今年もよろしくお願いします、そして遅れてすいません(土下座)
という訳で最初の投稿です、今回から若干長くなります
「じょ、冗談でしょう……?」
"レミリア"、自らの名を告げた何故か背中に蝙蝠のような羽が生えている幼女……。
館の主は"吸血鬼"だということは事前に知っていたので、その辺りについては特段驚きはしなかった。
だが、その主が大人ではなく子供と同様の容姿をしている、という意外さには不意を突かれ、伊村は一瞬言葉を詰まらせてしまったようだ。
「あら、ごめんなさい。驚かせてしまったかしら? でも貴方……この館に招かれるまでの間、
「こんな事でそんな反応をしてたらキリが無いわよ?」
「……………」
そんな様子をレミリアに看過されてしまい沈黙する伊村。
確かにあちらから指摘されたことは何ら間違いではないので何も言い返せない。
しかし、
(この子……いや、この人も何らかの能力を持っているのか?)
この時、黙り込んでいる間、伊村は別の点が気になっていた。
今対面している館の主……彼女が"能力"を所持しているかどうかだ。
(さっき案内してくれた咲夜さんもそうだけど、この世界の人たちは"程度の能力"とかいうのが使える………)
(臣下が使えるんだから主もできなきゃ可笑しい。今までの流れからして恐らく)
館の主・レミリアのもとまで案内してくれた"十六夜咲夜"。
彼女が能力を使える事を踏まえ、レミリアの方も同じく何かしらの能力があるはずだと考える。
「兎に角、歓迎するわ、伊村綾太。今日はここでゆっくりしていきなさい」
「あ、ありがとうございます……」
レミリアより滞在の認可を受け、伊村は煮え切らない顔をしながら礼を返す。
(この人は………間違いなく何かを"予知"する類の能力を持っている……!)
そして、数度彼女の顔を見てから、彼女が強力な能力を持つということを確信した。
「まあでも咲夜が居たし、これといって疲れてはいないでしょうけど……」
(細かいことはわからない。けど何故か教えてもいないおれの"名前"を知ってたり、記憶に残るぐらいに激動だった今までの約一週間を自分も見知っていたとでも言わんばかりな言葉……)
(しかも"アレ"は……おれの心を見透かているような表情だ、下手に目を合わせただけで汗が流れてくる………)
未来等を予見し一方的に自分だけ知る、レミリアにはこのような効果のある能力が備わっているものと伊村は考察する。
自らのこれまでの日々や出会い、その諸々を彼女に詳細に知られている、そういった部分がより説得力を増している。
「聞いているのかしら、私の話を」
「……んお、し、失礼! か、考え込みすぎてました……!」
と、考えている伊村へレミリアが少し眉根を寄せ不満そうに問いかけてきた。
深く考え込んでいた為か、うっかり彼女の言葉と話をスルーしてしまっていたようだ。
彼女に話をしっかり聞いていないと思われ、咄嗟に伊村は謝る。
「硬直しすぎよ、もう少しリラックスしなさい。別にあなたを取って喰おうって訳じゃないのだから」
「は、はい。スゥ」
進言通り深呼吸を挟んで心を落ち着かせようとする伊村。
だが彼の行動は、
「綾太さん、心安らぐ紅茶をどうぞ」
突然自身の傍へ現れた咲夜により中断される。
恐らくは能力を使っただろう彼女が、両手にティーポットとカップを持ち寄り、ポットから注いだ紅茶を差し出してきた。
「えっ? うわ!? さ、咲夜さんが急に!?」
何の予備動作なく現れた咲夜に勿論驚きつつ、紅茶を受け取る。
「お熱いのでお気をつけ下さい」
「はい……も、もらいます、ってもう元の位置に戻ってるし………」
と、その頃にはもう彼女は前の位置に戻っていた。
「さあ、遠慮なく飲みなさい。飲めば気分が落ち着くわ」
「………。ええ、では、頂きます………」
咲夜の紅茶を貰う伊村を見てレミリアが促す。
二人のお言葉に甘え、彼は淹れたてで熱い紅茶をゆっくりと飲んでみる。
「ズズッ……」
(…………、おお、とても美味しいな。普通に飲める……何の毒も入ってないみたいだ。ははは、流石にこれで死ぬとか考えすぎか)
その味は芳醇で香ばしく、程よい苦味が印象的だった。
また、少し口にするだけで身体の芯から温められる感覚となり、咲夜やレミリアの言った通り心地よい気分へ浸れたのだ。
「美味しいです、少し気持ちが良くなりました」
飲み終わり、満足そうに感想を咲夜へ伝える伊村。
その顔は先程までのような焦りや強張ったものではなくなり、物腰柔らかく余裕の生まれた面構えと変わっていた。
「ん、あ……」
(咲夜さん、いつも速いなぁ……)
が、またしても咲夜は伊村の言葉を聞いた瞬間、コンマ1秒すら経たないうちに元の場所へ戻っており、結局まともに話せず仕舞いとなった。
「お待たせしました、レミリアさん。あの……それで一体"自分"に何かご用でもあるんでしょうか?」
再びレミリアへ目を向け、自身を館に招いた理由を尋ねる。
「用ならあるわ。そうでなきゃ貴方みたいな気弱な人間、招待する訳がないじゃない」
「き、気弱な人間!? い、いやこの人からしたらそう見えるのか……」
バッサリと彼女より見た感じの印象を言われ、少なからずショックを受けてしまう伊村。
だがすぐに、あちら側からすればそのように捉えられてもおかしくないのかもしれないと認めざるを得なくなる。
当然、根拠は自らの"貧弱"さ。悲しいことに彼は第三者から見れば物凄く弱そうに見えてしまうのである。
「…………。"運命"を操る程度の能力……」
少しの間が空き……
レミリアが一言、短くしかし重みのあるトーンで呟いた。
それは自身の能力名なのか、彼女は伊村へ妖しい眼光を向けながら明かした。
「!! の、能力………もしかしてそれを、貴方が!?」
この言葉を耳にした伊村は途端に目を見開く。
そして同時に確信していた事が本当だった事を思い知る。
「ええ、これが私の能力よ」
「貴方があの咲夜に連れられてこの館に来る事も、館で私まで案内されたのも、ここで貴方が緊張して咲夜から紅茶を貰う事も、そしてソレを飲む事も………全てが私の知る"道筋"……いいえ」
自信の表れなのか、口角を釣り上げてレミリアが告げる。
そして、伊村が紅魔館へ着き彼女に会うまでの道中や進行といった全ての展開を一人で把握、知り得ていたと明かした。
「またの名を、"運命"!」
「う、"運命"……!?」
先程より大きめの声でレミリアは言った。
"運命を操る程度の能力"。これこそが彼女の能力で、今までの伊村の日々の事、人里の住処で起き、咲夜の案内で紅魔館に来る事、最終的に彼女に会う事、その全てを予め知れていたのもコレのおかげらしく、彼女の自信等はこの能力によるものなのだろうと読み取れる。
しかし運命を操るなど使い方次第で何でもできてしまう可能性がある……。
もれなく伊村は唖然としてしまった。