面下で探していた。

 主にソレはネオゼネバスで活躍していた人物であり、彼女もまたその例に漏れなかった。

 格式ばったパーティに招きもてなす、そんな形式での所謂スカウトというヤツだった。そうするに足るだけの価値を彼女は有していると私は判断した故に、彼女と一対一で会う事としたのだ。

 彼女がネオゼネバス帝国に在籍していたころの主要な功績は主にキメラブロックス開発とオーガノイド研究の事績に学ぶことができるだろう。

 事実、このキメラブロックスに関するいくつかの彼女の論文はゾイテックにも新たな知見を齎した。

 

「……聞こうか。それはなぜ?」

「私がゾイテックを積極的に離脱するべき理由がありません」

「君はゼネバス人だ。ならば、きっと気の合う人達とやっていけるのではないかな」

「私が欲するのは、ゾイドの平和利用への研究が出来る人です。貴方の構想するZi-ARMSの構想は巧妙にカモフラージュはされていますが、さらなる戦闘用ゾイドの開発でしょう」

「見解の相違だな。私はゾイドバトルの振興を推し進めたいと常々思っている」

 無論、そんな言葉は建前でしかないことは自分が一番よく理解している。

 そしてある意味、彼女は二番目に理解していると言えるだろう。暗に直言はしないだけで、Zi-ARMS創設における"私の意図"をよく理解している。

 

「ネオゼネバス帝国とへリック共和国の長きにわたる戦争の末、今の平和があります。この平和をつかの間で終わらせない努力が必要であり、ゾイドの平和利用が今の私が望むことです」

「平和を脅かそうとする者もいるだろう。そんな者達への矛となる組織もまた、必要ではないだろうか?」

「平和を脅かす者達に対してゾイテックを盾とし、Zi-ARMSを矛と為す、ですか」

「ゾイテックはあまりにもゾイド開発に縛りが多すぎるからな」

 暗に彼女はこう言っている。

 ネオゼネバス帝国は敗北したのだから――帝国人材を結集させて企むことなど一つしかないのだと。まったく、その通りだ。

 決して私の建前は嘘ではない。……嘘ではないが、総てではない。

 

「君の遥かな先祖――地球という惑星に住んでいた者達には矛盾、の故事があるという。最高の盾と最高の矛、交えればどちらが勝ると君は思う?」

「思うに、品質が伯仲しているのなら、後は担い手の練度に帰結する問題でしょう」

「では、担い手が伯仲しているのなら?」

「なれば天命が決める事かと」

「惑星Ziに神はいるかね」

「信心とは無縁なもので」

 ただ、彼女は無味乾燥にそう返す。

 私と言葉を交える気はないとばかりに。そうして、彼女は私に背を向ける。

 

「二点、ご忠告を差し上げます」

「なんだろうか」

「私がゼネバス人である事が、貴方に無条件で協力する理由になると思っているのなら、レイ・グレッグはヴォルフ陛下となぜ共に肩を並べて戦う事にならなかったのかを考えるのがよいかと愚考します」

「――」

 その例を持ち出す事が如何なる意味を持つのか、彼女が知らないはずはないだろう。

 レイ・グレッグ――大戦末期、ヴォルフ陛下に前に立ちはだかり、そしてネオゼネバス帝国の敗北を決定づけたへリック共和国の英雄の名であり、彼はゼネバス人でもあった。

 それを理解した上で彼女は告げている――つまりは、彼女は根本から私には同調しない人物であるという事だ。

 

「そして、ヒューイック元准将。貴方はヴォルフ陛下にはなれません――そして亡きプロイツェン陛下にも、決して」

 

 

 ヴァイスタイガーは予定通りに性能試験を完了し、規定の性能水準を満たした。

 このため、ゼーガはフェイと共に次のゾイドのテストに移ることとなった。

 

 と言うのも、コードネーム「白」の開発はヴァイスタイガーのみに留まる話ではないからだ。

 コードネーム「白」の開発は最終的にある一体のゾイドを完成形としている。ヴァイスタイガーの開発はその中の第一歩である。

 今、研究用ハッチでフェイとゼーガの前に立っているのはワイツウルフと呼ばれるゾイドだった。 

 

「……狼型ゾイド? ワイツウルフ? ケーニッヒウルフの後継機か?」

「基本的な設計はケーニッヒウルフとコマンドウルフを参考にしている。……だが、それらとワイツウルフは根本的に異なる点がある。――先のヴァイスタイガーのゾイドコアを、移植しているんだ」

「……?」

 その言葉に、ゼーガは少し怪訝に思う。

 技術には疎いがそれでもゼーガでもわかる不自然な話だったからだ。

 

