最新話がようやく書けたので投稿します。
ガサガサガサガサ!!
「はあ! はあ! はあ! はあ……!!」
鬱蒼と、天高く生える竹林の中を駆ける人影二つ。
木漏れ日の下、それらはどこかへ急いで行く。
「時間がねえ……最短距離だ! お前ら振り落とされんなよ!!」
「魔理沙……、綾太………、ぐっ!」
正体は妹紅、そしてアリスの二人だ。
妹紅が重傷を負った伊村と魔理沙、意識の無い二人を両腕で担ぎ上げ、迷いの竹林の道を突き進んでいた。
一方、アリスは妹紅の後を気を振り絞って追随。
途中激しい痛みに襲われて立ち止まり、負傷した部分を片手で押さえ苦悶に顔を歪ませる。
「ふう……ふう……!」
(こんなところで立ち止まってたら、私一人で死ぬだけだわ……!)
「うああああぁっ!!」
だがそれだけで止まってはいられない。アリスは再び加速して前へ進む。
「もうすぐ着く! しっかりついて来い!」
「分かって……るわ!!」
妹紅の呼びかけに対し、後方でアリスが声を振り絞り返事する。
二人とも先ほどまで戦闘を行なっていたとは思えないほど、人智を超えた速度で竹林を駆ける。
その理由など言わずもがな、伊村と魔理沙の為だった。
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「……よし! ここだ!」
程なくして、妹紅とアリスは遂に竹林に囲まれた木造の建物……"永遠亭"にたどり着いた。
「はあ……! はあ……ッ!!」
(やっと着いたわ……。窓が明るいという事は、まだ鈴仙たちはいるみたいね……!)
出迎えは無い、だが明かりが窓の向こうから見える事から、今も中に人は居る。
ここに、妹紅の運ぶ二人を治療してもらえば助かる可能性があるのだ。
「行くぞ、さっさとこいつらを渡さねえと!」
「……ええ!」
ならば一刻も早く、永琳のもとへ運び込まなければならない。
二人は全速力で玄関を走り抜け、永遠亭の正面入口から中に入って行く。
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「もおー! 師匠! どこに置いたんですかぁー!!」
「さあ……? 別に私は何もしてないわよ?」
同じ頃、永遠亭内では鈴仙が永琳と言い合っていた。
会話の内容は、聞けば鈴仙の持ち物がどこか不明な場所に置かれてしまった事らしい。
「じゃ、じゃあ一体アレはどこにあるんですか!? 師匠も探してくださいぃー!!」
「はぁー……まったく、こんな時にアナタはなにを失くしてるのよ。仕方ないわね、新薬の実験体をどうするか考えてたのに、後で誰に試そうかしら……」
鈴仙本人は気付くや否や、慌てて探したがどこにも見つからず、あえなく自らの師事する永琳にその在処を確認しにきたという事情のようだ。
「では私はあっちを探してきますー!」
「……なら私は向こう側から見て回ろうかしら」
最初こそため息をつき煩わしそうな様子の永琳だったが、彼女のその慌てように渋々協力することを決め、腰掛けていた黒皮の椅子から立ち上がり、廊下を出て先に部屋を飛び出した鈴仙とは別方向に進み、建物内を回って行く。
「やれやれ、私は暇じゃないんだけど………ん?」
ドドドドドドドドドドッ!!
永遠亭に無数にある木製の板張り廊下を歩く永琳。
するとその時、彼女の耳が何かを捉える。
その音は廊下を忙しなく走る音だ。
そして……音の主は間もなく現れた。
「あ! ちょうどいいとこにいたーっ!! おーい永琳ーッ!!」
そう、妹紅とアリスだ。彼女達は永遠亭の廊下を駆け抜けて永琳のもとまで辿り着くと、妹紅が彼女の名を呼びつけた。
「あら、誰かと思えばいつもの"暇人"じゃない」
呼ばれた張本人たる永琳は、妹紅を見るや真顔でこう言った。
普段から妹紅はかなりの頻度で永遠亭を訪れ、永琳や鈴仙たちに絡んでいる模様だ。
「ケッ、暇で悪かったな。……って、ンな事より今は"コッチ"だ!」
「永琳! こいつらと後ろのアリス、重傷者三人だ! 時間がねェ……今すぐ治療してくれ!!」
「はあ……! はあ……! どうかお願いするわ……」
彼女の発言に妹紅は少しムスッとした表情となるが、すぐに目的を思い出して永琳に魔理沙と伊村の二人を引き渡す。
後ろで二人の会話を聞くアリスも、手当てしてもらう為に一歩前に出て頼み込む。
「ああ……、ここに急いで来るぐらいだから何かあると思ったら、やっぱり"急患"だったみたいね」
「特に先日ここへ来た綾太までボロボロになってるし、きっとついさっきまで激しい戦闘でもしたのかしら?」
「良いわ。ちょっと診てみましょう。さあ、こちらに……」
その要請を受け、永琳はなぜ永遠亭まで妹紅とアリスが来たのか完全に把握する。
負傷者の中で、とりわけ伊村の負傷が目立つ。
彼の怪我の有様に気付き、事の深刻さは十分永琳に伝わった。
大まかながら彼女たちの事情を理解し、これを了承。
三人の負傷部位を治療すべく、速やかに場所を移動しオペに取り掛かる事になった。
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キュッ!クイッ!
