東方貧弱男   作:K.R.

25 / 46
25.「無縁塚」

 

 

「綾太、君はこの"外の世界"からきた品物が目当てでこの店へ入ったという事でいいかい?」

 

 

香霖堂内の珍妙な道具へ目を向けて霖之助が伊村へ尋ねる。

 

「そうそう、その通りだぜ! 私が案内してやろうと思ってなー!」

 

霖之助の言葉に反応して魔理沙は自慢げにそう言った。

 

「まあそんな感じですね………って」

 

「あれ……え、ち、ちょっと待ってください? 霖之助さん、今、"外の世界から来た"って言いましたか……?」

 

魔理沙の言う通りについてきたと肯定した伊村だったが、直前の霖之助の一言に疑問を覚え本人へ問いかける。

 

「ああ。正確には"無縁塚"で拾ったものなんだけどね」

 

「む、無縁……塚、ですか?」

 

聞いたことがない地名に不思議がる伊村。思わず復唱して聞き返す。

 

「この幻想郷の端にある非常に危険な場所でね、その名の通り身寄りの無い死人が埋葬されている墓地になってるのさ」

 

「あそこには外界の道具があちこちに落ちている、だから僕もそこで気に入った物をいくつか持ち帰ってるんだ」

 

伊村へ無縁塚がどのような場所かを売物と思われる機械に視線を落としつつ霖之助が説明する。

 

「お、おお……この世界にはそんな場所もあるんですね……」

 

(身寄りのない、つまり天涯孤独の奴がその無縁塚ってところに埋められるのか……)

 

これまで知らなかった幻想郷でもトップクラスの危険地帯の事を聞いて、感慨深そうに伊村は無縁塚で埋葬される屍を思い描く。

 

(天涯孤独……ん? いや待て、もしかしてそれって、お、おれもだよね!? "外の世界"から来た外来人のお、おれも同じ……死んだら最終的にあそこに骨を埋められるって事なのォ!?)

 

だがその際、自身も幻想郷で死ぬと無縁塚で弔われるという事実に気付き、少なからぬ恐怖を覚えて思わず顔が歪む。

 

 

「因みに外来人もあそこで死体が葬られるらしいぜ。……あれ? 綾太、お前ビビってないか?」

 

すると丁度、魔理沙が伊村の考えていた点について触れ、彼の方を見て声をかける。

 

「安心するんだぜ、お前はもうここの住人だ。そんな適当に弔われる訳ないから心配すんな!!」

 

伊村の心情を察した魔理沙は彼を心配させないように笑みを浮かべながらそう話すと、伊村の肩を二、三回手で叩いた。

 

「痛てっ! 魔理沙さん、ほ、本当ですか、なら良かったです………」

 

魔理沙に叩かれた時に力が入りすぎていたようで、痛そうに肩に手を置いた伊村は吐息と共に安堵の一言を口にする。

 

「……それで綾太、気に入ったものはあった? この辺のなら安値で売っているが?」

 

「…………」

 

伊村は霖之助が安価だと紹介した品物へ静かに目を通す。

 

(いや………どう見てもただの紙クズだろこれ……、あとアレも……なんか見た事あるな、緑色で確か……機械の基板だっけ、使い道よくわからないな………)

 

霖之助から勧められたのは皺くちゃに折り目のついた白い紙と、何故か機械の部品である基板、このどう扱うかが難しい二つを細部まで観察した伊村は心の中でひどく困惑する。

 

「う、うーん、珍しいものばかりで是非買いたいところなんですが……生憎今はお金が足りなくてですね……」

 

その場で繕ったような笑顔を見せながら伊村は正当な理由をつけて購入を断った。

 

「あ、そう。まあいつでも来るといいさ。ただ何も買わずに帰るというのはできれば今後ないように頼むよ」

 

伊村が買わないと判明した途端に霖之助は冷めた態度をとり、念を押すようにそう言った。

 

「ええ、気をつけます。でもなかなか珍しいものが多いみたいなんで、近いうちにまた来ますね」

 

その態度の一変具合に多少驚く伊村だが、なんだかんだで便利な掘り出し物が並ぶ日が来るかもしれないと期待を抱きながら霖之助へ返事をする。

 

「綾太! 買い物だけじゃなくてこの香霖堂では道具の修理もやってるから必要なら頼んでみるのも良いぜ!」

 

魔理沙が伊村へ香霖堂で販売以外の仕事も行っている事を知らせる。

 

 

「え、霖之助さんはそんな事もやってるんですか?」

 

 

霖之助が販売以外にも道具等の修理をやっている事を知り、心底意外そうな顔で尋ねた。

 

「そうだね。最近だと霊夢のお祓い棒とか、人里の人間から商売道具の修理を依頼される事もあったな」

 

顎に手を当て思い返しながら霖之助は近頃修理を担当した道具について話す。

 

「あと私がよく使ってるコイツを直してくれるんだぜ! いやーマジで便利な店なんだぜ!」

 

そう言いながら魔理沙が懐から取り出したのは、中国の小説・西遊記に登場する八卦炉の形をした小さな道具だった。

魔理沙はそれを自慢げに伊村たちへ見せびらかしつつ香霖堂を褒め称える。

 

「修理代安くしろって毎回五月蝿いのだけはなんとかならないかと思ってるんだがね」

 

「道具の修理だけで無茶苦茶ぼったくるからだろ! 私があんまりここのやつ買わないからってそっちに不満をぶつけんなだぜ!」

 

だが自身の店が高く評価されたにも関わらずため息交じりに霖之助が呟く。

その一言を聞いた魔理沙が不満たらたらな表情で彼へ反論する。

 

「おいおい、そんな事は知らないよ。大体修理というのがどれだけ大変で手間がかかるのか……」

 

「あー、また長い話が始まる……」

 

霖之助が細かな説明をし始めたところで、魔理沙はやれやれと言わんばかりに肩を竦めそう溢す。

 

「は、はは……じ、じゃあおれ、そろそろ帰りますね……」

 

そんな二人の様子に苦笑いをする伊村は、香霖堂での用件が済んだ為出入り口の扉に向かい霖之助らに別れの挨拶をする。

 

「おう! なら私も帰らせてもらうんだぜ!」

 

伊村が香霖堂の扉に手をかけるのを目にした魔理沙が同調して自分もと彼の後に続き霖之助から背を向ける。

 

「魔理沙、まだ話は終わっていないだろう? それに君はこの後どうせ霊夢のところへ行く……暇なんだから最後までつきあってもらおうか?」

 

が、彼女が香霖堂から帰ることができるのはまだなようだった。

霖之助がゆっくりと魔理沙の背後へ近寄りドスの効いた声で話しかける。

 

 

「か、勘弁してくれなんだぜーーーーーー!!?」

 

 

香霖堂内に魔理沙の嘆きの声がこだました。

結局、魔理沙は霖之助の長話に付き合わされ、それから帰れたのはこれより3時間も後の事であった。

 




本来24話として投稿予定だった回を二つに分割して上げたので投稿。
次回からはマジで更新が遅れますのでご了承を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。