モンスターテイマー   作:泰然

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三ツ矢サイダー美味しい。


16話 世論誘導 スザクの過去

 急いで向かうケイアはメニカの背中に乗りながらオリバーの人達が無事である事を願い、瞼を閉じていた。メニカのアクセルモードであれば数時間では着けるが、それでもオリバーは遠い。

 

 

 デモンとキラも懸命に走るが、戦い後の疲労が癒えたわけでは無い為、速度を上げるのも限界がある。ただそれでも、走るしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてオリバー王国では、時間が進む毎に被害が拡大していき、ユスティーツの煽動により国民の暴徒は止まない。各々の主張を正当化しようと、リアム王へのヘイトが集まりつつある。

 

 

 それにより反対運動が過激化し、国民の三割は王の弾劾を求め、多種多様な種族が混在しているこの国の人口を40万程度の軍隊で制圧するのは至難の業。

 

 

 何故王への非難が過激化したかというのは、他国の輸入品から痲薬の流失を確認しているというデマが流れ、これをリアム王は国民の了承を得ず、金儲けに使おうとしていると情報が流れている。

 

 

 全くの嘘であるが、今までオリバーでは政治的問題は皆無に近く、他国との争いも無い。だがそれが、かえって悪い方向に働き、清廉潔白な王でも汚職塗れで国民を食い物にしていると臣民は怒り狂ったのである。

 

 

 そんな折、フェヒターは宮殿に聳え立つ門に押し寄せる国民達を宥め、抗議隊を抑えていた。

 

 

 

フェヒター「皆様どうか落ち着いて下さい。これはれっきとした罠です、敵対勢力による情報操作に他なりません。今までリアム王の政策に、不満など皆様なかったではありませんかっ!?」

 

「うるさいっ!。それがそもそも洗脳では無いのか?!」

「権力者は何をしてもいいと言うのか?!」

「どうせ他国の資源欲しさに、大金が欲しかっただけだろっ!!」

「『ユスティーツ』は我々の救世主だっ!!」

 

 

 

 門に押し寄せる国民は皆口を揃えて、国への批判、ユスティーツへの正当性を訴えていた。己の主義主張は別に悪い事ではない、自分で考え、自分で導き出した答えであればそれは自由である。

 

 

 だがこれは、自らの意見が曖昧な時に出る発言であり、今の民衆は主導者によって模られたブラックプロパガンダによって塗りつぶされている。

 

 絶対悪だと言う固定概念に塗り固められた者は、言葉を撤回しようとしなくなる。

 

 そしてフェヒターは兎に角、門への進入を防ごうと身動きが取れない状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザクside

 

 フェヒター隊長が宮殿前の門を守っている間に、拙者は大通りに連なるデモ隊の進行を防いでいた。後ろが見えない程の人の波が押し寄せ、捌ききれるかどうか分からない。

 

 

 そんな弱音を吐きながら、部下たちに指示を出しながら住民の人達には立ち退いてもらうほかない。

 

 そんな時、列に異様に目立つ朱色のフードを被った三人組が居た。拙者は気になって、注意深く見ていると真ん中に立っているのは刀を持った男性に見える。両サイドの二人組は、髪が長かった為、女性だと分かった。

 

 

 拙者は部下に席を外すように言い、その三人組の方へと近づいて行った。

 

 その瞬間、真ん中に居た男が大衆が居るこの場所で刀を抜いて拙者に斬りかかってきた。

 

 

 

スザク「くっ、貴様……!城内での戦闘は重罪にあたるぞっ!」

 

?『知った事か。こちとら頼まれてやってるだけだ、それに久しぶりにお前の顔も見れた訳だしなぁ……』

 

スザク「何……?。拙者は貴様など知ら……。お前は……」

 

 

 

 有り得ない。こんな場所にコイツが存在している筈が無い、見間違いだと思いたいが間違いない。

 

