モンスターテイマー   作:泰然

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二つ名を考えるのが一番楽しい。


8話 御礼も兼ねて 電撃の鬼武者

 アネクメのモンスター凶暴化騒動から、2日経ったある日。学業が休みの日、ケイアは寮でライムとホテプに邪魔されながら勉学に励んでいた。すると、誰かがノックする音に気付いたケイアはドアを開けた先に第一師団長のフェヒターと部下のスザクが立っていた。この前の凶暴化騒動で、スザクを救助してくれた事への御礼で訪ねて来た。

 

 

 

フェヒター「ケイア殿、先の一件でスザクの助勢、感謝します。もし、あの場にケイア殿が居なければスザクはこの世に居なかったでしょう。その件に関して、師団長の私から御礼申し上げます。本当にありがとうございます、何か御礼の品物でも……」

 

ケイア「いえいえ、助けるのは当然ですし。何より僕の方が、スザクさんに助けて頂いたのでお礼なんていいですよ」

 

 

 

 ケイアはフェヒターからの御礼を断り、丁寧に挨拶を交わした。そのやり取りを交わしている途中、後ろに居るスザクがソワソワしていた。フェヒターがそれに合わせるように、話を切り出した。

 

 

 

フェヒター「ケイア殿、少し時間を頂けないだろうか。スザクがケイア殿に、用があるようで」

 

ケイア「僕にですか?」

 

 

 

 後ろに居たスザクがフェヒターに促されるように前に歩み出し、喋り始めた。

 

 

 

スザク「あ、あの……ケイア殿///。今日は、学園が休みという事でよろしいですか……?」

 

ケイア「そうですけど……」

 

 

 

 歯切れが悪いスザクを見て困惑するケイア。スザクが口にしたのは、逢引の誘いだった。

 

 

 

スザク「も、もしよろしければ……町を一緒に歩きませんか?勿論、ケイア殿のご予定が無ければですが……」

 

ケイア「いいですよ、勉強も丁度終わったところでしたので」

 

 

 

 返事を返した瞬間、スザクは幼い少女のようにはしゃいだ。喜びながら着替えてくる、と言い残し部屋を出て行ってしまった。残されたフェヒターは、申し訳なさそうに謝罪した。

 

 

 

フェヒター「すいません、このような場で。あの子も、まだ若い故に感情のコントロールが出来ていないんです。許してやってください」

 

ケイア「スザクさんって何歳なんですか?」

 

フェヒター「まだ、二十歳だったと思うのですが……。幼き頃から剣術を父親から叩き込まれ、今や剣聖などと呼ばれるようになりました。鍛錬に明け暮れ、相当辛い事も経験したというのも聞きました。その反動で家を飛び出し、押し込めていた感情が出ているのかもしれません。彼女がもし隔てる壁に足を止める時があれば、ケイア殿……力になってあげて下さい」

 

ケイア「自分の出来る限りを尽くします」

 

 

 

 ケイアが返答した際、フェヒターの顔が柔らかくなり優しく微笑んだ。そうこうしている内にスザクが戻り、目を輝かせながら準備するのを待っていた。それに気圧され、直ぐ様支度を整え部屋を出ようとするとライムとホテプが一緒に行きたいと申し出てきた。

 

 

 

ライム『ご主人も行くなら、ライムも行く!」

 

ホテプ『私も行く……』

 

 

 

 二人揃っていきたいと申し出た瞬間、スザクの顔はみるみる曇りあからさまに嫌な表情をしていた。それを知ってか知らずか、ケイアはどうするか尋ねて来た。

 

 

 

ケイア「スザクさん、この二人連れて行ってもいいですか?」

 

スザク「え、えぇ……いいですよ。はぁ……

 

 

 

 その返しに無下に断る事も出来ず、スザクは四人で散策する事となった。訪れたのは宮殿へと続く長い通路に連なる、出店にやって来た。そこには様々な種族が行きかい、常に活気づいている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「お腹すきませんか?近くに有名なお店があるんです」

 

 

 

