モンスターテイマー   作:泰然

2 / 17
更新は遅めになるので許してください。


仲間との出会い
1話 破壊と祝福


この世界は、9つの属性に分かれて存在している。

火・水・土・木・金、古より使われていた属性。

光・闇・風・時、反発し合う属性と混じり合う属性。

この属性ごとに、一柱の精霊が管理している。同じように属性に伴い、様々なドラゴンが存在している。

 

そして古くからドラゴンは死と破滅を呼び起こす。突然姿を現し、町中を焼き尽くすまで止まらず、あらゆる建造物は破壊され文明が滅びることさえある。

 

 それでも一つだけ、その町に祝福を齎し、大きな繁栄が降り注がれる。

 

 その特徴はわからないが、ドラゴンからの祝福を受けることは確かなことである。それは人なのか、その土地そのものなのか、誰も分からない。これは、そんな祝福を受けた少年とモンスターの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「母さん、行ってきます」

 

クレス「暗くなる前に帰ってきなさいね?」

 

イア「にぃに、行ってらっしゃい!」

 

 

 

大森林やその周辺を守護する精霊の側に、小さな村があった。ベタ村で3人慎ましく暮らし、この世に生を享けて育っていった少年の名は、ケイア。15歳の黒髪短髪、モンスター好きで好奇心旺盛な男の子。

 

そんな我が子を心配する母はクレス。昔から珍しいものを見ると、首を突っ込むケイアを四六時中心配し、妹のイアは兄のモンスターに関する話を楽しみに帰りをいつも待って、今日に至る。

 

そしてケイアは、いつものように薬草や食材を取る口実を利用し、モンスターと戯れることが彼の日課だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

採取を先に済ませ、ケイアはモンスターと触れ合う、楽しい時間を過ごしていた。色んなモンスターとじゃれ合う中で、珍しい生き物と出会った。

 

 

 

ケイア「スライム?……だけど、色が全然違う。図鑑で読んだモンスターと個体が違うのかな……金色?」

 

 

 

図鑑で調べたスライムと、全く該当しない色のモンスターだった。そのスライムは金色に輝き、地面をゆっくり這っていた。

 

 書物にない個体を見て、少年の心掻き立てるのには十分だった。ケイアはスライムに近づき、ゆっくり手を伸ばした。

 

 

 

ケイア「怖くないよ、怖くない……」

 

?『…………』

 

 

 

ケイアが伸ばす手と同じように、スライムも近づき触れようとする。そしてお互い触れ合い、ケイアは敵対する様子がないと確認するとヒンヤリした感触が癖になり、撫で回した。

 

 

 

ケイア「かわいいなぁ。でも、何でこんな色になったんだろう……考えてもしょうがないか。あははっ、くすぐったいって」

 

 

 

スライムは基本的に無害で襲うことはない。だが、例外として弱っている者や死体となってしまった者は食べることもある。

 

 戯れているケイアの耳元を何かが風を切った。それと同時に矢が当たり、その場でスライムは弾け飛んだ。

 

 

 

ケイア「えっ……あ、あぁ……」

 

「大丈夫か、ケイア!怪我はないか?」

 

 

 

駆け付けたのは、護衛を任されているおじさんだった。ケイアが襲われていると勘違いして、慌てて駆け寄ったが友好を築けそうだったモンスターを失ったケイアはおじさんに怒りをぶつけた。

 

 

 

ケイア「どうして、殺したりしたんだッ!友達になれたかもしれないのに……」

 

「す、すまん。てっきり、襲われてると思ったんだ……許してくれ。…………取り敢えずケイア、暗くなってきてるしクレスが心配するといけないから、早めに戻るんだぞ?」

 

ケイア「うぅ……ひっぐ……」

 

 

 

亡骸の傍で泣きじゃくるケイア。友達になれたかも知れなかったという思いが強く残り、俯向いていると頬にヒンヤリとした感触が伝わり、顔を上げると先程まで飛び散る液体だったスライムが元通りの姿になっていた。

 

 

 