 だが、所々顔の欠損によりほぼアンドロイドのような形をしている。右目は義眼、左腕は義手、下半身は人間のモノではなく光沢が施され、機械そのものだった。

 

 

 背中には4本の刀を携えている仕組みとなり、今手に持っている物で5本になる。しかし、何故この男が生きているのか見当もつかない。

 

 考えている内に、この男は尋常ではない力で押し返し、笑いながら斬りかかりあの時のように口にする。

 

 

 

?『綺麗になったなぁ……スザク。子供の頃と見違えたぞ』

 

スザク「よ、寄るなッ!!」

 

 

 

 兎に角近寄らせまいと相手の力を受け流し、距離を取った。遠くからでも分かる程、口角を吊り上げながら髷を揺らし近付いてくる。

 

 この男は強い。並みの冒険者では太刀打ちできない程、昔は気に入らなければ斬り捨てようとする気性の粗さ。拙者では、この男には勝てない。

 

 応援を呼ぼうにも、ハルトは商業施設内の鎮圧に向かっている為、要請をする事は出来ない。一人で切り抜けようにも、過去のトラウマがあるせいで刀を上手く握れない。

 

 

 そんな迷いが生じている隙に、フードを被った二人が拙者の肩を掴み、身動きが取れなくなった。

 

 男が徐々に近付いてくる中、拙者はあの時の事がフラッシュバックする。男はニタニタ笑いながら、この瞬間を待ちわびていたかのように手を伸ばしてきた。

 

 

 

?『ますます汚したくなるなぁ……♪。フフフフフフハッハッハッハッハッハッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケイア達がオリバーに近付き、国を守る外壁が見えてくる。だが、町の至る所から黒い煙が立ち上り、火災が起きている事が明確にわかる。

 

 ケイアはメニカに急ぐように声を張り上げ、上空を飛んだ。

 

 そして門を飛び越え、おびただしい数の人や獣人や魔獣が押し寄せている。煉瓦調に作られている大通りの道も、人波で見えなくなっている程だった。

 

 

 そんな中、大通りで何やら動きがある事に気付いたケイアはメニカに指示を出し、向かってもらう事にした。

 

 そこには押さえられているスザクを目にし、一目散にその場から降りて肩を掴んでいた二人を殴りつけた。

 

 

 

ケイア「スザクさんを、放せっ!!」

 

スザク「ケイア殿……!」

 

?『雇う奴を間違えたな、やっぱり人間は弱い。勇敢だな小僧、見た目に反してカッコいいぞ?』

 

デモン『はぁ……はぁ……。誰やねんお前!』

 

シュウ『シュウ・クワミズ(神水 朱羽)。そこに座っている娘の父親だ』

 

デモン『父親?。何で親であるアンタが、娘襲わなアカンねん』

 

シュウ『おいおい、家族間の事情に顔を突っ込むのか?。『鬼』の分際で』

 

デモン『お前……。もう一遍言ってみろやっ!』

 

 

 

 デモンが素早く切り上げると、シュウは姿を消して皆辺りを見渡した。するとケイアは後ろに異変を感じ、振り向こうとしたが関節を決められ、身動きが取れない状況になってしまう。

 

 

 

シュウ『弱いなぁ。力も平凡、身のこなしも平凡、魔力は皆無ときたもんだ。精々評価するならモンスターが少し頭が抜けている事くらいか。存在しないオートマトンに珍しいキメラに稀有なスライムときたら、ご主人様はとびっきりの出来損ないかぁ?』

 

ケイア「がぁっ!?」

 

ライム『ご主人から離れろっ!』

メニカ『マスターカラ離レロッ!』

キラ『ケイアから離れろっ!』

 

 

 

 ライム達は一斉にシュウに攻撃を仕掛けたが、あっさりその場から離れ、ケイアの拘束は解かれた。すると男は、ニヤニヤ笑いながら意味深な事を言い放ち、その場から去ろうとしていた