 スザクの鶴の一声によりお昼時も相まって、4人は腹ごしらえをする為に巷で有名な店へと入った。中は非常に混雑しているが、丁度全員が座れるテーブルを見付け腰を下ろした。内装は全て木造で、カウンター席には沢山の種類のお酒が並べられている。ケイアは早速何を食べるか悩んでいると、スザクからオススメのメニューを提示された。

 

 

 

スザク「ここではお店特製のタレがかけられた、鳥の串焼きが美味しんですよ。後は、果実酒が有名なんですが……今回は持ち越して串焼きに炒め物でも食べましょう」

 

ケイア「スザクさんは、よくここに来られるんですか?」

 

スザク「国の討伐依頼が終わった際に、よくここに来ます。団員の皆と朝になるまで飲んだことも多々あるので……」

 

ケイア「楽しそうですね」

 

 

 

 ケイアが笑顔で返すと、スザクも同じように頷きながら微笑んだ。会話を続けていると食事が運び込まれ、ケイアは串焼きの匂いに心躍らせ店員に御礼を言うとした時、その異様な体のデカさに驚き思わず声を上げていた。

 

 

 

ケイア「えっ!?」

 

?『どうした……?』

 

 

 

 その男はなんと、腕は人間なのだがそのほかの部位は黒い体毛に覆われたケンタウロスだった。男は固まったケイアを不思議そうな目で見ていた。無言のままやり過ごす事も出来ない為、ケイアは取り敢えず謝罪を込め返答した。

 

 

 

ケイア「い、いえ、何でもないです。すいません」

 

?『そうか。熱いうちに食え、冷めたら不味いぞ』

 

 

 

 無表情のまま男は厨房へと下がり、先程の男についてスザクが興奮を抑えられずにいた。

 

 

 

スザク「ケイア殿見ましたっ、男のモンスターですよ!?」

 

ケイア「僕もびっくりして思わず声出ちゃいましたよ。オリバーって割と集まりやすいのかな……」

 

スザク「その口振りだと、以前もどこかで御会いした感じですか?」

 

ケイア「はい。前は、スーツ姿に頭が山羊の獣人でしたね」

 

 

 

 以前、教会へ向かう途中ぶつかった山羊男の旨を話した。その時は何も感じなかったが、立て続けに不思議な事が起こっている。そしてケイアは、話している最中ある事に気付いた。

 

 

 

ケイア「僕、教会に向かう途中だったんですけど山羊男が来た方向が教会だったんですよ。何か関係があるんですかね?」

 

スザク「ただ、信心深いだけなのではないですか?様々な種族が行き交う場ではあるので、不思議ではないと思いますが……」

 

 

 

 スザクに窘められ、納得をするケイア。色々考えながら串焼きを食していると、スザクからその事について提示された。

 

 

 

スザク「気になるのであれば、今から教会に行ってみますか?本当はもっと雰囲気のいい所に行きたかったんですけど……

 

ケイア「いいんでふか?!ゴホッ、ゴホッ!?……」

 

スザク「大丈夫ですか?!お、落ち着いて食べて下さい……」

 

 

 

 突然の提案を受けケイアは、咽返り慌てた様子で水を飲み干した。飲んだ事で落ち着きを取り戻したケイアは、早速教会に向かう事にした。ケイアは向かう途中、以前訪れた事に一抹の不安を抱えていた。また強く勧誘されるのではないか、と考えていた為足取りが少し重く感じていた。

 

 

 

ケイア「ハイリゲさん、良い人なんだけど押しが強いんだよなぁ……」

 

 

 

 暫く歩き続け、目的地である教会に就いた。荘厳な門を潜り、ハイリゲを探していると獣人のミルトがケイアを見付け優しく迎い入れてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミルト『またの訪問、大変嬉しく思いますケイア様。今日はオートマトンの方ではない方々がお見受けされますが、どういった御用件でしょうか?』

 

ケイア「今日は少しとある人物について、尋ねたい事がありまして」

 

 

 

 説明するとミルトに促され、応接間に案内され少々時間が掛かるとの事で暫く待って欲しいと頼まれた。待っている間、四人で雑談をしながら待つ事にした。ケイアはスザクに素朴な疑問を投げた。

 

 

 

ケイア「スザクさんって教会にはよく来るんですか?」

 

