モンスターテイマー   作:泰然

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遅いあけおめです。


13話 水の神殿ヴァッサーファル 慈愛の吟遊詩人

 ケイアとデモンは他メンバーに見送られながら徒歩で移動していた。 ヴァッサーファルまでの道のりはオリバーから徒歩3日程の為、ゆっくりと歩みを進めた。暫く歩いて時間が経った頃、メニカがホテプについて言及した。

 

 

 

メニカ『アノ、マスター……。ソノ……大丈夫デスカ?』

 

ケイア「何が?」

 

メニカ『ホテプサンガ亡クナラレテ、気ヲ落トシテイルノデハト思イマシテ……』

 

ケイア「最初はそうだったけど、メニカとライムに迷惑かけられないからさ。ホテプも、そんなんじゃ喜ばないでしょ?」

 

 

 

 少し心配していたメニカは今の言葉を聞き、胸を撫で下ろした。頭の上に乗っていたライムも、その言葉を聞いた時に少し顔が緩んだ。

 そして暫く歩いていると日差しが差し込まない程の暗い森林が広がり、初めて見たライムは入るのを嫌がっていた。

 

 

 

ライム『ご主人、ここ気持ち悪い……』

 

デモン『この『迷宮の大森林』を抜けんと、ヴァッサーファルには辿り着けへんし、モンスターなんかの侵入を防ぐ役目もある。ただ外交関係のある主要人と商人や役人なんかは、目印を辿れば簡単に行けるで』

 

ケイア「デモンさんは分かるんですか?」

 

デモン『当たり前やんかっ。これでも軍人やで、派遣されて行ってんねやから分かるに決まってるやん』

 

 

 

 その言葉を信じケイア達は、迷宮の大森林に入り進んで行った。広大な森の中は草木が生い茂り、様々な植物が見受けられる。だが、陽光が差し込まない為、暗い雰囲気も相まってどんなモンスターが出てくるのかケイアは警戒しながら進んで行った。

 そして少し時間が経ち、分かれ道が出現した。右か左かで迷っているケイアに、得意げにデモンが正しい道に指をさしながら応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモン『こんなん簡単やろ。こっちやっ!』

 

 

 

 高らかに宣言したデモンは迷いなく右を選択し、一行は右方向に進んで行った。自信満々の彼女を見てケイアは何も心配せず、ただデモンに付いて行った。

 だが、数分経つと同じ光景を目にする事になる。先程通って来た分かれ道に逆戻りとなり、ケイアは焦っていたがそれ以上にデモンが数倍焦っていた。

 

 

 

デモン『あ、あれ、可笑しいな~?副隊長に付いて行った時は、こっちやと思ったのに……』

 

ライム『オーガのお姉ちゃん、方向音痴?』

 

デモン『違うわっ!…………何でや、最初は右やのに。間違えたかな……』

 

 

 

 どうにかして正しい道を思い出そうとするが、考える素振りだけで正攻法を導き出す事は出来なかった。デモン達が立ち往生していると、見知ったモンスターが現れた。メタルヴェルクでケイアが出会った、白い一角獣のキメラだった。

 馬体の背中に龍の翼と山羊の頭が無理矢理付けられ、尻尾には蛇の頭が付いていた。あの時は暗がりの為、よく見えなかったが位置が明確に分かった。

 そしてデモンが驚き立ち竦んでいると、ケイアは久しぶりの再会に喜び詳細を確認した。

 

 

 

?『…………』

 

ケイア「君はメタルヴェルクで会ったキメラ。会えて嬉しいけど、何でこんな所に?」

 

?『食べ物を探してここに住んでる。獲物を探してる最中に、お前達に遭った。困ってるようだけど、助ける?』

 

ケイア「道に迷っちゃって、どうしたらいいか……」

 

 

 

 そう言うとキメラはついて来いと背中を見せながら歩き始めた。そして分かれ道が現れ、どっちが正しい道か教えてくれた。

 

 

 

?『分かれ道の木の上に、フクロウが止まってる。フクロウが止まってる方が正しい道だから、その都度ランダムに設定されてる』

 

ケイア「何で分かるの?」

 

?『ここで何回も獣人達が出入りしてるのを見た事があるから、それで覚えた』

 

デモン『へぇ~、大したもんやな。これで道も分かって一安心やな!』

 

