モンスターテイマー   作:泰然

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リンゴ酒、美味い……。


7話 大司教と対談 瑰麗の剣豪

 アサギリから回復魔法を1週間、教えてもらい次の週はヴィリーからテイマーについて深掘りし、ケイアはメニカと共に修行をつけてもらった。

 

 

 

ヴィリー「ケイア君、モンスターって何で経験値が上がると思う?」

 

ケイア「う~ん……戦いの中で戦闘経験値が上がるとかですかね?」

 

 

 

 ケイアは模範解答として、教えられた知識をあげヴィリーに返答した。ヴィリーは笑顔のまま、他の答えも教えてくれた。

 

 

 

ヴィリー「確かにそれも答えだけど、モンスターによって様々で例えばスライムだったら捕食して成長したり、ホテプみたいにアンデットだったら湿ってて暗い場所に居ると早く成長できたりするかな」

 

ケイア「へぇー、そうなんですね」

 

 

 

 ケイアが保有しているモンスターは珍しいらしく、ヴィリー曰く何が成長に繋がっているか分からないらしい。

 

 

 

ヴィリー「まぁ、色々経験積ませて何が正解か見極めていった方がいいわね。一先ず、ケイア君にはメニカについて深く知る必要があるわ。身体能力やどんな技量があるのか、飼い主として最低限の事は押さえとかなきゃ」

 

ケイア「分かりました。メニカ、自分の特徴を簡単に説明してくれる?」

 

 

 

 ケイアの後ろで静かに聞いていたメニカが、お辞儀をしながら説明した。

 

 

 

メニカ『了解デス、マスター。私ハ、迎撃型戦闘用ロボット。主ナ攻撃ハ、拳カラ繰リ出サレル衝撃波ノミデス。コノ腕ハ特殊な合金デ出来テイル為、魔法ヤ物理攻撃デハ簡単ニ壊レナイ設計ニナッテイマス』

 

ケイア「魔法とかは使えるの?」

 

 

 

 再度ケイアは質問し、メニカに尋ねた。

 

 

 

メニカ『イイエ。動力源トシテノ運用ニ使ワレル為、一切使エマセン。デスガ、腕部ヤ脚部ヲ取リ外ス事デ能力ヲ変エル事ガ出来マス』

 

 

 

 メニカ曰く体の一部をパージさせ、様々なタイプで戦う事が出来る。

 一つは、戦闘に於いて最も能力が平均であるがどんな局面でも対応可能な『ナチュラルタイプ』。

 二つは、腕部にパーツを集め極限まで防御力と攻撃力を引き出し相手を殲滅させる『エナジータイプ』。

 三つは、脚部にパーツを集め極限まで高め疾風の如く相手を翻弄しスピードを向上させる『アクセルタイプ』。

 このタイプを使い分け局地的に限られたとしても、変形する事によって戦場を切り抜ける事が出来ると説明した。だが水には極端に弱い為、注意が必要だと付け加える。

 

 

 

メニカ『多少ノ雨デアレバ大丈夫ナノデスガ、水ヲ被ル程ノ水量ニハ耐エル事ガ困難デス』

 

 

 

 申し訳なさそうに言うメニカにヴィリーは頷きながら応えた。

 

 

 

ヴィリー「そうね……。それぞれ弱点があるから、そこを見極めて戦う必要があるわね。その代わり、水以外の属性には強いはずだから、ほぼ無敵と言ってもいいわね。本当に、ケイア君が仲間にするモンスターは少し特殊ね」

 

ケイア「それ、ヴィリーさんにだけは言われたくないです……」

 

 

 

 ケイアは小声で皮肉を言いながら、授業を聞いた。暫く授業を聞いて、ケイアはもう少し自分の従者の助けになればと思い回復魔法について深掘りした。

 

 

 

ケイア「ヴィリーさん、もう少し回復について詳しく聞きたい事があるんですけど……」

 

