あとまだ新しいキャラが出てきません。
というか次以降になりそうです。
綺麗な三日月が夜空をぼんやりと照らす。
すっかり夜になった人里の入り口近辺にぽつんと建つ、年季の入った木造の平屋。
その建物の前に伊村と慧音、妹紅の三人が立っている。
「お、おおおおぉぉぉぉー!!」
「この建物がおれの家ですか!」
人里に到着した伊村はあれからしばらくして、慧音から人里内にある空き家へ案内されていた。
その理由は勿論、伊村がそこに住むためだ。
ちなみに魔理沙とは人里に着く前に既に別れている。
彼女曰く、どうやら急用を思い出したためらしい。
「前の住人がニ十年程住んでいたらしいが、まだ大丈夫だろう」
平屋に目を向け建物の状態を確認した慧音がそう判断する。
「私も一度見てみたけど、中庭から見える景色がとても綺麗だったぞ」
妹紅も平屋を見て笑みを浮かべながら伊村へ話しかけた。
「え、マジですか!? いやあ楽しみですねー!」
目の前の空き家から見える景色がかなり綺麗だと知った伊村は何故か興奮したようで、目を輝かせ気分を昂らせている。
「おや、綾太。景色を見るのがそんなに楽しみなのか?」
伊村のその様子を気になった慧音がそう問いかける。
彼がここまで景色を鑑賞する事にハマっているのに疑問を感じたのだろう。
「いえいえ、別にそうじゃありませんよ。ただ……」
すると、伊村は一度首を横に振って否定した。
「今みたいな夜の時間に、一人で
そしてその後、心躍らせていた理由を明かした。
それによると伊村はどうやら夜に一人で星空を見上げられるようになると考え、そのことに大いに喜んでいたようだ。
「お、お前、宇宙に興味あんのか……意外だな」
心底意外そうに妹紅が一人星空鑑賞に興奮している伊村にそう言った。
「へへ。昔"おれを助けてくれた人"と出会った時に、すごく綺麗な星空だったのでね………」
「あれ以来、あの人に再会したいと思う度に窓から夜空を眺めてたんですよ」
昔、自身を救ってくれた者と会った場所……そこで広がっていた美しい星空。
伊村はそれ以降その恩人との再会を望む毎に夜空を眺め想いを馳せていたのだと妹紅に告げた。
「そ、そうか……お前にも居たんだな………そういう奴」
少し顔を綻ばせ安心したかのような表情をして妹紅がこう呟いた。
「……? どこか可笑しいですか?」
その表情の変化に疑問を覚え彼女へ聞く伊村。
「いや、可笑しくはないさ。……けど、少し安心したよ」
「外の世界にお前の事を見捨てなかった"人間"が居たのかとな」
妹紅は伊村が現実世界で誰とも馴染めず疎まれ孤立していたとばかり考えていたのか、彼を助けた人間が居たという事を知って安堵したという。
「………。はい、あの人は本当に優しくて、綺麗で……何より不思議な人でした」
「そうか……」
伊村が自分を救い出してくれた恩人の事を語った。
優しく、美しく、そして不可思議な印象を与える人物だったらしく、その人物について話す伊村の顔はどことなく憧憬か或いは敬愛のこもったような様子だった。
「妹紅さん、ちょっと話すと長くなりますので、この話はまた次の機会にしましょうか」
だが伊村がそう言って話を切り上げる。
彼によると恩人についての話は長くなるとのことで、ゆっくり腰を据えてから話をした方が良いと思い、伊村はここまでで話を終わらせにかかる。
「成程、いいよ、わかった」
「また聞かせてくれ。私はお前を助けたその人に興味があるから」
「ええ、よろこんで!」
妹紅もそれを了承し、いつか伊村と彼を救った恩人の話をする事を楽しみに待つ事にした。
「……さて、綾太。次は内装を見てみるぞ」
伊村と妹紅、彼らの話が終わったのを見計らい、今度は慧音が伊村へ声をかける。
「いよっし! わかりましたー!! 行きましょう!」
元気良く返事をした伊村は平屋の横開きの扉を開けて屋内へ入って行った。
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「ほおぉ……。広いですね………」
平屋の内部はやや埃っぽいが床が木でできており、中央には暖のとれる囲炉裏。
建物の西側には蛇口が備え付けられた水洗い場があって、さらに廊下を挟んだ奥には開かれた中庭空間が広がっていた。
(昔の家ってこんな風になってるのか………、けど、蛇口と照明があるみたいだし、そこまで生活に困る事は無さそうだな?)