ケイア「大丈夫?!」

 

?『…………』ナデナデ

 

ケイア「よかった……」

 

 

 

ケイアは生きていることを確認すると、スライムは心配するようにケイアの顔を撫でた。胸を撫で下ろしていると、遠くの方で大きな爆発と炎が見えた。

 

 方向はケイア達が住む町、そしてよく見ると巨大な翼が見える。ケイアは思った、伝承の通りドラゴンが来た、と。

 

 

 

ケイア「母さん……イア……」

 

?『…………』

 

 

 

 家族を心配するケイアに寄り添うように、スライムが体を寄せた。ケイアが町に戻ろうとすると、強い風に煽られそのまま吹き飛ばせれてしまい、木に頭を強く打ち意識が遠退いてしまった。

 

 そしてそのまま、息絶えスライムは急いで彼を起こそうとするが、返事は返ってこなかった。すると空から、頭が3つで体は鱗に覆われて尻尾が7つに分かれた龍がその場に降り立った。

 

 

 

?『我が名は大地を司る龍、ヴァール。まぁ、このドラゴンの名を借りているだけだが。我の渇きを潤すために、この地に参った。少々やりすぎてしまったが……まぁ、いい。そこのスライム、そのような人間の亡骸を庇い、どうすると言うんだ?双方に何の佳所もないぞ。……さては、情愛が移ったか?』

 

?『…………』

 

?『ふん……人間性に触れ、同情したか』

 

 

 

 人間から離れようとしないスライムを見て、ドラゴンは大地が割れるほどの高笑いを見せた。

 

 

 

?『いいだろう、汝の望みを叶えてやる。この人間を蘇生し、我の祝福を齎そう』

 

 

 

 ドラゴンがそう口にした瞬間、ケイアは光り輝き温かみを帯びて息を吹き返していった。そしてケイアは、虚ろな瞳の中、ドラゴンが飛び立つ姿を見ながら、また意識が遠退いった。

 

 暫くしてケイアは目を覚ますと、辺りは夕方になり側にはまだスライムが寄り添っていた。

 

 

 

ケイア「お前、まだ居たんだな。……はっ、家は、母さん達は?!」

 

 

 

 直ぐ様家の方角を確認し、ケイアは森の中を駆け抜けた。道が開けると、家が本来在るはずの場所には真っ黒な残骸しか残されていなかった。

 

 構わずケイアは、自分の家を探すことに専念した。その後ろから必死で、スライムが追い付こうと懸命に跳ねていた。

 

 

 

ケイア「母さぁぁん!、イアァァァ!。はぁ……はぁ……あっ……かあ、さん……」

 

 

 

 恐らく自分の家である場所に辿り着くと、その姿は黒くわからなかったが、子供を抱いて守ろうとしている親のような姿に見えた。

 

 ケイアはこの光景を見て、自分の家族は炎に焼かれて死んだんだ、と認識した。否定したかったがそう思った瞬間、自然と涙が溢れた。これが現実だと、受け入れようとするが出来なかった。

 

 ほんの一瞬で、二人の大事な家族を失った少年は泣き崩れ、意識は朦朧としていた。その場に居たスライムは、慰めるように体を伸ばし背中を擦った。

 

 

 

ケイア「うわぁぁぁぁ……どうして、母さん……イア……」

 

?『…………』スリスリ

 

 

 

 生きる気力を失っていたケイアの下に、ベタ村によく足を運ぶ商人のブラブがやって来た。

 

 

 

ブラブ「おいおい、ケイア。これ、どうなってんだ?!全部黒焦げじゃねぇか……」

 

ケイア「ブラブさん……ドラゴンに全部、焼かれちゃいました。家も……家族も……うぅ……」

 

ブラブ「そうか……クレスさんには、色々お世話になってたんだが……イアちゃんもかわいい娘だったんだけどなぁ。辛かったな……ケイア」

 

ケイア「うわぁぁぁ……」

 

 

 

 自分以外の人に会えた安心感と、再度家族の死を受け入れたことによってケイアはまた、ブラブに縋るように何度も涙を流した。

 