スザク「拙者は個人で行く事は無いが、大きな討伐依頼が来た時に団員の安全祈願で訪れる事はあります」

 

 

 

 そんな話をしている最中ケイアは、ふとフェヒターに言われた事が頭を過ぎりスザクの幼少の頃を尋ねた。

 

 

 

ケイア「あの……嫌であればいいんですけど。スザクさんの小さい頃って、どんな感じだったんですか?」

 

スザク「えっ…………そ、そうですね。あまり触れてほしくは無いのですが……」

 

 

 

 歯切れが悪いスザクに不安を覚えたケイアは、これ以上聞き出すのはやめようと言葉を遮ろうとした時、扉が勢いよく開かれハイリゲが目を輝かせながら入って来た。それを止めようとしたミルトは、遅かったと言わんばかりに手を頭に添えながら首を横に振っていた。ハイリゲがその勢いのまま、ケイアの手に掴み掛った。

 

 

 

ハイリゲ「ケイア君っ、やっとドゥンケル教に入信する事を決めたんだね!!いやぁ、君なら分かってくれると信じていましたよ!」

 

ケイア「あ、あの、今日は個人的な事を聞きに来ただけですので……」

 

ハイリゲ「個人的に詳しく聞きたいという事だねっ?!いいよ、僕が知っているすべてを話しましょう。何からいいかな……じゃあ先ずは、ドゥンケル様が何故人間と共存し繁栄を極めていったかについて詳しく話そうっ!」

 

ケイア「いや……ですから……」

 

 

 

 ハイリゲに気圧され、しどろもどろになるケイア。その問答が続いてる最中、後ろに居たミルトが怒声を浴びせハイリゲを一喝する。

 

 

 

ミルト『不敬ですよ、ハイリゲ様っ!』

 

ハイリゲ「ミルト……そんな大きな声出さないでくれ。びっくりするだろ?」

 

ミルト『神の拠り所でもあるこの聖域で、勧誘を強く迫るのは礼儀を知らぬ蛮族と同じ。聖職者足る者、堅忍不抜の心を忘れる事なかれ。私利私欲で得た信者では、自分の心を満たすのみ。それによって生み出された信者は、果たして救われていると思うのでしょうか?』

 

ハイリゲ「……済まなかったよ。ミルトの言う通り、自分の熱だけで勧誘を迫るものではないな」

 

 

 

 部下に諭されたハイリゲは深く反省し、ソファに座り先程とは違う雰囲気を身に纏い別人のような目つきになった。そしてやっと我に返ったハイリゲは、スザクの存在に気付き挨拶をする。

 

 

 

ハイリゲ「スザクさんも来ていたんですね、気付きませんでした」

 

スザク「拙者も、いつ気付くかひやひやしていました……」

 

ハイリゲ「それにしても、先の騒動では相当痛手を負ったと聞きましたが大丈夫でしたか?」

 

スザク「足が千切れ、満身創痍でしたが、ケイア殿のお陰で何とか一命は取り留めました」

 

 

 

 スザクのその発言に、ハイリゲは驚く素振りを見せた。聞き返すようにスザクに問うハイリゲは、回復させていた状況を聞いてきた。

 

 

 

ハイリゲ「スザクさん、その時の状況を詳しく説明してくれませんか?」

 

スザク「状況って言っても、ケイア殿がただ右手を翳して回復させたくらいしか……」

 

ハイリゲ「無詠唱で……しかもそんな魔力量……。有り得ない……」

 

 

 

 ハイリゲは何かを呟くように、小声でブツブツ喋り始めた。そんな静かな時間が続いた為、ケイアは先程の話に戻そうと声を掛ける。

 

 

 

ケイア「あの……お話してもよろしいでしょうか?」

 

ハイリゲ「あぁ……すいません。つい考えすぎてしまいました、今日は個人的に聞きたい事についてだね。何でも聞いてください」

 

 

 

 そしてケイアは、あの時擦れ違った山羊男について何か知っていないかハイリゲに尋ねた。聞くところによると、男はよく教会に訪れ長椅子に座り本を読んでいるとの事。

 

 

 

