モンスターテイマー   作:泰然

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私の拙い文章力により、台本形式に変更します。
申し訳ございません。


10話 雷帝 気高き舞姫は少年に焦がれる

とある授業中、特別顧問としてアサギリが教鞭を取っていた。モンスターへの回復や状態異常の回復、魔力の流し込み方を教わっていた。ペアを作らなければいけない為、ケイアはホテプと行く事になった。選ばれた経緯は、三人の中でジャンケンを勝ち上がったのがホテプだった為、今回のペアに選ばれた。

 ライムとメニカは少し残念そうに落ち込み、ホテプは何処か勝ち誇ったような表情をしていた。そして二人は、闘技場へと向かいアサギリとヴィリーが待つ場所へと向かった。生徒が集合場所に集まり、アサギリとヴィリーの使い魔のメイサが立っていた。アサギリの横には、初めて見るモンスターが立っており鳥のような姿で黄色い体に電流が流れるようにバチバチと音を立てていた。そしてヴィリーから、一限目を告げる挨拶が行われた。

 

 

 

ヴィリー「みんなおはよう。今日は特別顧問としてアサギリさん、もとい私の師匠に実技訓練を行います。それでは師匠から、挨拶があるのでよく聞くように」

 

アサギリ「おはようございます。今日はモンスターへの回復、状態異常への対処法を訓練していきたいと思います。実戦でも初歩の範疇ですので、しっかり学んでいきましょう。見本を見せる為に、今回連れて来た私の数ある仲間を紹介します。サンダーバードの『ドンナー』です」

 

ドンナー『よっ』

 

 

 

 サンダーバード。伝説上の生物と知られ、またの名を雷鳥と呼ばれ彼女も魔人である。身長は、女性の平均身長と同じで髪の長さは肩の高さ程で常に電流が流れている為か、くせ毛のように髪の毛がうねっている。髪の色は黄色が基調だが、所々に赤いラインが入っており翼や体毛にも同じように見受けられる。彼女はアサギリに紹介される際、軽く右手を上げ軽く挨拶を交わすのみ。

 今は覇気を感じられないが、戦闘では性格が変わったように好戦的になると言われている。その際には、体中の色が変化しその時の『感情で色が変わる』と言われている。紹介も終わり生徒達は準備に取り掛かり、整列していきアサギリの授業が始まった。

 

 

 

アサギリ「モンスターはアイテムでも回復出来ますが、ここにいる生徒は魔法が使えるのでその要領で教えて行きます。先ずは、翳した手に魔力を込めるようなイメージで以下の詠唱を唱える。『彼の者を包み込む癒しを与えよ』」

 

 

 

アサギリが翳した右手が、緑色に光りドンナー自身も光り出した。その流れに沿い、みんな自分達のモンスターに回復魔法を施して行った。ほぼ全ての生徒は上手く行き、ケイアは少し手こずっていた。

 

 

 

ケイア「あれ……翳すだけで出来るのに何で?……上手く出来ないなぁ。いつもなら大丈夫なんだけど……」

 

ホテプ『……主、調子悪い?』

 

ケイア「体調が悪い訳じゃないんだけど……。あっ、出来た」

 

 

 

 何度か試す内に、回復魔法が出て少し安心したケイア。調子が悪い訳では無い為、今回だけだと高を括る。そしてアサギリは次に状態異常への対象方を実践して教えた。

 

 

 

アサギリ「状態異常には掛からない事が大前提ではありますが、その対処法としては異常解除系の魔法を使うか、教会に連れて行き専門の方に治してもらうか。戦闘になる場合、悠長に教会に連れて行くような事は出来ませんので何度も練習して覚えて行きましょう。先ずは先程と同じように手を翳し詠唱を行います。『彼の者から呪縛を解き放ち平癒を齎さん』」

 

 

 

 詠唱を唱えた瞬間、また同じように光を放った。この魔法は回復魔法とは違い、コツを覚えるまで少し時間が掛かるらしい。案の定ケイアは勿論、他の生徒達も苦戦していた。その中でミラは上手く使いこなし、出来るようになっていた。少し勝ち誇ったような顔をし、ケイアを煽ってくる。

