モンスターテイマー   作:泰然

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今年も後僅か……。


11話 愛に気付く舞姫

 スザクとハルトの実技訓練から数日が経ったある日。二人は再び、学園へと招かれ訓練の講師として訪れていた。闘技場へ向かう途中、スザクはハルトの格好に疑問を持ちながら話しかける。

 

 

 

スザク「ハルト。今日、そんなに暑くないのに随分と薄着ですね。しかも随分、際どい……」

 

ハルト「この格好の方が動きやすいんだ、気にするな」

 

スザク「そう……。ならいいですけど」

 

 

 

 ハルトの普段の戦闘服でも、体のラインが見えるものが多い。だが、今の格好はあまりにも男性の目を惹き、胸のラインが出るタンクトップにお尻が丸見えのホットパンツ。

 普段からこんな格好をしないハルトに困惑するスザクは、聞き出そうとしたがそれ以上触れるのをやめた。そして闘技場へと到着した二人は、着いた瞬間ハルトの姿に視線が注がれた。同じようにケイアホテプも驚き、ミラにその真意を聞いてみた。

 

 

 

ケイア「ねぇ、ミラ。ハルトさん、何であんな格好してるの?」

 

ミラ「知らないわよ。アタシが聞きたいぐらいよ、あんな格好で同じ女性として恥ずかしいわ……」

 

ホテプ『……尻軽』

 

 

 

 そんな話をしながら整列し、今日の大まかな授業の流れを二人からの説明を聞き訓練が始まった。内容は以前やった実技と同じで流れて行き、淡々と授業が進んで行った。

 そして最後の方で、一対一の模擬戦を行う事となりケイアはミラと組もうとした時、ハルトに指名され戦う事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルト「今から模擬戦を行うのだが…………ケイア、私と組め」

 

ケイア「えっ、僕がですか!?」

 

ハルト「嫌なのか?」

 

ケイア「いえ……そんな事は」

 

 

 

 ケイアは断る事も出来ず強制的に決められ、ハルトと模擬戦を行う事になった。ハルト自身、弓や蹴り技を使った体術が主な為、剣術は人並程度の実力。それでも今のケイアにとっては、勝てる相手ではない。

 生徒同士が模擬戦を行う方が適切だと考えたケイアは、何故ここまで自分を指名するのか分からなかった。なし崩しにそのまま進行していき、ケイアとハルトは戦闘準備に取り掛かり審判役としてスザク取り仕切る事になった。

 

 

 

スザク「じゃあ、双方準備はいいですか?……始めっ」

 

ハルト「ふんっ!」

 

ケイア「くっ……」

 

 

 

 戦闘が始まった瞬間、ハルトが先制攻撃を仕掛け上段から振り下ろすように叩き付け、ケイアがそれを辛うじて受け止めた。やはり力量の差は歴然で、ケイアが必死に攻めてもハルトはそれをいなして見せ全く一手が決められずにいた。

 

 

 

ケイア「はっ!やっ!」

 

ハルト「そんな太刀筋では、ゴブリンにすら太刀打ちできんぞ」

 

ケイア「くっ……やあっ!」

 

ハルト「甘いっ!」

 

 

 

 我武者羅にケイアは剣を振り続け、ハルトの剣撃を防いでいた。ケイアは何も打つ手が無いと考えていた時、彼女が小さく言葉を漏らした。

 

 

 

ハルト「気持ち悪い……」

 

ケイア「え?」

 

 

 

 ケイアの耳には微かに聞こえた。彼女が気持ち悪いと口にした瞬間、ドンドンと剣技が早くなってケイアはただ防ぐ事しか出来なかった。ケイアはハルトの目を見ると、何処か虚ろだった。そしてハルトは、心の中で嫌悪と憎悪をぶちまけていた。

 

 

 

ハルト(気持ち悪い、気持ち悪いっ、気持ち悪いっ!、気持ち悪いっ!!みんな、私なんか見ていない……。私の体だけ……私の事なんか考えてなどいない。まだ子供であっても、男には変わりはないっ。限界まで露出を高めれば、男はみんな胸や尻に視線が行く!今だってそうだっ、自分の情欲を私の体にぶつけてくる……あの男のように。どうせみんな同じなのだ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルトside

 

ハルト「直ぐに切り替えられるわけないだろ……」

 

「たった一回、騙されただけだって。次は良い人が見付かるよ」

 

 

 

 私が結婚を破棄され、どうしようもないクズ野郎と分かった時の事。まだ私が踏ん切りが付いていない時、同僚から励ましてもらっていた。

 その時の私は、何もかも失ったように自暴自棄になり同僚からの慰めもただの雑音にしか聞こえず何も響かなかった。同僚からのたった一回という言葉に、怒りを覚え私は吐き出すように感情を出した。

 

 

 

ハルト「たった一回……?お前には一回だとしても、私にとっては大切な一回だったんだぞ?!こんな私を好きだと、愛していると言ってくれたんだ……。例え今になって、嘘だと分かっていても私は嬉しかったんだっ!…………お前はいいよな、良い旦那と巡り合えて……幸せそうで」

 

「…………」

 

ハルト「掴まえた男は取り調べでこんな事を言ったらしい。『金目の物が手に入らなくても、女を抱ければ御の字だ』とな……。これ程まで男に嫌悪感など抱いた事は無い……今どんな男でも吐き気がする」

 

「でも、そんな人ばかりじゃ……」

 

ハルト「これ以上議論しても、私の心は変わらない。ではな」

 

 

 

 私はその場を去り、そこから訓練に明け暮れ男とは無縁の生活を歩んだ。私が強くなればなるほど、男は寄って来なくなった。私自身も分かっていた、こんな事では前へは進めない事も。

 それでも体が覚えてしまっては、どうしようもなかった。見つめられるだけで悪寒が走る、トラウマはそう簡単に拭えない。男にも、自分にも嫌気がさす……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハルトは連撃を止めず、ケイアをドンドンと端へと追いやった。ハルトは我を忘れ、ケイアを殺す勢い剣を振るった。

 

 

 

ハルト「でえやっ!」

 

ケイア「あぶなっ!?ハルトさん、本気で殺しにきてません?!」

 

 

 

 必死にケイアも抵抗し、何とか紙一重で躱し彼女に呼び掛けるが全く反応しない。解決策を模索するが、これ程までに連続で攻撃を喰らうと今の戦闘に集中するので手一杯であった。そんなケイアを余所にハルトは、剣を止めなかった。

 

 

 

ハルト(他の男と同じ……同じなんだっ!)

 

ケイア(ハルトさん、もしかして凄い怒ってる?……でも、原因が分からないし。どうすれば……)

 

 

 

 思考しても原因が分からないケイアは、悩み続けた。そしてハルトは、貯め込んだものを吐き出すようにさらに剣技を繰り出そうとするがある事に気付いた。

 

 

 

ハルト(……?コイツ、先程から私の瞳を見ている……何故だ。はっ!?もしかして私の体では無く、私を見ている?!これ程露出が多いにも関わらず、私を……///)

 

 

 

 当たり前である。今のケイアには、生死に係わる戦闘の為ハルトの胸やお尻に構ってなどいられない。相手の動きをよく見る為にケイアは真っ直ぐ、ハルトの目を見つめ熱い視線を送った。

 その眼差しをハルトは徐々にやられていき、また保健室での勘違いのように拗らせて行く。

 

 

 

ハルト(あぁ……やっと、やっと私にも巡り逢う事が出来た。何と形容したらいいか……瞳を見つめ心を通わし一つに繋がったような)

 

ケイア(何か今度は、惚け始まった……。何で?)