ハイリゲ「黒い装いを着ている方ですよね。あの方は信者では無いのですが、よく教会に足を運び、本を読んでいる様子をよく御見受け致しますね」

 

ケイア「やっぱり教会に……。普段はその他に、何をしているんですか?」

 

ハイリゲ「僕が見た限りでは、閉館になるまで本を読み続けている印象でしたね。お話を試みた事はあるのですがその都度、席を立たれるので中々交流を深める機会が作れていませんね」

 

ケイア「そうですか、ありがとうございます。少し気になったので助かりました」

 

 

 

 それからハイリゲは付け加えるように、信徒のみが来る場所ではない為、国民全員が足を運べる施設になっている。難民を受け入れ、困っている人がいれば手を差し伸べる。例えそれが敵国の企みがあっての差し金だとしても、優しく迎い入れるのが神からの教えであり種族は皆兄弟、家族だとハイリゲは説いた。

 その山羊男も教会に来るという事は、何か迷いがあるが故にこの場に足を運んでいる、と締め括り話は終わった。その後は、ハイリゲから教会の戒律について長い時間、拘束される事になった。そして先程叱られたばかりで学ばないハイリゲに対して、またミルトの怒号が応接間を突き破り教会内に鳴り響いていた。信徒の間ではこれが当たり前の風景になっている為、さして気にしていない様子で禱りを捧げていた。

 夕方になった事で次第に信徒の方々が家路に帰ろうとしていた為、ケイア達も学園へと帰宅する。するとハイリゲは、ホテプの後ろ姿を見て既視感を覚える。唸っている様子が気になり、ミルトは声を掛ける。

 

 

 

ミルト『どうかなさいましたか、ハイリゲ様?』

 

ハイリゲ「いや、あの子……何処かで見たような……」

 

ミルト『アンデット族の子ですか?信者の方にも複数いますので、見間違いではないでしょうか』

 

ハイリゲ「う~ん……そうなんだが」

 

 

 

 納得のいっていないハイリゲは、ずっとホテプの後ろ姿を見えなくなるまで眺め続けた。そしてケイア達は、家路に向かいスザクと会話をしながら歩いていた。すると、酒場で人だかりが出来ているのに気付き興味を引かれたのかライムが頻りにケイアの頭を叩いて人混みに促そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライム『ご主人、あっちにいっぱい人がいるよ!行ってみようよ』

 

ケイア「わ、わかったから……あまり頭叩かないでくれ」

 

ホテプ『……私、あまり人混みに入りたくない』

 

 

 

 人混みが嫌いなホテプと手を繋ぎながら引き摺り、人だかりを掻き分けると男達で腕相撲をしていた。そこには男達に交じり、人間より少し大きいモンスターがいた。

 『オーガ』だと気付いたケイアは、図鑑で見た個体より少し小さいように感じた。身長は2m程で肌が少し褐色気味で筋肉隆々、左の額に雷の模様に長い角が生えている。

 そして何より体に身に着けているものが、東洋で見られるような物であるが、殆ど裸に近い軽装。胸には、さらしを巻き太刀を佩いていた。彼女は男達を腕一本で吹き飛ばしながら、雄叫びを上げた。

 

 

 

?『はっはっはっ!皆、見掛け倒しやな~。もっと骨のある奴はおらんのかっ!』

 

 

 

 ガラスが割れるような彼女の大声に、ガタイのいい男達はすっかり委縮してしまい挑戦者は出てこなくなってしまった。すると、突然スザクがオーガの前に怒りながら出て行った。

 

 

 

スザク「デモンっ!またお前は、このような所でっ。人様に迷惑をかけるなと……。あれ程、隊長に言われているだろう。もう忘れたのかっ!」

 

デモン『げっ、副隊長……。こいつ等と腕相撲してただけやんか、迷惑なんて……』

 

スザク「そう言って、最終的にボコボコに殴って診療所送りにしてるのは何処のどいつですかっ!。はぁ……拙者の立場になって考えてよぉ……」

 

デモン『うっ……わ、わかった。今日はこのくらいでやめます……』

 

 

 

