東方琉輝抄・暁   作:日立涼

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 お疲れ様です。白熊すずむです。
 今回は行間を空けてみました。読みやすくなっていれば幸いです。
 あと、数字についてなんですが、12宮の表記とカードのステータス(レベルやBPなど)を表わすときにはアラビア数字を、それ以外では漢数字を使用してます。
 読みづらかったら教えてください。


第二話『獅子座の子落とし』

 

 逆立ちしたって、ウサギにライオンの気持ちはわからない。

 永遠亭の広い庭を舞台に、利家の《レオンランサー》とレイセンの《スコル・スピア》がぶつかり合うさまを見て、そんなことを思った。

 今朝の12宮会議のあと、午後一時を回ったころのことである。

 照りつける太陽が肌を突き刺し、バトルフィールドで槍と槍とぶつけ合うスピリットとアルティメットの熱気が、どうしようもないほどに体を火照させる。

 

「こんなに熱いのに、あの二人すごいなあ……」

 

 縁側に腰を下ろしていた私は、うちわを仰ぎながら呟いた。

 もちろんこれは利家とレイセンに向けた言葉であるが、二人はバトルに夢中になっていて気づかない。

 それだけ真剣に打ち込んでいるのだろう。なにせ、今日だけでもう四回もバトルしているのだ。それも、ノンストップで。

 

 対して、開け放たれた座敷の陰に目をやれば、霊夢がカードを広げたままでうたた寝をしているのが見える。

 彼女はたしか、咲夜・リブラ(魔理沙)と一緒に、マグナを監視する役割の『紫の邪神対策チーム』のメンバーに抜擢されたはずだが……。

 まあ、昨晩も遅くまで起きていたようだし、きっと疲れたのだろう。

 優秀なメンバーが揃ったチームだし、少しくらい休ませてあげても問題ないはずだ。

 

 一人で納得し、戦場と化した庭に視線を戻す。

 どうやら、レイセンはなんとか《レオンランサー》を撃破したようだが……。

 

「いいねえ……! やっぱオレとバトルするやつは、これぐらい強くなくっちゃあ面白くねえ! 出てこい! オレの《センゴク・タイガー》!」

 

 利家が叫ぶと、戦場に巨大な火柱が出現する。その内側から聞こえてくるのは、烈火をまといし獣の咆哮。

 利家のキースピリット、《センゴク・タイガー》が姿を現した。

 

「来ましたね! ここからが正念場ですよ、スコーピオンさん!」

『おう!』

 

 キースピリットの登場にも動じないレイセンと、フィールドで歓喜するように牙を剥き出す《スコル・スピア》。まさに強者の余裕だ。

 真夏の太陽と相まって、なんというか、本当に暑苦しい……。

 正直、彼女たちも霊夢のように涼しい場所でカードを広げればいいのに……。とも思うけれど、あれだけ熱心に打ち込んでいるのに、水を差すのは野暮というものだろう。

 それに、レイセンを筆頭にした『青の邪神対策チーム』には、しっかり者のアリエスもいることだし、大事が起きる前に彼女が制してくれるはずだ。

 

 ……というよりも。

 

「ひとの心配より、自分の心配よね……」

 

 それを思い出した瞬間、私は特大のため息とともに、ぐったりと背中を丸めた。

 これからのことを考える必要がある。

 

「あはは、なんだか参ってるねえ、鈴仙」

 

 うなだれた頭をなんとか持ち上げると、白いワンピース姿のアリエスがいた。

 彼女はコップ一杯の水を持って、苦笑の混じった微笑みを浮かべている。

 

 あれ? というか、レイセンのデッキに入っているはずでは……?