 

 

 

シュウ『目的は達成したし、俺は引かせてもらうわ』

 

デモン『待てやっ!。ユスティーツとはどんな関係なんや、お前!』

 

シュウ『まぁ、関係ないとだけは言っておく。俺は自由に動いてるだけだし。それに、愛娘にも会えたしな。スザク、いつでもお前を見ているぞ』

 

スザク「……っ」

 

 

 

 そう言い残し、シュウは煙を撒くように去って行った。目的は達成という言葉に妙に引っ掛かっていたデモンは、辺りを見渡していると宮殿に異変がある事に気が付いた。

 

 

 それはオリバーのシンボルでもある『人間と他種族』が手を取り合っている旗印が燃えている事に気付く。

 

 

 

デモン『おい……。あれって、宮殿に入られてるんとちゃう?!』

 

ケイア「もしかして、アイツの目的って……!」

 

 

 

 シュウは元々、襲撃するのが目的などでは無く、こちらに陽動を促す役目のようだった。その隙にユスティーツに加担している国民、もしくはメンバーが宮殿の屋内まで侵入し、リアム王の失脚を狙うのが主目的のようだ。

 

 

 意気消沈したスザクをケイアはメニカの背中に乗せ、兎に角早く宮殿に向かう事が先決。だが、この民衆を抑える為に誰か残さなければいけない。

 

 

 そんな時にデモンが買って出てくれた為、この場に残る事となった。先程のように、シュウに似たような人物が現れ、接敵する場合がある事から残る事を決める。

 

 

 そしてケイア達はメニカに乗り込み急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、フェヒターも同じく宮殿内にある旗印が燃えている事に気付き、危機感を覚える。燃えるシンボルを呆然と眺め、気が気でいらえなくなり、門の小窓を潜り抜けて夢中で走り出した。

 

 

 

フェヒター「リアァァァムッ!!」

 

 

 

 そんなフェヒターは民衆の事などはどうでもよくなる程、今は彼の安否が心配だと必死に走り続けた。広い屋内と階段を上り、駆け上がると凶器を持った敵が十数名廊下に佇み、フェヒターの足音に気付き、そこから一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

フェヒター「邪魔だぁッ!!」

 

 

 

 フェヒターは自分と同じような1.8m程の鉄の棒に見える斬馬刀のような直刀を取り出し、横薙ぎで一斉に蹴散らした。階段を上がる度に敵は増えていき、王だけではなく后も危険であることが窺える。

 

 

 兎に角自分が早く救助せねばと気が焦る一方だった。王室までの巨大な門を蹴破り、王の名を呼んだ。

 

 

 

フェヒター「リアムッ?!」

 

リアム「フェヒターか。慌てるな、こんな残党では我は倒れん」

 

シェーン『ドラゴンと戦ったんだから、こんなの朝飯前だし♪』

 

フェヒター「そうですか……。はぁ……よかった。リアムが死んだら、どうしようかと……」

 

リアム「フェヒター、二人だけの時は良いが他の者には示しがつかん。だが、我の為に来てくれた事は誇りに思うぞ」

 

フェヒター「有難きお言葉です」

 

 

 

 フェヒターは膝をつきながら首を垂れ、最敬礼をする。立ち上がりながら宮殿内の侍女たちや用人などの安否はどうかリアムに聞くが、事前に察知していた為、身を隠していた事により避難する際の転倒での怪我で済んでいる。

 

 

 それを聞いて一安心し、フェヒターは他にも残党が居ないか確認する為、王室を出ようとした。その時だった。

 

 王室の見開かれた扉から、悍ましいモンスターが現れた。人の形はしているが、顔は存在せずに顔面中に『ハエトリグサ』のような物が無数に付いているように見える。

 

 

 上半身は貴族であった名残で白いドレスにネックレスが施されており、女性であることが分かる。下半身はドレスの下から無数の根が蠢いて足の役割をしている。

 

