今回は一回だけの更新です。
相変わらず新しいキャラは登場しませんがタイトル通り主人公の住むところが決まります。
「いやあ霊夢もたまには良い事言うなぁ!」
伊村を諭した霊夢の気前に感心した魔理沙が嬉しそうな顔でそう言った。
「まあわかったのなら良いのよ。さてと、じゃ、私は神社に戻ろうかしら」
霊夢が満足げに口にすると、伊村たちに背を向けて神社本殿へ戻ろうとする。
「あらあら、綾太はどうするつもりなの?」
だがその時紫に引き留められる。
外来人である伊村の身柄をどうするかと霊夢に問うた。
「………あ。そうだった…………まあ良いわ。慧音と妹紅が何とかしてくれるでしょ」
「そ、そう……」
「じゃ、後はよろしくー」
しかし霊夢は如何にもわかりやすいぐらいに顔を顰め面倒くさそうな様子を見せると、伊村のその後の事については全て慧音たちに丸投げした。
「あ、おいこら博麗の巫女ー!」
境内を歩き去る霊夢を手を伸ばして止めようとする慧音だったが、時すでに遅し。
霊夢は神社の中に入って行ってしまった。
「あー、うん。大変だな綾太…………で、この後どうするんだ?」
呆れたような目で霊夢が入った神社の方を見つめて、魔理沙がこの後の目的はどうするか伊村に聞く。
「………、…………………!!!」
「お、おい、どうしたんだ綾太?」
しかし伊村は、魔理沙に問われた瞬間顔を青くし、何か重大な失敗に気付いたような焦燥に満ちた表情となる。
「あの………お、おれの"住む場所"はどうすれば良いんですか……?」
伊村は恐る恐る紫を除いた魔理沙ら三人にそう尋ねた。
彼女たちに問うたその内容とは、自身の"住処"についてであった。
幻想郷で暮らしていくという事にはなったものの、肝心の住居がまだどこか知らされていないのだ。
幻想郷には恐らく危険が多い。
まだ伊村が経験していないだけで、さらに悍ましい怪物や化け物だって存在していてもおかしくないだろう。
そのため伊村は、まず何よりも自分の身の安全が保証できる住宅が必要だと考え、今回の質問をした。
「………あ、それは」
「えーと……霊夢があの様子じゃあ……まず面倒は見てくれないだろうな………」
「うん、確かに」
だが慧音と妹紅がしまったといった様子で口にする。
彼女ら二人は伊村の住む場所に関してはそこまで深く想定していなかったのか、幾分か思い悩みながらそう話した。
そして、その中で霊夢の先程の煩わしそうな台詞と様子から彼女の下で世話になるのは不可能だということがわかった為……
「おれ"野宿"だけは嫌なんですけどーーーっ!?」
あえなく伊村は行く宛をなくしてしまった。
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伊村ら四人は博麗神社を後にして階段を降りていく。
その姿を妖艶な笑みを浮かべながら紫が見つめている。
「………、ふふふ」
「実際そうだったとは言え、彼をここに留まらせる理由付けはできた」
「後は……あの"得体の知れない力"をどう引き出してくれるか、」
「楽しみだわ……」
自分以外誰も居ない神社の境内で一人そう呟くと、紫は能力で作り出した裂け目に身体を入れその場から消えていった。
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「ああぁ………、このまま野垂れ死ぬんですかおれは……」
「嫌ですよそんなの! おれはまだやり残した事が沢山あるんです! それはもう山のようにね!? 妖怪に喰われて終わるなんてお断りだぁ!」
伊村が嘆き喚くように文句を言う。
現在彼と魔理沙、慧音、妹紅の四名は博麗神社に続く獣道を抜け、人里へ繋がる伊村が出発時に通った道を進んでいる。
「ま、まあまあ落ち着け綾太! だから今"人里"に向かってんだろうが!」
伊村の狼狽を聞いて魔理沙が彼を宥める。
妖怪に襲われる心配がなく安全な人里に着けば伊村も何事もなく生きていけると考えたからだろう。