ヴィリー「う~ん、そうね~……。私は回復専門じゃないから、師匠に頼むのが一番なんだけど……。あっ、だったら教会に行ってみるのがいいと思うわ。回復に長けてる人達が沢山居るし、何よりケイア君と同じ無詠唱が使える聖職者の人がいるの。その方とは昔からの知り合いで、戦争で孤児になったり捨てられた子供なんかも保護してもらった事があるわ。彼の名前は、『ハイリゲ・クリムト』。この国の教会で、最も権威のある大司教よ。私から連絡しておくから、一度会ってみるといいわ」

 

 

 

 そう言われたケイアは授業中、その相手にがどんな人か想像しながら夕方に終わるのを待った。そうして授業が終わりケイアは教室を飛び出し、その行動力の凄さにヴィリーは苦笑いを浮かべながら退室した。

 教会となる場所は宮殿近くにある為、歩くには少し遠いがケイアは早く会いたい一心で興奮気味だった為そのまま走り出していた。護衛の為にメニカと共に教会へ走り出してから数分が経ち、もう少しで到着する頃、街道は様々な種族でごった返し避けて通るには難しくスーツの男性にぶつかってしまった。ケイアは透かさず、その男性に謝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「あっ、すいません。大丈夫ですか?」

 

?『いえ、大丈夫ですよ。アナタこそ、御怪我はありませんか?」

 

 

 

 男性は紳士的にケイアの事を気遣い、申し訳ないと言った表情で見つめていた。そこでケイアは目を合わせた瞬間、固まった。男性の顔は2本の角と黒い毛に覆われ、体は普通の人間のバフォメットだった。

 異様に顔が近かった事にもびっくりしたが、男の獣人である事に驚愕していた。言葉が詰まりつつ、何とか返事を返した。

 

 

 

ケイア「は、はい、大丈夫です」

 

?『そうですか。それでは私は急いでいるので、これで』

 

 

 

 男性はケイアに目もくれず、その場を立ち去った。ケイアは無性に男が気になり、夢中で追い掛けた。だが、人混みが多くそのまま見えなくなり追い付く事が出来ず消えて行った。

 

 

 

ケイア「はぁ……はぁ……何処に行ったんだろう。色々聞きたかったのに……」

 

メニカ『マスター。日没ガ近ヅキ、夜道デ見通シガ悪クナリマス。主目的デアル、教会ニ急イダ方ガ賢明デス』

 

ケイア「そうだね。はぁ……もう一回、話してみたかったな~」

 

 

 

 男性モンスターが存在している事に興奮が隠せないケイアだったが、また出歩く事があれば会えるだろうと楽観的に考え再び教会へと歩き出した。教会へと辿り着いたケイアは、先ずその建築物の大きさに驚かされた。真っ白で煌びやかに装飾された教会に、夕陽が照らされとても幻想的に映った。

 

 

 

ケイア「綺麗な教会……」

 

 

 

 息を漏らしながらそんな光景を目にしつつ、二人は中へと入った。入ったその先には、遅い時間にも拘らず様々な種族の信者達が九体の像に礼拝を行い信仰を捧げていた。ケイアは九体の巨大な像を見上げ、少し不審な点を見つけた。

 全身包帯に巻かれた像の顔が壊れている為、表情が分からなかった。疑問に思いつつケイアは、大司教がどの人か探すと奥の祭壇で聖書のようなものを読み聞かせる人物がいた。多くの信者達が長い椅子に座り、静かに聞きケイアも例に倣って空いている席に座り終わるのをメニカと共に待った。するとそこに……。

 

 

 

?『ハイリゲ様にお会いしたい、ケイア様でよろしいでしょうか?』

 

ケイア「はい、そうです。えっと……貴方は?」

 

 

 

 白い衣と玉鬘を纏った小柄で蒼い狼の獣人女性が、ケイア達に声を掛けた。全身綺麗な毛並みに覆われ、とても柔らかい表情にケイアは少しドキッとしつつ名前を聞いた。

 

 

 