 

 どことなくアルラウネに近いようにも見えるが、無理矢理体を接合させたようにも見なくもない。

 

 その怪物はユスティーツの残党らしき人物の顔面を掴み、生気を吸い取っている。食事が終わったのか、その人物をフェヒターの方へと投げつけた。その残党の顔面には吸ったであろう痕跡があり、無数の穴が開いて無残な姿へと変わっている。

 

 

 フェヒターが戦闘に備えながら相手の出方を窺っていると、後ろから男性か女性か分からない人物が現れる。

 

 

 

カス『やぁ、王様♪。元気してる?』

 

リアム「……貴様は、ユスティーツのボスか?」

 

カス『関係はしてるけど、違うかな。ボクはね、伏魔十二妖星の一人のカストル。それでこれが、ボクの新しいペット。この間、君達のメンバーにボクのペット殺されたからさぁ……イライラしてるんだよねぇ。死んでくれない?』

 

フェヒター「リアム様、シェーン様ッ。下がってくださいッ!」

 

 

 

 フェヒターが叫んだと同時に化け物から蔓のような物が伸び、それを大剣で受け止めた。尋常ではない力にフェヒターは怯むかと思ったが、無理矢理に蔓を引き千切り、化け物に飛び掛かり大剣を振り下ろす。

 

 

 だが、無数の茎や蔓のガードにより致命的な攻撃には至らず、フェヒターは後ろへと後退する。フェヒターは呪文を唱え始め、大剣に火炎が纏い始めた。

 

 

 

フェヒター「魔を断つ源流、吉神宿りし剣となれッ!」

 

カス『くっ、人間のくせになんて魔力っ……!?』

 

フェヒター「忌火焔斬(いみびえんざん)ッ!」

 

 

 

 一歩で化け物に近付き、斜め斬りを繰り出して体の半分は炎上していく。この技をくらえば大抵のモンスターは浄化していき、絶命する。

 

 だが、生命力の強い化け物は炎を纏いながらその場で暴れまわり、フェヒターは止めを刺せずにいた。

 

 すると化け物は長い蔦を伸ばし、リアム目掛けて突き刺そうとした。それを察知したフェヒターは直ぐ様その蔦を切り、間一髪と思いきや、慣性が働いた先端部分はリアムの肩に突き刺さる。

 

 

 

リアム「がぁっ!?」

 

フェヒター「リアァァムッ!?」

 

シェーン『リアム!?』

 

カス『ボクのペットがこんな簡単に殺されたのは予定外だったけど、これで王様も終わりだね。ボクは優しいから教えておくけど、王様に刺さった先端にはコイツの種が生みこまれてる。早くなんとかしないと、王様もこの化け物と一緒になっちゃうよ~♪』

 

 

 

 化け物は燃え尽きてしまったが、リアムにはモンスターになってしまう種を埋め込まれてしまった為、どうしたらいいか見当もつかないフェヒターとシェーン。

 

 

 その様子を眺めながらカストルは滑稽と言わんばかりに笑い続け、その場から煙のように消えた。

 

 そして遅れてケイア達が王室へと入り、リアムの下へと駆け寄る。

 

 

 

ケイア「どうしたんですか?!」

 

フェヒター「実は……」

 

 

 

 ケイア達を含め、他のメンバーたちにも事の顛末を話し、兎に角この種を芽吹かせない為にはどうしたらいいか考える。そこに別任務で動いていたヴィリーが戻り、状況説明とリアムを直す方法が無いか尋ねた。

 

 

 

ヴィリー「わたしにも分からない。う~ん……オリバーから東に位置するバアムクライヒに居る、木玉を守護してるリョウギンに聞いてみたらどうかしら。そのドラゴンの中で一番長生きらしいし、何か知ってるかも」

 