ケイア「…………」

 

デモン『悪かったって、そんなに睨まんといてなぁ……。殆ど副隊長に任せとったから、堪忍して……』

 

 

 

 デモンの謝罪を聞き流しながら5回目の分かれ道に到達した時キメラは立ち止まり再度、説明をし始めた。

 

 

 

?『5回目の分かれ道はフクロウの反対側の道を進めば森を抜ける事が出来る。後は好きに進んで行けば、辿り着ける。忠告するけど、あの水の国に長居するのはよく考えた方がいい』

 

ケイア「え……それってどういう……」

 

 

 

 そう言うと彼女はその場からそそくさと居なくなり、森の中へと姿を消していった。何の事かと考えながら歩き、徐々に道が開かれていった。模索して埒が明かないと考えたケイアは、デモンに聞いてみる事にした。

 

 

 

ケイア「デモンさん。あのキメラが言ってた意味って分かります?」

 

デモン『ヴァッサーファルに着けばわかる……』

 

 

 

 その言葉だけを残し、暗い表情のままヴァッサーファルへと歩を進めた。歩き続けて数十分で大きな城壁が見えてきた。今いる場所からヴァッサーファルを見下ろすような形の為、国の全貌が良く見える。城壁を越えた先には綺麗な水面が見え、その水上に家屋が立っているような形に見えた。この国に暮らす種族は殆どが水棲亜人の為、水中での暮らしが主だが売買の関係上、他の種族との商いが出来ない。その為、水上に家屋を設け流通を円滑に行っている。上質な水源に豊富な海底資源、これによりヴァッサーファルは著しい発展を遂げ経済大国となった。

 そしてケイア達が城門に辿り着くと様々な種族が行列を為し、検問を待っていた。だがその中には、人間の姿がほぼ皆無だった。不思議に思いながらもケイアは、長い橋を渡り進んで行った。

 そして自分達の番が回り、検問には槍を持った二人の魚人が立っていた。色は青と白が入り交じり、頭と下半身は魚で胸部と腕部は人間に近い形で指は3本あった。彼らはケイア達を取り調べ、危険ではないか念入りに行い通された。通りすがる瞬間ケイアは、彼らの顔を横目で見た時、何故か『悲しい表情』を浮かべていた。未だに何かが引っ掛かりながらも門を通り、ヴァッサーファルへと足を踏み入れた。驚く程の活気に驚くケイアは呆気にとられ、人の往来に酔い始めた。今ケイア達が通っている中央は石で作られた通路となり、その左右からは水が流れ水棲亜人が行き来出来るようになっている。

 早速デモン達は水の宝玉を求めて、ヴァッサーファルの国主に会いに行こうと宮殿へと向かった。宮殿までの道のりは遠く、急を要する為、デモンは一人で走り、ケイア達はメニカの後ろに乗り、最短距離で進んだ。そして町から少し離れた場所に整理が行き届き、何やら魔除けで置かれているであろう像が2つ立ち並び大きな湖でデモンは立ち止まった。

 立ち止まったまま何も話さないデモンに違和感を覚えたが、その後から湖の中からスキュラとクラーケンのモンスターが出て来た。二人はデモンの方を見て怪訝そうに言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……。女皇の命無しに、何故オリバー隊の騎士がここにいる。しかも、人間など連れて……』

 

『女皇の間に、人間など入れる訳ないだろっ……』

 

デモン『ウチらの恩義を忘れとるんか?誰のお陰で防衛線が保たれてるか、分かって口にしてんのか?』

 

 

 

 その言葉を口にした時、亜人達は口が竦みそれ以上何も言い返さなかった。そしてそのまま水の中へと連れ込もうとしたので、ケイアは慌てて止めた。

 

 

 

ケイア「ま、待ってください。僕、水の中で長い時間泳げませんし、メニカも水が……」

 

デモン『心配あらへん。こいつらの泡の魔法で、長いこと息出来るから安心しいや』

 

 

 

