モンスターテイマー   作:泰然

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油そばうめぇ……。


第一章 水の神殿
12話 伏魔十二妖星 新たる旅立ち


 砂漠地帯のアネクメを暫く歩き続けて数時間が経過した頃、灼熱の太陽に晒されながらもダンジョンに辿り着いた。当時訪れた時と何も変わらない事にホテプは、あの時の約束を守ってくれていた事に安堵し感謝していた。

 

 

 

ホテプ『……何も変わってなくて安心した。ありがとう』

 

ケイア「僕じゃなくて、ヴィリーさんに言ってあげた方が喜ぶと思うよ。帰ったら御礼しようね」

 

ホテプ『……うん」

 

 

 

 二人は会話を交わしながら、ダンジョンの奥へと入っていった。以前と変わらず、酷く中が荒らされている訳でもない為モンスター達が徘徊しているだけだった。その時の依頼内容も、内部調査としか記されていなかった。

 ダンジョン内の掃除なら分かるが、具体性が無く報酬も支払うとなると怪しさ満点。念の為、宝物庫も誰もにも荒らされていないか確認し、その後は何もなくダンジョンを抜け出した。依頼が終わり物足らないケイアだったが報酬の額が高かった為、早く町に戻ろうと提案する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「依頼も終わった事だし、この報酬で美味しい物でも食べよう」

 

ライム『ライム、お肉食べたい!』

 

ホテプ『……私は果物』

 

メニカ『私ハ、魔力供給ガ出来レバ何デモ』

 

 

 

 各々好きなものを思い浮かべながらアネクメを脱出しようとした時、何処からか楽器のような音が鳴り響いた。楽器の正体は、恐らくバイオリンで綺麗な音色ではあるが不安を誘う旋律がケイア達の耳に纏わりつく。

 

 

 

ライム『ご主人、この音……嫌い』

 

ホテプ『……何か来る』

 

メニカ『生体反応ヲ確認。三体、来マス』

 

ケイア「あれは……」

 

 

 

 遠くで揺らめく三人の影が、ケイア達に近付いてきた。距離がある為、まだ正確には分からないが獣人に近いモンスターだと予測したがその姿は以前、オリバーで会った事のある人物だった。

 一人は教会に向かう途中でぶつかったスーツ姿の黒い『バフォメット』だった。バイオリンを静かに掻き鳴らしながら、歩み寄り楽しそうに演奏していた。

 二人目は、食堂で働いていた体の大きな黒い『ミノタウロス』だった。その体に負けない程の斧を、両手に携え近付いていた。

 そして三人目は、全く面識の無いハープを抱え白いドレスを着た『美しい女性』だった。一瞬だけで見ると人間にしか見えないが、彼女の背中には天使の羽のような物が生えていた。三人は徐々に近付き、ケイア達に対面した。先に口を開いたのは黒いバフォメットだった。

 

 

 

?『ケイアさん、約一年振りの再会、心より嬉しく思います』

 

ケイア「アナタは、あの時のバフォメットさん。何故こんなところに……。それに、その二人は」

 

アルゲ『申し遅れました。私の名前はアルゲと申します、以後お見知り置きを。こちらの牛頭は、アルデバラン。こちらの女性は、スピカ』

 

ホテプ『……主、こいつら強い』

 

 

 

 小さく耳打ちをするホテプ。ケイアはその言葉を聞いた途端、鳥肌が立った。今までホテプはそこそこ強いモンスターと対面したとして、『強い』とは言わなかったからである。二人のやり取りを見ているアルゲは、気味の悪い笑いを浮かべ驚きの言葉を口にする。

 

 

 

アルゲ『ケイアさんとの再会の余韻に浸りたいのも山々なのですが、少々お二人の存在が我がメシア(救世主)が厄介であると判断しました。ここで、死んで頂きます』

 

ホテプ『……何で私と主を殺そうとする』

 

アルゲ『もうこれ以上、喋る事はありません。死人に口無し、それではさようなら』

 

 

 

 言い終わると同時にアルデバランが消え、ケイアの後ろに回り込み斧を振り下ろそうとしていた。直ぐ近くにいたメニカが腕を使い、相手の攻撃をガードした。

 

 

 

アルデ『ふんっ!!』

 