ミルト『私は大司教様の手助けをさせて頂いています、ミルト・ゾルゲと申します。只今、大司教様は信者の皆様に聖書に記されている九柱の教えを説かれている最中ですので、もう暫く御待ち下さい』

 

ケイア「はい、わかりました。あの……所で何故、自分達が大司教様に用があると分かったんですか?」

 

 

 

 そう尋ねると、ミルトは少し微笑みながら応えた。

 

 

 

ミルト『ふふっ、信徒の方々は私のように礼拝を行う白い服装で訪れるので。ケイア様のように普段御召しになる装いだったので直ぐ分かりました。それに、これ程大きなオートマトンを引き連れている方だと確信できたのも、一つの要因ですね』

 

ケイア「そ、そうですよね。こんなに大きなオートマトン、連れてる人なんかいないですよね……あはは……」

 

 

 

 等と話しながら雑談をし、閉館の時間が近づいた事で信者達が続々と帰って行った。そしてミルトに導かれ、ハイリゲと対談する事が出来た。

 

 

 

?「貴方がヴィリーの紹介で訪れた、ケイア君だね」

 

ケイア「は、初めまして、ケイアと申します」

 

 

 

 見た目の年齢は30代後半で髪はくすんだ焦げ茶色、とても優しい表情で迎えてくれた。胸に頭程の大きい聖書を携え、その神々しさに緊張してしまうケイア。それを悟ったのかハイリゲは、落ち着かせるように問いかけた。

 

 

 

ハイリゲ「それ程畏まらなくていいですよ、僕は大司教という肩書だけで偉くは無いので」

 

ミルト『ハイリゲ様、いつも言っているではありませんか。『自覚を持ち、卑下する事なかれ』。自分を過小評価するのは、ハイリゲ様の悪い癖です。信徒の皆さんに説かれている身の方が、それでは示しがつきませんよ!」

 

ハイリゲ「わ、分かった、気を付けるよ。それでケイア君、大方の事情は聞いているよ。回復魔法についてだったね」

 

 

 

 ミルトに気圧されたハイリゲは話を逸らすように、回復魔法について聞いてきた。横で頬を膨らませたミルトを尻目に、ケイアは質問した。

 

 

 

ケイア「あの、回復魔法は相手を治癒する為のものなのは重々承知なんですけど……。相手にダメージを与える事というのは、可能なのでしょうか?」

 

ハイリゲ「可能と言えば、可能だね。与え過ぎれば毒にもなるから、許容範囲を越えれば相手は死滅するだろうね。後は回復魔法を自分の体や拳に付与させて、殴る事も可能だよ」

 

 

 

 付与させるとはどういう事か、ハイリゲに詳しく聞くと殴り続ける間は疲れが溜まり俊敏な動きは徐々に出来なくなる。これを自分の体に付与する事で、休みなく殴打する事が可能。

 そして拳のように部分的に付与する事が出来ると、威力が倍以上に跳ね上がる。魔力の動きを自在に操る必要がある為、かなり難易度が高い。だが、誰でも練習すれば出来る事だと言われケイアは少しでも皆の役に立てる事に希望が湧いた。そして遅い時間まで相談に乗ってもらった事に、ケイアは深く頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「遅い時間まで相談に乗ってくれてありがとうございます。また機会があれば、また立ち寄っても構いませんか?」

 

ハイリゲ「えぇ、構いませんよ。いつでも貴方を歓迎します」

 

 

 

 そして別れようとした時、ふと思い出したようにケイアは先程感じた疑問を投げた。

 

 

 

ケイア「あの、そう言えば……あの像、顔が壊れていますけど何かあったんですか?」

 

ハイリゲ「あぁ、あの像ですか。実は最近、何者かが教会内に侵入し冥王であるドゥンケル様の尊顔に傷付けたのです。これは、あってはならない事ですが住民の心というのは皆一緒とは限りません。何か魔が差したのだろうと、不問と致しました」

 

ケイア「いいんですか?」

 