デモン『しかしヴィリーよ、これが芽吹くまでどれくらいかかるんだ?。リアム王がこのままだと死んじまうよ……』

 

ヴィリー「それも含めてだけど、そのカストルが使役しているモンスターは特殊で分からない種族ばかりなの。前回の襲撃も含めて、あのサイクロプスも私達が知らない怪物だし……』

 

フェヒター「リアム……」

 

リアム「ハハ……。我はただでは死なん、だからそんな顔をするな、『あの日の誓い』も果たさずに死ぬなど、王として失格……。それに、フェヒターも裏切る事になるからな……」

 

 

 

 リアムは弱々しくもフェヒターを悲しませまいと無理矢理笑顔を作り、痛みを堪えているのが分かる。妻であるシェーンも夫の苦しむ姿を見て、ただ声を掛ける事しか出来ないこの歯痒さに彼の袖を力強く握り締めていた。

 

 

 伏魔十二妖星の脅威が去ったとしても、国内での暴走を止められてはいない。しかしここで、ヴィリーが有力な情報を提示してくれた事で希望が見え始めた。

 

 

 

ケイア「リアム王の事もそうですけど、国内情勢は悪化するばかりです……。何か手立てはないんですか?」

 

ヴィリー「上空から見た限り、私達だけで抑止するのは無理ね。でも、群衆の中に赤い瞳をした群衆が扇動しているように見えたわ。恐らく、洗脳させられてこの暴動を起こしてる可能性は非常に高いわね」

 

デモン『それじゃあ、片っ端から赤い目の奴らの洗脳を解けばええんやな?』

 

ヴィリー「それだけじゃダメ。洗脳した人だけ解いたとしても、精神支配を受けてない一般市民を説得するのは中々難しい」

 

フェヒター「確かに。こちらが真実を告げても、詭弁だと言われて論点をすり替えていると糾弾される。仮にリアム王が説得できたとしても、統治をしている国主から言われても誰も信じない」

 

スザク「でしたら、拙者が……その役を担いましょう……」

 

ケイア「スザクさん、大丈夫ですか!?」

 

スザク「拙者であれば、平民からの生まれですから、そこまで反感を持たれる事は無いでしょう……。それに、皆様には話しておくべきでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザクside

 

 拙者が物心ついた頃は、よく母親の隣で遊ぶ事が多かった。母であるジャクラ(雀羅)は心臓が弱く、床で伏せている事が殆どだった。

 

 そんな拙者が近づくと、体を起こして昔の遊びを教えてくれたり、読み書きを教えてくれた。母は元々勤勉でやりたい事があれば全てに手を付けて、様々な事を学んだ。

 

 

 拙者もそれに倣い、大昔の伝承やこの世界がどうやって創られて来たかというのを先生の代わりのように習う。

 

 

 

ジャクラ「スザクは本当に賢くて、優しい子だね……」

 

スザク「えへ……♪」

 

 

 

 母のその優しい言葉に、拙者も応えたくて教えられた事は全て頭に入れるように努力した。覚えた事を母と一緒に復唱すると、その度に頭を撫でてくれる母親に拙者はいつも元気を貰っていた。

 

 

 そして拙者が大きくなるにつれ、母の容態はどんどん悪化していった。それには明白な理由がある。

 

 父のシュウが原因だ。あの男は性欲の塊であり、心臓の弱い母を叩き起こし、何度も情事に耽っている。家屋はボロボロで決して裕福ではない家の作りの為、母の辛そうな声が響き渡り、今でも拙者の耳にこびりついている。

 

 

 一度だけでなく、何度も何度も繰り返す行為に、拙者は止めてあげたくて仕方が無かった。

 

 そしてその数年後、行為中に声がしなくなったと気付いたら『母は涙を流しながら亡くなっていた』。拙者はその時、あまりのショックで気絶してしまい、そのまま朝を迎えた。

 

 

