結構長いですが、幻想入りしたのならこの手の説明は必要になると思うので書きました。
「か、隔、絶……?」
霊夢より幻想郷という世界の説明を聞いた途端、伊村は信じられないといった顔で言葉を漏らす。
それもそうだ。彼はこれまで自分が居る場所は"日本のどこか遠く離れた田舎町"だと思っていた。
自身の考えとは全く異なる霊夢の説明を聞いて唖然とするのも当然かもしれない。
「さっき言った通り、これは"本当"の事よ」
「つまり綾太。ここはあなたのよく知る"世界"じゃなく、幻想郷という"別の世界"だって事」
だがそんな伊村にお構いなしに霊夢は幻想郷についての説明を続行する。
先程の前置きを忘れないようにする為か、伊村へ話した幻想郷が現代日本から切り離された秘境という情報が紛れもない事実だと告げると、幻想郷は伊村の過ごしてきた世界とは異なる世界だという事を教えた。
「そして、あなたのような外の世界の人間が偶にここへ迷い込んで来るのだけど、それらは大体が紫って言う妖怪のせいだったりするの」
その後に、幻想郷には伊村のような境遇の者が稀に迷い込む事があると言い、その大まかな原因が伊村を幻想郷へ引き込んだ首謀者である"紫"なのだと解説した。
(……………なるほどなぁ。幻想郷か、確かにこれまで出会った不思議な力を持った人たちや現象を考えれば納得の行く……いや、納得せざるを得ない……!)
(ていうか紫さん、おれ以外の人もここへ連れてきてたんだ!? 彼女は一体何を考えているんだ……?)
霊夢の説明に、伊村はこれまで自身が幻想郷と呼ばれる世界に来てから体験してきた幾多の超常現象的な出来事の起こった理由が、幻想郷自体日本ではない別世界だからかと納得する。
だが、それと同時に、自分をこのような世界へと誘い強制的に来させた紫の行動を甚だ疑問に感じた。
「……………。わかりました。どうぞ、説明を続けて下さい霊夢さん」
長く考えていても仕方ないので、取り敢えず伊村は霊夢に話を続けるよう促した。
「ええ、しっかり聞いておきなさいよ」
霊夢が頷き説明を再開させる。
「この幻想郷には二重に結界が張られているの。その結界によって外側にある現実世界と隔離しているってワケ」
「は、け、結界、ですか……」
霊夢から結界が幻想郷に張られていると知らされ、またもや驚く伊村。
「そう。その二つの結界が外の世界で"忘れ去られたもの"や"存在を否定されたもの"とかを呼び寄せたり、逆にそうじゃないものを弾いてこの幻想郷に入って来れないようにしているのよ」
事細かに霊夢が幻想郷の結界について解説する。
それによると幻想郷はどうやら二重に展開された結界によって、外の世界との繋がりを遮断しているようで、またその結界が現実世界で忘れられたり存在が否定されたものを内部へと引き寄せているという。
「なるほど……あ、そうか、わかりやすくいったらネットの"フィルタリング機能"みたいなものか!」
霊夢が話した結界の説明に伊村は合点がいったのか、納得した様子でそう口にした。
「……?? フィルタリング機能? それが何なのか知らないけど、まあ大体あなたの考えてる通りよ」
伊村の言ったことがよくわからず疑問符を浮かべる霊夢。
伊村は現代社会で生活していた人間なので、フィルタリング機能などといった用語の意味は無論知っているが、外界との関わりを遮断した幻想郷で暮らす霊夢らにはどういう言葉かわからないのは当然の事である。
だが、納得した様子の伊村を見て別に詳しく教える必要はないと思ったのか、一先ず霊夢は結界の仕組みは伊村のイメージ通りだと話し、次の説明に入る。
「………で、続けるけど、この幻想郷には様々な"種族"が居るわ」
次に霊夢が説明し始めたのは、種族のことについてだった。
「ここには人間はもちろん、妖怪、妖精、幽霊、吸血鬼、鬼、仙人なんてのも存在してるの」
霊夢は幻想郷に居るという種族を羅列するように伊村へ教えた。
その種族は全て現代では架空のものとされていた魑魅魍魎そのものであり、それを知らされた伊村はあまりに信じられない情報だった為に驚愕の表情となる。
「そ、そんなに居るんですか!?」
(てか妖怪はともかく、鬼とか幽霊って……そんな奴らもいんのココ!?)