ハイリゲ「僕は、九柱の中でドゥンケル様を心から崇拝しているのです。それは教えの中に、様々な言葉を残されているからです。『人を憎むのではなく、心を憎む』、誰しものその時の感情に絆される事があるでしょう。相手がその行いに恥じたのであれば手を貸し、恥じなければじっとその時を待つ。これがあの方の、優しい教えです」

 

 

 

 ドゥンケルの話をしながらハイリゲの眼差しは、尊敬の念を抱いていた。そしてケイア自身も、その教訓にはどこまでも深い懐の深さを感じ一緒に眺めていた。話を終えたハイリゲが、凄い勢いでケイアに迫り入信を勧めてきた。

 

 

 

ハイリゲ「ケイア君、何処の宗派にも属さないのであればドゥンケル教に入らないかい?勿論様々な宗派があるが……そうすれば、きっと君にも恩恵を得られると思うんだ」

 

ケイア「い、いや、僕は宗教とかはあんまり……」

 

ハイリゲ「絶対後悔させないから!日々の行いも変わってくると思うし、教えを学ぶだけで優しくなれるっ。こんなメリットが備わっている事は無いし、皆優しく迎い入れてくれる。だからケイア君も是非っ、是非っ!

 

ケイア「あの、えぇと……失礼しました!!」

 

 

 

 強く迫るハイリゲを振り切り、ケイアはメニカと共に教会を逃げ出した。そんな後姿を眺めていたミルトはまたか、と溜息をしながら叱咤する。

 

 

 

ミルト『ハイリゲ様……。いつも言っているではないですか、心静かに説き伏せし。何でいつも肝心な時に、興奮するのですか?!』

 

ハイリゲ「いや~、良さを伝えたくて……。面目ない……」

 

ミルト『だからこの宗派だけ、信者が少ないんですから。もう少し気を付けて下さい』

 

 

 

 そう言いながら、暗い夜空を遠い目眺めるミルトであった。そしてケイア達は帰りの道中、メニカが不思議な事を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メニカ『マスター、少シヨロシイデショウカ?』

 

ケイア「どうしたの?」

 

 

 

 メニカが話したがっていたのは、ドゥンケルの像についてだった。

 

 

 

メニカ『私ノ記憶媒体ニ存在スル姿形ガ、一致シテイルノデス。顔ノ判別ガ出来ナイ為、確証ハアリマセンガ……アノ姿、何処カデ……。仲間ノ記憶データデスノデ、破損シテイル可能性ガアリマス』

 

ケイア「思い出せそう?」

 

 

 

 ずっと空を見上げながら、メニカは記憶を辿り思い出そうとするが……。

 

 

 

メニカ『…………スイマセン。思考シタ結果、思イ出ス事ガ出来マセンデシタ』

 

ケイア「メニカの記憶は、他のオートマトンと共有できるの?」

 

メニカ『ソウデス。私ガ護衛シテイタ、アノ研究施設ニデータヲ保存スル『ブレインコントロールシステム』トイウ場所ガアリマス。ソコデ集約サレタ膨大ナデータヲバックアップシ、我々オートマトンニ供給サレマス』

 

ケイア「なるほどね。だから、ドゥンケルの姿を見た事があるって訳だ。でもそれ、誰かが像を見たから記憶に保存したって話じゃないの?何がそんなに引っ掛かるの?」

 

 

 

 その言葉にメニカは再び悩み始め、考える動作をした。結局何も浮かばず、二人はそのまま学園へと戻り寮に入っていった。深くは考えずケイアは、横になり次の日を迎えた。その日もヴィリーとの授業に励み、特訓をしているとアサギリが少し険しい顔をしながら闘技場にやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサギリ「ヴィリー、少しいいか?」

 

ヴィリー「どうしたんですか、師匠?」

 

 

 

 ヴィリーはケイアの下を離れ、会話をし終始アサギリの顔は曇ったままだった。そして何かを承諾したように頷くと、二人はケイアの下に近付きヴィリーが話し始めた。

 

 

 

