ヴァッサーファルの中央噴水でヤネスと知り合い、ケイア達は宿へと戻り作戦会議を開いていた。具体的には前線にメニカとライム、後方はケイアとヤネスという構成になった。
ケイア「取り敢えず、僕とヤネスさんは後方で。前で戦うのはメニカとライム、わかった?」
ライム『うん、任せて!』
メニカ『了解デス。ソウ言エバマスター、朝ニ試シタイ事ガアルト言ッテイタノデスガ一体何ヲ?』
ケイア「それはね、僕の右手で浄化できないか考えてるんだ」
ヤネス「具体的には?」
ケイア「右手の力で浄化魔法を補助で使えば、上手くいくかなと思いまして。その間に、モンスターの気を引いておいてください」
その作戦で決定する事となり、明日決行する事となった。暫く話し込んでいるとケイアはヤネスの能力を詳しく知らない為、歌唱による魔法効果がどのようなものなのか一緒に戦う上で教えてもらう事にした。
ケイア「歌で魔法を発現させるって、どんな感じなんですか?」
ヤネス「魔法でって言うより、特殊能力に近いかな。攻撃能力が無い代わりに発声した曲調で効力が変わるから、優しいメロディーは回復魔法だったり敵の戦意を無くす事が出来る。激しめの曲調だと味方の能力を向上させたり、自分の感情を乗せたり出来れば仲間の限界を上げたり様々な効果があるらしいけど、詳しくはボクもあまり分からない。ケイアの右手みたいなものだね」
一通り説明してくれたお陰で、特殊な能力で固有スキルである事が分かった。家系の血筋や先天的、後天的に何らかの形で発生し、能力が開花する事がある。それは生まれ持った才能と同じで自分にも分からない、潜在的な能力を秘めている事がある。
そして話を終え話が纏まっていくケイア達を余所に、デモンは神殿に訪れ一人で調査に乗り出そうとしていた。水面へとやって来たデモンは、周辺の水を掬い上げ見つめていた。彼女は掬い上げた水に僅かな違和感を覚えた。
デモン『何やこれ……。昨日より水が綺麗になってないか?』
ヘドロはまだ残っているが、瘴気を放つ程の危険性は消えていた。周辺のモンスターは変わりなく動き続けているが、何故水だけが綺麗になっているのか不思議に感じていた。デモンは秘書の人魚が嘘をついているのではと、疑念を抱いていたが……。
デモン『あの人魚、噓でも吐いとったんか?……せやけど、自分達の大切な神殿にそんな回りくどい事するとは思えへんし……』
?『そこ、邪魔しないでくれるかしら』
声を掛けられたデモンは後ろを振り返ると、三人の魔人化した女性が立っていた。それぞれ海や水辺に生息していそうな個体だったが、デモンは見た事もない個体に見えた。警戒しながら大太刀を抜き、構えた。刀は感情に合わせるように、刀身に電気が走っていた。
デモン『お前ら、何もんや?もしかして……伏魔、ふくま~……』
?『伏魔十二妖星よっ、覚えなさい!』
デモン『そうそう、それそれ。で、神殿の水が綺麗になってんのはお前らの仕業で間違いないな?』
?『だったら、どうするの?』
デモン『斬るッ!』
踏み込みを入れデモンが斬りかかると同時に、話していた彼女の形態が変わり下半身が虫のような形へと変化した。
6本脚に下半身の後ろには3本の尻尾が生え、その先には針のような物が光っていた。
そしてその尻尾は異様に長く、デモンの攻撃を容易くいなした。
デモン『くっ……。お前、サソリか?』
アンタ『そうよ、私の名前は『アンタレス』。蠍の名を与えられし者、貴様はここで死んでもらう』