今まで幻や実在しないとされてきたものたちが幻想郷で暮らしている事に伊村は衝撃を隠せない。
というか彼は幻想郷へ来てからこれまで、"程度の能力"とやらを使える不思議な少女や、自身に噛み付いてきた妖怪と考えられるルーミアという幼女と出会ったが、それ以外の種族とは遭遇したことがなかった。
なので鬼や幽霊、妖精といった種族が幻想郷に居ることには思わず面食らったようだ。
「おう、"魔法使い"も立派な種族だぜ!!」
が、伊村の聞いたことのない種族も幻想郷には存在しているようだ。
「へぇ、魔法使いも………は!? いやそこは普通"職業"じゃないんですか!?」
「おう! まあ私は"人間"だからそう名乗ってるだけだけどな!」
ファンタジーゲーム等で職業として定番とされる"魔法使い"が、幻想郷には妖怪、鬼等と同様に"種族"という扱いがされている事を魔理沙が伊村に教えた。
自分の知っているそれとは斜め上を行くその魔法使いという種族に伊村はある意味ショックを受けた。
「そ、そういう種族が存在するんですね……」
魔理沙から教えられた種族・魔法使いの幻想郷での定義を知った伊村。
完全には事実を受け止められないと思いつつも、そのような種族も居るんだなと無理矢理納得しておくことにした。
「因みに妖怪は人間を食べ、逆に人間は妖怪を狩ったり退治したりするわ」
「人里の方には妖怪退治を生業としてる人も居るの」
次いで霊夢は、幻想郷における妖怪と人間の関係について話す。
彼女によると、妖怪は人間を喰らい、人間らはその天敵となる妖怪を退治する相互関係にあるらしい。
そして、伊村が慧音と出会った人間らの暮らす"人里"には妖怪退治の仕事があるということも説明した。
「よ、妖怪退治………おれには到底無理だなぁ………」
霊夢から妖怪退治の仕事の話を聞いた伊村は身震いさせ、自分ではとてもやれないなと忌避する。
「まあ妖怪の方が力は強いから大抵は返り討ちに遭うらしいけどね」
妖怪退治の仕事について霊夢はこう補足した。
「ひ、ひゃーおっそろしー!!」
妖怪退治をする人間でも大半が逆に妖怪に殺されるという恐ろしい話にぶるぶると身体を震わせ伊村は恐怖を感じた。
「………、説明は大体こんなとこかしら。じゃそろそろ私の"仕事"の番ね」
「へ? し、仕事……?」
一通り幻想郷の説明をし終えた霊夢はそう言い残し、ふいに伊村に背を向けて数歩神社の本殿側へ歩を進める。
「ええ。あなた、元の世界現実世界に
歩きながら霊夢が伊村へ確認の意味を込めてそう問うた。
幻想郷の外の世界……現実世界へ帰りたいかどうかを。
「だったらこの私に任せなさい。博麗の巫女の私なら結界を緩めて外の世界から来た"外来人"のあなたを送り返せるから」
「す、すごい……霊夢さん、そんな事もできるなんて……!!」
霊夢は博麗の巫女たる自分ならば幻想郷の二重に張られた結界を緩め、伊村のような外来人を元の世界へ帰すことができると明かした。
それを知った伊村は素直に彼女のその力がすごいと思い、尊敬の言葉を口にした。
「いよいよお別れか……」
「……………」
霊夢と伊村の会話を眺める慧音と妹紅。
慧音は霊夢の言葉から伊村がもう幻想郷から去る事を悟り、若干寂しそうな顔を見せつつ彼らの様子を見守る。
妹紅の方は、霊夢と話す伊村の後ろ姿を腕を組みながらただじっと見つめている。
「さぁ、私の近くに来て、準備するから」
ある程度神社本殿の近くへ歩を進めた霊夢は、立ち止まってそう言い伊村の方へ向き直った。
そして、懐からお祓い棒らしきものを取り出すと、それを天に掲げる。
「………え、いや、ですが……そ、その………おれは、」
伊村は何やら迷っているかのような目配せをした後、霊夢に話しかけて彼女の行動を一度中断させようとした。
「やめなさい、霊夢。彼を外の世界へ帰らせるのは」
だが、それは、霊夢と伊村の二人の間に現れた"あるもの"から発せられた言葉が、彼よりも早く実行に移した事で失敗に終わる。
「!! あんたは………」
その、"あるもの"とは……何故かリボンが両端に付き、夥しい数の目が浮かんでいる"裂け目"。
この異様さ、可笑しさ、そして伊村にとって既視感のある"裂け目"、これを自分の意のままに操ることのできる人物を彼は知っている。
「ゆ、紫………さん!!?」
その人物の名は、伊村を幻想郷へと引き込んだ張本人・"八雲紫"。
紫は二人の間の裂け目からゆっくりとその姿を現すと、慣れた動きで地面に降り立った。
あ、あともう少し……!
長いですがあともう少しで終わりますから……!
どうか次回もよろしくお願いします……!