ヴィリー「ねぇ、ケイア君。前に行った、アネクメって覚えてる?」

 

ケイア「あぁ、ここのオリバーから南にある砂漠ですね。そこがどうかしたんですか?」

 

 

 

 二人に尋ねると、眉間に皺が寄り面倒な事が起きたのだとケイアは察した。詳しい事情を聞くと、その砂漠地帯でモンスターが活性化しその地域に住む町にまで被害が出ているという情報だった。そしてその話を踏まえてアサギリは、ケイアに提案する。

 

 

 

アサギリ「ケイア君。今回、未知のモンスターが多数確認されている。ただの討伐であれば、君を連れて行くのだが赤金や白金ランクが手を焼く程だ。何が起こるか分からないが、それでも行くかい?」

 

ケイア「……はい、行きます!」

 

 

 

 ケイアは危険という言葉に少し迷ったが、自分と同じような境遇の人達を助けたいと思い決断した。今この時間にも冒険者が戦い、必死に街を守り抜いている状況である為ケイア達は急いで準備を整えた。

 連れて行くのはライム、ホテプ、メニカの全員を引き連れ、アネクメに向かう事となり、早速ケンタウロスを手配した。アサギリは単独行動に移り、ヴィリーはケイアの同伴で動く事となり応援に向かった。そして移動中、荷車に揺られながら南進しているとホテプは外で歩いているメニカをずっと睨み、ケイアの腕に絡みついていた。見兼ねたケイアは注意するが、全く言う事を聞かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「ねぇ、ホテプ。そろそろ離してくれない?腕痺れて来たんだけど……」

 

ホテプ『ダメ。この機械が、いつ主を襲うか分からないでしょ』

 

ケイア「仲良くしてよ~……」

 

 

 

 ケイアは溜息を大きく吐き、この二人が揃うといつもように喧嘩が始まる。主にホテプが一方的に始めるが、メニカはその挑発には乗らずただ聞いているような感じだった。そんな喧嘩もお構いなしに、ライムはいつもケイアにくっ付いて甘えてくる。

 

 

 

ライム『ご主人、お腹空いた~。ご飯食べた~い』

 

ケイア「えぇ……さっき食べたばっかりなのに……」

 

 

 

 ライムのお陰で場の空気は和むが、それでも睨む事を止めないホテプ。そうこうしている内に、例の町が見えてきた。だが遠めでも分かる程、火の手が上がり黒い煙が漂っていた。ヴィリーは被害状況を見る為に箒を使い、上空から観察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィリー「……広い範囲で被害が拡大してるわね。抑え込めていないのかしら」

 

 

 

 左側は抑えられているが、右側は住居が焼け押されている様子だった。ヴィリーは荷車の下に戻り、ケイアに状況を伝えた。

 

 

 

ヴィリー「戦況は芳しくないわ。取り敢えず被害が比較的、少ない場所をケイア君達で護衛して。被害が大きい左側をリスと私で抑えるわ」

 

 

 

 そして荷車を近くまで近寄らせ、そこから二手に分かれた。ケイア達の方は死傷者は居ないものの、負傷者は多数目撃した。治療が追いついていないのか、血を流したまま倒れている冒険者や亜人、人間の兵士が沢山いた。それを見過ごす事が出来なかったケイアは、一人一人右手を翳し回復魔法をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「大丈夫ですかっ!?今、治癒魔法を掛けますね」

 

「あ、あぁ……済まない」

 

 

 

 ケイアの賢明な治療のお陰で、負傷していた人達や亜人、獣人の兵士はみるみる良くなった。そして前線まで進むと、袴に眼帯をした女性が倒れていた。その周りには、様々なモンスターの死骸が散乱していた。

 急いで駆け込みケイアは治療しようとするが、その余りの傷口に驚いてしまった。腹の部分を貫通し、足首が千切れて薄皮で何とか保っている状態だった。固まったケイアだったが、直ぐ我に返り右手を翳し治療を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「早、く……逃げて」

 

ケイア「今、治しますから待っていてくださいっ……」

 

 

 

 彼女は必死に何かを訴えていたが、ケイアは回復に専念していた為、聞こえていなかった。右手の力も相まってか、彼女の千切れた体や傷口がどんどん無くなって行った。治療が終わり安心させようと、彼女に呼び掛けようとした時……。

 

 

 

ケイア「これで大丈夫です。暫く安静にして……」

 

 

 

            バゴォッ!!