 そしてそこから、地獄が始まった。元々拙者は母から教わる勉学が好きだった。それなのに、何の気紛れかは分からないがシュウからの剣の稽古が始まる。

 

 

 母が居なくなった腹癒せのように、木刀で拙者の体を痛めつけた。10代だった頃の拙者は、何度も叩きつけられてきた事もあり、体は痣だらけで骨が折れる事もあった。そんな拙者の姿を見ながら、ボロボロになった服装を見て自分に興奮しているようにも見えた。

 

 

 実の娘でも性的対象に移せるのかと、その時は心底震えが止まらなくなった。

 

 

 

シュウ「どうしたッ!?まだこんなもんじゃねぇぞッ!!。早く大人になりやがれよぉ……」

 

スザク「もう、死に……たい……」

 

 

 

 心も体も完全に折れた頃の拙者は、深酒をした頃を見計らい、拙者は家を飛び出していった。暗い森を抜け、あんな所に居るくらいならマシだと考え、無我夢中で逃げた。

 

 

 訳の分からない遠吠えが聞こえても関係なかった、あの男に捕まるくらいなら死んだ方がマシだとも思った。

 

 そして森を抜け、朝を迎えたが拙者の体は力尽き、一歩も動けなかった。そこにガシャガシャと鎧が擦れる音が耳に入る。

 

 悪い方に考えていた拙者は、盗賊に捕まって好きなようにされるんだと、そう考えていた。だが、実際は違った。

 

 現れたのは、当時まだ若かった『フェヒター』の姿だった。骨も折れ、ボロボロで汚くなった拙者を抱きかかえ、王国へと連れて行ってくれた。

 

 

 

スザク「あぁ……うぅ……」

 

フェヒター「自分と同じ境遇の子を助けるとは、因果とは不思議なものだな」

 

 

 

 そして拙者はオリバー王国の正式な軍隊に入隊し、稽古をつけていった。最初こそ、あの時のトラウマのせいで剣すら握る事さえ出来なかったが、温かい人との触れ合いのお陰で感情を取り戻していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「これが拙者の生い立ちです。そんな事よりこのオリバー関係者に救われた拙者の声を国民に届ければ、必ず信じてもらえるはずです」

 

フェヒター「そうだったのか……。早く言ってくれれば、入隊などさせなかったのに……」

 

スザク「いいえ、隊長。拙者も母に言われたように、弱き者を救いたいのです。自分の事を犠牲にして、拙者を守ってくれた母のように。それに気掛かりなのは、何故あの男が生きていたか……。風の噂で野盗に襲われて死んだと聞いたのですが……。」

 

デモン『副隊長~……がんばったんやな~……』

 

スザク「何泣いてるの、デモン。斬り込み隊長の名が廃るでしょ」

 

 

 

 この事によりスザクへの皆の想いがより一層深くなり、仲間意識が高くなった。

 

 臣民の説得に関しては問題は無くなったが、バアムクライヒに行くメンバーをまた決めなくてはならない。

 

 

 

フェヒター「自分とスザクとハルトは師団長でもある為、このオリバーを離れる訳にはいかない。緊急事態となっている今、デモンも前のようにバアムクライヒに同行する事は出来ない」

 

デモン『でも、隊長たちが居れば何とかなるやろう?。チビ助だけだとアノ化物を対処する手段なんてないし……」

 

ケイア「大丈夫です。今回仲間になったキラもいますから」

 

キラ『ケイアは絶対守る。約束」

 

 

 

 方針は決まり、兎に角早く動かなければリアムが病に苦しみ悶えるだけとなる。バアムクライヒにはケイア達で対処し、運が良ければ宝玉を集める事さえ出来る。

 

 

 前向きに捉えながらケイアは東側にある、バアムクライヒを目指して商業区画と農業区画の城門を潜り、歩みを進めてスザク達の方は、精神支配している元凶と臣民の説得にあたった。

 

 

 

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