最初の彼女の姿は普通の人間と変わりなかったが、変態する事で形を変え、デモンより遥かに大きくなり4mはある。上半身はスラリと細く白い体で、紫の布を乱雑に巻き付けているような恰好と、長く黒い髪が印象的で 顔は絶世の美女に相応しい容姿だ。
そしてデモンは一歩後ろへと引き、体勢を立て直し太刀を再び構えた。
デモン『厄介やな、あの尻尾……。他の2人も全く動かへんけど、戦いに参加せえへんのは遊んでるんやろ……。取り敢えず、あの針には刺されへんようにせな』
アンタ『よっぽど、この尻尾が気になるようね。教えてあげる、私の毒は数滴血に混ざると血液の温度が上昇して、2時間以内に200℃を超える。その後は膨張、全身から血飛沫が上がって……パンッ!。アッハハハハ!』
デモン『最悪の毒やな。絶対くらいたくないな……』
毒耐性がある訳では無いデモンにとって、一撃も受けたくはない。それに尻尾も長い為、間合いを取りにくい状況でどうするかを考えていた。後退りながら考えていたデモンは、足元に近付く尻尾に気付かず宙吊りで捕まってしまった。
デモン『うわっ、しまった!?』
アンタ『足元も見れないくらい尻尾に気を取られ過ぎよ。このまま殺してもいいけど、それじゃあツマラナイわね……。取り敢えず、眠ってもらいましょうか?』
言いながらアンタレスの手がデモンに近付き、顔に触れようとしていた。その瞬間デモンは太刀を構え、目に追えない程の速さで斬り込んだ。
デモン『霹靂神流……疾雷ッ!』
アンタ『あぶっ!?……。どうやら死にたいようね』
デモン『余裕ぶっこくのも、そのへんにしたらええんとちゃう?』
挑発をした後、二人は再び距離を取り睨み合いが続いた。
そして数時間後、ケイア達は神殿へと向かい周辺モンスターの討伐を行うとしていた。現場に到着した一行は、その場の違和感に気付いた。
ケイア「あれ、こんなに水綺麗だったかな?」
メニカ『イエ、以前来タ時ハ濁ッテイマシタ』
ライム『モンスターも減ってるよー?』
何よりこの場の地面が所々抉れている事に気付き、誰かが暴れた形跡が残っている。周辺の木や草が何かで焼けたように、黒く焦げていた。ケイアは推察するが、思い当たる節が見つからず、腕を組みながら唸るだけとなった。
暫く考えていると、ヤネスが準備を促し手筈通りに動く形となった。
ヤネス「じゃあ、ケイア君は作戦通りにボク達は護衛に回って浄化活動に専念してね」
ケイア「はい。それでは、行きますよ!」
その掛け声と共に一斉にモンスターへと飛び付き、メニカは次々とグールを拳で破壊していった。グールは耐久性に優れている訳では無い為、メニカの軽めのパンチでも容易に倒す事が出来た。
一方のライムは、個体の大きい黒いスライムに苦戦すると思われたが、自身の攻撃で細かく小さくしていき少しずつ捕食していく事で対処していった。
だが、ヘドロと一体化したスライムである為、その度にライムは苦い顔をしながら食していた。そんな二人の後ろでは、歌唱で回復と状態強化を付与し続けるヤネス。このお陰で前線の二人は多少多いモンスター相手に、前に出続ける事が出来る。
そしてケイアは右手の力を使い、波紋するように水がドンドン綺麗になっていった。最後のモンスターをメニカが倒し、ケイアによって神殿の水面も透明度を増していき太陽に照らされた姿は神々しく見えた。
完全に瘴気を取り除く事が出来、喜んでいるとケイアの右手が少し痺れたような感覚があったが気にせず神殿内部に乗り込もうとした。
ケイア「よし、これで中に潜入できますね」
ライム『どうやって中に入るの、水の中だと息できないよ?』
確かにそうだと思ったケイアは、改善するのは良いが何処が出入り口か聞くのを忘れていた。神殿の形状は長方形の岩が積み上げられたピラミッド型になっている為、何処が扉なのか分からない。
