東方貧弱男   作:K.R.

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ようやく、ようやく紅魔郷のキャラが登場します。
シリーズ屈指の人気キャラなのにかなり遅いご登場です。
実は十話くらい前から咲夜さんとか出そうと思ってたんですが、そうなると話がややこしくなってしまうのでここまで後回しとなってしまいました。


22.「十六夜咲夜」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あと半日……何しようかな……」

 

 

食堂で腹ごしらえを済ませた伊村。

彼は人里の通りを歩きながら顎に手を当てて考える。

 

(このまま帰るにしても、まず問題は文字だ……。これを解決しないと……)

 

食堂にてメニューを注文する際に直面した幻想郷の文字・漢字が読めないという問題。

伊村はそれについて深く悩む。

 

(………。まああれは明日、寺子屋に行って慧音さんから教えてもらおうかな……)

 

少し考えた後 寺子屋の教師である慧音から文字の読み方を学ぶ事を決意し、一先ず喫緊の課題は対応した。

 

(となると………、あとは"食料"と"お金"か……)

 

今の伊村に残された問題……それは食糧と金銭。

 

(どうしても食うに困ったら……最悪知ってる人に頼るか?)

 

アリスから頂いた金も食堂での代金で早くも底をつき、明らかな金欠状態となっている伊村だが、今後食い扶持に困窮した際にはこの幻想郷(せかい)で出会った自身を助けてくれた者たちの手を借りるか思案を巡らせる。

 

(!!? い、いやいや何クズみたいな事考えてんだよおれ! そんなのダメだ!!)

 

しかし、ある程度深く考えたところで伊村は先程抱いていた案を撤回した。

 

(あの人たちが居てくれたからこそ、おれはこうして生きて幻想郷(・・・)で過ごせてるんだ……、だからせっかく受けた恩も知らず楽して自分だけ甘えるなんて愚の骨頂!!)

 

永琳や妹紅、慧音、霊夢といった自身にとって只の知り合いと断ずる事ができない程世話になった恩師というべき者たちに対して、実に失礼且つ無遠慮すぎるとつい先程までの自分の思惑を切り捨てる。

 

「うーーーん………」

 

(……………。うん、今日はもう何もしたくない。寝よう。お金は日雇いでも良いからここで仕事を探そう。食べ物もそのうち……その内手に入るさ!!)

 

再び悩む伊村だったが、金は人里或いはその近辺でできそうな仕事をこなして手に入れ、食料に関しては今考えなくとも心配いらないだろうとそう結論を出して、半ば無理矢理自分を納得させた。

 

 

ドンッ!!

 

 

「……いてッ!?」

 

こうして心の中で結論を導き出したその刹那、突き当たりにある曲がり角を通ろうとしたが……。

 

 

「す、すみません……!」

 

「……いえ、こちらの方こそ」

 

 

同じく角を曲がってきた誰かと身体がぶつかってしまう。

 

「!!」

 

咄嗟にぶつかった相手に謝った伊村だったが、その相手の姿を見て衝撃を受ける。

 

(め、"メイド"……!? まさかこの人メイドさん!? 初めて見たぞ! 幻想郷にも存在したのか……!)

 

紺色の瞳と銀髪に青色のメイド服を着た少女。

伊村と身体の当たった相手はそんな容姿をしていた。

 

「……? 何か?」

 

伊村の視線に気付いた少女が怪訝そうな顔を向けて聞いてくる。

 

「あ、い、いや、何でもありません! す……すみませんでしたっ!!」

 

慌てて伊村は少女の問いにそう返し、恥ずかしげに顔を赤くしつつ走り去って行った。

 

 

「………、変な少年ね」

 

「あんな子に興味を持つだなんて……、レミリアお嬢様(・・・・・・・)も何を考えてるかわからないわ」

 

 

自分から逃げるように走り去った伊村の後ろ姿を見送り少女が呟く。

"レミリア"という、自身が仕える主人の名と思しき言葉を口にしながら。

 

そして少女は、一瞬にしてその場から姿を消した。

まるで……時を止めた(・・・・・)かのような速さで。

 

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「……あらあら」

 

 

伊村と少女、二人のこのやり取りを観察する者が居た。

 

「早くも急展開だわ」

 

それは、伊村を幻想郷へと引き込んだ張本人である八雲紫。

彼女は今、伊村の頭上でびっしりと目がついた隙間の中から上半身だけを出し、彼の行動を傍観していた。

 

 

「少し気になったからあの子の様子を見にきたんだけど、まさかあの"十六夜咲夜"と会うなんてね……」

 

"十六夜咲夜"……、伊村が出会った少女の名前を紫が口にすると頬杖をついて興味深そうに彼の後ろを見下ろす。

 

「ふふふ、これは面白い事になりそうね………」

 

何処から取り出したのか、扇子を口元にあて妖艶な表情で微笑むと、紫は人里の外れへ向かう伊村を音もなく尾行していった。

 

 

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