 スザクの気迫に押され、小さくなったオーガは腕相撲を止めた。そしてケイアはスザクの知り合いなのかと尋ねた。

 

 

 

スザク「この子は拙者の第二師団所属、デモン・リッベントロップ。見ての通りオーガで魔人化しています。強いんですが、酒癖が悪るくて……」

 

デモン『悪いなっ、酒癖悪うて。……そないな事より、副隊長。そいつ……』

 

 

 

 デモンはケイアをじろじろ見ながら、何かを察したような顔に変わりスザクに問い質した。

 

 

 

デモン『副隊長の男かっ!?』

 

スザク「はぁ!?ち、違うっ。私はこの人とは……まだ、そういう関係では……///」

 

デモン『何や塩らしくなって。これは副隊長の弱みを握るチャンスやな~』

 

スザク「もし、他の部隊に告げ口すれば……斬る……」

 

 

 

 居合の構えを取り、今にも斬りかかりそうなスザクを宥めようとするデモン。落ち着きを取り戻したスザクは、ケイアを紹介した。そして改めてデモンは、ケイアを見て素直な感想を述べた。

 

 

 

デモン『う~ん……頼りないな~。ホンマに副隊長の事、命懸けで守ったん?』

 

スザク「それはもう格好良かったっ!自分の身を挺して私の前に立ち、震えながらも盾になろうとしたその姿に私は……はっ。すいません、取り乱しました……///」

 

デモン『随分と酔心しとるな……こんなんでウチの副隊長は大丈夫かいな……』

 

 

 

 自分の隊を率いる存在が、こんな姿を晒して大丈夫かと将来が心配になるデモン。そんな時ケイアは、デモンの姿を見ながら疑問に思っていた事を打ち明けた。

 

 

 

ケイア「デモンさん、少し質問いいですか?」

 

デモン『おうっ、何でも聞いてや!チビ助』

 

ケイア「あの……どうやって魔人化に成功したんですか?」

 

デモン『話すと長くなるんやけど、掻い摘んで話すとな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモンの記憶

 

 デモンは魔人化になる前、山で暴れ通りがかる冒険者達を困らせていた。被害を鑑みたギルドはオーガの討伐を要請する事となり、とある冒険者が依頼された。そしてデモンは、その男の冒険者と対峙する事になる。男は東洋の甲冑に打刀、まさに侍のような格好をしていた。いざ戦うとなった時、男は自分の刀を抜こうとしない。

 デモンは痺れを切らし、男に襲い掛かった。捕まえたと思ったデモンは、不敵な笑みを浮かべた。だが、男は後ろに回り込みデモンはもう一度、掴み掛ろうとした時デモンは宙を舞っていた。

 何をされたか分からないデモンは、同じように襲い掛かるが全て男の『腕一本』で捻り飛ばされていた事が分かる。これに腹を立てたデモンは、何度も繰り返し同じように飛ばされた。この行為が夕方まで続き、根負けしたデモンは負けを認める。

 

 

 

デモン『降参や……。はぁ……はぁ……何でおっさん、そんな強いんや?』

 

?「強くあろうとするが故に、鍛錬を積む。何か目的が無ければ、人は強くなれん。御主には無いのか、強くなりたいと願った事は」

 

デモン『そんなの、あるに決まっとるやんかっ!』

 

?「だが、御主は暴力に身を任せ人を殺める事でしかない。強さとは、力だけではない。真の強さとはどういうものか知りたければ、儂の所に来なさい」

 

 

 

 云われるがまま、デモンは男の下で鍛錬を積んだ。武の心得、身の処し方、あらゆる場面での独り善がりな考えの正し方。辛い修行ではあったが、デモン自身強くなりたいという一心で鍛錬に耐えて行った。同じ修行を続け体に染みつき、動きが洗練されていった。

 

 

 

デモン『師匠。次の技、教えてくれよっ!今ならなんぼでも、出来そうな気がするんや!』

 

?「デモン、そう急いてはならん。日々の鍛錬が実を結ぶ。我が『霹靂神(はたたがみ)流』を学ぶには、まだまだ練度が足りん」

 

デモン『ウチ、師匠みたいに強くなる。教えてもらった事、全部!』

 