メニカ『マスターッ、逃ゲテ下サイッ!』

 

ケイア「えっ……?」

 

 

 

 叫び声を聞いたケイアは一瞬怯み、直ぐには行動できなかった。遅れて体勢を立て直そうと、ケイア達は四人で固まり陣形を組んだ。ケイアはサポートに回り、他三人の回復に徹しようと考えたが今度はバフォメットのアルゲが回り込み無数の黒曜石が施された『マカナ』という武器を取り出し斬りつける。

 

 

 

アルゲ『ズタズタに引き裂きますっ!!』

 

ライム『ライムが守るっ!』

 

 

 

 頭に乗っていたライムが飛び出し、自身の体を硬化させケイアを何とか守った。だが、守るだけで一向に攻撃には移れなかった。何故なら彼らのスピードがあまりに早い為に、次の一手が出せない。

 そしてケイアは、明らかに自分が重しになっている事に気付き唇を嚙んだ。ハープを抱えたスピカが離れた場所で奏でると、綺麗な音色とは打って変わって頭が割れるような音にケイア達は耳を抑え頭を抱えた。

 

 

 

スピカ『ふふっ。『死の音色(トートコンツェルト)』』

 

ホテプ『……っ。何、この音?!』

 

ケイア「頭が割れそう……」

 

アルゲ『さぁ、これで終わりです!』

 

 

 

 全員が怯み動けない状態でアルゲが動き、ケイアに近付きマカナを振り下ろそうとした。だが、間一髪でホテプが祝詞を唱え防御壁をケイアに張り、避ける事が出来た。

 

 

 

ホテプ『光の加護を。そして……』

 

アルゲ『っ!ちょこまかと、逃げないで頂けますかっ!?』

 

 

 

 何度も避ける為、アルゲは大きく苛立ちホテプを念力で吹き飛ばした。そして掌に蒼い炎を溜め、再びケイアに矛先を向けた。その蒼い炎は風船のように大きくなり、周りが明るくなる。

 

 

 

アルゲ『蒼い炎(ブラウフランメ)で、魂ごと焼かれて下さい!』

 

ケイア「うわっ!?」

 

ホテプ『……っ』

 

 

 

 炎が迫る中、バリアだけでは防げないと判断したホテプは、その場を走りケイアの下まで駆けた。そのままの勢いでケイアを突き飛ばし、ホテプは身代わりのような形で入れ替わった。

 

 

 

ケイア「え……。ホテプ?」

 

ホテプ『……主、生き……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴオオォォォォッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何か言い終える前に、蒼い炎がホテプの声を遮りその場には何も残らなかった。その場に今までホテプが居た形跡など無いように、そこにはただ砂の大地が広がるだけ。ケイアは何が起こったのか分からず、辺りを見回しホテプの行方を捜した。

 

 

 

ケイア「……ホテ……プ」

 

アルゲ『フフフフ、フッフッフッフッ、アッハッハッハ!!……はぁ~傑作ですね。どうせあの世に旅立つ運命だと言うのに、必死にご主人様を護るなんて。なんとも健気』

 

ケイア「あ、あぁ……。ホテプ……」

 

アルゲ『悲しみに暮れる事は無いですよ、ケイアさん。アナタも後を追わせてあげます』

 

 

 

 泣き崩れるケイアに笑みを浮かべながら徐々に近付き、耳元に囁いた。

 

 

 

アルゲ『他のお二人も、あの方のように炎で焼いて差し上げますので泣かないで下さい。いずれにしても、私達には勝てる見込みなど無いのですから……』

 

ケイア「っ!?」

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間ケイアは死を覚悟した。他の2人に足止めされているライムとメニカを目にし、やられていく姿を見て、その圧倒的強さに成す術が無かった。覚悟を決めたケイアは空を仰ぎ、斬られるのを待った。

 

 

 

アルゲ『それでは、本当にさようなら』

 

 

 

 満面の笑みを浮かべたアルゲは三日月のように口を吊り上げ、何処か興奮しているような顔を晒した。そして武器を振り下ろそうとした時、空を見上げていたケイアは黒い影のような物が降ってきている事に気付く。そしてそれは音が破裂したような音と絶叫と共に、現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「滅殺の太刀ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体を大きく捻りながら全体重を乗せ、アルゲに斬りかかった。その一撃を辛うじてアルゲは受け止め、一度身を引いた。