 

「まずはスコーピオンだけで試すんだってさ。はい、これ」

 

 眉をひそめる私にコップを渡しながら、アリエスは腰を下ろす。

 涼しい顔をして心を読まないで頂きたい……。

 ますます眉間にシワを寄せる私に、彼女は続けた。

 

「青も緑もはじめて使うもんだから、初めにそれぞれの強みと弱みを把握したいんだって。混色にするのは、そのあとみたい」

「へえ……。レイセンが言ったの?」

「うん。あの子、頑張って色々考えてるみたい」

 

 アリエスは嬉しそうに頬をゆるめた。

 自身の〝使用者〟となるであろうカードバトラーへ、彼女はすでにある程度の信頼を寄せているようだ。

 レイセンは戦国六武将にも認められた強豪であるし、やはり、スピリットたちを惹き付けるなにかがあるのだろう。

 私にはないソレを持っている彼女が、ほんの少しだけ羨ましかった。

 そんなことを考えながら、コップに口をつけていると、ふと。

 

「そういえば鈴仙、レオとなにかあった?」

「げほっ⁉」

 

 飲み込みかけていた水を、あやうく気管支に流し込むところであった。

 激しく咳き込みながら、恨めしくアリエスを見上げる。すると、彼女は「ごめん」と笑って私の背中をさすってくれた。

 確信犯のくせに、力加減がやたら上手だから言い返しづらい……。

私がなんとか呼吸を落ち着けると、それを確認したアリエスが続けた。

 

「水、もう一回飲んでみて」

「ええ……?」

 

 かなり怪しいが、むせが落ち着いてから水分をとるのは正しい対処法だ。

 私は、アリエスがなにを言い出しても動じないよう精神を強く整えてから、コップに注がれた水を改めて口へ流し込む。

 

「……?」

「どう?」

 

 おいしい。

 

 もっと言えば、これまで飲んできた水のなかで一番おいしい気さえする。

 山のつめたい雪解け水を百杯用意して、そのおいしさのすべてをコップ一杯に凝縮したような……。わかりづらいだろうが、そんな水だ。

 とにかくそれくらい、咄嗟に言葉が出てこないほどに、その水は美味しかった。

 

「おいしいでしょ」

「うん。……なにこれ?」

「普通の水だよ。ただし、ボクの魔力をすこしだけ混ぜてある。まだ病み上がりだし、依姫の治癒にほとんど魔力を割いてしまったから、本当に少しだけね」

「アナタの?」

 

 アリエスははにかんで笑った。

 

「癒やしを司る牡羊座の魔力は、水に混ぜて体内に取り込むだけでも効果がある。頭がスッキリしたり、たまった疲れが多少とれたりとかね」

「へえ……」

 

 たしかに、徹夜明けでぼーっとしていた頭が、すこしスッキリした気がする。心なしか体も軽い。

 これ、全部飲んだらどうなるんだ……? 

 気になってコップを凝視する私に、アリエスが続けた。

 

「ぜんぶ飲んでいいよ。キミのために用意したんだから」

「あ、ありがとう……。でも、他のみんなは?」

「あとで順番に。キミが最優先だと思った」

「どうして?」

 

 アリエスは肩をすくめて苦笑する。

 

「キミ、これからレオと一緒に行動するんでしょ?」

「うっ……」

 

 彼のことを思い出して、苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「あはは! その顔、やっぱり脅されたんだ」

「気づいてたの⁉」

「そりゃもう、目が合ったときから」彼女は満面の笑みで肯定した。

 

 12宮会議での一幕。もともとソレに参加する予定のなかった私は、どういうわけか、レオの脅迫を受けて無理やり会議に参加させられたのだ。

 そのとき、唯一目が合ったアリエスに助けを求めたのだが……。

 

「気づいてたなら助けてよ……」

「無理だよ。ヒツジがライオンに勝てると思う?」

「うぐぐ……」

 

 ごもっともである。ウサギだってライオンには勝てない。

 己の非力さゆえに、逆に、本来参加資格のない会議に出席する羽目になったことを考えると、強さとはなんなのかを考えさせられる。

 私は改めてため息を漏らすと、弱りきった声で不安を吐露した。

 

「ほんとーに怖かったんだから……『クソアマ』とか『食われたくなかったら言うこと聞け』とか言われてさぁ……。力は強いし、声も低いし、命の危機を感じたわよ……」

「あはは! わかるわかる!」

 

 なにが面白いのか、アリエスは足をパタパタと揺らして笑い始めた。

 

「こっちは真剣なのよ!」

 