 

 

 

ミラ「どう、ケイア?アタシはもう出来たけど~」

 

ケイア「むっ……」

 

 

 

 ケイアは少しムキになり、何度もホテプに手を翳して行うが一向に魔法が出てこなかった。何度も繰り返して行い、少し力んで魔法を送り込もうとした時、右手から膨大な量の魔力がホテプに流れた。

 

 

 

ケイア「えいっ!…………うわっ!?何これ?!」

 

ホテプ『えっ?…………がはっ!?』

 

 

 

みるみるホテプの体内に魔力が流れ込み、ホテプが苦しそうにしているとアサギリが割り込み何とか魔力を沈めてくれた。膝から崩れ落ちるホテプにケイアは近付き、安否を確認した。

 

 

 

ケイア「大丈夫、ホテプ!?」

 

ホテプ『……大丈夫、少しびっくりしただけ』

 

アサギリ「あれだけの魔力が流れて、よく生きていられるな……」

 

 

 

 ホテプはそのまま何もなかったかのように立ち上がり、再開しようとしたがアサギリから訓練は中止と言われ、その場は解散となった。その時、サンダーバードのドンナーが、ホテプに声を掛ける。

 

 

 

ドンナー『おい、お前。俺様と戦え』

 

 

 

 彼女はホテプを指をさし、指名してきた。先程あのような事があった為、アサギリは当然のように止めようとする。

 

 

 

アサギリ「バカかお前は。あんな事があった後に出来るはずないだろ!」

 

ドンナー『旦那は黙ってろ。あれだけの魔力を注がれて、ピンピンしてる方が可笑しい。余程のポテンシャルが高く無きゃ、並みのモンスターなら死んでる。決めるのは、お前だ。さぁ、どうする?お前がやらなきゃ、お前の主をボコボコにするぞ。それでもいいのか?』

 

ホテプ『……主には、手出しさせない』

 

ドンナー『へっ、そうこなくっちゃっ!』

 

ケイア「ダメだってホテプ!体を休めて、保健室で診てもらわないと……」

 

ホテプ『……大丈夫。アイツの気が済めば直ぐ終わるから』

 

 

 

 モンスター二人は闘技場の中央に移動し、ケイアとヴィリーとメイサとアサギリは不安になりながら隅の方に移動した。何かあればすぐ止められるように、お互い見守りながらアサギリは愚痴を零していた。

 

 

 

アサギリ「全く……。大人しくしているという名目で連れて来たのに、何故こうなる……」

 

ヴィリー「興奮すると止まりませんからね、ドンナー」

 

ケイア「さっきまで大人しかったのに、急に性格変わりましたよね」

 

メイサ『普段は可愛い子なんだけど、強いモンスターが居るとあぁなっちゃうのよね~』

 

 

 

 メイサは頬に手を当てながら困ったような表情をし、ケイアはただ不安だった。相手は幻獣、それに加えて魔人化している。今のホテプは未知数な部分が多いが、勝ち目はない。ドンナーが少し笑いながら、ホテプを睨み付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンナー『へっ。失望させんなよ』

 

ホテプ『…………』

 

 

 

 そしてドンナーが、翼を広げ体に纏っていた電流が大きくなり始めた。放電し続けた体の色が徐々に変化していき、黄色だったのが赤く変化していった。構えに入ったドンナーは、鉤爪に力を入れ放電しながら突っ込んできた。

 

 

 

ドンナー『一発で終わりとか、無しだぜっ!』

 

ホテプ『……っ!』

 

 

 

 体当たりのような形で突っ込んできたドンナー。それを紙一重で交わしたホテプは、水の祈りを唱えた。

 

 

 

ホテプ『命を運ぶ水門となり、強者を薙ぎ撃て』

 

 

 

 唱え終えると、無数の水の線が横に広がり高速でドンナーに飛んでいった。数が多い為か、何発か当たったドンナーは平気そうに見えたが羽が水でビショビショに濡れてしまった。

 

 

 

ドンナー『……まぁ、そう考えるよな。水で感電させ、動きを封じる……。的外れだがなっ!!』

 

                  バチバチッ!!