 

 

 

 ケイア達の前にあった建物が騒音と共に崩壊し、煙の中現れたのは4mある『ハイオーク』だった。オークの中で上位に位置する存在で、一対一では戦うのは難しいと言われる。そんなハイオークの様子がおかしく、目が充血し焦点が定まっていなかった。そしてハイオークは狙いを定め、ケイア達に突進して来ようとしていた。それに反応し、彼女は何とか体を動かそうとしたが動かなかった。

 

 

 

?「くっ、まだ動けない……!」

 

 

 

そんな彼女を守るようにケイアは彼女の前に立ち、庇った。

 

 

 

ケイア「く、来るなっ!」

 

 

 

ケイアは必死に声を出し、威嚇をするがハイオークは止まらず徐々に近付いてきた。もうダメかと思った瞬間、メニカがハイオークの顔面を殴り動きを止めた。

 

 

 

メニカ『バンカー射出ッ!』

 

 

 

             ガコンッ!!

 

 

 

 パンチの衝撃と共に、巨大なハイオークは住居に吹き飛ばされ瓦礫の中で息絶えた。メニカはハイオークの生体反応を確認し、ケイアの下に駆け寄った。

 

 

 

メニカ『マスター。御怪我ハアリマセンカ?!』

 

ケイア「うん、メニカのお陰でこの人も助かったよ。ありがとう」

 

メニカ『……///。ソレヨリモマスター、ココハ危険デスノデ早ク…………生体反応ッ!?』

 

 

 

 メニカが叫んだ時、同じ二体のハイオークが現れ突進しながらケイアに向かってきた。透かさずホテプとライムは、動きを止めようとする。だが、ホテプの詠唱する時間では間に合わず、ライムは足元に粘液をばら撒き止めようとするがあまりの力に成す術が無かった。メニカは一体足止め出来たが、もう一体はケイア目掛けて突っ込んできた。

 

 

 

ホテプ『ダメッ、間に合わない……!?』

 

ライム『ご主人、逃げてっ!」

 

メニカ『マスターッ!』

 

 

 

 死期が迫る中、半ば諦めた様にケイアは目を瞑った。死を悟ったケイアの後ろで、完治した彼女が立ち上がり呼び掛けた。

 

 

 

?「心配はいらない」

 

 

 

 言いながら彼女は、ケイアを安心させるように背中を擦った。そしてケイアの前に立ち、風に合わせるように黒髪のポニーテールが靡いていた。太刀を抜き、霞の構えから静止した。徐々に近付くハイオークに臆することなく、息を吐きながらその一太刀を待った。

 

 

 

?「ふぅ…………三段突きっ!

 

 

 

 光る剣先に目線を合わせていたケイアは技の瞬間、切っ先が消えたように見えた。その時には、ハイオークの動きが止まり額、胸中、腹に穴が開きそのまま倒れて絶命した。女性は太刀を収め、ケイアに向き直り安否を心配した。ケイアはその姿に見惚れていた為、返答に遅れた。

 

 

 

?「怪我はないか?」

 

ケイア「だ、大丈夫です。とても、格好良かったです!」

 

?「それは、こちらの台詞だ」

 

 

 

 小声の為、ケイアの耳には届かなかった。そして思い出したように彼女は、自己紹介をする。

 

 

 

スザク「自己紹介がまだだったな。拙者は、スザク・クワミズ《神水 朱雀》よろしく頼む」

 

ケイア「初めまして、ケイアって言います」

 

 

 