困り果てていると、何処からか風が強く吹いてくる為辺りを見回していると徐々に風圧が強くなり全員目を覆っていると、神殿の上に着物を着た黒髪団子ヘアの女性が佇んでいた。皆驚きを隠せず、言葉を見失っていると着物の女性が先に声を掛けた。
ケイア「え、えぇと……」
バンスイ『我が名はバンスイ、この国ヴァッサーファルを守護する者。私の拠り所を取り戻してくれた事に深く感謝申し上げます、ありがとう。ここは民と私の心を繫いでくれる、重要な役割を担っている場所』
ヤネス「水帝バンスイ……。龍の姿だとばかり思ってた……」
バンスイ『本来の姿はそうなのですが、こちらの方が親近感が沸くと思いまして。ところで、お困りの様子でしたがどうされました?』
察しがいいバンスイはケイア達に助け船を出し理由を述べると、宮殿で入る際と同じような泡を出してくれた為、出入り口を教えてもらい入ろうとしたがメニカが頑なに海に入ろうとしなかった。
メニカ『申シ訳アリマセン、マスター。泡デ守ラレテイルトシテモ機械トハイエ、壊レテシマウトイウ恐怖心ガ拭エナイ為、入ル事ガ出来マセン。御許シクダサイ』
ライム『じゃあ、ライムも残る!』
ケイア「それじゃあ、二人共お留守番よろしくね」
バンスイ『二人は私が御守りしますので、御気を付けて行ってらっしゃいませ』
そしてケイアとヤネスが入る事になり、泡と共に海へと沈んでいった。出入口は深水にある為、辿り着くまで時間が掛かる。神殿の殆どは海に沈んでいる為、活動範囲がほぼ水棲亜人によるもので他種族が出入り出来ないのはその理由が大きい。二人は最下層まで辿り着き、その大きさに再度驚く事になる。太陽の光は僅かに射す程度で、普通に住人が暮らす事の出来る許容を秘めている。
そして二人は出入り口を見付け、中へと入っていった。中も外側のような岩肌で出来ていると思ったが、宮殿のように天然石を切り崩し精製した物で綺麗に整えられている為か、何百年も放置しているとは思えない程、綺麗に整理され保存状態が良かった。神殿上部に向かう為、上へと登っていく二人は一応警戒していたが、神聖な場所であり、水棲亜人の出入りがあった場である為、ダンジョンのように怪しい仕掛けは無いとヤネスに言われ胸を撫で下ろした。順調に進んで行き、水が行き届いていない場所に辿り着き上部に着いたと確信した二人は水の宝玉が奉納されている祭壇へと向かった。
すると外で爆音が響き渡っている事に気付いた二人は、急いで宝玉を探し回収に急いだ。祭壇を見付け小規模な階段の上に祠のような物があり、扉が付いていた。ケイアがその扉を開けると、淡い水色に宝玉の中に気泡が生まれ、それが泡のように表現され、見た事もないような輝きを放っていた。ケイアは宝玉を大事に手に取り、急いで地上に上がった。移動中も何度も爆発が鳴り響き、急いでいる最中も悪い予感が二人に駆け巡って行った。
海から這い上がり、地上に戻ると、メニカ達が見知らぬ三人と戦っていた。戦闘している最中、バンスイの様子が先程と容態が優れないのか顔色が悪く感じた。バンスイはメニカ達を守りながら戦っているが、手に力が入らないのか魔法が上手く発現せず自分の身を挺して守るような形を取っていた。
ケイア達には気付いていない様子だった為、ケイアは右手を地面に当てメニカ達の周りにバリアを形成しその場を凌いだ。容態が芳しくないバンスイの下に駆け寄り、直ぐ様回復魔法を施す。
ケイア「バンスイさん、大丈夫ですか?!」