 

 

 

 ハルトの思考はドンドンと低下していき、動きが遅くなっていった。これをチャンスと捉えたケイアは、彼女の足を払い剣を喉へと向け決着がついた。

 

 

 

ハルト「しまっ!?」

 

ケイア「はっ!……これで、終わりです」

 

 

 

 彼女はそのままヘタレ込み、尻餅をついた状態で細目でケイアを見つめていた。そしてケイアはハルトに手を差し伸べ、起き上がらせようとした時。

 

 

 

ケイア「ハルトさん、大丈夫ですか。立てます?」

 

ハルト「……っ」

 

ケイア「え?!……んむっ!?」

 

ハルト「……んっ」

 

 

 

 何と彼女は、ケイアの手を引き自分の唇に引き寄せた。それに驚いたケイアは、直ぐ様彼女から離れ真意を問いただした。

 

 

 

ケイア「ハ、ハルトさん、何してるんですか?!」

 

ハルト「はぁ……接吻だが?」

 

ケイア「それは分かってますけど、こんな人前で……///」

 

ハルト「すまない、自分を抑えられなかった。それで、今までの非礼を許して欲しい。貴様にはきつく当たり過ぎた……」

 

ケイア「別に気にしてませんよ。これからは、仲良くしていけばいいと思ってるので謝らないで下さい」

 

ハルト「そうか!では、親睦を深める為にこの訓練が終わり次第私の部屋に……」

 

ホテプ『……痴女。主に何する気……?』

 

 

 

 ハルトが言い終える前に、ホテプが間に入り遮った。猫撫で声になっていたハルトがホテプを見た瞬間、性格が変わったように以前の顔付きに戻った。

 

 

 

ハルト「また貴様か。そんなに主が盗られるのが怖いのか?」

 

ホテプ『……当たり前。主の身が最優先』

 

ハルト「そんなに怯えなくてもいいだろう。今までと同じように、指導するだけだ。私の部屋でな」

 

ホテプ『……無理やり連れて行くんだったら、こっちにも考えがある』

 

 

 

 険悪な雰囲気に包まれた闘技場。二人は臨戦態勢へと入り、構え始めた。これは不味いと思ったスザクは、二人に割って入り戦闘を止めた。

 

 

 

スザク「ストップストップッ!?……何で二人はいつも喧嘩するんですか?!」

 

ハルト「……ふん。確かにこんな奴の相手をしても、時間の無駄だからな。スザクに免じて、今回は目を瞑ろう。次も同じように邪魔立てするなら、容赦なく斬り捨てる」

 

ホテプ『……お互い様。今度会ったら、骨も残らないくらい燃やす』

 

ケイア「えぇ…………仲良くしてよ」

 

 

 

 そしてその場は治まり、訓練は終了しスザクとハルトは、そのまま宮殿に帰った。帰りの馬車に揺られながらスザクは、ケイアにキスをした理由を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「ねぇ、ハルト。何でケイア殿にキスなんかしたんですか?もう、恋愛はしないって……」

 

ハルト「スザク。お前は誰かに、熱い視線を向けられた経験はあるか?」

 

スザク「何ですか、藪から棒に?」

 

ハルト「私は、好きになってしまったんだ。あの少年の事が」

 

 

 

 その言葉を聞いたスザクは驚愕し、自分以外にも好きになってしまった人間が現れた事に動揺した。そしてハルトは、スザクが好きだという事に気付いていた。

 

 

 

ハルト「スザクも、ケイアの事が好きだろう?」

 

スザク「な、何で、そう思うんですか?!」

 

ハルト「ケイアと話すお前は、明らかに声色が違う。恋愛経験が浅くとも、それくらいは分かる」

 

スザク「まぁ、バレるのも時間の問題だと思いますし。それに、ケイア殿との年齢差が随分と開いていると思うのですが……」

 

ハルト「あの男が、その程度の事を気にすると思うか?言っておくが、恋は戦争と同じ。年齢差などという考えに踊らされている内は、お前は私には勝てんぞ」

 

スザク「はぁ!?今まで恋愛に逃げてきた人が良く言いますね?!大体あんなキス、無効ですからね!無効っ!」

 

 

 

 馬車内で怒号が飛び交い、日が暮れていき次の日を迎えた。ケイアが教室へと入り、朝礼に備えているとヴィリーが眉間に皺を寄せながら入って来た。普段から明るい挨拶から始まる為、生徒達は困惑していた。少し間を置いてヴィリーから、各国の宝玉防衛の報告だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィリー「おはよう、みんな。前に話した、12体のモンスターが各国にある宝玉を攻めている話をしたと思います」