 

 

 

 そう発言した瞬間、また大きく放電し今度は赤色から紫色に変化していった。放電するたびに眩しく光る為、その一瞬の光線にケイアの目には残像が残った。その圧倒的な迫力にケイアは、ただ黙って見る事しか出来ないでいた。

 

 

 

ケイア「また色が変わった……」

 

アサギリ「あれは強くなればなるほど、色が変化していく。あれ以上、出力を出すとここが無くなる。どこかで止めなければ……」

 

 

 

 アサギリは止める隙を窺いながら、展開はどんどん進んで行く。ホテプも何かを察したのか、ドンナーに止めるように促そうとした。

 

 

 

ホテプ『……もう十分でしょ。これ以上やり合っても、意味はない』

 

ドンナー『あぁ?今更何言ってんだ、お前……?こっからが面白れぇんじゃねぇか。本気で来ねぇと、お前の主……死ぬぞ?』

 

ホテプ『……くっ』

 

ドンナー『サンダーヴィントッ!

 

 

 

 翼を大きく羽ばたかせ、風を発生させると同時にそれが風雷となってホテプに襲い掛かる。ホテプは瞬時に詠唱を開始し、砂の壁を作った。

 

 

 

ホテプ『砂塵よ、我が身を護り打ち返せっ!』

 

ドンナー『俺様の攻撃を防いだ?!あんな砂の壁で……』

 

 

 

 不意を突いている間にホテプは、電撃を受けた砂の壁をドンナー目掛けて放った。油断していたドンナーは、避ける事が出来ず直接受けてしまった。

 

 

 

ドンナー『うわっ!?……ぺっぺっ。てめぇ……やってくれんじゃねぇかっ!』

 

 

 

 砂が口に入り、怒りが限界点を越えそれに伴うようにドンナーの周りに雷が落ち始めた。飛び掛かろうとした時、ホテプが手を前に出し止まるように促した。

 

ホテプ『……私の勝ち。これ以上戦っても無意味』

 

ドンナー『はぁ、何言ってんだ?どっちかが倒れるまで勝負は……羽が上手く動かねぇな。うわっ、何だこれ?!』

 

 

 

 ドンナーは自分の羽を見て驚愕した。羽に付着していた砂が、自身の帯電で溶けて固まってしまっていた。ホテプは最初から計算して攻撃を繰り返していた。

 最初の水で濡れた体で油断させ、相手を挑発するように促し、最後に自分の放電によって体に付いた砂で身動きを封じる作戦だった。それに気付いたドンナーは、肩を震わせ耳を塞ぐ程の絶叫を轟かせた。

 

 

 

ドンナー『だああぁぁぁぁ!!ここまでコケにしやがって…………てめぇは、ぜってえ許さねぇぇぇぇぇぇぇっ!』

 

 

 

 まさに雷霆の如く叫声を上げ、ドンナーに雷が落ちたその瞬間、再び色が変化していた。今度は紫から青白く全身が変わり、発光していた。ドンナーの周りには、嵐でも吹いているかのような風圧がありホテプも思わず立ち竦んでしまう程だった。

 

 

 

ホテプ『……す、凄い力』

 

アサギリ「いかんっ!」

 

 

 

 これ以上進めば止められないと判断したアサギリは、透かさずドンナーの下へ向かい魔法で暫く眠らせる事にした。

 

 

 

アサギリ「少し眠っていろ」

 

ドンナー『何する旦那!?まだ決着は、ついて……ない……』

 

 

 

 アサギリは彼女の額に手を翳し、そのまま眠ったように崩れ落ちた。抱きかかえられながら、アサギリ達はその場から居なくなってしまった。取り残されたケイアとヴィリー達は大事を取って念の為、保健室へと向かった。一先ずホテプは保険の先生に診てもらい、体に異常は見られず一安心するケイア。そしてケイアは、ベッドに座っているホテプの体調を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「はぁ……よかった。何もなくてよかったよ……」

 

ホテプ『……何処も痛くないし、体調も万全。それより主の方こそ、大丈夫?』

 

