東方貧弱男   作:K.R.

47 / 47
お久しぶりです。
今回はあの二人が再び登場します。


47.「招かれざる客」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ガチャッ!!

「!!」

 

永遠亭奥の手術室のドアが開かれる。

中から白衣とゴム手袋に身を包んだ永琳が現れ、その表情には緊張感が漂う。

 

「待たせたわね。一通り終わったわ」

「む!! 永琳先生、綾太達が敵に狙われたと聞いたが……!」

「あらアナタは……、人間の里の教師さんじゃない」

 

そして、彼女が施術の完了を妹紅に向けて伝える。

よく見れば、現場には妹紅の知人・慧音も駆けつけてきていた。

伊村が関わった事がきっかけだろう、焦燥に満ちた顔色をして永琳に問いかける。

 

「そ、それで、あいつの容態は……?」

 

手術室すぐそばで、施術が終わるのを今か今かと待ち続けてきた妹紅。

彼女もまた永琳に、今回死の淵に追い込まれた伊村の現状を伺う。

 

「……………。見て分かったと思うけれど、彼の怪我はかなり深刻よ」

「腹部中央に空いた"大穴"、損傷した臓器の接合と輸血に併せてあらかじめ保存しておいた"人工皮膚"を使い縫合しなければ、今頃死んでしまっていたでしょう」

 

一拍の間を置き、淡々と永琳が手術の過程を明かして行く。

まず最も深刻だった伊村から着手、彼の負傷部位の縫合及び臓器の修復に全精力を注ぎ、その結果どうにか一命を取り留めるに至ったのだ。

 

「まあ兎に角、こちらで必要な限りは尽くしたわ。だからもう安心なさい」

「そ、そうか……! じゃあ、まだギリギリ命は繋いだって事か……!!」

「流石、永琳先生……本当にすごい医術の腕だ……!」

 

伊村達の無事を願う妹紅と慧音の二人を前に、その事実を告げる。

彼の生存が確定した途端に、二人の顔から安堵が現れた。

特に妹紅の方は、慧音以上に彼が死んでいない事に胸を撫で下ろしているようだった。

 

「ええ、概ねそんな感じね。アリスと魔理沙の方もまだ彼よりは重体では無いし、じきに意識を取り戻すわ」

「それにしても……、なんだかヤケに彼の事が心配みたいね?」

 

伊村の他に施術を受けた魔理沙、アリスの二名についても言及する永琳。

伊村よりかは傷が深くなかったのも幸いしたのか、彼女達もまた命を拾った模様。

紅魔館にて数多の強敵と戦い度重なる手傷を負った魔理沙、フランドールにより腹に深い風穴を開けられた伊村……。

そんな重篤な患者達の命を、精密な医療技術で救いあげた永琳、間違いなく幻想郷に必要不可欠な存在と言える。

一連の手術の結果を説明し終えた彼女は、じろっと妹紅の方へ目を向けて口にした。

 

「はぁ!? わ、私は別にあいつとは深い関わりなんて無い! ただ、少しだけ面識があってイジり甲斐がある奴だから、このままあっさり死なれたら面白くないなぁー、って思ったから……! そ、それだけだ!」

 

その瞬間、妹紅は分かりやすく取り乱しながら反論。

何を慌てているのか、露骨に永琳から目を逸らして否定する。

 

「むう、妹紅……ちょっと誤魔化してないか? 彼の事がとても心配だ、って素直に言えばいいと思うのだが……」

「実際この間、私と共に晩酌したとき、伊村君の事をまるで"弟"のように思えてきたとか言ってt」

 

しかし慧音によれば、彼女は以前うっかり本音を漏らしていたようで、内心では相当彼の存在が大きなものとなっているようだった。

 

「わ、わーっ!? け、慧音、待て待てそれ以上は話すなぁぁぁっ!!」

 

慧音に暴露された妹紅は羞恥心MAX。

顔から湯気が出る程に肌を赤くし、慧音の口元へ右腕を伸ばして次の言葉を遮りにかかる。

 

 

「あらあら、"あの子"も随分と人気になったものねぇ……」

「! 姫!」

 

 

するとその時、待合室の襖がゆっくりと開けられ、誰かが外へ出てきた。

それは、この永遠亭に住まう月の姫・"蓬莱山輝夜"。

その姿を見た永琳が驚く中、妹紅と慧音の方に近付き自身も会話に参加する。

 

「ごきげんよう妹紅。また性懲りも無くここに来て……今回も私に打ち負かされに来たの?」

「貴女は確か……輝夜か。私達に何か用件でも?」

「いや慧音、コイツはただ私をからかいに来ただけだ。まともに取り合うな、うん」

 

出会って早々、輝夜は妹紅を煽る。

二人の因縁は深く、感情も言動も決して交わらない水と油。

少し迷いつつも応対しようとする慧音に対し、妹紅がスルーを勧める。

 

「………今、なにか言ったかしら?」

「はっ、別に。綾太達の事はもう聞いてるんだろ? 運んできたのは私だ。ここに居ちゃ悪いか?」

 