「ああ、人里ならば君のような者でも住める場所があるだろうからな」
「それって本当なんですか……? 前におれが来た時は随分人がいて賑わっていたようでしたが……そんなところに果たして一軒でも空き家はあるんでしょうか?」
人里には本当に自分の住めるような家屋があるのかと慧音へ疑問の声を投げかける伊村。
彼が慧音と博麗神社へ行く前に着いた際に人里に人が大勢居た為、これほどまでに人気のあって栄えている場所に自分が暮らせる土地や住まいが残っているのかとどうしても気になってしまったようだ。
「うわぁ……なんかすごく疑い深くなってんなぁ………」
そんな伊村と慧音の会話を後方より聞いていた魔理沙が、引き顔になりつつこう呟く。
「そりゃ無理もないな。霊夢んとこはおろか、"永遠亭"や"
魔理沙の隣を歩いている妹紅が肩をすくめながらそう説明しため息をもらす。
「そういうのがわかった以上、綾太は一番安全だって思えるとこじゃないと納得いかねぇんだろうよ」
実は博麗神社から獣道に出て人里方面へ向かっている際に、伊村へ慧音らが彼の当分の居住先を考え提案しており、彼が以前世話になった永遠亭や、吸血鬼が住むという紅魔館がその候補に上がっていたという。
だが、それら二つは何も、人間でありしかも身体が脆弱な伊村にとってはかなり危険といえる場所であった。
その点からか、伊村はそこを諦め、別の場所を探すことにした。
そして、現在向かっている人里が最有力候補になったので、そちらへ伊村らは移動を開始したのだ。
「安心するんだ綾太。もし空いている物件が無ければ最悪 私の家に住まわせてやるぞ」
が、慧音がもしも人里に伊村が住める住居が無かった場合は自分の暮らす家で住む事を催促した。
「え? それってつまり………"同居"……」
「え、ええぇぇぇぇぇぇ!!?」
彼女のその言葉を耳にし、その意味を理解したのか伊村は驚愕し目を丸くした。
「はははは! なぁに、私と一つ屋根の下で暮らすことにはなるが、そう心配はするな!」
「い……、いやいや!? そ、そそそれはダメです!! こんな男と一緒にど、ど………同居だなんてぇ!?」
「む? 嫌なのか?」
「はい! お、お……おれは一人で生活できます!」
慧音が何も気にしていないような態度で接してきたが、伊村は顔を赤くしつつも慌てて拒否する。
(う、嬉しいとか考えるな! おれ!! いくら慧音さんが綺麗だからって……いけない妄想してんじゃねぇぇ!!)
心の奥底では伊村は正直物凄く喜んでいた。
しかし、もし彼女と一緒に暮らす事になると色んな意味で大変な事になると自覚しているが為に、彼は慧音の誘いをお断りした。
「…………。はぁ、ったく、しょうがないなぁ」
「へ? 妹紅さん?」
だが、その時伊村の丁度真後ろを歩いていた妹紅が少しため息をこぼし小さく口にした。
そんな彼女の声を聞いた伊村がキョトンとした顔で振り向いた。
「じゃあせめて私の家に来いよ。慧音んとこが無理ならな?」
妹紅の口から出たのは、まさかの慧音と同様の言葉だった。
「え、ええぇぇぇぇ!? 妹紅さんまで!?」
妹紅まで同居OKの言葉を口にするとは思っていなかったのか、伊村はまたもや驚く。
「おいおい、何恥ずかしがってんだよ。私と慧音は別にお前とルームシェアすることになっても構わないぞ? 話面白いし」
「な、なんか最後の方に本音が出てませんでしたか?」
けらけらと愉快そうに笑いながら妹紅がそう言った。最後に容認した理由らしき言葉が出た気がするが、それも伊村にしっかり聞こえていた。
「おや、そろそろ陽が沈みかけてきたな……、少し急いで行こう!」
もう既に夕方のようで、狐色になった夕闇空に浮かぶ日が徐々に沈んでいっている。
慧音が空を見上げてそれを把握すると、伊村ら三人に呼びかけて多少急ぎめに道を進んでいった。
次回、「人里生活開始」
来月上旬掲載予定!
霊夢「そんなのいいからお賽銭をくれ」
魔理沙「お前まだ金欠だったのか」