「ゾイドコアと躯体はワンセットのはずだが、トラ型ゾイドのゾイドコアをそのまま狼型ゾイドに移植して機能するのか?」

「コアゲノム偽装による躯体とのアンマッチング回避を施している。……ヴァイスタイガーに用いられているゾイドコアは非常に特殊で比類なく強力だ。そして狼型ゾイドとすることで、意図的に機体とコアの齟齬を生み出し出力を制限する。これがワイツウルフ開発の目的だ」

「なるほど、どうりで」

 フェイの話に、ゼーガも納得のいく部分はあった。

 強靭極まるコア出力。それは確かにヴァイスタイガーのテスト運用でも感じたことがある。

 優等生過ぎる操縦性の由来として考えるのなら筋が通った話でもあった。

 

「特殊なコア、というのであればいつか実例はある。例えばアーカディア王国のアトレー王子が駆るトリニティタイプだ。あとはチームブリッツ所属のライガーゼロとバーサークフューラーが代表例だろう、あの二機は既存の同型機とはコアが根本から異なるとされている」

「このワイツウルフに使われてるコアの出力は次世代機、ところか本来は次々世代のものだったということか?」

「概ね正しい理解だ。ヴァイスタイガーのそれでさえ本来の出力のおおよそ二割にも満たない。最大出力で駆動させた場合恐らく躯体がそのエネルギーに耐えられず、操縦はその本能を御しきれない。それだけ、ヴァイスタイガーのコアは特殊であるという事だ」

 フェイは淡々とそう言葉を紡ぐ。ヴァイスタイガーの性能はむしろアレでさえ極限まで制限されていたのだという事実に、ゼーガは実感があまり沸いてはいなかった。

 だがそれ以上にある疑問がわいた。

 

「ゾイドコアの出所は一体どこなんだ、という顔をしているようだなゼーガ。答えよう。……君はしばしば、強力なゾイドコアや野生体はそのルーツが太古の惑星Ziにある事を知っているか?」

「文献で知ってる限りだと、オリジナルオーガノイドシステムを搭載していたというデススティンガーがその代表例だな」

「あぁ。太古の昔から苛烈な生存競争を生き延び、やがて躯体が朽ち果て伝説とゾイドコアのみを現代に残して眠りについた蒼、白、紅の三機のトラ型ゾイド達。その一角たる白こそ、ヴァイスタイガーのゾイドコアだ」

 ……ゾイドの神話や伝説はいくつかある。昔、親父に博物館に連れられた時に古代虎型ゾイドの伝承を見たことはある。

 また、Ziファイターの間でもまことしやかにこのトラ型ゾイドの伝説は囁かれている。

 けれどこれは神話じゃない。今、確かに白のゾイドコアはこのワイツウルフに埋め込まれているのだから。

 ……本当に白のトラ型ゾイドのコアが実在しているというのなら、ゼーガはある意味において歴史的な研究に関与してしまっているのかもしれないと思った。

 実際テストを通じてヴァイスタイガーのコアの品質は疑う余地がなかったのは事実だ。

 

「歴史としてはオリジナルのオーガノイド以上に古い。そのコアを十全に生かしきれる躯体とアルゴリズムを設計できた場合、恐らくエナジーライガーやZiユニゾン機すら凌駕し同クラスのゾイドの頂点に達し得るだろう」

「フェイ博士にもできないことがあるならいつそんなことが実現するやらだ」

「無論、躯体が熱暴走してもいいというのなら今すぐにでも可能だ。だがその場合、君が乗るのは虎型ゾイドではなく虎ゾイド型の棺桶となるだろう」

 シャレにならない冗談を真顔でフェイは言いながら、今日の予定を告げる。

 

「さて、さっそくで悪いが君なら調整抜きで出来ると読んでワイツウルフのテストをお願いしたい」

「形式は?」

「一対一での実戦形式だ」

 テストパイロットと一口に言っても、さまざまテストがある。

 装甲の耐久性や運動性、等様々だがその中でもゾイドバトル形式は一種、テストパイロットが必要とされる所以でもある。

 

 実践に限りなく近い運用条件でゾイドの性能を引き出せるパイロットは必要不可欠なのだから。

 だが同時に怪訝にも思う。ワイツウルフの性能がどうであれ、ゼーガに匹敵し得るテストパイロットかAIがいなければ実機テストになり得ないことも理解していたためだ。

 そして、データの入力されたタブレットを渡すとフェイはもう一機、ワイツウルフの向こう側にあるゾイドに目を移す。

 そこには白塗りの凱龍輝が静かにたたずんでいた。

 

「君の今日のテスト相手は私と奥の凱龍輝が務めさせてもらおう。これでも多少は腕に覚えがある」

 

 

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