 大きく返事を返しながら、ケイアは彼女の手を握り握手をした。するとスザクは、頬を赤らめ急に活舌が悪くなった。

 

 

 

スザク「か、かたじけ、にゃい……///」

 

 

 

 彼女の豹変ぶりに、少し困惑するが自己紹介を済ませ周りに敵が居ないか確認し殲滅できた事を確認した。そしてヴィリー達と合流する為に、左側の住居エリアに向かった。その間、歩きながらスザクはケイアに再度御礼をしてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「ケイア殿、本当に助かりました。あれ程酷い怪我を、瞬く間に治療できてしまうとは……」

 

ケイア「僕も必死だったので。治ってよかったです」

 

 

 

 笑顔で返すケイアの顔を見てスザクは、目線を逸らし再び小さい声で返答する。

 

 

 

スザク「結婚したい……」

 

ケイア「えっ、血痕?!まだ何処か怪我してるんですか!?」」

 

スザク「いやいや、大丈夫ですっ!…………あの、ケイア殿は何処の方なのでしょうか?お聞かせ頂ければ、幸いなのですが……」

 

ケイア「今はオリバーに住んでいます。学園に通っている半人前の冒険者ですが……」

 

 

 

 それを聞いたスザクは、目を輝かせ飛び跳ねながら喜んでいた。透かさずスザクは、自分がオリバーの第ニ師団の騎士だという事を告げた。それに託けて、ケイアに質問しようとしたが……。

 

 

 

スザク「ケイア殿もオリバーなのですか!?拙者、そこの第ニ師団の騎士なのですが、よろしかったらお食事でも……」

 

ヴィリー「ケイアくーん、無事ー?」

 

 

 

 遠くで手を振りながら大声で呼び掛けるヴィリーの声に掻き消され、スザクの声はケイアに届いていなかった。邪魔をされたスザクはヴィリーを、殺すような勢いで睨み付けていた。ヴィリーもそれに気付き、何故睨まれているのか問う。

 

 

 

ヴィリー「スザクじゃん。だから右側の被害が小さかったのか…………って何で睨んでんの?」

 

スザク「お主が来なければ、誘えたかもしれないのに……許さぬ」

 

 

 

 そのまま太刀を抜き、ヴィリーに襲い掛かった。暫くしてスザクの気が治まり、その後は国のお役所の仕事となり避難民は再び被害に遭う恐れがある為、一時的にオリバー王国へ避難する事となった。そこでスザク達と別れ、先にオリバーへと帰還する事になった。そして荷車に乗りながら、ヴィリーから安堵の声が漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィリー「本当、ケイア君達が無事でよかったわ……。こっちは死傷者が沢山いたから心配したのよ……」

 

ケイア「スザクさんが守ってくれたので、こっちは誰も死なずに済みました」

 

 

 

 被害報告を済ませヴィリーは今回、モンスターの異常行動について語った。このアネクメに、ハイオークが出没する事例は無く強いて言えばサンドウォームの被害だけである。そしてもう一つ注目する点が一つある。

 

 

 

ヴィリー「ケイア君も見たと思うけど、どのモンスターの目にも充血していた事が確認できたわ。奇怪な行動に凶暴性……四肢が捥げても獲物に喰らい続ける執念深さ。誰が何の為に行っているのか、全く見当がつかないわ」

 

ケイア「異常性と言えば、僕を集中的に狙っていたような……。僕なんか狙って、何の目的が……?」

 

 

 

 疑問は残るものの、今は無事帰られる事に胸を撫で下ろしながら馬車に乗りオリバーへと帰還した。その姿を高台から見下ろす、男の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?『後もう少しでしたね。ですが、あの治癒能力には目を見張るものがあります。放って置けば、厄介な存在に成り得る……早いところ潰したい所ですが。それでは面白くないですからねぇ…………もっと楽しまないと』

 

 

 

 男は薄ら笑みを浮かべ、ケイアを眺めていた。そして男は用が済んだのか、自分の手に持っていたバイオリンを演奏しながらその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

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