今回はどこぞの魔法使いさんの窃盗行為に悩まされているあの貸本屋が登場します。
「ど、どうですか……? 変、じゃないですかね?」
アリスの案内で人里の呉服屋に立ち寄った伊村。
しばらくして、彼は里の男がよく身につける黒色の着流しを着用して店を退出した。
慣れない和服を着るということに多少抵抗はあったものの、着てみれば意外と制服より着心地が良いかもしれないと好意的な評価をしつつ、自らを呉服屋へ先導してくれたアリスへ恐る恐る尋ねてみる。
「あら、普通に似合うじゃない。前の服より男らしく見えるわよ?」
アリスは伊村が選んだ服に目を向けると、以前彼が着ていた制服と比較して感心の様子を見せる。
伊村の選んだ着流しの方が、アリスとしては合っていると感じたのだろう。
「い、いえ、おれなんか全然!! けど、違和感ないみたいで安心しました……」
伊村はアリスから褒められたからか顔を赤くする。
そして、それと同時に自分の選択した和服が似合っていた事に胸を撫で下ろした。
「ふふ。そう心配しなくても良いでしょう。……まあとにかく、服も買えた事だし、そろそろ次の場所へ案内するわ」
「は、はい!」
軽く微笑しながらアリスが言い残し、次の目的地へ歩いていく。
伊村はその後ろ姿を追随して行き、次なる人里の施設へ気持ちを切り替えた。
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「アリスさん、この建物は……?」
次に伊村たちが向かった場所は、人里の人の往来が多い通路に建てられた木造の建物。
その建物の入口である暖簾の上には大きく"鈴奈庵"と書かれた看板が取り付けられている。
「す、
そんな謎の建物を前にして至極真っ当な疑問を伊村がアリスに投げかけた。
「そうね。今後あなたが利用するかもしれない店よ」
「今後、おれが……?」
「まあ、入ってみればすぐにどういったところか分かると思うから、行きましょう?」
「は、はぁ」
だが、その問いに対してアリスは少し曖昧な回答をする。
結局どんな店なのかわからなかった伊村は、もやもやする頭を整理してアリスの言う通り鈴奈庵という建物内へ入ることにした。
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「いらっしゃいませー!」
"鈴奈庵"と書かれた建物の暖簾をくぐると、店番と思しき少女が伊村ら二人へ挨拶をしてきた。
その少女は大量に本が積まれたカウンターの前ではにかむような笑顔を伊村とアリスに向ける。
少女の外見は、橙色の髪に鈴のついた髪留めでツインテールにまとめており、市松模様の着物と緑の行燈袴を履いた12歳前後の見た目だ。
(……、この子………店番なのか? まだ子供だよね? 店長はいないのか?)
少女のその容姿から分かる通り、まだまだ子供なのだろうが、店主は一体何処にいるのだろうか?と伊村は少し疑問に思った。
「あ、アリスさん! こんにちは! 今日は何を
少女はアリスへ話しかけると、そう問いかけてきた。
(ん? "借りる"? 何を? ていうかこの店……まさか?)
ハッと何かに気付く伊村。
すぐに伊村は鈴奈庵内を見渡す。
すると、店の中にぎっしりと書籍が詰まった本棚が所狭しと置かれている事に気付いた。
(本棚……!! もしかしてここは"本屋"か!?)
その光景を見て思い浮かんだのが、現実世界にも存在する書店や古本屋、図書館といった施設。
伊村は自身が居る鈴奈庵という建物はもしかしたらその本屋か本に関係するなんらかの施設なのかと推測し、しばらくその本棚を観察する。
「んー、今日は少し違うわ。……彼をここへ案内しにきただけよ」
僅かに悩むような素振りをしつつアリスは少女へそう答えた。
後方で鈴奈庵に置かれた本棚をまじまじと見つめている伊村を指しながら。
「あっ……!! ど、どうも! い、伊村綾太です! 外来人です! よろしくお願いします!!」
アリスが自分の事について話したので、慌てて伊村が前へ向き直り少女へ自己紹介をする。
「なるほど、あなたは外から来た人なんですね。初めまして。私は本居小鈴と申します!」
「この
伊村が名を名乗ったので、少女もそれに応じて自己紹介をする。
ふむふむと伊村はその紹介に相槌を打ち、少女の話を理解した。
「……は、はい。って、"貸本屋"……まさかそれって」
が、伊村はその中で貸本屋と言った事が気がかりとなり、思わず口に出す。
「そうよ。"貸本屋"よ。この鈴奈庵は」
「はい。そして私はここに住んでいるんですよ」
「う、嘘ぉ………」
小鈴という少女のまさかの事実に伊村は頭を抱えた。
鈴奈庵が貸本屋という店だという事には納得したが、小鈴がその鈴奈庵で店番はおろか、暮らしていると聞いたら驚かずにはいられない。
また、そう驚くのと同時に、伊村は幻想郷では外見だけで人を判断すべきではないのだと教訓という形で心に留めておく事にした。
「ああ、そうそう。借りパクとかはやめてくださいね?」
ふいに小鈴は伊村へ忠告を入れる。
「どこぞの白黒魔法使いさんにやられてますけど、絶っっっっっっっっっっ対に、借りた本は返して下さいよ?」
借りたまま返さないという借りパクは厳禁だという事を伊村へ忠告した小鈴だが、その顔は笑顔なのに聞く者に恐怖を与えるような恐ろしいものだった。
あと何気に小鈴は魔理沙の事を言っているのか、白黒魔法使いに借りパクされたと明かしている。
「は、はぁ。わ、わかり、ました………」
小鈴の剣幕に年上であるにも関わらず押される伊村はそう答えた。
そして、窃盗行為をした魔理沙に呆れたのか、はたまた助言をするつもりなのか、最後にこう思った。
(魔理沙さん、借りたら必ず返さないと………い、いつかヤバい事になりますよ?)
今月中旬にはアルメシア本編の方を重点的に進めていくつもりなので、更新の方が遅れてしまうかもしれません。
主人公の伊村が出演する原作ということでどうかご了承下さい。