「…………。三人とも出血量が酷いわね」
診療室へ運び込まれた三人を前に、永琳は即座に施術へ取り掛かる。
オペに際し羽織った白衣の袖を捲り上げると、近くの棚から消毒液や包帯、止血用の器具を次々と取り出した。
まず確認したのは、"生命維持"に関わる部分だ。
首筋に指を当てて脈を測り、胸元へ手を添え呼吸を確認する。
……その後も瞳孔の反応、血圧、損傷箇所を手早く診察していき、頭の中で三人の容態を整理していく。
(魔理沙に至っては意識が落ちている……。これは急いだ方が良い)
魔理沙は全身に無数の裂傷と打撲が見られ、出血量も少なくない。
アリスもまた身体の各所を負傷していたが、魔理沙と比較するとまだマシで、辛うじて意識を保っている状態だ。
だが………、
(ただ……最も深刻なのは……“彼”かしら)
永琳の視線は自然と、三つある診療台の一つへ向いた。
そこに横たわる伊村の状態だけが、明らかに異質だったのである。
手袋を嵌め直し、特殊な薬液を染み込ませた布で傷口周辺を丁寧に拭き取る。
さらに銀色の医療器具を使って損傷部を広げ、内部の状態を慎重に確認していった。
そして――。
彼女の表情が僅かに曇る。
「…………………」
診療台の上で横たわる伊村は微動だにしない。
呼び掛けても反応は無く、瞼も閉じられたまま。額には冷や汗が浮かび、顔色も血の気を失っている。
だが、それでも完全に生命活動が停止している訳ではなかった。
弱々しく胸が上下し、今にも消えそうな脈が辛うじて続いている。
その事実だけが……彼がまだ生者である証明だった。
永琳は改めて患部へ視線を落とす。
そして、静かに息を呑んだ。
「……………」
カチャ!カチャ!
(綾太、物理的に腹部に空洞が空いてるわ。脊髄骨は辛うじて直撃してないけど、小腸の大半と大腸の一部が丸ごと消えているじゃない……こんな事ができる奴なんて限られてる………)
医療用のメスを手に持ち、永琳が眉を僅かに寄せる。
医師として長い年月を生きてきた彼女だからこそ分かる。この状態は明らかに異常だった。
(でも、心臓と肺の機能は僅かに機能してる。施術次第では可能性はあるわね)
常識的に考えれば、とっくに生命活動が停止していてもおかしくない。
夥しい数の出血に、広範囲に及ぶ臓器の欠損。
全身へ回る血液量も著しく不足している。
それにも関わらず、彼の身体はまだ生きる事を諦めていない。
脈は弱々しくも続いている。呼吸も完全には止まっていない。
まるで身体そのものが死を拒絶しているかのようだった。
あり得ない、とは思いつつもそこに僅かながら永琳は希望の光を見出す。
(そういえばこの子……以前、魔法の森でルーミアに襲われた、って時もそうだったわね)
ふと、永琳は数ヶ月前の出来事を思い出す。
意識を失い、満身創痍の状態で運び込まれてきた"伊村"という少年。
あの時も決して軽傷ではなかった。
普通の人間なら、何日も寝込んでも不思議ではない傷を負っていたにも関わらず、彼は驚くほどの速度で回復してみせた。
(あの時は、若さゆえの生命力かと思ったけれど……)
カチャ。
器具を持つ手が止まる。
そして……永琳は、眠る伊村の顔を静かに見下ろした。
(いいや、違うわね。貴方は何かがおかしい)
(人間の範疇にいるようでいて、人間の常識が通用しない)
(まるで、何度倒れても立ち上がる事を前提に生まれてきたみたいじゃない)
「ふっ、不思議ね……。これだけ深刻な大怪我を負ってるのに、どうして貴方はまだ
医師として数多の患者を診てきた永琳ですら、思わずそんな言葉を漏らす。
それほどまでに伊村の容態は深刻そのもの。
しかし、どれほどの致命傷を負おうとも、彼はまだ生きている。
……ならばやるべき事は一つ。命の炎が消えようとしている伊村の救命だ。
余計な思考を頭の隅へ追いやり、永琳は患部に刃先を滑らせ、目の前の施術へ意識を集中させるのだった。
え? どうしてここまで遅れたのかって?
実は……先月発売されたゲーム・トモコレに夢中になってました。
はい………いや、マジで一度始めたらやめられなくなって、終わり時が分からなくなるんですよアレ。