 

 

 

アルゲ『凄い一撃でした。流石、瑰麗の剣豪と呼ばれた程の事はあります』

 

スザク「…………」

 

 

 

 挑発するようにアルゲは言い放ったが、一方のスザクは何も喋らずただ相手を呪い殺すような目で睨んでいた。スザクはケイアが酷く傷ついている事に怒り、我慢していた感情を爆発させた。

 

 

 

スザク「貴様ッ!愛しのケイア殿を泣かせた罪、死を以て償え!」

 

アルゲ『おっと……。お淑やかに見えて、心は猛獣そのものですね』

 

 

 

 憤るスザクを目の当たりにし、アルゲは呆気に取られていると増援が来た事に気付いておらず、快活な声に轟雷が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモン『霹靂神流……迅雷ッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上段から大きく振り下ろした後、轟音と共に大地を切り裂きライムとメニカを援護した。その威力にアルデバランとスピカは身を引き、三人立ち並んだ。そして分が悪いと判断したのか、捨て台詞を残しその場から消えた。

 

 

 

アルゲ『目的は概ね達成出来ました、一人は始末できたので良しとしましょう。これ以上労力を使うのも得策ではないので、この辺で失礼します。それでは』

 

デモン『…………なんやウチら着た途端、帰るんかいな。張り合い無いな~』

 

スザク「ケイア殿っ、大丈夫ですか?」

 

 

 

 未だに泣き崩れているケイアの下にスザクが駆け寄り、直ぐ安全な場所へと避難するよう促す。だが、泣いてばかりで一向に立ち上がろうとせず、ホテプの名前を呼び続けていた。

 

 

 

ケイア「うぅ……ホテプ……」

 

スザク「ケイア殿……」

 

 

 

 目を腫らして泣きじゃくるケイアの姿を見てスザクは、少しでも自分が早く到着していれば、と負い目を感じていた。それに嫌気がさしたのか、デモンがケイアを担ぎ急いでいる旨を話しライム達に次の場所へと促す。

 

 

 

デモン『いつまで泣いてしゃあないやろ。ウチらの国も大変な事になってるんやから、早う急ぐで。『炎帝のラエン』も、恐らくやられてるかもしれへんしな……。走らなあかんから、そこのスライムはウチに捕まっとき。そっちのオートマトンは……走って来れるか?』

 

メニカ『問題アリマセン。アクセルモードニ移行スレバ心配アリマセン』

 

 

 

 みんなデモンの後を付いて行き、スザクも走って移動した。移動する先はアネクメを抜けた向こうに、火山地帯がある。そこには宝玉を守護するドラゴンが居るが、この状況下で考えれば奪われている可能性が高い。

 ドラゴンは火口近くに身を潜めているらしく、護衛もその近くにいる。そしてデモン達が火山に辿り着き、近くにはオリバーから派遣された護衛の死体が転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「惨いですね……。みんな、四肢が捥がれています」

 

デモン『ウチらの仲間をこんな姿に……。絶対に土下座さしたるっ』

 

 

 

 数千の人間や獣人のモンスターの死体が横たわっている中にスザクやデモンの部下も混じっている為、腸が煮えくり返る思いだった。そんな光景を目にしながら火口付近に辿り着き覗いて見ると、そこには首元を割かれ、血塗れで横たわっているドラゴンが居た。

 炎のように赤く燃える鱗も、自身の鮮血によって赤黒い色がべっとりと付着していた。念の為、生存確認を取る為にスザク達は恐る恐る近付いた。

 

 

 

スザク「そんな……炎帝が……」

 

デモン『三人がかりやからな、どうしようもない……。それに火の玉も取られてるな……』

 

 

 

 炎帝の亡骸の側には、祭壇のようなものに有ったであろう宝玉が取り出さられていた。無いと分かるとデモンとスザクは、仲間の亡骸を運び一人一人綺麗に置いた。

 時間が無い為ケイアにも手伝えと打診するが、まだ放心状態で動こうとしなかった。流石に頭にきたのか、デモンが平手で殴りケイアの目を覚まそうとした。

 

 

 

デモン『チビ助はいつまで呆けてるつもりやっ!アンタはまだ、一人亡くしたくらいでメソメソ泣きよってからに』

 