ケイア「僕は大丈夫だけど……」

 

ホテプ『……本当に?』

 

 

 

 そう言いながら顔を近づけてきたホテプにケイアは思わずドキッと驚き、逸らしてしまった。逸らした事でホテプは、更に追撃するように赤くなったケイアの顔を窺いながら優しく頬を添えた。

 

 

 

ホテプ『……本当に大丈夫?顔を赤いけど……』

 

ケイア「ほ、本当に大丈夫だって……///」

 

ホテプ『……そう?』

 

ヴィリー「あのさぁ……イチャつくのはいいけど、私達も居るんだけど?」

 

メイサ『大胆ね~♪』

 

 

 

 甘い空気に耐えかねた二人が話を振り出しに戻し、先程の闘技場で起こったケイアの魔力暴走について詳しく議論する事になった。

 

 

 

ヴィリー「その時の事を詳しく説明してくれる?」

 

ケイア「最初の回復させる訓練で、発動するまで少し時間が掛かったくらいですね……。その後の解除の魔法を使うとしましたけど、僕は詠唱では発現させる事が出来ないので無詠唱でやってみたら、あんな事に……」

 

ヴィリー「普段から魔法を消費して、魔力暴走を抑えてるんでしょ?」

 

ケイア「はい。なので、今回の件について思い当たる節が……」

 

 

 

 何度か議論したが、あてはまる項目が無い為そのまま分からず仕舞い。取り敢えず誰も外傷があった訳では無い為、その場で解散しようとした時、遠くから軽装の鎧に赤髪の女性が近づいてきた。何やら怒った表情でこちらに詰め寄り、唐突に大喝が飛んできた。

 

 

 

?「おい、闘技場を荒らした男というのは貴様の事かっ!」

 

ケイア「えぇ!?僕?!」

 

ヴィリー「そんなに怒鳴る事ないじゃない。『ハルト・トルディーナ』」

 

ハルト「そんな訳にいくかっ!こっちは近隣住民からの苦情で宮殿から学園に駆け付け苦労したというのに……。剰え施設を破壊するような事態にまで発展させるとは教員としてどう責任を取るつもりだっ!!」

 

ヴィリー「……うるっさ。これだから第三師団長様はお堅くて困るわ~、おまけにバカ力だし……」

 

ハルト「ちょっと、聞こえてるぞっ!」

 

 

 

 彼女はオリバー第三師団隊長、ハルト・トルディーナ。赤髪のシトリーヘアで前髪が少し長い為、左目が隠れている。武器は使いこなすのが難しい長弓が得意で、接近戦では脚が長い為靴に刃物を仕込んで蹴りで戦う。ヴィリーが言っているように、ハルトは頑固で融通が利かないところがある。

 だが、規律さえ守れば部下を護る仲間想いの上司。それをひっくるめても彼女自身怪力な為、普通の男は怖がり業務以外の話はしない。ケイアが呆気に取られていると、彼女からまたもや弾丸のような口撃が飛んできた。

 

 

 

ハルト「貴様、名前は?」

 

ケイア「は、はいっ。ケイアと言います……」

 

ハルト「ふんっ、軟弱者が。次、同じ事で私を呼ぶ事があれば……その時は命が無いと思え。いいな?」

 

ケイア「は、はいぃ……」

 

 

 

 威圧的な態度を取られたケイアは、声も体も小さくなったように縮こまってしまった。それに腹を立てたのか、ホテプがハルトを睨み付け反抗する。

 

 

 

ホテプ『……主に、謝って』

 

ケイア「いいよ、ホテプ。別に怒ってないから……」

 

ハルト「使い魔を介さなければ言えないとは、とんだ腑抜けだな」

 

ホテプ『……取り消してっ』

 

ハルト「お前も私達、騎士からすれば保護する対象だが反抗するのであれば話は別だぞ?」

 

 

 

 二人は一歩も引かず、至近距離まで詰め寄り睨み合いが続いた。長い時間が流れた為、痺れを切らし間に入ってヴィリーが止めた。

 

 

 