バンスイ『すいません……。御守りすると言った手前、この地を守護する身でありながら……こんな不甲斐無い姿を見せるとは……』
ヤネス「あれは一体、何者なんですか?」
バンスイ『恐らく、伏魔十二妖星の12人の内の3人。私も詳細は分かりませんが、気を付けて下さい。見知らぬ魔法で呪縛を張り、身動きを止め毒針で攻撃してきます。私も、毒気にやられてしまいました……』
ケイア「えっ!?じゃあ、急いで状態異常を解除して」
バンスイ『呪縛を解いた後、自分で施しましたが効き目が強いのか解除できないのです……』
状態回復を掛けても効かない毒であれば道具を使って対処するしかないが、ここにはそんな高価な回復アイテムなどは無い。恐らくだがケイアの右手であれば回復させ、何とか状況を打開する事が出来るかもしれないが、メニカ達が3人を相手に出来る訳もなく、ヤネスは戦闘に特化した技が無い為、有効的一手が出せない。
何とか隙が生まれれば、回復を施す事が出来るがどうしたらと模索している最中、森の中から蹄の音が近付いてきた。その正体は、迷宮の大森林で会った『キメラ』だった。ケイア達の目の前に現れ、3人を威嚇するように嘶いた。
?『……』
ケイア「どうしてここに……?」
?『心配だったから、後を付けてた。やられそうだったから助けに来ただけ』
ケイア「心配で付けて来てくれたんだ。優しい……」
?『うるさい……///』
ヤネス「感動の所悪いけど、不味いかも……」
そう言った瞬間、3人の様子がおかしく体をくねらせていた。数秒後、体が変化していき一人は蠍、二人は蟹、三人は鮫のような形へと変化していった。
蟹の姿へと変化した魔人は、淡い赤髪のショートヘア。身体は凹凸が少ない、スレンダー体形で下半身は蟹の四本足に体の色は橙色で大きな鋏を持ち合わせていた。
鮫の姿に変化した魔人は、深海のように暗い色の青髪で体が隠れる程の長髪。身体は少し凹凸がある程度の普通の体形で、体の色は白と髪色と同じ色が入り交じっていた。下半身は水棲亜人のように尾ヒレが付き、腕には大きなヒレがあり顎には強靭な牙が備わっていた。
変態を終えた3人は蠍女が前に踏み出し、素性を自ら明かした。
アンタ『アル、アンタはオートマトンとスライム。アクはキメラと死にぞこないを始末して』
アルレ『いいよ~』
アクベ『どうせ……みんないなくなる……』
アンタ『この名前を名乗るのは虫唾が走るけど……私達は伏魔十二妖星。そこの人間が持っている宝玉を頂く』
楽観的に答えるのは鮫で、悲観的に構えているのは蟹のモンスター。ケイア達に近付く3人に身構えながら、得体の知れないオーラを感じ、後退ると再びキメラが前に立ち塞がり、もう一度嘶いた。そして鋭い眼光を注ぎながら挑発するように言った。
?『まとめて倒す』
アンタ『はっ、正気?確かに普通のモンスターより強いかもしれないけど、3人相手じゃあ秒で終わるわよ?』
アルレ『いいじゃん、キメラと戦う機会無いし楽しそうじゃん♪』
アクベ『愚かすぎる……』
戦闘態勢に入った魔人達を奇襲するように、キメラは蛇の口から毒霧を撒き散らし視界を塞いだ。視界を遮られ戸惑いはしたものの、アンタは毒耐性がある為そのまま霧の中に特攻しキメラに掴み掛ろうとした。
アンタ『毒は私には効かないわ。そんな子供騙しで気を引いても無駄よ』
?『油断しすぎ』
アンタ『なっ!?』
霧が徐々に消えるとキメラは魔法を詠唱していた。その事に気付かず、キメラは山羊の頭から魔法を発現させ三人の身動きを封じた。そのタイミングでキメラは、ケイアにバンスイに回復を促すように発言した。キメラの戦闘に呆気に取られていたケイアは我に返り、バンスイに右手の力を使い魔法を試みた。