スザク「デモン、ケイア殿は家族を亡くされています。人の数で決まる訳じゃ……」

 

デモン『そんなん分かっとるっ!副隊長から聞いた。但しな、褐色女も泣いて弔われて喜ぶような奴とちゃうと思うで。アンタを庇ってまで助けた理由を、ちゃんとよく考えろっ!』

 

ケイア「……っ。庇っている所を見ていたなら、もっと早く助けに来てくださいよっ!」

 

デモン『助けられといて、ようそんな事が言えるなっ!雷落とすぞ!!』

 

スザク「二人共待ってっ、言い争っても時間を消費するだけ。今、オリバーも襲撃されてるから急がないと」

 

 

 

 彼女の言葉にケイアは耳を疑った。何故襲撃を受けているかの詳細は、移動しながらとなった。襲撃の発端は、路地裏のあらゆる所に見た事の無い『魔法陣』が書かれ、そこから無数のモンスターが出現したと推測された。

 この事からスザクは、店で働いていたアルデバランやアルゲが民間人に紛れ準備を進めていたと考えた。そして急いでオリバーへと戻り、こちらの状況を報告する事になった。数時間でオリバーに到着し、ケイアは遠目で国を守る白い壁が見えてきた。

 だが、内部の状況がみえなくても至る所に黒い煙が立ち上っていた。ケイアはこの時、トラウマを思い出すように自分の村が焦土と化した光景を思い浮かべていた。自分の故郷をまた失うのが怖くてケイアは、無意識に目を瞑ってしまう。デモンも同じようにこの光景を見た事で、強く怒り歯を食いしばった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「……っ」

 

デモン『くっ……。許さへんっ……』

 

 

 

 城門を潜り中へ入るとモンスターは殆ど鎮圧されていた為、静まり返っていた。だが、数時間前の活気溢れる声は聞こえてこなかった。ケイア達はモンスターの死骸を跨ぎながら進んでいると、『明らかに見た事の無い生物が横たわっていた』。

 その姿は、毛が生えたサイクロプスのような形ではあるが『顔が無い』のである。目と鼻がある場所に黒い大きな穴があり、口元は裂ける程吊り上がり気持ちの悪いモンスターがあちこちに転がっていた。煉瓦の大通りを通っていると、そこにはヴィリーとフェヒターが死体を調べていた。仲間が無事な事に安堵したケイア達は手を振り、どんな状況かを聞いた。

 

 

 

ヴィリー「ケイア君、無事!?」

 

ケイア「はい……何とか」

 

ヴィリー「あれ、ホテプちゃんは?」

 

ケイア「ホテプは……ホテプはっ……」

 

 

 

 事の顛末をヴィリー達に話し、状況説明をした。そして国内がどうなっているかフェヒターから詳細を教えられた。今のところ、民間人の被害は無いとの事。だが、軍関係の者や戦争へ赴き戦った義勇兵や学生は何人かは犠牲になった。

 その中にはケイアと同学年、ヴィリーが助けた避難民が何人か混じっていた。その悔しさからヴィリーは、拳を握り絞め後悔の念が強く出ていた。ケイアはフェヒターに、このモンスターの詳しい情報を求めた。

 

 

 

ケイア「フェヒターさん、このモンスターは一体……」

 

フェヒター「全く分からない、こんなモンスターは初めてです。サイクロプスのような見た目ではありますが、こんな悍ましい姿は初めてです。この体格でこの姿で襲われたら、恐怖でしかないですね」

 

 

 

 体長が約4m程度で、人間より遥かに超えていた。武器は持たず素手で殴りかかり、種族を問わず襲ったという。そして特徴的なのが顔であるが、その他にもフェヒターが戦っている最中、目撃した時の話をした。

 

 

 

フェヒター「個体数が少なかったお陰で、民間人に被害が及ぶ事はありませんでした。ですが、部隊がやられていく最中……こいつら、仲間を喰っていたんです。しかも、笑いながら楽しそうに……」

 

ケイア「え……」

 

 

 

 その話を聞いたケイアは凶暴なモンスターであれば、食べる事は稀では無い。だが、笑いながらとなると変わってくる。そんな残虐なモンスターが居るのかと、疑うケイアだが現に何人かの兵士が引き千切られている現場を目撃した。直視できなかった為、死体に目を合わせないように来ていた。そして師団長同士で、これからの事を話し始めた。