?「ふふっ……」

 

 

 

 この修行を通じてデモンは、今までの粗暴な性格は無くなり自分より弱い者を守るようになった。主君に忠誠を誓い、弱きを助け名誉を重んじる、これが根幹となっている為自分を律する事が出来る。

 年月が経つとデモンはあらゆる体術、剣術を習得していき成長していった。そしてとある日、デモンは同じように男に稽古をつけてもらうと張り切るが……。

 

 

 

デモン『師匠っ!今日も稽古…………あれ、居ない?』

 

 

 

 いつも自分の部屋で起きているはずの姿が見えず、辺りを探す。だが、探しても見つからない為、もう一度男の部屋に戻り座り込むと机の上に巻物のような物が置かれデモンはそれを読む。それにはこう書かれていた。

 

 

 

 《何も告げずに家を空ける事を許して欲しい……。為すべき事を為した時、必ず家に戻る。最後まで剣術を教えられず、済まない。だが、必ず成し遂げなければならない事がある……それまで、我が家を守って欲しい》

 

デモン『師匠……』

 

 

 

 そして置手紙を読んだ後、デモンは男が居なくなった損失感を埋める為に素振りをした。必ず帰るという言葉を信じてデモンは、打ち込み続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモン『くそっ、くそっ……くそぉぉぉぉぉっ!』

 

 

 

 何年も木に木刀を打ち込みデモンは、どんな天気の中でも打ち続けた。そんな雷雨の日、デモンはまだ帰らぬ男に鬱憤が溜まり怒りに任せ全力で木刀を叩き付けた。

 

 

 

デモン『くそがぁぁぁぁぁぁぁっ!』

 

 

 

 雷が鳴ったと同時に、デモンの目の前にあった木は一直線に電撃が走ったように無くなり燃えていた。そして自分の体に異変を感じ、水溜りが出来た場所に顔を覗かせると人間の容姿になっていた。

 自分が魔人化している事に気付き、驚きの余り鍛錬を一旦中止した。あの出来事からデモンは、刀や木刀を握るのが怖くなり気分転換に山に薪を拾いに行く事にした。奥へと進み、開けた場所に進むと見覚えのある破片が散らばっていた。それは男が身に着けていた甲冑の残骸だった。

 

 

 

デモン『師匠の……何でこないな所に……』

 

 

 

 デモンは嫌な考えを巡らせ、この場でやられたのではないかと推察する。だが、死体が無い事に気付くが年月が経てば消えていると考えたが骨もなければ血痕も残っていなかった。

 そしてデモンは、まだ生きていると僅かな希望を抱き探そうと決意した。その流れからオリバー国に辿り着き男を探すという条件の下、師団に勧誘を受け捜索を行っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモン『っていう話やな』

 

ケイア「その人の名前って何て言うんですか?」

 

デモン『師匠としか呼んでへんから、わからん』

 

ケイア「えっ、そうなんですか?!」

 

 

 

ケイアが驚くと、スザクがある男性の名前を挙げた。

 

 

 

スザク「もしかしてその人、剣聖って呼ばれてない?」

 

デモン『あぁ、町の人にそないな風に呼ばれとったな』

 

スザク「その人、ミズユキ・シラヌイだと思う《不知火 流》」

 

デモン『それそれ、そんな感じやったわ~』

 

 

 

 数十年前、伝説の剣聖と呼ばれ単独でドラゴンを一発で切り伏せ、1000を超えるハイオークを刀一本で凌いだとされる。刀を振るう度、雷のような雷鳴が轟いた事から『紫電両断』と云われるようになった。そんな強い彼が、何の音沙汰も無く消えケイアはデモンに手掛かりは見つかったのか聞いてみた。

 

 

 

ケイア「その後の消息は掴めたんですか?」

 

デモン『さっぱりや。任務で色んな国に行くんやけど、何の情報も得られへん。まぁ、根気強く頑張ってみるわ。チビ助達も、早く帰り。夜遅いから、悪いオーガに食べられるで』

 

 

 

 デモンにそう告げられ、大分夜も更けた事で家路に急ぐ事にした。帰りの道中、スザクは何か思い悩むような仕草をし足取りが悪い。ずっと小さな声で、何かを呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スザク「拙者も、あんな師範が欲しかった」