ケイア「……」
バンスイ『うぅ……』
回復中、苦しみながら悶えるバンスイだったが顔色が徐々に良くなり、何とか助け出す事が出来た。その最中、魔法が解けた魔人達は一斉にキメラに襲い掛かり追い込まれていった。数に圧されていくキメラを助け出そうとするケイアだが、相手の動きが早く、手が出せないでいた。
そこでヤネスが静かに歌い始め、キメラの周りに白いドーム型のバリアを張り守った。
ヤネス「あ~♪」
アンタ『攻撃できないっ……。アクッ!』
アクベ『こんな壁、柔肌と同じっ。アル……』
アルレ『はいは~い♪』
三体の弱点を補いながら戦い、蠍が指示を出し、蟹がバリアを破壊し、鮫が標的を捉えて捕まえる。ヤネスはアルレに首を掴まれ、吊り上げられた。苦しそうに藻掻くヤネスは、何とか逃れようと試みるが力が入らず意識が無くなっていき、ケイアの呼び声にも答えなかった。
ヤネス「がっ……っ!?」
ケイア「ヤネスさんっ!」
助けようとするケイアだが、こちらをニヤニヤと嘲笑うように見る三体の姿が恐ろしく感じ、手が出せないでいた。横たわっていたバンスイが意識を取り戻し、立ち上がると呪文を唱え始め目の前に水が集まり始めた。
バンスイ『水明』
発した瞬間、大量の水が沸き上がり空に浮かんだ。周りが驚く中、バンスイは打ち上げた水を手で捏ねながら圧縮していき押し出すように腕を前に出した。三体に高速で移動しながらまるで龍を想起するような水の動きでそれは飛び掛かった。
アンタ『くっ、防ぎきれないっ……!』
何とか防ごうと躍起になる三体だが、あまりの威力に体勢を崩し水の勢いのまま遠くに飛ばされた。その一撃でだいぶ体力を持っていかれた三人は、衰弱していたバンスイなら問題なかったが今の状態では太刀打ちできないと判断し、撤退しようとした時デモンがボロボロの状態で森から出て来た。
デモン『お、おう……。無事やったか……?』
ケイア「デモンさんっ、凄い怪我ですけど大丈夫ですか?!」
デモン『流石に、三人相手は堪えるわ~。油断したら蟹女にボコボコにされてもうてな、イテテ……』
話しながら回復を施すと痛そうにしていたが、笑いながらその場を和ませようとしていた。ドンドン仲間が集う中、三人は不利な状況へと追い込まれていくが、そんな敵に対してもケイアは傷を癒そうと近づこうとしていた。
ケイア「傷、治してあげましょうか?」
デモン『あほかっ、敵に塩送ってどないすんねん!』
アンタ『そんな施し、受ける訳ないだろ。罠かもしれないじゃないか?』
当然の如く警戒心は容易く解けるものでもなく三人は断り逃げようとすると、バンスイからとんでもない事が聞かされる。
バンスイ『待ってください…………今、私の住民達が襲われているそうです』
ヤネス「何で分かるんですか?」
バンスイ『声が聞こえるんです、先程までなかった悲鳴が町中に……』
デモン『はぁっ!?お前、いつの間にこんな事を……。だから、ここで時間稼いでたんかっ』
アンタ『ち、違うっ!!私はそんな命令……』
デモン『嘘つくなっ、現に人が襲われとるやろがっ!!』
ケイアはキメラやヤネスを回復させた後、急いで町へと戻り、住民の避難を優先し三人を置いて行った。ケイアは走りながら三人の方向を見ると、アンタが泣き崩れ、他二人に慰められていた。様子が変だと思いつつも、住人の安全が最優先だと頭を切り替えた。
だが、それでも彼女の咽び泣く理由が分からず、心に閊えたままだった。『違う』と言った言葉は嘘じゃなのではと、思った。その核心をつけぬまま、ケイアは前を見て走る事しか出来なかった。