 

 

 

デモン『副隊長、どないすんの?』

 

スザク「そうですね。先ず、宮殿はハルトが護衛してるから大丈夫ですが……」

 

フェヒター「話によると、オリバーだけの襲撃ではないらしい。メタルヴェルクは被害報告が上がってきているらしいが、恐らく他の国も同様だろう。自分はミラ様を宮殿にお連れする、お前達はケイア殿を安全な場所へ避難させ怪我人の救護に当たれ」

 

ヴィリー「私はケイア君の護衛に就くわ」

 

 

 

 話が付き、スザク達は怪我人の確保と亡骸の撤去を行った。その後、宮殿の方が安全だと考えたスザクはケイア達を一時的に置いてもらう事にした。作業が終わり宮殿へ向かおうとした時、デモンが市民の安全を考え敵が仕掛けを作っている可能性を考慮しここに残る事となり、スザク達とはここで分かれる事となった。

 宮殿までの道のりが遠い為、ヴィリーは箒に跨りケイア達はメニカの背中や肩に乗りアクセルモードであっと言う間に着く事が出来た。ケイア達は中へと入り、王室へと通され大きな扉を潜り、そこには王の首脳陣が揃い、臣民の状況把握、内乱による国家対策、国家間の外交などについて議論していた。

 リアム王の護衛としてハルトが側に控え、王の隣には后が椅子に座っていた。そしてリアム王が、一番危惧している内情を首脳陣に話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアム「我々が今恐れている問題は、襲撃による内部分裂。これを機に、我が政治を良く思わない集団がいる。その集団の宣伝活動によって、我が国民が特異な思想によって反乱が生まれる可能性がある。早急に対処する必要があるが、何か気掛かりな事はあるか?」

 

 

 

 質問をするリアムに幹部からの報告によると、国内の東側で不穏な動きがあった。目撃証言によれば、人通りの少ない路地でフードを被った女三人がとある男に見た事の無い石を渡している事が分かった。

 オリバーは4つの区画に分けられる。北に宮殿、城砦があり教会と学園もその道なりにある。東には商業施設や農業施設が併設されている。南には城門があり娯楽街が続いている。西側には、国民の居住地となっており医療施設も兼用してある。そして観光客や商売人が訪れる際に、4区画の真ん中に噴水広場を設ける事により自分の居場所を把握する事が出来る。 リアム王がその三人の女の詳細を尋ね、幹部の一人が答える。

 

 

 

リアム「その女は何者か分かるか?」

 

「いえ。今のところ、彼女達の詳細は不明。とある男というのが、情報によるとリアム王の失墜を企む勢力で間違いないとの事です。そしてその石というのが、魔法陣周辺に落ちていた事からモンスターを生み出す召喚儀式用の道具に見受けられる事から、彼女達も何らかの形で協力していると考えられます」

 

リアム「『ユスティーツ』か……。正義などと言葉を並べ、隣国との火種を作り戦争誘導する連中だ。放って置くと厄介だな……。見た事の無い石となれば、対処の仕様が無いな。おぉ、スザク。労いもせずに、すまなかったな。炎帝の報告を頼む」

 

スザク「恐れながら……」

 

 

 

 ぎこちないスザクを見てリアム王は芳しくないと悟り、報告を眉間に皺を寄せながら聞いていた。周辺各国にも同じような被害が上がっている為、今内乱が起きるのはどうしても避けたいリアム王は頭を抱え唸っていた。そんな姿を見兼ねて、隣に座っていた后がリアム王の背中を撫でながら呼びかけた。

 

 

 

リアム「すまない、シェーン」

 

シェーン『何言ってんの。リアムが国民の為に働いてる事なんて、みんな分かってるんだし。そんなヒヨんなし♪』

 

 

 

 そんな言葉を掛ける姿を見た周辺の部下たちは、仲睦まじい姿に映った。ケイアは、先程の綺麗な佇まいから想像できない程の口調に少し呆気にとられる。

 そこからリアム王は気を取り直し、内乱対策として発信元が不明瞭な虚偽の宣伝、情報の過度な誇張などを取り締まる事を重点に置いた。外交では被害確認を迅速にし、必要な支援物資を送る事を起点に置いた。かれこれ時間が経ち、議論が終わった頃にリアム王はケイアに気付き挨拶をした。

