東方貧弱男   作:K.R.

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4.「永遠亭」

 

「………うぅ、…………?」

 

煌々とした眩い光に刺激され、伊村は意識を取り戻してゆっくりと瞼を開ける。

 

 

あの金髪少女に追われていた際に森で川に身を投げ出されて溺れ死んだように見えたが、伊村は今、何故だか"生きている"。

 

そして、意識を取り戻してから伊村が気付いた事がもう一つ。

 

伊村は、今まで目を覚ますまでの間、誰が用意したのかはわからないが清潔に整えられた白い布団に寝かせられていたのだ。

 

「助かった……のか? それに、これは……」

 

さらに、伊村が首から下に目を向けると、身体の至る所に包帯が巻かれている上、綺麗に止血もされているようだった。

これらから、自分の身体は決して"軽傷"という訳ではないのだが、運良く川で流されている時に誰かに助けられて手当てを施されたのだと推測できる。

 

「どこだ……? ここは……?」

 

伊村が目を覚ました部屋は壁と天井は木で出来ていて、床には畳が敷かれている。

さらに縁側からは大きな三日月が辺りを照らしている。

まさに言うまでもなく和室である。

 

(……おれは、助かった? いや、誰かに助けられたのか………?)

 

「………くっ!?」

 

何故自分は助かったのか怪訝に思いながら周囲を見回す伊村だったが、包帯のされている部分から鈍い痛みがじわじわと伝わってきた為、それを中断せざるを得なくなった。

 

 

「まだ動かない方が良いわ」

 

 

部屋の奥の襖より若い女性の声が聞こえた。

声のした方へ伊村が目を向けるとその若い女性は既に襖を開け入室しており、外見は後ろを三つ編みにした長い銀色の髪に、赤と青の色をした上衣とその色合いを反転させたロングスカートを着た不思議な服装をしていて、部屋に入るなり腕を組んで伊村を見据えていた。

 

「えっと、あ、あなたは……?」

 

「私は八意永琳。この"永遠亭"で薬剤師をやっているわ」

 

伊村の問いかけに答えた女性はそう名乗ると、彼の近くへ歩み寄り、伊村の横にあった座布団に正座して座った。

 

(は、永遠亭……? ああ、この建物の事かな。……ってそんな事より、)

 

(き、綺麗な人だなぁ………へへへ、はっ、しまった! つい見惚れすぎた!)

 

永遠亭という言葉が何なのか一瞬首を傾げる伊村。

少し考え、自分が今居るこの場所が永遠亭というところではないかと推測し、永琳という女性はそこで所謂医師的な職に就いているのだと理解する。

だが、その疑問が解決するや否や、永琳の綺麗な顔と大人の色気を感じさせる豊満な身体に伊村はあっという間に魅了され、思わず視線が彼女の方に釘付けになった。

 

 

「や、薬剤師……! もしかして、あなたがおれを助けて下さったんですか!?」

 

「いいえ、確かに私は貴方の手当てをした。……けど、貴方を見つけてここまで運んだのは私じゃない」

 

森の金髪少女に何故か噛まれ、攻撃され、更に川で身体を複数回打ちつけズタボロになってしまった伊村を治療したのが自分だと永琳は肯定した。

だが、伊村を発見し永遠亭まで搬送したのは別の者だと、救助した事については否定する。

 

「え、そ、そう……なんですか。じゃあ八意さん! ちょっとその方にお礼しに行ってもいいですか!?」

 

「……いっ!? あ痛たたたたたたたっ!?」

 

伊村が永琳を名字で呼ぶと、自身を永遠亭まで運んでくれた人へ礼を言いに行こうと布団から立ち上がろうとした。

が、その途端身体中に鋭い痛みが走り、その激痛に驚いた伊村は態勢を崩し尻餅をつく。

 

「やめておきなさい。さっきも言ったけど貴方の傷は手当てしたばかりだから暫く安静にしてないといけないわ」

 

あまりの痛みに悶えている伊村のその行動を見た永琳が彼を静止し、先程話した安静にするという言葉を伊村へ言い聞かせ、その場から動かないように注意を促す。

 

「えっと、ど、どのくらいじっとした方が良いですか?」

 

永琳を見て恐る恐る伊村が、どれほどの時間を布団で過ごさなければならないか質問する。

 

「うーんと、今日入れて二日程かしらね」

 

「ふ、二日ですか!? 此処で二日も!?」

 

永琳の口から出た返答は今日を含め二日。

この日は外を見てもわかる通り夜なのですぐに終わるのだが、その次の日は一日中安静に過ごさなければならないと知った伊村は見事に面食らった。

 

「まあ病人だし、それは仕方ないわ。取り敢えず動けるようになるまではここでゆっくり休んでいきなさい」

 

そうするのは仕方ないとして、永琳は伊村に傷が良くなるまでは永遠亭で泊まっていくように催促した。

 

「ほ、本当にいいんですか……?」

 

「ええ、ただ二日経ったら、ここから出て行ってもらうけどね」

 

「……わかりました! 八意さん、どうもありがとうございます!!」

 

伊村の問いに永琳が答えたが、二日休んだ後はもう退院として永遠亭から出ていくように話した。

それを聞いた伊村は了解し、改めて彼女に礼を口にした。

 

「ふふ、永琳でいいわよ」

 

軽く微笑みながら永琳は、下の名前で呼ぶ事を許可する。

 

「あ、はい……永琳さん! 伝え忘れてましたけど、自分は伊村綾太って言います! 短い間ですがお世話になります!」

 

永琳の名を呼び直した伊村は、今まで知らせていなかった自分の名前を永琳に教えると、しばらく永遠亭で休む為か彼女へ挨拶をしておくと、再び布団に入る。

 

 

「へぇ、"伊村君"ね……、よろしく。また明日の昼に貴方の様子を見に来るから」

 

「そうですか、わかりました!」

 

伊村の名を耳にした永琳は、何故か楽しそうに少し口角を吊り上げそう言っておくと伊村の居る部屋から出る為立ち上がる。

 

 

「………、なかなか面白い"外来人"を連れてきたわね。あの"スキマ妖怪"も」

 

 

部屋から出る際、永琳は最後に小さく呟いたが、伊村がその一言を聞き取るには……声量と距離の問題もあって叶わなかった。

 

 

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