最新話、形になったので投稿します!
「はあ……! はあっ……!」
紅魔館を飛び出し、魔理沙が爆走する。
伊村を乗せた彼女が跨る箒の速度はもう200kmを越し、館を出て5秒もしないうちに、館付近の湖を抜け、さらに鬱蒼と広がる森を通過していく。
気づけば二人は、人里へ延びる田園地帯に出ていた。
「…………おお!」
(もうすぐだ! ここには伊村を知ってる"アイツ"が居る!)
しかし次の瞬間――
「うぐ……っ!?」
ズサッ!
彼女の乗っていた箒が急激に傾き、草地に突っ込むように着地してしまった。同時に伊村も体勢を崩し横転。
「……くっ!」
(ちょっと動きすぎたか……、感覚が鈍くなってきた……)
魔理沙は彼を再び担ごうとするも、意思とは正反対に力が出ない。
(へへっ……、ダメだ、こりゃもう、まともに動けねぇな………)
(………!! い、伊村……! マズい、もう時間がねぇ!!)
振り返ると、伊村の意識は朦朧としていた。傷からの出血も止まらず、顔色はひどく青白い。
「はあ……、はあ……!! っ!?」
「お、おいおい……いくらなんでも速すぎんだろ………お前……っ!」
と、そこへ何者かが二人の進行方向を阻むように降り立つ。
ふわりと銀色の髪が靡き、手には投擲ナイフが握られたメイドの麗女。
「傷のせいで動くのもままならないようね……! 魔理沙!!」
そう、姿を現したのは咲夜だった。数度、時を止めて紅魔館よりここまで追いついた彼女は、余裕を感じさせる口調で魔理沙たち二人を見下ろす。
「う……クソ!」
「でも、おかげでやっとトドメを刺せる」
咲夜はナイフを構えたまま、ゆっくりと近付き始める。
ザッ!ザッ!革靴で土を踏む音が鈍く響き、ナイフの金属音がより絶望感を引き立てる。
彼女は凍てつくように冷めた目で魔理沙と伊村を睨み据えていた。
「時止めの出力を上げ、数度、能力を発動してやっと追いついたけれど、手負いであのフルスピードとは……さすがは巫女と並び異変を解決してきただけはあるわ。本当に随分と粘ってくれたわね」
「さて、そろそろ追いかけっこは終わらせないと……」
「くう……!」
彼女の使う時間干渉系の能力、それを幾度も使い追いついたその執念深さに、魔理沙は背中に氷を入れられたような感覚に襲われる。
流石の魔理沙でも、傷を背負った状態で咲夜を撒くことは叶わなかったのだ。
この現実に、いよいよ彼女も今際の際というものを実感せざるを得なくなる。
(あ……こりゃ、もう死んだな……。わりいな霊夢、私は死ぬみたいだ。もう一度、お前と一緒に茶でも飲んで、下らない話で盛り上がりたかったな………)
「死になさい!」
魔理沙の脳内を駆け巡るは、親交の深い霊夢と過ごした日々の光景……
縁側で二人並んでお茶を一杯啜り、世間話に花を咲かせている、当たり前ながらとても大切な日常の記憶。
走馬灯のようによぎり、魔理沙の体感時間はスローになる。
この時既に、魔理沙の眼前に咲夜が飛び出し、心臓目掛けナイフを突き刺そうとしていた。
逃れられない死、遺言すら残せぬまま彼女の息の根が止まる――ー
と、その瞬間だった、
「ん……!?」
バヒュン!!
「!! くっ……! 誰?」
空気を裂く音と共に、新たな何かが二人のあいだに割って入った。
刹那、咲夜が爆発的な踏み込みで地面を蹴り付けバックステップ。
直後、その場に小規模の爆発が発生。魔理沙が爆風で少し後ろへ吹き飛ばされた。
咲夜の目に映るのは、本を片手に空に浮かぶ金髪の少女。
髪に赤色のカチューシャを付け、青色の瞳で咲夜達を見下ろす。
だがその目は、魔理沙達ではなく咲夜の方を鋭く睨んでいた。
「………あっ?」
「………。まさか、あなたがここに現れるとはね」
箒の横にすっと降り立つ彼女を見て、咲夜が眉を顰める。
彼女の姿を目にした途端、魔理沙の顔に動揺と衝撃が表れた。
「魔理沙、大丈夫?」
「……"アリス・マーガトロイド"!!」
魔理沙の絶対絶命を救ったのは、アリス。
人形遣いであり、魔理沙と同じ魔法使いの一人。
また、伊村と魔理沙、双方を知る人物でもある心優しき少女であった。
「咲夜、どうしてこの二人は怪我しているのかしら?」
アリスの声は静かだが、その奥には確かな怒気があった。
「アナタに教える義理なんてないわね、私の邪魔をするのならば、誰だろうと容赦しない。早くソコをどきなさい!」
重傷となっている二人を見たアリスの問答に数本かナイフを出して応える。
咲夜はぴしゃりと拒否して前のめりとなり、戦闘態勢に突入する。
「……ずいぶん忙しない口の聞き方ね」
「そんなにこの二人を仕留めたいと……。わかったわ」
彼女の発言を受けたアリスは、魔理沙のもとを離れ、歩を進める。
向かう先は、咲夜の前。
間違いない。彼女は魔理沙達の為に戦う気だ。
「ではここからは、私が代わりに相手させていただこうかしら」
その宣言とともに、アリスの周囲から次々と人形たちが出現する。
先程の弾幕はおそらくこの人形達が撃ったのだろう。いくつもの色とりどりの光弾が、アリスの行使する人形から生成されていく。
「………!!」
彼女を前に咲夜もナイフを構え直し、睨む。
こちらもナイフを両手に用意、以前魔理沙との戦闘で見せた無数のナイフの弾幕をやる気なのだろう。
だが、咲夜自身も魔理沙から多くの手傷を受けている。
それゆえ、手抜きはできない相手だと判断したのかもしれない。
魔理沙と伊村を巡り、両雄が睨み合う。
今ここに、戦いの火蓋は落とされる寸前の状況となった。
また、近いうちに投稿できればなあ……と思います
必ず完結まで突っ走る気で書いていくつもりです
信じてお待ちください……!