その言葉に反応し、輝夜が低い声でボソリと呟く。

だが、妹紅の方も迷わず誤魔化し、伊村と魔理沙の搬送を自分が行った事を正直に語り現場にいる正当性を強調。

 

「今はアイツらの事が最優先だってのに、相変わらずお前と話してたら頭が可笑しくなりそうだ」

「それにしても………ふあ〜あ、眠いわねぇ……。屋内が何か騒がしいと思ったら、まさか患者が何人も運ばれてたなんて……。特にあの子、"重体"だそうだけど、彼を死の淵にまで追い込んだ輩が一体どこの誰なのか……ちょっと知りたくなってきたわ」

 

やたらと噛みついてくる妹紅をよそに、輝夜は会話を切り上げ眠たそうに欠伸をする。

そして、永琳の手によって先ほど処置が完了した伊村達、彼らについて言及。

とりわけ、自分も知っている外来人の伊村が意識不明の重傷を負っていた為か、妹紅や慧音ほど深い関係になっていない彼女は事の経緯に多大なる興味を示していた。

 

 

「……それについてはあんまりよく知らねーんだが、三人とも"紅魔館"の連中のせいでひでぇ目に遭わされたらしい」

「そうか……! 道理でこんなにも立て込んでいたのか……」

 

 

単純な興味から出た輝夜の疑問、これに妹紅が自分の解る範囲で答える。

彼女の話を聞いた慧音も納得した様子だ。

 

 

フォンッ!!

「……やっぱり、ここに運び込まれたようね」

「「!!!」」

 

 

すると突然、彼女達の向かって後方に延びる廊下に人影が出現。

人数は二人、しかし侵入経路は不明。

その二人に気付いた慧音、妹紅達は驚き目を見開いた。

何故なら………

 

「ええ、確かに間違いないようです。"お嬢様"……」

「逃げた輩は全員、八意永琳の治療を受けたと見られるかと」

「そう……なら、話は早いわ」

「あら……"レミリア"に"咲夜"じゃない。噂をすれば何とやら、ね」

 

彼女達は誰あろう、今話題に挙げられていた伊村を瀕死に追い込んだ、紅魔館の主・レミリア、そして彼女の従者・咲夜だったのだ。

 

「お、……お前らはっ!!」

「あなた達、ここは永遠亭よ。今日も治療を受けた患者が何人いると思ってるの? もしここで暴れる気なら私が許さないわ……」

 

後方へ振り返りレミリア達二人を目にした瞬間、妹紅は前屈みになり戦闘体勢に入る。

両の手に炎の熱気を集め、いつでも襲いかかれる準備を整える……が、こうした状況を前に永琳が、一度その場の全員に対し強烈な圧を含めた警告を口にした。

もしもここで戦闘を繰り広げるなら自分が制圧する、とばかりに。

 

「………ふう、いきなり現れやがって、見た目より執念深いタイプか? メイドさんよォ」

「………。さっきはよくも好き放題に暴れてくれたわね」

 

その忠告に妹紅は素直に従い、一旦冷静さを取り戻してレミリアと咲夜の二人に声をかける。

対する咲夜はレミリアが話し出すより先に両手の指にナイフを取り出し、妹紅へ攻撃的な視線を向けながら一言だけ呟いた。

 

「へっ、今度は五体満足じゃ済まさねーからな」

「妹紅、相手はレミリアに咲夜だ、それにこんなところで戦えば間違いなくこの建物はタダでは済まん……!」

「その通りよ。せっかく命を拾った綾太を、魔理沙を、アリスを……みんなを巻き込む気かしら?」

「………チッ、わーったよまったく」

 

両者の距離は目と鼻の先、互いに飛び出せば1秒で激突するだろう。

そんな緊迫した距離感の中、先ほどの永琳の言葉をもう忘れたのか妹紅が再び両手に弾幕を形成し始める。

だがそれを今度は慧音が制止、冷静に彼女を諌める。

また妹紅の左前方に佇む輝夜も同様に、この場での戦闘は避けるべきだと薦めた。

 

「……ふふ、どうも。みんなお元気そうね?」

「ごめんなさいね、お騒がせしちゃって。今日はここに用があって来たの。"診察以外"で」

「そう………、ならあなた達はなにしに来たの?」

 

二人に引き留められ、渋々妹紅が攻撃を諦める。

一方のレミリア、ただこちらをジッと見据える慧音や永琳達を面白おかしそうに眺めつつ、遂に彼女が口を開く。

まずは唐突な来訪を軽く謝ってから、挨拶も短めに自分らの用事に触れる。

警戒を解かず睨み合う皆を横目に、永遠亭の主とも言える永琳が問いかけた。

 

 

「ええ、さっそく単刀直入に聞くけれど………"伊村綾太"はどこにいるのかしら? 私たちが引き取ってもよろしくて?」

「「………ッ!!」」

 

 

平静さを装いながら、レミリアから告げられた衝撃的な一言。

その内容とは、ここへ搬送され一命を取り留めた、"伊村"の身柄の要求であった。

 




今年はもう1〜2回更新できればと考えてます。
来月末〜年末くらいにまたお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。