「私には手に取るように分かるの。私達のこの先の出来事も、ずっと遠い未来の事象もね」
顔に自信の程を覗かせながらレミリアが自らの持つ能力について語る。
やはりと言うべきか、彼女の"運命を操る程度の能力"は次に起こる未来を詳細に予知する効果を有しているようであった。
「何てトンデモ能力……、じゃ、じゃあ今後の……、おれの"運命"なんかもソレ使えばわかったりするんですか……?」
大体の効果がわかったとしても未だ平静にはなれない。
汗を流し少し動揺を見せる中、伊村は自分の未来に何が起きるのかを知りたいと思い問いかけた。
「…………わからない」
「え?」
だがレミリアより返ってきた言葉、それは"否"だった。
「少しだけしか知る事ができないの。運命を」
声を漏らし呆然となる伊村へレミリアが話す。
自らの能力にかかったという制約について。
「どうやっても、何度試しても、貴方だけは遥か先の"未来"までを見通す事ができないのよ」
彼女によれば伊村を対象に能力を使用しても、発動自体はするものの肝心の効果が今より遠い未来まで把握ができないという。
「お、おれだけ……?」
予想外の返答に今度は困惑する伊村。
自分にだけ能力が完全には適用されない事に、甚だ疑問を感じざるを得ない。
「断片的、と言うと変かしら。遠くないほんのすぐ先の未来、それしか掴めなかった。貴方に関しては」
遥か先の出来事を予測できず直後から数刻後の未来、それまでしか知覚できない。
伊村のみこうなってしまうのだと彼女は告げた。
「本来ならそんな結果にはならないんですか?」
今までのこの話を聞いて、伊村は純粋に抱いた疑問をぶつける。
「そうよ。ホント不思議よね、でもこれが貴方の内に眠る能力によるものなのか……結構気になってるのよ、私」
彼に対して使う時だけ、普段能力を使用している時と比べ著しく効果が低下するとしてレミリアはこれを肯定。
またそれらが可笑しそうに薄ら笑いを顔に貼り付け、伊村が潜在的に持っている能力の謎に言及する。
「えーと………果たして関係あるのかな……?」
(ていうか、そもそもおれの能力なんて発動の仕方が全然分からないし……)
彼女の言葉を前に惚けるように口にする。
実際の所何一つとしてその詳細が判明していないので仕方がないが。
「そこで私は考えた。貴方の秘密を調べる方法を」
と、ここでレミリアは伊村の能力に関して、謎に包まれた実際の効果を確かめる手段を思いついたと話す。
「ほ、方法?」
「でもその前に、とうとう来てしまったようね。
自らの秘密を調べられると言われて思わず彼は身構え少し動揺を示した。
だがそれと同時、レミリアがどういう訳か出入り口の扉の方へ目を向けると誰かが来訪してきた事を示唆。
「咲夜」
「ええ、仰せのままに」
咲夜へ目配せし名を口にするレミリア。
それだけで意図を察した咲夜は頷き了解をする。
「………?」
二人は一体何の会話をしたのか分からない伊村は沈黙したまま首を傾げる。
この後自分は彼女らに何をされるのか、不安を感じながら咲夜の方へ振り向いたその時だった。
「失礼するぜー! 本読みに来たついでで人を探してるんだが……お!」
部屋の扉が大きく開かれた。
そこに現れたのは、黒色の魔法使いの格好をした少女………"霧雨魔理沙"、彼女だった。
「綾太ー! やっぱここだったか! 無事みたいだなぁ!」
「ま、魔理沙さん!? 何故、このタイミングで………どうなってる……!?」
伊村の姿を見るなり歓喜、同時に予想通りと言わんばかりな発言をする魔理沙。
先程レミリアが言っていたのは恐らく彼女の事だろう。だが気が動転している伊村の脳は処理が追いつかない。
「さあ帰るぞ……って危なっ!?」
早速伊村のもとへ寄っていく魔理沙だったが、その眼前を二本の"ナイフ"が横切る。
間一髪、紙一重で魔理沙はこの直撃を避け素早く後方へバックステップ。
瞬時に戦闘体制に入りナイフを投げた当人へ目を向ける。
「お嬢様はお忙しいの、貴方の相手は私がしてあげるわ……!」
ナイフを投擲したのは十六夜咲夜。彼女が魔理沙に攻撃を仕掛けてきたのだ。
両手に複数ナイフを持ちて、伊村とレミリアの居るところへ行こうとする魔理沙の行動を阻止。
ニヤリと冷徹な笑みを浮かべ、彼女を見据え戦闘を仕掛ける。
「咲夜か! 面倒だな………私はお前と戦いに来た訳じゃないんだがな!」
魔理沙の方はここへ戦うつもりで来たのではない様子。
こちらは消極的な台詞を呟き、手に持つ箒を前へ向ける。
「そちらはそうでも、私は貴方を止めなければならないのよ。覚悟なさい!」
だがそんな彼女の事情は咲夜には関係ない。
何がなんでも妨害する意思を表明した直後、例の瞬間移動に似た能力を使い一瞬にして魔理沙の付近へ移動し無数のナイフを投げつけるのだった。