 

 

 

 零すように言葉を吐露するスザクにケイアは、何か出来ないかと相談に乗る事にした。

 

 

 

ケイア「スザクさん、僕でよければ力になりますよ?何でも言ってください」

 

スザク「…………デモンの師匠について考えていました。そう言えば、ケイア殿が拙者の小さい頃の話を聞きたがっていましたね……。拙者は、幼き頃から父上に剣術を教わってきました」

 

 

 

 吐き出すようにスザクは喋り始めた。スザクの父は、ミズユキのように強さへの価値観が明らかに違っていた。強欲で傲慢、ただ強さだけを求めた愚者へとなり下がるような男だった。実力は確かなものだが、道徳的にも人間的にも欠如している部分が多々あり、娘に稽古をつけるという名目で日々の鬱憤を捌け口としていた。

 そしてスザクがある程度の年齢に達した時、父親はスザクの体を舐め回すように視姦するようになっていった。そしてとうとう、娘に手を出し襲うとしたが間一髪で逃げ出し、スザクは家出を決意した。その父親の詳細は分からないが、恐らく同じような生活を送っているに違いないとの事。スザクはそんなトラウマを、涙を流しながら聞かせてくれた。

 

 

 

スザク「ミズユキ様のお話を聞いてから、拙者の師とは酷く違いを感じました。拙者の父は、冷たくあしらうばかり。出来るようになった型の構えも、褒めようともしませんでした。こんな父親から教わった剣術など……穢れきっている」

 

ケイア「そんな事ないです。僕はその刀で、命を救われました。スザクさんが居なければ、僕はこの世に存在していません」

 

スザク「ですがっ、どんなに救われたとして拙者はあの父親の子供……。そんな拙者が救うなどと……烏滸がましいにも程がある」

 

ケイア「スザクさん。感謝を謝罪で返すのはあまり良くないですよ?」

 

スザク「……っ。すいません……」

 

 

 

 ケイアは少し強い口調でスザクを諭し、無言で再び歩き始めた。そして学園へと辿り着き、スザクは宮殿へと帰ろうとした時ケイアが呼び止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイア「スザクさん、あの……。さっきは、怒っちゃってすいませんでしたっ」

 

スザク「いえ、ケイア殿が謝る事ではないです。まだ拙者が未熟故に招いた事です……」

 

ケイア「あの……。血が繋がっているからと言って、スザクさんが冷酷な人間じゃない事はハッキリと分かります。フェヒターさんもアナタの事を案じていますし、周りの方々はスザクさんを大切に想っていますよ」

 

スザク「……っ///。ありがとう、ございます……。それでは、失礼しますっ!!」

 

 

 

 恥ずかしかった為か、スザクはその場から一目散に逃げて行った。そして後日、学園に登校しケイアにとって記念すべき他生徒と共に授業が受けられる。ウキウキで登校するケイアは授業を受けていた最中、ずっと後ろに違和感を感じていた。魔法について勉強している最中、科の先生が困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……第二師団長。御自分の任務はどうなされました?」

 

スザク「拙者もこれからは授業を受けますっ!この教室でっ!!」

 

「修了課程を終えられた師団長は、再入学は出来ないのですが……。フェヒター殿に叱られますよ……?」

 

スザク「ヤダヤダヤダッ。拙者もケイア殿と授業受けたいぃぃ!」

 

 

 

 駄々をこねるスザクを尻目に見ながら、ケイアは頭を抱えた。隣の席に居るミラは、小声でどういう事か説明を求めた。

 

 

 

ミラ「ちょっとアンタ。どういう事よ、これ」

 

ケイア「僕にも分からないよっ!?」

 

ミラ「アンタが蒔いた種でしょ。このまま泣き叫んでちゃ、授業どころじゃないわよ!」

 

ケイア「えぇ……」

 

 

 

 泣き止まないスザクは、放置する事も出来ず国の権力者である為、先生も成す術が無い状況だった。暫くしてからフェヒターがやって来て、スザクに拳骨を喰らわせ謝りながら教室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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