モンスターテイマー   作:泰然

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炬燵あったけぇ~……。


9話 必死と困難

 数日間、他の生徒と交え教鞭をとる事に慣れて行ったケイア。そしてそんな生活が続き、使い魔との接点が少なくなっていったある日、ライムが突然癇癪を起こし始めた。

 要望はただ一緒に居たい、ただそれだけだった。今までは授業に遅れていた為、個人授業がメインになりその際はライムはくっ付いて一緒に授業を受けていた。そんなある日、ケイアが寮を出ようとドアに手を掛けた時、ライムの必死の抵抗に遭い困り果てていた。

 

 

 

ケイア「ライム、言う事聞いて。帰ってきたらいっぱい遊ぶから」

 

ライム『ヤダッ。ご主人と一緒がいい!』

 

 

 

 ライムが抵抗しながら、ケイアの服を必死に掴み付いて行こうとしていた。この行為が連日続く為、打開策はないかと模索しているとホテプが見兼ねて説得しようと試みた。

 

 

 

ホテプ『……ライム。主が困ってるから私と遊ぼ、帰ってくる時間まで付き合ってあげるから』

 

ライム『イヤッ。ホテプ、全然笑わないから面白くないんだもん!』

 

ホテプ『……ガーン』

 

 

 

 ライムの素直な言葉が出た事で、ホテプは心に深いダメージを負った。そんな彼女をケイアは慰め、今後の事も考えライムを強く叱る事にした。

 

 

 

ケイア「ライム。何度も同じように困らせるようだったら、今後遊んであげないよ」

 

ライム『うっ……。だって、ライムはただ……』

 

ケイア「ホテプも傷付けた罰として、一週間は遊んであげません」

 

ライム『違うもんっ、ライムだって好きで駄々こねてる訳じゃないもん!』

 

 

 

 そう言い放ったライムは寮を飛び出し、そのまま何処かへ消えて行った。ケイアは追い掛けようとしたがホテプに止められ任せろと言われた為、気持ちを抑え学園に向かった。教室へと入り、終始浮かない顔をするケイアに隣の席のミラが心配して声を掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラ「アンタ、どうしたのよ?浮かない顔して」

 

ケイア「いや、ちょっとね。ライムを叱ったら、怒って部屋を飛び出したんだ……」

 

ミラ「躾されてるモンスターだって言う事聞かない時だってあるわよ。そんな深刻に捉えない事ね。……まぁ、何かあればアタシに相談しなさい」

 

ケイア「……うん、そうする」

 

 

 

 やるせない気持を抑えケイアは、一時限目の授業を受けた。ヴィリーの授業を受けていたケイアは、常に上の空で何も手に付いていない状況だった為、注意を受ける。

 

 

 

ヴィリー「ケイアくーん。何処見てるの、今は授業中だよ?」

 

ケイア「す、すいません……」

 

ヴィリー「はぁ……。授業に入る前に、少し急なお知らせがあります。少し前にドラゴン騒動があって、学園長から通達がありました。このプロネーシス学園の修了課程3年を、1年に引き下げるような形になりました」

 

ケイア「えっ……?」

 

 

 

 各国でドラゴンが、新たに創造し守護する宝玉が何者かに攻撃されているという報告だった。自称神を名乗る者の仕業ではあるが、詳細は不明。分かっている事は、『12体』のモンスターである事が報告されている。

 その者達は各国を分散して襲い、本気で攻めようとせず返り討ちに遭うのだそう。これを不気味に思った各政府は、ドラゴンを援護する形で軍を派遣した。勿論、オリバー王国から近いアネクメは速やかに軍隊を派遣し守りを固めているとの事。

 そして、守りが手薄な国は学園の教師が呼び出され学校内の先生の人数も僅かである。ヴィリーは国と学園の安全を守る為、一人留まり授業を受け持っていた。お浚いとしてヴィリーは、各国に点在する宝玉と国について詳細を述べた。

 

 

 

ヴィリー「私達が居るオリバーの他に、5つの国の説明をするわね」

 

 

 

 その5つの国は、オリバーを囲むように存在している。

 1つは、南に位置する火の国『アネクメ』。嘗てケイア達がダンジョンで潜入した最初の都市で、灼熱の太陽に晒され砂漠と化し遠い昔は水と緑に囲まれたオアシスのような国だった。現在では、遺跡のみが残りホテプと出会った場所。

 2つは、北西に位置する金の国『メタルヴェルク』。ここもケイア達がドワーフの依頼で訪れた、鉱山の町。ドワーフが統治し、様々な種族が混在している。嘗ては古代の人間が統治し、魔法生物のゴーレムやキメラといったモンスターを生み出す拠点となっており、そこでメニカと出会った。

