「ようやく戻って来れたか……」
しばらくして、伊村は人里に無事到着することができた。
道中また妖怪等に襲われないか不安で一杯だった伊村だが、霊夢と別れて以降そのような危機が訪れることがなかった為に着いた瞬間安堵の息を漏らしていた。
「もう時間が遅いな……、帰って寝よう………ん?」
さて早速伊村は住処へ戻るべく人里の大通りを歩き始める。
だが数歩進んでから彼はある事を思い出す。
(そうだ、忘れてた……確か
ハッとした顔で以前自分が行く予定を立てていた場所を思い起こすと、空模様を見ながら急ぎ足で目的地へと向かった。
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「はぁ……はぁ……、あ、歩くだけで疲れる……」
息を切らし滴る汗を拭きつつ伊村はボヤく。
かなり疲弊した様子の彼が居るその周辺は闇に包まれすっかりと暗くなっており、もう外を出歩く者は殆ど見受けられない。
「よ、夜になっちゃったか……もう遅いかもしれない、諦めて帰ろうかな……」
そう気を落として元気なく口にする伊村の目の前にあるは大きな木造の家屋。
この建物は数日前彼がアリスと共に訪れた事のある場所であり、"寺子屋"と呼ばれる建物である。
実は今回、伊村はこの寺子屋へ授業を受けに来たようなのだ。
(ね、眠い………)
欠伸が出そうになりながら伊村は引き返そうと踵を返す。
ガラララッ!!
「!! り、綾太!? そんなところで何をしているんだ!?」
だが彼のその行動は寺子屋から聞こえてきた声によって中止される。
「あ、け……慧音さん、夜遅くにどうも……」
「何故お前がこの時間帯に一人で外出しているのだ!?」
伊村を引き留めた声の主は青髪の少女……。いや、彼が世話になった恩人にして寺子屋の教師である上白沢慧音だった。
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夜も深くなってきた頃……寺子屋の教室内で伊村が教壇に立つ。
椅子に座る慧音が見る中、彼女からもらった数十問の問題が書かれた答案用紙を見やりチョークを手に取る。
「こ、これで合ってますか……?」
黒板に白いチョークで漢字を書きながら恐る恐る慧音へ聞く伊村。
「ふむ………よし、今度は間違えなかったな!」
その漢字は"國"……。"国"とも書くのだがアレは新字体。
旧字体を書くつもりが伊村はそちらの方を最初に書いてしまい慧音から注意を受けていたようで、こうして正しい字体で覚えた漢字を実際に書いてみたのだ。
「ではその調子で答案をやってみよう!」
「はいっ! なんかおれならできる気がしてきましたよ慧音さん!」
伊村の書いた漢字を見た慧音は満足げに二、三度頷きそう指示した。
先程の"國"を正しく書けたことが余程誇らしいのか、自信満々に伊村は答案用紙に次々と慧音より習った漢字を書いていく。
「書けましたぁ! どうでしょう!? これはノーミス間違いなしですね!」
しばらくして、答案用紙の問題全てを解き終えた伊村は胸を張り自信に満ちた顔で慧音に用紙を渡し完了を報告する。
「うむ、大した自信と気合いで書いたようだが………」
伊村のやった答案に目を通した慧音がにっこりと曇り一つ無い笑顔を浮かべ彼の前まで歩み寄る。
「綾太、お前……コレ"6割"間違ってるぞぉー!!」
ゴォンッ!
と同時に強烈な頭突きを彼へ食らわした。
なんと、伊村が書いた答案は10分の4しか正解していなかったらしい。
「ぐふえぇぁっ!!?」
頭蓋がぶつかる音を聞いた伊村は猛烈な痛みと共に短い悲鳴を上げ仰向けに倒れた。
「あ、ついいつもの癖で頭突きしてしまった!」
伊村へ頭突きをお見舞いした慧音が伊村を見下ろすと、しまったといった反応を示し慌てて彼の身体を起こそうとする。
「慧音ー、今から飲みに行かないー?」
寺子屋の扉を開け、退屈そうな妹紅がやって来たのはそんな時だった。
「あ"、もk」
「け、慧音……と綾太!? ってコイツ気絶してねぇか!?」
無論彼女は口をあんぐりと開けこの事態に驚愕した。
その後、気を失った伊村が妹紅に担がれ永遠亭に運ばれたというのはもはや言うまでもないだろう。