自分がこれまで生活していた家とは色々と形の異なるこの家屋に、伊村は驚き、しばらく辺りを見回して家具や照明、さらに奥の方にある中庭へ視線を向けた。
「ここで食事ができるし、あの中庭で運動もできる。どう生活するかは君次第だ」
伊村が建物内をじっくりと見ているのを横目に慧音が家内の設備について説明を入れた。
「………はい! あの……慧音さん、ほ、本当にこの家をおれが使ってもよろしいんでしょうか?」
慧音の言葉を聞いた伊村はそれに次いでこう質問を投げかけた。
今になって自分が住処を貰ってしまっていいのか不安になったようで、恐る恐る慧音へ聞いてみた。
「勿論だ。君はもうこの人里の住人だ。自由に、好きに生きて良いんだぞ」
だがその不安は余計だった。
慧音は快く伊村が家屋に住む事、そして人里に住む権利を彼に与え、自由に何にも縛られずに生きるよう説いた。
「け、慧音さぁん………、うっ、うぐっ……あ、ありがとうございますぅ………」
その一言を聞き、伊村は目を丸くすると、顔を顰め目から涙を流した。
感極まった伊村が慧音へ声を震わせながらもお礼の言葉を口にする。
「お、おい綾太……お前、な、なんで泣いてんだよ!?」
「うっ……ひぐっ………す、すみません、一人暮らしの家だって嬉しくって、つい………」
面食らう妹紅に伊村が涙ぐむ顔を手で覆い隠しつつ、泣いてしまったキッカケを明かした。
「な、泣く程嬉しいんだな……、まあとにかく綾太、今後もわからない事があれば、いつでも私を頼ると良い」
苦笑いする慧音が自分へ指をさして伊村へそう勧めた。
「私にも困った事があったら迷わず聞いてくれ。お前とは仲良くなれそうだ」
妹紅も伊村にこう勧めて、朗らかな笑顔を向けた。
「…………。慧音さん、妹紅さん……わかりました!」
ごしごしと涙を拭い、伊村が二人の方へ顔を向け大きくそう返答する。
「けど、ここまで世話になりっ放しなんで……、出来る限り一人で頑張りますね!」
そして、伊村は妹紅や慧音の二人に世話されまくりでは申し訳がたたないと思い、今後はなるべく自分一人で誰の手も借りずに問題を解決するように心懸けていくと宣言した。
「そうか、頑張れよ綾太。 でもあまり溜め込むんじゃないぞ?」
伊村の宣言に慧音が微笑みながら彼の決意を応援する。
と同時に、彼へ抱え込みすぎないよう忠告もしておいた。
「肝に銘じておきます!」
ビシッと姿勢を正し気をつけのポーズを取り、慧音の言った言葉を忘れないようにすると声高らかに口にした。
その様はまさに忠誠心の高い騎士を思わせる。
「はははは。では綾太、私たちはこれで帰る。後は自分でできるな?」
大袈裟とも言える伊村の宣言に微笑すると、慧音が平屋の入り口の方へ身体を向け伊村へそう問いかけた。
「ええ、もちろんです!! おれこう見えて家庭科の成績はかなり自慢できる方なんでね!」
心配はいらないとばかりに伊村がそう返した。
なんと伊村、学校では当然誰とも仲良くなれなかったものの、家庭科という料理、裁縫等といった男が苦手としがちな科目における成績が優秀だったようで、ドンと胸を叩き鼻を鳴らして自慢げにこの事を話した。
「へぇ、成績が自慢できる方って事は相当自信ありそうだな」
妹紅がそれを聞いて感心の様子を見せた。
伊村ならば家事についてそこまで心配はいらないだろう。
自分一人でどうにかなるだろうと。そう考えられた。
「うむ……、ではまた明日会おう!」
慧音がそう言って伊村と別れて行った。
妹紅も彼女の後を行き、扉を開けて外へ家を出ていった。
「……………、んーーーーー!!」
(見れば見るほど、一昔前のような内装だ……)
(とにかく………今日から、人里生活の始まりだ……!!)
(死なない程度に頑張ろう!)
オオーーーッ!と声を少し漏らしつつ伊村は、幻想郷は人間の里という集落で暮らしていく決意を固めた。
伊村「あー、疲れた。この小説の主人公はマジ疲れますねー」
東洋「うおおおぉぉぉーーーッ!! 伊村ァ! お前だけずるいぞ! 単独主人公飾るなんてッ!」
東洋「悔しくて腹筋・腕立て3万回はやりたい気分だぞッ!!」
伊村「あらら、これはこれは『四勇』の主人公の一人・東洋五郎さんじゃないですか」
東洋「俺も主人公なんだから登場させるべきだろうがァァァ!! 何を考えているんだ作者ァーーー!!」
伊村「あ、残念ですが、その作者によるとあなたを登場させる予定はないみたいです」
東洋「な、何ィィィィーーーーッ!!? う、嘘だァァァァァ!!」
伊村「はいはーい、わかりやすいぐらいの熱血野郎はもうご退場下さい」
東洋「あ、ちょっと待てッ……まだ言いたいことがあ、っておーーーーーーーいッ!!?」