 その言葉の通りにケイア達の周りに大きな泡が形成され、湖の中へと沈んで行った。水の中は透明度が高い為、太陽の光が深くまで差し込み想像以上に明るい。深水になると、太陽光も差し込まなくなり暗くなり始めたが、明かりが点々と道筋に続き道を照らしてくれた。そしてその先には、城が見え始め明かりに照らされていたそれは、水色の宝石を削ったような形だった。デモンは解説として、城の材料は水に強い天然石を使用している。ヴァッサーファルは天然石が盛んに取れる為、他の国でも宝飾品や魔除けなどに使われ愛好家にも親しまれている。メタルヴェルクが鉱物で有名ではあるがヴァッサーファルは海岸が近く、川や山がある為、負けず劣らず豊富に採れる。

 そうして天然石に彩られた城へと案内され、中にも様々な種類の石で構成され眺めているだけで綺麗だった。長く大きな通路を通り、大きな扉が見えた。これが王室の間だと、その場でケイアは思い、二人の兵士に扉を開けてもらった。王室はとても広く、何千人かは分からないがそれ程収容できると思えるほどだった。そして奥の階段の玉座には、触手が特徴で気の強そうなモンスターが座っており、その隣には付き人と思わしきフードを被った人魚と思わしき女性が立っていた。玉座に座っている彼女は、恐らく魔人化したスキュラだと思わしき見た目で、腰まで垂れる長く真っ直ぐな髪に濃いオレンジ色の髪色と、ほぼ衣服などは存在しないような恥部を隠す格好だった。その肉体は妖艶という言葉がよく似合う、人を惑わすような肉体に性的魅力を感じる肉感的な体だった。身体ばかりに気を取られていたケイアは、気を取り直して彼女の顔を真っ直ぐ見た。彼女の顔を見た時、何となくもの悲しさが見て取れた。これ程、綺麗な天然石で作られた明るい部屋にいるのにも拘らず、彼女の顔は陰で覆われていた。そんなケイアの気持ちには露知らず、デモンは例の一件について話を切り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモン『どんな調子や、『クヴェレ』の姐さん』

 

クヴェレ『あぁ……デモンか。防衛任務も無しに何の用だ?』

 

 

 

 彼女の名前は、『クヴェレ・フォイエルバッハ』。このヴァッサーファルの国主で最高権力者である。彼女自身、戦闘力には長けてはいないが魔法の種類が豊富で特に水の魔法が得意。加えて政治に関して一番優れており、内政、外交などあらゆる政を行う事が出来る。

 そして彼女が冷たく突き放した後、デモンは嫌味を言い放つように鼻にかけた。

 

 

 

デモン『随分と機嫌悪そうやな。せやけど、そんな態度で来られても御門違いってもんやな。そちらさんの兵隊さんが、水中戦でしか発揮できへんからオリバーからの恩義で応援部隊を送ったんやから感謝して欲しいくらいやわ~』

 

クヴェレ『アンタのお陰じゃないでしょ。あれはあくまでリアムの計らいで、お前が偉そうに言う事じゃない。はぁ……それで、何の用だ?』

 

デモン『封印で使う水の玉。あれの居場所を教えて欲しいねんけど』

 

 

 

 水の宝玉の在り処を乞い、デモンは急いでくれと言わんばかりに催促する。だが、バツが悪そうにクヴェレは苦虫を噛んだように苦い顔を見せた。何か言いたくないような素振りを見せ、少し渋っていると隣のフードを被っていた人魚の女性が声を荒らげた。声色から若い印象を受ける声で、彼女は水の宝玉の受け渡しに反対の様子であった。

 

 

 

?『いけませんっ、クヴェレ様!あのような蛮族と人間風情に霊玉を明け渡すなど!』

 

クヴェレ『しかしだな、ゼーユ。お前も知っての通り、あの水の宝玉は水の神殿に入る事が出来なければ取り出すことが出来ない』

 

 

 

 彼女の名前は、『ゼーユ・ワンバック』。クヴェレの秘書のような役目を持ち、身の回りの世話なども行う。フードを被ってよく見えないが、彼女も魔人化しており並みのモンスターには負ける事は無い。

 そして先程、水の神殿に入る事が出来ないと耳にしたケイアはつい気になりクヴェレに問い質した。

 

 

 

ケイア「水の神殿にはいれないってどういうことですか?」

 

クヴェレ『この少年は…………なるほど、宝玉の使いで遣わされたか。応えてやろう少年、あの神殿は貴様たちの先祖が犯した過ちで水が穢れて入れないのだ』

 