 

 

 

リアム「あぁ、あの時の少年か。こんな事態になって、挨拶が遅れた。何か変わった事は無いか?」

 

ケイア「え、えぇ……。何も……」

 

ヴィリー「…………。リアム王、私事で恐縮なのですがケイア君を戦いの場から退かせて頂く事は可能でしょうか?彼は家族を亡くし、先程は自分の使い魔を亡くしました。これ以上、私の教え子が悲しむ姿を見たくないのです。未確認のモンスターで亡くなった学生も何人かいます……」

 

ケイア「っ!?」

 

リアム「特別扱いするつもりも主義主張を阻害する権利、強制する権利はこの少年には無い。此度の学生も、自分の意志でヴィリーに役目を果たす為に志願し動いている。ヴィリー、貴様はそんな意志で戦場に赴いた学生の心を踏み躙るのか?」

 

ヴィリー「……っ」

 

リアム「ケイア、謁見の間での言葉がまだだったな。お前は誰かの意志で動くのか、それとも自分の意志で幾多の困難に立ち向かうのか?」

 

ケイア「僕は……」

 

 

 

 ホテプを亡くし、心が打ち砕かれた時、何もかも無くなったような気分に陥り使命などどうでもよくなっていた。凶悪なモンスターに大量に流れる血に、恐怖し足が動かない。

 だが、自分が居なくなればライムやメニカの今後を考えると無責任な事は出来ないと判断し決断した。それに水を差すように、スザクとハルトが自分達が護衛すると志願する。

 

 

 

スザク「あの……拙者がケイア殿の側に居ればモンスターの被害に遭う事もないかと」

 

ハルト「同じく。我々が護衛に就き、宝玉の死守に繋がるかと」

 

リアム「それがこの少年の為になるのか?」

 

スザク「っ!……なりません」

ハルト「っ!……なりません」

 

スザク(一緒に旅が出来ると高を括りましたが、甘かったですね……)

ハルト(一緒に旅が出来ると高を括ったが、甘かったな……)

 

ケイア「あ、あのっ!」

 

 

 

 そんな二人とは裏腹に、ケイアは自ずと決意を固めリアム王に進言した。

 

 

 

ケイア「決めました。僕はホテプや亡くなった人達の分まで、戦いますっ!」

 

 

 

 まだ弱々しい掛け声ではあるが、確固たる信念を感じさせる決断にリアム王も頷きながら無言で了承した。その瞬間、静かな王室から聞いた事のある声が城内に響き渡った。

 

 

 

パズ『よく言った、我が祝福を与えし子よ』

 

ヴィリー「念話!?」

 

ケイア「この声は、あの時の!」

 

パズ『我が『伏魔十二妖星』はどうだった?二人やれと命令していたが、少々手こずったようだが。まぁ、貴様も厄介ではあるが、もう一人は消す事が出来て幸運だった』

 

ケイア「お前っ……」

 

 

 

 吐き捨てるような物言いでホテプを厄介者呼ばわりされた事で、ケイアは強く憤った。そしてパズは続けて、ケイアを挑発するように誘導し始めた。

 

 

 

パズ『火の宝玉も手に入り、着々と我の復活が近くなった。次に向かうは水の都、ヴァッサーファルを攻めるとするか』

 

ヴィリー「そんな挑発、乗る訳ないでしょ。それに、何でアンタ達が宝玉を奪うの?封印で使う宝玉なら、壊せばいいじゃない」

 

パズ『ふん、低能な貴様達では我が高僧を読み取る事など出来ん。これがどれ程価値のある物か、貴様には分かるまい。ふふっ、いずれまた逢おう……祝福の子よ』

 

 

 

 その言葉を残し、声が聞こえなくなった。先程発言していたヴァッサーファルについて、様々な議論がなされた。わざわざ場所をしていたのは罠に違いない、という事になり人数も限られる。

 他の国から救援依頼がきている為、人員が割けない。ケイアだけでは、また同じ結果となり今度は自分が命を落とす切っ掛けとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「私が付いて行きますっ!」

 