ヴィリー「はいはい、私が悪かったわ。教師として私がしっかり教えておくから、忙しい人は帰った帰った」

 

ハルト「お、おい、押すなっ!?次もう一度やったらヴィリー、貴様も厳罰対象だぞっ!」

 

ヴィリー「わかったわかった、さっさと帰ってくださ~い」

 

 

 

 そう言いながらヴィリーは、強引にハルトを帰した。ハルトは渋々と云った感じで、顔を歪ませまだ言いたげだったように感じホテプはその後ろ姿を睨み付け明らかに敵対視していた。ハルトが完全に姿が居なくなった瞬間、ホテプの溜まりに溜まった鬱憤が止まらなかった。

 

 

 

ホテプ『……ムカつく。主の事、何も知らないのにバカにして』

 

ヴィリー「まぁまぁ、悪い奴じゃない事は確かだから。そんなに目くじらを立てないで、ね?」

 

ケイア「僕は本当に怒ってないし、大丈夫だから」

 

ホテプ『……主が怒ってなくても、大事な人を傷付けられて黙ってられないっ』

 

 

 

 未だに怒りが抑えられなく、制御が利かないホテプ。自分より他人が傷付けられるのが余程、頭にきているのが分かる。暫くの間、ホテプを宥める事に注視しながらその日は終わりを告げる。

 そして数日が経ったある日、剣術の授業が行われる事になりフェヒターが来る予定だったが討伐任務に向かわなければいけない為、他の師団長が来てくれる事になった。ケイアはホテプを連れミラも加わり歩きながら、どんな人が来るのか少し心を躍らせながら待ちわびていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「だから今日、フェヒターさん護衛に居なかったんだ」

 

ミラ「そう。だから今回、スザクが来るみたいね。アタシの方にも連絡がきたわ、他にも来るみたいだけど詳しくは聞いてないわね……」

 

ホテプ『……嫌な予感』

 

 

 

 話しながら二人は闘技場へと向かい、何名かの生徒は整列し始めていた。そしてぼんやりと見知った顔を見付け、スザクが立っている事に気付く。ケイアが少しずつ近付いていくとスザクが気付き、突進するような勢いのまま満面の笑みで走って来た。

 

 

 

スザク「ケイアどのー、お久しぶりです!逢いたかったですー!」

 

ケイア「お、お久しぶりです……スザクさん。お元気そうで何よりです……」

 

 

 

 ケイアの手を握りながら、上下に大きく揺らすスザク。その反応に気圧され、少し困ったような顔をしながら再会を喜んだ。少しケイアは後ろの方が気になり、目線を配ると数日前に遭ったハルトの姿があった。そのまま目線が合い、彼女がドンドンと近付いてきた。気まずい空気になりケイアは、乾いた笑い漏らすしかなかった。

 

 

 

ケイア「あ、あはは……数日ぶりですね」

 

ハルト「よくそんな事が言えるな。私を見た途端、嫌そうな顔をしていたが……?」

 

スザク「あれ、二人共知り合いですか?」

 

ケイア「えぇ、まぁ……」

 

 

 

 歯切れの悪い二人を見て、少し疑問に思うスザク。そのまま何事も無かったように振る舞うとした時、ホテプがハルトの眼前に立ち再び睨み合いが続いた。

 

 

 

ホテプ『……何で居るの?』

 

ハルト「何でとは、随分とご挨拶だな。私は学園から頼まれてここへ来ただけだ。文句なら、ここの責任者にでも言ったらどうだ?」

 

ホテプ「……」

 

ハルト「……」

 

 

 

 二人の攻防戦が続きケイアは慌てふためき、スザクは全く状況が掴めず終始困惑状態だった。そして遠くの方からヴィリーが遅れてやってきた事で、その場は荒れずに済んだ。数分遅れで授業が始まり、先ずは師団長の自己紹介から始まった。

 

 

 

ヴィリー「では先ず、二人の師団長から簡単な自己紹介から」

 

スザク「第二師団長のスザクです。心許ない拙者の剣術が、皆さんの役に立てれば幸いです」

 