ケイア「先祖?」

 

ゼーユ『惚けるのも大概にしろよ人間。貴様達人間のせいで、入る事が出来なくなり神事を行う事も出来なくなったんだぞ。そんな教養も持たずに、よくこんな所に来たものだなっ……』

 

 

 

 古代の人間が深海にある神殿と母なる海に生き物が住めなくなる程の毒液を撒き散らし、みるみる澱んで行った。なぜそうなったかと言うと、嘗てのヴァッサーファルは当時の人間達とは良好な関係であった。

 だが、神殿へ礼拝をしたいという口実を使い人間達が押し入った。神殿の出入りに他種族が介入するのは禁じられていたが、様々な技術提供と支援物資によりヴァッサーファルの住民達はこの友好な関係に軋轢を生む訳にはいかないと思い神殿の進入を許してしまった。

 そしてその行いが悪い結果を生み、神殿に踏み込んだ調査機械が誤作動を起こし、沢山燃料を積んだタンクが爆発により漏れ出し海はあっと言う間に黒く汚れていった。そして住民達は、責任糾明をするが人間達は機械の誤作動で自分達のせいでは無いと言い逃れようとした。その言動に腹を立てた住人は、人間との交流を遮断し一切の係わりを持たぬ為、断交となった。

 その事の顛末を捲し立てるようにゼーユは息を荒らげながら語った。それをクヴェレは彼女の憤りを諫め、ある提案をした。

 

 

 

クヴェレ『いい、ゼーユ。現代の人間に説いても仕方ない。少年よ、少し提案なのだが……。もし、神殿近辺の海を綺麗にする事が出来れば神殿内の出入りを許そう。そして、お前達が望んでいる宝玉も持っていくがいい』

 

ゼーユ『クヴェレ様っ!そのような事を許しては、また同じような事にっ……』

 

クヴェレ『最早穢れているものに、これ以上何をしても同じ事だろう。今はもう……あの神殿が遥か昔の輝きを取り戻す事が出来れば、それでいい』

 

 

 

 『遥か昔の輝きを取り戻す』。この言葉を発したクヴェレは、遠い目をしながら言った。長い月日が流れた事により、神殿のあるべき姿を見たいという気持ちが滲み出ていた。

 そんな儚げな表情に心を打たれたケイアは宝玉の事など忘れて、ただ彼女を救いたいと強く想った。そして何も考えず、その提案を飲み込んだ。

 

 

 

ケイア「その願い、僕が叶えますっ!」

 

デモン『はぁっ!?現地視察もまだやのに、決めるの早すぎやろ?!』

 

 

 

 見切り発車が過ぎるケイアにデモンは驚いた。その返答にクヴェレも少し驚愕したが、笑いながら承諾した。

 

 

 

クヴェレ『……。フフ、フフフッ。私も政治のやりすぎで、回りくどい言葉を並べる者ばかりで疲れる日々を送って来た。何も考えず、その場の感情で突き動かされ、損得勘定などでは無い、嘘偽りの無い言葉。少年の言葉が、一番臣民を動かす。私には無い才能だ……

 

ケイア「何か言いましたか?」

 

クヴェレ『何でもない。……少年よ、何か褒美は欲しいか?ただ神殿の出入りを許すというのも、些かやる気に欠けるだろ』

 

ケイア「いえ、僕は何も……」

 

クヴェレ『フフッ、ますます気に入った。そうだな…………もし神殿を解放する事に成功すれば、私の番いにならんか?』

 

ケイア「え……?」

 

ゼーユ『な、何を申しているのですか、クヴェレ様!?一国の主がその様な事っ……』

 

クヴェレ『構わんだろ。跡取りもいる訳では無い、相手の欲しいものが無ければ我が身を捧げるしかないだろ?』

 

ゼーユ『いや、もっと別にあると思うのですが。土地を与えるとか……』

 

 

 

 少しその場が明るくなり、神殿へと案内された。水中から抜け出したケイア達は、付き人のゼーユに案内され海へと歩き出した。地上の為、人魚であるゼーユは歩くの大変だと思ったが彼女は水の魔法を発現させ、波乗りのように移動していた。

 宮殿から離れて数十分が経ち、目的の水の神殿に着いた。その姿は説明の通り、水面は黒いヘドロのような物が浮かび直接触れるような海では無かった。この光景を始めて見たデモンも、ただ呆然と口を開くのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモン『これは……酷いな』