 

 そして暗くなったベタ村に居ても危険だと思ったブラブは、ケイアを自分の馬車に乗せ一先ずここを離れた。ブラブは家を失くしたケイアの、身寄りの場所を尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラブ「ケイア、他に親戚とか居ないのか?おじいさんとかおばあさんとか……」

 

ケイア「う〜ん……もう、おばあちゃんはいないからおじいちゃんの家ならわかるけど」

 

ブラブ「それなら、落ち着くまで暫く泊めてもらえ。他に行くあてなんかないだろう?俺だって、いつまでもケイアを乗せて歩くわけにはいかないからな」

 

ケイア「うん……そうだね」

 

 

 

 一先ずケイアの祖父の家を訪ねることになった。ベタ村からは馬で2日かけての移動となり、その間夜を過ごすこととなる。

 

 ケイアにとって、森で一夜を過ごすのは経験はなかったが、ブラブがいれば安心だと思い、付いてきたスライムと遊んでいた。そんなケイアを見て、ブラブは声を掛けた。

 

 

 

ブラブ「本当にモンスターと仲良くなるのが上手いよな、ケイアは。それにしても、珍しい色のスライムだな。森で見つけたのか?」

 

ケイア「うん、森で仲良くなって勝手についてきたんだ。ずっと僕に付いてくるんだよね」

 

ブラブ「懐かれてるなぁ。取り敢えず、今日はここで暖を取ろう。長く走っても、良いことないからな」

 

 

 

 馬車を止め、岩が屋根のように隆起した雨風を防げる場所を選びそこで一夜を過ごした。夕食も食べて、ケイアは眠りに就こうとするのだが瞳を閉じる度に、イアを抱く母親の光景がこびり付いて離れなかった。

 

 

 それを思い出す度、目頭が熱くなり眠れなかった。そんなケイアを見てスライムは、頭を撫で落ち着かせようとした。

 

 

 

ケイア「君は良いやつだなぁ……優しくて、強くて。泣き虫の僕とは大違いだ……」

 

 

 

 スライムは弱音を吐いたケイアを更に優しく頭を撫で、寝かしつけようとした。その優しさにケイアはまた、涙をこぼした。そして自然と眠りにつき朝を迎え、長い時間泣いたこともあってケイアは、心が少し軽くなった。

 

 

 ブラブの朝食を食べ、ケイアの祖父の家へ急いだ。長い時間もスライムと遊んでいたお陰であっという間に到着し、祖父の家へと辿り着いた。ケイア自身、会うのは数ヶ月ぶりで家族全員で遊びに訪れる。一人で訪問するのは先ず、有り得ない。そして祖父の、ノアの玄関を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「おじいちゃん、居る?」

 

ノア「おぉ、その声はケイアか。今開けるからな」

 

 

 

 ケイアの祖父は、質素な服で長い髪に帽子をいつも身に着けている。祖母は数年前に他界し、今では祖父は一人暮らしで仕事を終わらせると飲み物を飲みながら外を眺める時間が増え、退屈な日を過ごしている。

 

 

 そんな祖父が孫の声を聞いて、直ぐ様玄関を開けるがいつもと様子が違うことに気付く。

 

 

 

ノア「ケイア。クレスとイアは?」

 

ケイア「……二人共、ドラゴンに殺された」

 

ノア「な、何と……あぁ、ケイア……可哀想に。ささ、取り敢えず中に入りなさい」

 

 

 

 そしてケイアは祖父に、事の経緯を話した。二人の家族を失い、行くあてもなく途方に暮れていると説明をすると、祖父は泣きながら自分の家に居てもいいと承諾してくれた。

 

 

 

ノア「おじいちゃんは構わないさ。ここもケイアの家だからね、何も気を遣わなくていいよ」

 

ケイア「うん、それで……このスライム何だけど。一緒に暮らしても大丈夫かな?」

 

ノア「あぁ、いいとも。家は賑やかな方がいいからね、その子には名前はあるのかい?」

 

 

 