 3つは、北に位置する水の国『ヴァッサーファル』。この都市は、水棲亜人が生息し水の資源が豊かで魚などの資源を各国に流通させている。海や湖と言った水源に、海底神殿が複数存在しておりそこは水棲亜人達の信仰の対象であり聖域である。その場所を古代の人間に穢された事で人々を嫌っている。今では歴史が流れ、人間に対して嫌悪する者はあまり多くは無いが一定数は存在する。

 4つは、東に位置する木の国『バアムクライヒ』。ここは、自然を愛する人間と精霊が統治しており少し町とは異なり自然のまま生活を送っている。人間、植物、昆虫、魔獣、鳥人、爬虫類、スライムと言ったモンスターが多数生息する。オーガのデモン・リッベントロップも、この国の出身であり剣聖のミズユキ・シラヌイも同義である。

 5つは、西に位置する土の国『アップグルント』。この場所は、あらゆる生物が寄り付かない死の大地。その為、アンデットと言ったモンスターが多く存在し、よっぽどの理由が無ければ誰も近寄らない場所。

そしてその国々には、ドラゴンが点在し山の頂上で宝玉を守護しているとヴィリーから説明された。

 

 

 

ヴィリー「守護してるドラゴンの名前も覚えた方がいいんだけど、今は割愛しとくわ。取り敢えず決定事項だから、授業を早く進めて……」

 

ケイア「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 

 

 間髪入れずにヴィリーが話を進めようとした為、ケイアは慌てて話を遮り疑問に思っている事を聞いた。

 

 

 

ケイア「入学したばかりの生徒も、対象に入れるんですか?!僕は志願したから、アレですけど……。まだ戦闘も知らない人達まで……」

 

ヴィリー「ケイア君の気持ちも重々わかるわ。でもこれは、学園長とリアム王が決めた事なの。私も反対はしたけど今の現状、教師まで駆り出される程の人手不足。軍の人達も手一杯で、ドラゴン騒動だけに人員を割いてはいられないのよ」

 

ケイア「でも……」

 

 

 

 

 その事を踏まえて説明されても、ケイアには納得出来なかった。自分が犠牲になるのは構わないが、望んでもいない戦争に巻き込まれるクラスメイトに関しては看過出来なかった。

 だが、自分自身が無力である為どうする事も出来ない不甲斐無さに悔やむケイアはその場では何も言えず、授業をそのまま聞く事しか出来なかった。そしてヴィリー自身も決定事項の為、励ましの言葉を掛ける事も出来ず授業も終わり夕方となった。

 ケイアは寮へと戻り、ライムの件が片付いていると高を括っていた。だが、部屋に入るとホテプがずっとライムのご機嫌を窺い何も解決していなかった。事態は一向に進展しない為、ケイアも痺れを切らしライムに注意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「どうしたんだ、ライム?いつもは素直に聞き分けてくれるのに……」

 

ライム『絶対ご主人と一緒がいい!一緒じゃなきゃいけないの!!』

 

 

 

朝と言っている事が変わらず、ホテプも同じセリフを何度も聞いている為疲れた顔で今までの状況を説明した。

 

 

 

ホテプ『……もう、何度も同じ事の繰り返し。主が一緒じゃなきゃ嫌だ、って言って聞かない』

 

 

 

 ライムはこのセリフを吐くのみで、その理由を全く話そうとしない為ケイアは確認するのも含めて根拠を尋ねた。

 

 

 

ケイア「ねぇ、ライム。何でそんなに一緒がいいの?」

 

ライム『だって……。だって、ご主人の側に居るだけしか取り柄が無いから……』

 

ケイア「えっ……それってどういう事……?」

 

ライム『……ッ』

 

 

 

 理由を尋ねようとした時、ライムは突然部屋を飛び出した。それに驚いたケイアは、思わずライムを追い掛けた。ケイアは走りながら呼びかけるが、ライムの脚は止まらず学園の外に出ようとしていた。そしていつも門番をしてくれているメニカが、二人が走り出してきた事で驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メニカ『ドウシタノデスカ、二人共?』

 

 

 

 驚くメニカを余所にケイアは、大声でライムの捕獲をを命じた。

 

 

 

ケイア「メニカッ、ライム捕まえて!」

 

メニカ『承知シマシタ』

 

 

 

 メニカはライムの前に立ち塞がり、両手で優しく抱き上げた。持ち上げられたライムは、振り解こうと暴れ出すがビクともしなかった為か動くのをやめた。そしてメニカは、ライムをそっと優しく下ろしてあげた。ケイアは再び注意を促そうとした時、ライムは突然、捲し立てるように叫んだ。

 

 

 

ライム『ライムじゃ、ご主人を守れないから……。だから、ご主人にくっつく事しか存在価値が無いのっ!』

 