 

ゼーユ『長い間、誰も触れる事が出来ず、このような有様に。それに手を付けられない状況が長く続いたせいで、特殊な瘴気を発するようになりました』

 

デモン『その瘴気が出る前に、何とか対処出来たんとちゃうか?』

 

ゼーユ『当然試みました。魔法による浄化魔法、住人でヘドロの除去作業は行いました。ですが、全く改善される見込みが立ちませんでした……。それに……』

 

 

 

 何かを言い終える前に指をさし始めたゼーユの指先には、ヘドロを貪るグールと黒いスライムだった。このモンスターが大量発生した原因で、汚染がどんどん進み作業は困難を極めていった。グールはアンデッドに分類され、本来そこまで腐敗している訳では無いのだが、ここに分布しているグールは腐敗がかなり進み、動いているのが不思議な程だった。黒いスライムは見た目こそ変わりないのだが、大きさがかなりあり、人間程のサイズが存在している。数もかなり多く、対処するにはかなり難しい事が予想される。

 何の作戦も立てずに挑むのは得策では無いと考えたケイア達は、一先ずここを離れ一日過ごす事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 町へと戻り、宿に泊まる事になり二部屋借りた。デモンは隣の部屋で眠り、ケイア達の部屋はメニカが大きい為、少し大きめの部屋を借りる事になった。ケイアが寛いでいると、メニカが先程神殿で大量発生していたモンスターの対処について聞いてきた。

 

 

 

メニカ『マスター。神殿ヲ攻略スル上デ、アノモンスターハドウ対処スルノデショウカ?』

 

ケイア「う~ん……デモンさんと協力すれば、解決出来ると思うけど……。あまり頼り過ぎるのもよく無いと思うんだよね」

 

メニカ『デハ、私ガ一体ズツ掃討致シマショウカ?』

 

ケイア「それだと時間が掛かるから、あまり得策じゃないと思うんだ。……僕、少し試したい事があるんだ」

 

メニカ『試シタイ事トハ?』

 

ケイア「その時のお楽しみ。先ず、明日はヴァッサーファルを見て回ってからにしよう」

 

 

 

 話を終えたケイア達は、ベッドに横になり明日を迎えた。朝日を浴び目覚めたケイアは、メニカとライムを起こし朝食を食べた。そして部屋から出ようとした時、デモンが部屋の扉をノックし用事を思い出したという知らせだった。再び神殿の方に用があるらしく、何かあればそこに尋ねろと言う報告だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして町へと繰り出したケイア達は、最初門を潜った光景を再度目の当たりにし人混みに酔い掛けていた。それをメニカが庇うように歩いてくれた為、人混みに揉まれる事は無かった。その代わり、メニカの存在感が際立ち、歩く亜人達がその度に振り返っていた。

 暫く歩き続けた時、開けた広場に噴水があった。その噴水で休もうとした時、何やら近くで歌声が聞こえてきた。とても透き通って、耳心地が良く目を瞑りながらその歌声に耳を傾けていた。目を開け、声の主を探すと噴水の側で佇んでいる少年のような少女のようで、とても中性的な顔立ちだった。だが、どこかで見た事のある人物であった為考え込んでいると、メニカがヤネス・センガーであると進言した。そして恐る恐るケイアは近付き、本人であるか確認した。

 

 

 

ケイア「あの~……ヤネス・センガーさん?」

 

ヤネス「はい、そうですが、アナタは……確か謁見の際にアサギリさん達と居た……」

 

ケイア「ケイア・レイリーです」

 

 

 

 自己紹介を終えた後、ケイアはリアム王の任に就き、宝玉を集めていると説明した。そしてヤネスが何故ここに居るのか、詳細を教えてくれた。 彼は以前から、このヴァッサーファルでの水棲亜人から人間への差別的行動を止める為に、自分の歌声に乗せ人間は畏怖する存在では無く、もっと優しく分かり合えると主張してきた。

 

 

 

ヤネス「ヴァッサーファルには、よく足を運んで噴水広場で歌うんです。ですが、ボクの歌では中々止まって聞いてくれなくて……」

 