 ケイアはトラブル続きで、スライムに名前を付けるのを忘れていた。少し考え込み、安直ではあるが簡単に名前を付けた。

 

 

 

ケイア「う〜ん……じゃあ、今日から君はライムだね。これからよろしくね、ライム!」

 

ライム『…………』プルプル

 

 

 

 ライムは言葉がわかっているかのように体を震わせ、喜びを表現した。そして話が纏まると商人は立ち上がり、玄関に向かった。

 

 

 

ブラブ「それじゃあ、俺は行くよ。元気でな、ケイア。また顔、見せに来るからな」

 

ケイア「うん!ありがとう、ブラブさん」

 

ノア「商人さん、ありがとう」

 

 

 

 ブラブは軽く手を振り、馬車を走らせ森の中へと消えていった。そしてケイアは祖父の仕事を手伝い、スライムと高原を駆け回る日々と他のモンスター達と過ごすことが日課になりつつあった。

 

 そんなある日、祖父からこんな提案を持ち出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノア「なぁ、ケイア。学校に興味はないか?」

 

ケイア「学校?」

 

ノア「西に行くと、『オリバー王国』という国があるんじゃが……ケイアのように、モンスターを使役することに長けている者達が沢山おる。魔法もそこで勉強してみないか?」

 

 

 

 ケイアは、悩んだ。ここで祖父と暮らしたほうが何よりの幸せ、わざわざ学校に行く必要はあるか考えた。そこで続けて祖父が話を振る。

 

 

 

ノア「何でも、モンスターの数が五万といるらしい。色んなモンスターが見れれば、ケイア自身もいい勉強に……」

 

ケイア「行く行くッ!沢山見れるなら絶対行きたいッ!」

 

ノア「おぉ……そうか。なら、手続きはワシがしておくから心配するな」

 

ケイア「確かその学園って、『プロネーシス学園』だよね?。学費ってすごい高いんじゃあ……」

 

ノア「心配はいらん。使う目的がなかったのでな、金には困らんぞ」

 

 

 

 仕事一筋の祖父は、食費にしかお金を使わず町に出たとしても見て帰ってくることのほうが多かった。そしてその流れでケイアは、プロネーシス学園に行くこととなった。

 

 

 その数日、試験案内の手紙が届き、入学試験で必要なものを確認し緊張と興奮で寝られなかった。そんなケイアはライムに語りかけて気を紛らわしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「いよいよ、試験か……。大丈夫かなぁ……」

 

ライム『…………』プルプル

 

 

 

 ライムは跳ねながら元気付けようとしてくれて、ケイアは少し肩の荷が落ちた。そしていよいよ入学試験当日になり、ケイアとライムはオリバー王国へと旅立った。途中までは徒歩で森を抜け、停留所で馬車に乗りそこから直ぐに大きな壁が見え、そこがオリバー王国だとわかった。

 

 

 そこから門をくぐると、何処を見渡しても人ばかりで酔いそうになるが、プロネーシス学園の道なりがわからなかったので案内所に行き、道を尋ねて辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「大聖堂みたいな学園だなぁ……。高ぇ……」

 

ライム『…………』プルプル

 

 

 

 雪のように白く高い壁に、様々な装飾がされる教会のような建物が聳え立っていた。門をくぐると試験を受ける生徒が大勢、学園へと足を運び次々と適性試験に通された。

 

 

 適性試験では、自分自身が持っている『魔力量』を学園に備え付けられている水晶玉で見ることが出来る。ケイアの番が回り、先生と思わしき人の指示を待った。

 

 

 

「ではこちらに、手をかざしてください」

 

ケイア「はい……」

 

 

 

 内心自分にどれほどの魔力があるのか楽しみにしていた。だが、これで自分に全く魔力が無いと判明したらどうしよう、とケイアは焦っていた。そして鑑定が終わり、先生に告げられた言葉は……。

 

 

 

「ケイアさん。貴方の魔力量は……」

 

ケイア「魔力量は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無いです」

 

ケイア「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

ライム『…………』プルプル

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。