ハルト「いいや私だっ、お前では力不足だ。それに誰がここを護るんだ?!」

 

ヴィリー「どうしたもんかねぇ……。私も都合上、離れられないし。師匠は別行動で何処に行ったのか……」

 

 

 

 長く議論したが結果が出ず、結論が出ないままだった。暫くしてから王室の扉が開かれ、住民の避難を終わらせたデモンが帰って来た。デモンが来た事により、彼女をケイアの護衛として向かわせる事に決定した。

 

 

 

デモン『ただい……』

 

ヴィリー「デモンに決定っ!」

 

デモン『え……なんや……?』

 

ヴィリー「デモン、ケイア君と一緒にヴァッサーファルに行ってきてっ!」

 

 

 

 突然の指名にデモンは、目を丸くしていた。なんとなくの状況を把握し、護衛任務として就くようお願いするヴィリーだが、あまり乗り気ではなかった。デモンはケイアの脆弱な心に少し苦手意識を持ち、微妙な反応を示した。

 

 

 

デモン『う~ん……嫌やないけど。ホンマに大丈夫かいな……』

 

ケイア「もう、目を背けたりしません。だから、お願いします」

 

デモン『はぁ……しゃあないな。足だけは引っ張らんといてな』

 

 

 

 少し目の色が変わったお陰か、デモンは戸惑いはしたが了承した事によりヴァッサーファルに行く事が決定した。そして正式にリアム王から直々に、任を受け持つ事となった。

 

 

 

リアム「ケイア並びに使い魔達。そして第二師団斬り込み隊長、デモン・リッベントロップ。お前達にはヴァッサーファル防衛及び、宝玉、ドラゴンの死守任務に従事し遂行して見せよ。良い知らせを待っている」

 

シェーン『がんば~♪』

 

ケイア「はいっ!」

デモン『おうっ!」

 

 

 

 任命式が終わり、ケイア達は旅の準備に取り掛かった。ケイアが学園寮で準備していると、ヴィリーが恐る恐るドアをノックし入って来た。その行動に疑問を抱きつつケイアは、尋ねた理由を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィリー「ケイア君、ちょっと時間ある?」

 

ケイア「はい、出発は明日なので時間はありますけど……どうしたんですか?」

 

ヴィリー「少し……散歩しない?」

 

 

 

 誘われるままケイアは付いて行き、大通りを取っていった。その道なりに進む際、ヴィリーとの会話は一切なかった。いつも明るいヴィリーが何故、何も話さないのか分からず一緒に歩いた。

 その数分後、ヴィリーは噴水広場で立ち止まりベンチに腰掛けた。ケイアも一緒に座り、数秒会話が無いままお互い何も喋らなかった。そしてヴィリーは重たい口を開き、喋り始めた。

 

 

 

ヴィリー「ケイア君。私、昔冒険者だったって言ったでしょ?当時の私は、いろんな場所を渡り歩いてきた。その中で、ケイア君みたいに都市や町のドラゴンの被害に遭って家族を亡くした孤児を教会に預けたって話をしたわよね?」

 

ケイア「はい……」

 

ヴィリー「その内の半分を私が引き取って私の名前をあげるの、レイリーって。その中に、私の弟子になったり学園の先生になって教えるような立場の人間にもなっていったわ。今でも続けて、プロネーシスにたくさん入学させて今回の戦争で私の教え子が何人か亡くなった……。それでね、ケイア君。名前には不思議な力が宿るの、だから私も例に倣って無事に帰ってくるように、健康で幸せに暮らせるように名前を授けるの。君にも…………死んで欲しくないから。私の名前、受け取ってくれる?」

 

ケイア「喜んで」

 

ヴィリー「ありがとう……。今日から君は、ケイア・レイリー……。必ず帰って来て……」

 

 

 

 その言葉の重さを感じたのは、ヴィリーが言い終えた後、一筋の涙が頬を伝って落ちた時だった。その名前をあげた学生以外にも、沢山の命が流れたんだとケイアはそう感じ、必ず帰らなければいけない約束が出来た。そして、ヴァッサーファルの出発の時間がやって来た。

 ヴィリーの他にスザクやハルトなどが立ち会ってくれ、名残惜しさを感じながらケイアとデモンは北へと歩き出だした。

 

 

 

 

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