ケイア「そんな事ないですっ!凄く綺麗で思わず立ち止まって聞いてしまいましたよ」

 

ヤネス「ほ、本当ですか?嬉しいな……」

 

ケイア「きっと、その歌声で必ずみんな変わってくれますよ」

 

ヤネス「あ、ありがとうございます……///。まるで、お姉ちゃんみたい……」

 

ケイア「お姉ちゃん?」

 

 

 

 何故姉の話が出たか、ケイアは疑問に思ったがヤネスが幼少期、彼の夫婦はよく喧嘩をする事が多かった。そのためヤネスは、姉の部屋に避難し抱き着くのが日常茶飯事だった。その度に姉に言われていたのが、『種族関係なく仲良く』が口癖だった。

 日頃から争いごとを好まないヤネスは引っ込み思案である為、口論で訂正を促す事が出来なかった。だが、小さい頃から歌に覚えがあり、姉から褒めてもらっていた為、自分の才能を生かして仲裁する事が出来、歌手を志すようになった。

 事は順調に進むと思ったがヤネスの両親は離婚し、父親は仕事を放棄し飲んだくれ、母親は度重なる夫への不満と経済的困窮に悩まされ精神的に病み、正常な育児が出来ないと判断した当時の姉は家を飛び出し、ヤネスと二人で暮らす事になった。

 毒親から解放された事は良かったが、姉はまだ成人では無かった為、働き口を見つけるのにも苦労していた。当時のヤネスは姉の姿を見て、歌手を志す事から『姉を楽にしてあげたい』という欲求に変わっていった。その為ヤネスは、冒険者を志し歌唱のスキルを活かし二つ名が轟くまでの地位を築き、二人は幸せに暮らしている。

 その話を聞いていたケイアは、号泣していた。それに驚いたヤネスは慌ててハンカチを用意して、渡した。そんな姿を見たヤネスは心が温かくなるのを感じ、そしてこんな事を提案してきた。

 

 

 

ヤネス「あの……話を聞いてくれたお礼に、宝玉集めに協力してもいいですか?」

 

ケイア「え、でも……謁見の時は反対してたんじゃ……」

 

ヤネス「あれは、アンドが勝手に言っただけです。それにあれは、仲間を守るために言ったリーダーとしての発言で、全く協力しないという意思表示では無いと思います。ボクも困っている人は見過ごせないので、どうでしょう?」

 

ケイア「そうですね……う~ん……」

 

 

 

 姉の話を聞いてくれたお礼に、ヤネスはケイアに宝玉集めに協力したいと申し出る。自分でやると言ったが故に、直ぐに人の手を借りるのは忍びないと考えたケイアだったが、ヤネスは一人で勝手にやっている事と流してくれればいいと言われたので協力してもらう事となった。

 

 

 

ケイア「分かりました、これからお願いします

 

ヤネス「やったー!じゃあこれからよろしくね、ケイアさん」

 

ケイア「あ、ありがとうございます、ヤネスさん。あの、ヤネスさんは何歳くらいですか?」

 

ヤネス「21ですけど?」

 

ケイア「僕16歳なので、敬語で話さなくても大丈夫ですよ」

 

ヤネス「えぇ!?しっかりしてるから、同い年か年上だと思ってたー!」

 

 

 

 そう言うとヤネスは手を握り、嬉しそうに上下に動かした。ヤネスはケイアより年上だと知ると、より一層嬉しそうに握り返し顔を近づけてきた。性別は男性と分かっているが、その中性的な顔立ちで女性にしか見えない為ケイアは常にドキドキして顔が見れなかった。

 

 

 

ヤネス「あれ、どうしたの?顔赤いけど……」

 

ケイア「な、何でもないです……///。それより、そろそろ離してくれません?」

 

ヤネス「あぁ、ごめんごめん。ふふ、そうか年下か……。何か弟が出来たみたい……♪」

 

メニカ『マスター。任務遂行ニ向ケテ、迅速ニ対処シ、作戦ヲ練ラレタ方ガヨロシイト思イマス……』

 

ケイア「そうだね。……何かメニカ怒ってる?」

 

 

 

 神殿対策を急かすメニカに少し困惑しながら、神殿周辺のモンスター討伐、水質汚濁の改善に向けヤネスと共に作戦会議を開き考えていく事となった。

 

 

 

 

 

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