ケイア「ライム、それは違うよ?!」

 

ライム『だって、ご主人が最初メニカに襲われてる時もホテプが居なかったら助けられなかったし。この間のハイオークに襲われてる時も、動きを止めるので精一杯だったもん……。ライムじゃ何の役にも立たないよ……』

 

ケイア「ライム……」

 

 

 

 ライムは背を向け、頭を低く下げているように見えた。ケイアは落ち込むライムを見て、ただただ助けたかった。どんな言葉を掛けてあげれば自信が持てるのか、どんな風に寄り添ってあげられるか考えた。ケイアは今まで一緒に歩んできた事を振り返り、素直な言葉を掛けた。

 

 

 

ケイア「あのな、ライム。……自分に自信が持てないのは分かるけど、悲観しなくてもライムの良さは一番よく分かってるつもりだから」

 

ライム『でも……でもライム、何にも出来ないよ……』

 

ケイア「そんな事ないよ。いつもその場を和ませてくれたり、自分より他人を優先してくれるし、アネクメに一緒に行った時に学者の家族を助けた事もあったでしょ?……だからライムは、弱くなんてないよ」

 

ライム『うぅ……』

 

 

 

 ケイアの言葉でライムは、校門で咽び泣いた。慰める為にケイアとメニカは、ライムの頭を撫で他の生徒達に微笑まれながら泣き止むのを待った。泣き止むまで待とうとしたが、中々静かにならない為二人は徐々に恥ずかしくなりケイアはライムを抱え、その場を後にした。再び寮へと戻り、流石に部屋に入れると泣き止み以前より仲が深まった。

 そして部屋の隅で、散々ライムに罵声を浴び続けた結果、心に深い傷を負ったホテプ。ケイアは誤解を解いた後に、ホテプのメンタルケアも行う羽目になった。その後は、ホテプを慰めた後次の朝を迎えた。目覚めたケイアは、まだ少し昨日の授業の事を思い返していた。この戦いで自分の同級生が巻き込まれていくのが、辛いと考えていた。いくら人手不足とはいえ、低学年を駆り出すのはケイア的に納得がいかなかった。そう考えながら、教室へと入り自分の席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「はぁ……。今の僕ですら、ハイオークを倒せないのに……。今から一年って早すぎだよぉ……」

 

 

 

 弱音を吐きながら自身の机に突っ伏しながら悩んでいると、隣の席のミラが登校してきた。元気のないケイアを見て、不思議な顔をしながら聞いた。

 

 

 

ミラ「アンタ、何でそんな溜息ついてんの?朝から辛気臭いわね……」

 

 

 

 その声に気付いたケイアは、昨日言われた授業の話をした。ケイアが話している最中も、ミラは少し鼻で笑うような素振りをしていた。何故真剣に聞いてくれないと、ケイアが尋ねると大事ではないかのように普通に返された。

 

 

 

ミラ「アンタが真剣に受け止め過ぎなのよ。国ぐるみの事なんだから、仕方ないじゃない」

 

ケイア「ミラは怖くないの?!……何も知らない事に巻き込まれて、腹は立たないの?」

 

 

 

 再びケイアは、声を荒らげミラに問い質した。だが、それでもミラは当たり前のように今回のドラゴン騒動について深刻に捉える事では無いと言い返した。

 

 

 

ミラ「あのね……。アイツがドラゴンだか何だか知らないけど、あれは災害と一緒。皆で乗り越えなきゃいけないし、アンタが気にする問題でもない訳でしょ?まぁ、お父様の謁見の間で断ったチームが居たみたいだけど」

 

 

 

 ミラにサラリと返されケイアは拍子抜けといった感じで、その言葉を聞いて少し肩の荷が下りたように感じた。そして少しミラは、当時の謁見の間での出来事を愚痴のように滑らせる。ケイアは恐らく、父親から聞いたのだろうと推測した。そして遅れてくるように後ろから、見知った男性が絶叫にも近い声で語りかけて来た。

 

 

 

フェヒター「落ち込む事は無いです、ケイア殿!生徒の皆さんが駆り出されたとしても、この自分が1000人の力であらゆる敵を薙ぎ払ってみせましょう!」

 

 

 

 いつも通りの声量で現れたフェヒターであった。今日もミラの護衛に就き、快闊な声で朝の静かな教室で聞くとよりその凄さに驚いた。そしていつものように、ミラに説教されているのも見慣れて来た。

 そんな二人に励まされたケイアは、いつものように元気な姿に戻った。そしてそんなケイアを見て、廊下で微笑むヴィリーの姿があった。彼女なりに元気付けようとしたが、その二人のお陰で自分が出るまでもないと判断し、その場から去り職員室へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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