ハルト「第三師団長、ハルトだ。私は、スザクのように甘くはない。これから戦場に立つ身に置かれるお前達に、礼儀というものを叩きこむ。覚悟しろ」

 

 

 

 スザクの優しい謙虚な発言に対して、ハルトは強い口調で厳しく口にした事で生徒はその異様なまでの辛辣さに疑念を抱いた。そしてそのまま授業は始まり、剣術の基礎である素振りでの体の使い方からとなった。

 それぞれグループになり、スザクとハルトのチームで分かれる事になった。ケイアはハルトのチームに入り、内心不安な部分があった。そして二人の教え方が顕著に表れ、スザクの方は教え方が上手な為、円滑に訓練が進行していた。

 

 

 

スザク「構えにも様々な種類があって、上段、中段、下段。それぞれ、特徴がありまして相手に合わせて戦闘形態を変える事も大事になります」

 

 

 

 一方ハルトの方は、自身にそぐわない振り方、構え方をすると直ぐに指摘が飛び、そこからは罵倒の嵐となりケイアも勿論多数の叱責を浴びる事となった。

 

 

 

ハルト「違うっ!重心が前に行き過ぎている、振りも遅いっ!……全く、軟弱者はこれだから」

 

ケイア「す、すいません……」

 

ハルト「俄かにはスザクを救った男とは思えんな。女にただ虚勢を張り、安い矜持を魅せつけたかっただけか……醜いな」

 

ケイア「…………」

 

 

 

 彼女に返された言葉に反論する事は出来なかった。スザクを救った時、救助は出来たものの戦闘では何の役にも立たなかった為、庇う事しか出来なかった不甲斐無さに言い返す言葉が見つからなかったからである。そんな言葉に看過できなかった、スザクとホテプが激情しハルトを睨み取り消すように促した。

 

 

 

スザク「ハルト。例えアナタでも、拙者の恩人に対して無礼です……」

 

ホテプ『……消すっ』

 

ハルト「少し言い過ぎたな、すまなかった」

 

 

 

 流石にスザクが鞘から刀を抜く動作をした為、ハルトはその場で謝罪した。ホテプは相変わらず射殺すように、常に睨み付け許す様子が無かった。ハルトはそんな目線に目もくれず、授業を進めて行った。ある程度、様になってきた頃に実際に試し斬りとして大木を使用する事になった。

 

 

 

スザク「皆さんも慣れてきたと思うので、これからこの大木を斬ってもらいます」

 

 

 

 結構な太さに驚く生徒に、無理難題を押し付けるスザク。普通であれば斬れはしないが、訓練さえ積めば斬れると言われ皆一斉に斬りかかるが全く上手くいかない。ケイアも同じように支給された剣を使い、斬りかかる。

 

 

 

ケイア「えいっ!…………全然ダメだ」

 

スザク「本格的に握ったのが今日が初めてですから、そう落ち込まなくても大丈夫です」

 

ケイア「ありがとうございます……」

 

 

 

 スザクからの気遣いが尚の事、突き刺さり殆ど大木に傷を付けられずに凹むケイア。それが悔しかったケイアは、右手の力を少し利用し斬ってみる事にした。

 

 

 

ケイア「今度こそ…………えいっ!」

 

 

 

 掛け声と共に振り下ろされた剣は、なんと大木の半分以上食い込み成功した。それに喜ぶケイアだったが、そこから木に亀裂が入り倒れて来た。それに気付かずケイアははしゃいだままだった為、ハルトが身を挺して庇った。

 

 

 

ケイア「やった、斬れたー!」

 

ハルト「……っ!バカ、避けろ!!」

 

ケイア「うわっ!?」

 

ハルト「ぐっ……つっ……」

 

 

 

 間一髪でケイアは助かったが、ハルトは庇う際に大木を受け止めた右手が打撲となり大きく腫れあがった。直ぐ様ケイアは、その場で謝罪を繰り返し頭を下げた。

 

 

 

ケイア「あ、あの、すいません。僕がよそ見していたせいで……」

 

ハルト「……イタッ。怪我はないか?」

 

ケイア「はい、なんとか」

 

ハルト「そうか、なら良かった。スザク、私は少し保健室に行ってくる」

 