 

 

 

 内容は、モンスターの進行が激しくなりドンドンと距離が詰められている状況。最初こそ食い止められていたが、休む間もなく襲い続ける大量のモンスターに気力が削がれ兵士は疲弊していた。この状況を踏まえて、ヴィリーは次のように述べた。

 

 

 

ヴィリー「この状況下で君達が一年後、戦場に赴いたとしても焼け石に水。この状況がひっくり返るとは思わない……。だから……今から平穏に暮らしたい生徒、戦争に参加したくない生徒は辞退してもらってもいい。今からでも間に合うから、遠い場所に避難して……」

 

 

 

 その先の言葉を言い終える前に、他の生徒達がヴィリーを励ますように言い返した。

 

 

 

「今更何言ってんすか、先生」

 

「アタシ達、先生に育てられてきたんですから。今恩返しをする時だと思ってるので、悲観的にならないで下さい」

 

「それに逃げたって、逃げる場所が無いんじゃ意味ないでしょ。だったら戦いますよ!」

 

ヴィリー「君達……」

 

 

 

 その言葉を聞いたヴィリーは、とめどなく涙が溢れ静かに泣いた。生徒達の言葉を聞き、少し心が軽くなったヴィリーは授業が終わると教室を出て行き職員室へと向かう途中、ケイアに止められた。

 他生徒の言葉に疑問を抱いたケイアは、『育てられた』という部分が引っ掛かった。詳しく聞くと、彼らは嘗ての戦争難民でヴィリーに育てられた子達だった。

 

 

 

ヴィリー「以前、私が難民を教会でかくまったり保護したって言ったわよね。あのクラスの生徒が殆どそうで、あの子達に名前と私の苗字をあげたのよ。だから皆レイリーって苗字が多かったでしょ」

 

ケイア「育ての親だったんですね。確かに名簿には、レイリーの苗字が多かったのはその事ですか」

 

ヴィリー「だから最初に君にも、あの子達にもこの事について説明するのが怖かった。育ててきたのは、戦争に行かせる為だったんだって言われると思ったけど、バカだね私は。一番あの子達の事を信頼してあげられていないなんて……情けない親だね」

 

 

 

 訳を知ったケイアは、心が温かくなった。お互いが相手の事を思いやらなければ、優しい言葉は出てこない。その事を胸にケイアはより一層、訓練に励み少しでも自分も力になろうと取り組んだ。

 そして一年が経ち、ケイア達がいよいよ戦場に赴く事になった。この一年間、何とかモンスターの進行を食い止め徐々に収まっていった。それに伴いケイア達は、アネクメの調査依頼がきていた。

 名指しで依頼をされたが、依頼主の名前が記載されていない為、きな臭いのは拭えないが現状視察をするにはちょうどいいという事と自分の力量、使い魔の実力を知る貴重な経験になるとヴィリーに言われた為、出発する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィリー「ケイア君、気を付けてね。何か可笑しな事があれば、直ぐ逃げてね」

 

ケイア「大丈夫ですよ。この一年間で、僕もライム達も強くなりましたから。何かあればすぐ戻りますから。それじゃ、行ってきます」

 

 

 

 一年間、修行を積んだケイアはどことなく自信に満ち溢れ勇み足でアネクメへと向かった。ライムは頭に乗り、それに付いて行くようにホテプとメニカはヴィリーにお辞儀をしてから後を付いて行った。

 そんな後姿を見送るヴィリーは、何処か嫌な予感に駆られ、不安が拭えなかった。そんな気持ちとは裏腹にケイアは、自分の力を試したくて興奮していた。馬車へと乗り込んだケイア達は、暫く揺られながら移り変わる風景を楽しみ、そうこうしている内に砂漠地帯へと入りそこからは徒歩で移動する事となった。そしてそこからケイア達の、『悪夢の始まり』となる。

 

 

 

 

 

 

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