あと地味に連載開始から一年経ちましたね。時間って早いな……
29.「まさかの訪問者」
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「うぅ……、痛ててて………」
少し唸りながら頭を押さえる伊村。
今彼は自らの住処である家屋で布団に横になっている。
「あー大変だったなぁ、まさかまた永遠亭に入院するハメになるとは……」
(まだ頭が痛む……けど次こそ"リベンジ"だ、
寺子屋で慧音から頭突きをお見舞いされたあの日の晩から三日。
伊村はその後、以前世話になった永遠亭に送られ目を覚ますまで大人しく入院する事となったらしい。
頭突きを食らった頭部は治療を受けた為か痛みは引いてきているようだが、それでも触れた瞬間鈍痛が走るそうでこれには伊村も苦い顔を浮かべる。
トントンッ!
「えっ?」
寺子屋での再挑戦を心に誓う伊村だったが、その時入口の引き戸が叩かれる。
(あれまた誰か来たの? おれの家に?)
(も、もしかしてまた魔理沙さんか? でもそうだとしたら何故また……)
以前来た魔理沙に続き今度は一体何処の誰が訪ねてきたのか、それを疑問に思いつつ玄関へ向かう。
「はい、今開けますー!」
ガラララッという音と共に伊村が戸を開けた。
すると、そこに立っていたのは……
「こんにちは、数日ぶりですね」
「……へ!? あ、あなたは確か……!」
以前彼が人里にて出会した、メイド服姿の銀髪女性……"十六夜咲夜"だった。
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「なるほど、ここが貴方の自宅ですか」
「え、えぇ、まぁそんな感じですね……」
玄関の隙間から見える間取りと家具を一瞥し咲夜がそう口にする。
数日振りに再び会った二人はお互いの名前を教え合ってから居間で腰を据えて話をする事にした。
「………さて、突然ですが伊村綾太さん、貴方をこの里の北にある"紅魔館"へご案内致そうと思いこちらまで足を運んだ次第です」
「こ、"紅魔館"……? はっ!?」
少しの間座って話をしていた咲夜が口にした"紅魔館"……、この館の名前とそこへ伊村を招待しにきた事を咲夜は明かした。
伊村はそのワードを耳にした途端全身悪寒に襲われる。
伊村は以前慧音らから教えられていた、紅魔館とは吸血鬼の住まう館であり危険であると。
故に今回咲夜から聞いた話は人間の伊村からしたらあまりに危険すぎるものであり、相当覚悟がなければ入れないことが容易に想像できる。
「ま、ま……待って下さい! 聞く限りではそこは人間が安易に行ってはいけない場所だと知らされていて……!」
無論咲夜の話は簡単には受けられず、伊村は動揺しながら紅魔館の前情報について心配そうに言葉を紡ぐ。
「心配ご無用。何も貴方を罠に嵌めよう等と企んではいません、ご安心を」
だが伊村の不安に対し咲夜は薄ら笑いをしつつ計画等は立てていない旨を告げた。
またその時それは果たして煽りなのか、本当に可笑しそうに言ったのか不明だが、口元を手で覆い当てた。
「そ、そうなんですか………」
(………、にしても唐突だな……また会ったと思ったらこんな事になるなんて………)
いきなり自身の自宅を訪ねてきて"紅魔館"へ招待する等と言われた伊村は困惑気味に今の状況を振り返る。
「………! あの、こ、これから自分寺子屋に用事がありまして……、そっちの方を先に済ませちゃってもr」
その時、伊村に天啓が舞い降りる。
それは、今回の件について慧音や魔理沙達に相談する事である。彼女たちに一旦伝えてから、また咲夜の話を受ければもし何か危険な事があったとしても一応の対策はできる、そう考えた訳だ。
慧音に頭突きされたあの時の事までも思い返しつつ伊村はこの話を断ろうとした。
「……"お嬢様"を待たせるつもりですか? そんな"時間"稼ぎは通じませんよ。今すぐ来てください」
「お、おじ……え?」
だが咲夜は話を聞くと途端に不満そうな眼差しを向ける。
彼女が"お嬢様"と呼び仕える恐らく紅魔館の主人の敬称を口に出しつつ、伊村の提案を否定した。
(待って、マジでどういう事? "お嬢様"て誰? そして何故紅魔館なんて場所におれを招待する訳? 何の理由でそんな……)
益々混乱してきた伊村だったがその時、咲夜が彼の右手を同じく自身の右手と握らせる。
「私の手に触れて下さい、それではいきます………」
「あ、ちょ、咲夜さん……おれは、って、………え?」
咲夜がそう言うと次の瞬間、伊村たちが見ていた周囲の景色が……急に変わってしまった。
しかも一回どころかこの唐突な景色の変化が以降も二十回も続いたのだ。
動揺が隠せない伊村をよそに、咲夜はその状況でぐんぐんと前へ進んでいる。
(な、何これ……え? 視界が……どんどん景色が変わっていく! おかしい、おれ達はさっきまで家に居たはず、ありえない!)
こんな明らかにぶっ飛んでいる景色の変化ぶりに、伊村も目を丸くして大層驚く。
「な……ど、こ、ここどこォ!?」
そうして数分が経つと漸く咲夜の移動は終わり、伊村は彼女から解放される。
だが、着いたその場所は………不気味な程に赤一色で統一された洋風の屋敷の前。
そう、伊村のような人間にとっては危険な場所となる、"紅魔館"だった……。