スザク「えぇ、無理はしないで下さいね」

 

 

 

 そのままハルトは、保健室へと向かい闘技場を去った。ハルトの事が気になったケイアは、スザクに付き添いを申し出た。

 

 

 

ケイア「スザクさん。ハルトさんの様子見に行ってもいいですか?直ぐ戻りますんで」

 

スザク「様子見くらいだったら……」

 

ケイア「ありがとうございますっ」

 

 

 

 スザクの返答後、直ぐに保健室へ向かい走り去っていった。ケイアが保健室に着いた頃、ハルトは椅子に座り腫れた部分を氷の魔法で冷やし包帯を巻こうとしていた。その光景を見てケイアは、直ぐ様ハルトの包帯を巻こうと息巻いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「ハルトさん、僕が巻いてあげますよ」

 

ハルト「これくらい自分で巻ける。貴様の手助けなど……」

 

ケイア「巻きますね」

 

ハルト「こ、こらっ…………意外と強引な奴だな」

 

 

 

 押し留めようとするハルトに対してケイアは強引に包帯を巻いた為、断り切れずそのまま大人しくされるがままだった。その間、静かな時間が流れ二人の息遣いと包帯の擦れる音のみが響いていた。そんな静かな空間に耐えられなかったのか、ハルトは包帯を巻かれている途中だったがケイアの手を振り切った。

 

 

 

ハルト「も、もう、いい///……面倒をかけたな」

 

ケイア「もう大丈夫ですか?」

 

ハルト「痛みは治まった。貴様は、訓練に戻れ。その…………すまなかった///」

 

ケイア「いえ、当然の事なので。それでは」

 

 

 

 そしてケイアは保健室を出て行き、走り去る音が木霊していた。音が遠退くのを確認し、ハルトはベッドに横たわり包帯の右手を見つめながら先程のケイアの温もりを確認していた。そして小さく彼女は呟いた。

 

 

 

ハルト「私もいい歳だぞ、何をドキドキしている……。私はもう恋はしないと、決めていたのに……同じ過ちを繰り返すのか」

 

 

 

 少し前ハルトは結婚を約束していた相手がいたが、男はその結婚を破棄し理由も告げられず婚約は叶わなかった。ただ、一つとして男は執拗以上に性行為を求めていた。ハルト自身、やぶさかでは無かったが婚約を交わした後に済ませたいと何度も提言していた。

 だが、男は何度も繰り返しやめようとしなかった。そして結婚破棄を告げられハルトが討伐遠征から帰還し凱旋を行っている最中、ふと見知った姿が目に入りそちらに顔を向けた。何と婚約相手だった男性が、違う女性と抱き合いながら騎士達に手を振っていたのだ。信じられない光景にハルトは、道から逸れ男の前に馬上のまま立ち長弓を構えた。

 そこから頭に血が上り、男を射止めようと我を忘れた。他の騎士達に必死に止められ、その場で血飛沫を飛ばす事は無かった。その後の話によると男は、結婚詐欺を繰り返していたらしく女性を誑し込み性行為に及んだ後、睡眠薬で眠らせ金目の物を盗む手法を使い数々の犯罪を犯してきた極悪人で救いようの無い男だった事が判明した。抱き合っていた女性も当然被害に遭い、小金持ちだった為、狙われたようだ。その一件以来、ハルトは男性が信じられなくなり、つい異性にはきつく当たってしまうようになった。だが先程ケイアの優しさに、心が揺れ葛藤に苛まれる。

 

 

 

ハルト「どうせアイツも、あの男と同じ。一度優しくされたくらいで、同じ失敗は繰り返さん。昔の私とは違うのだ、昔の私とはっ……。だが、あれだけ罵声を浴びせたというのに優しくする理由は何だ?……まさか私に惚れているのか///いやいや、違う断じて違うっ!自惚れ過ぎだ…………。だが……」

 

 

 

 悩み続ける28歳の第三師団長は、長時間保健室に留まり悶々としていた。そしてハルトは、ある案が浮かびケイアを困らせる事となる。

 

 

 

 

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