 カッとなって言い返す。私は本気で悩んでいるのだ。

 

「わかってる、わかってるよ。あはは」

 

 ひとしきり笑い尽くした彼女は、「はー」と息を整えてから話を再開した。

 

「レオってさ、怖いところいっぱいあるんだよね。いつも不機嫌そうっていうか、眠たそうな顔してて感情読みづらいし、百獣の王なだけあって馬鹿みたいに強い。それに、なんと言ってもあの声! 本能的に死を悟るってゆーの? 耳元でささやかれるとヤバいよね。ボクも昔は震え上がったもんだよ」

「そ、そうなのよ……。もう従うしかないって理解したわ」

 

 アリエスが共感してくれるせいか、抑え込んでいた不安が次々と溢れてくる。

 実際、あのあと私はレオの命令に黙って従っている。私の属する『捜索チーム』だって、レオの進言で無理やり結成されたものだ。

 

 チームとは言ったものの、メンバーは私のレオの二人しかおらず……。

 

 さらに言うと、このあと二人で行方不明メンバーと未発見の記憶のカードを捜索しに出なければならない……。

 

「はあああぁ……。私、これからどーなるんだろ……」

 

 私は両手で顔を隠して、その場にうなだれた。不安すぎて涙が出そうだ。

 レオのことをよく知らない私は、今ある情報で彼を判断するしかない。

 分かっていることと言えば、彼はひどく寝不足(?)でつねに睡魔に襲われているということと、私が言うことを聞かなければ食い殺しに来るかもしれないということだけだ。

 あと──やけに自信満々で、自分を12宮最強と断言していること。そして、それに見合った実力を持っているらしいということか。

 とにかく色んな意味で、私とは相容れない存在だ。

 

「まあ、不安なのはわかるよ。でもさ──」

 

 そんな悩める私に、アリエスが救いの手を差し伸べた。

 

「レオがキミにそんな態度をとったのには、理由があるはずだよ」

「理由……?」

 

 思わずオウム返しになる。だが、そんなもの考えてみればわかりきっていることで。

 

「それは……最初に出会ったときに、なにかしら逆鱗に触れたんじゃないの。彼の態度に腹を立てて、色々と乱暴なこと言ったし」

 

 土間での一件を思い出して、自責の念にかられる。あのとき私は、なにかしら彼の逆鱗に触れるようなことをしているはずなのだ。

 それこそ、思い当たるフシは沢山あるのだが……。

 

「んーん、それはないと思う」

「へ?」

 

 アリエスのあっさりとした返事に、私は阿呆な声をあげた。

 

「ないって……どうして?」

「だってレオ、怒ってないもん」

「はあ?」

 

 怒ってない?

 

「いや、いやいやいや! こっちは脅迫までされたのよ⁉」

「あんなの、キミを自分と一緒にいさせるための口実だよ。レオはそーゆーの下手くそだから、ああやって強引な手段をとるしかなかったんだと思う」

「……?」

 

 呆気にとられる私に、アリエスは真剣な眼差しで続けた。

 

「いいかい? キツイ言い方になるよ。レオがこうして誰かを側におくとき、大抵の場合そのひとは、ある重大な『欠陥』を抱えているんだ。今でいうと、キミがね。土間でなにを言ったかは知らないけれど、その一件で彼はキミの欠陥に気づいたはずだ」

「重大な……欠陥……?」

 

 ひとすじの汗が、こめかみを伝った。

 私のなかにあるというソレは、ありずぎて判断がつかないのが現状だった。

 

 例えば、なにをやらせても中途半端で、いつも誰かの劣化にしかなれないこと。

 

 あるいは、雑魚のくせに見栄だけは一丁前なこと。

 

 ことが上手くいくとすぐに調子に乗ること。大抵の場合は、あとで痛い目をみる。

 

 他にも、色々あるけれど──。

 

「でも、それがどうして……」

「鈴仙」「ひゅっ」

 

 その声が聞こえた瞬間、私は呼吸することをやめた。

 アリエスも、目を丸くしてうしろを振り向く。私も遅れて背後に目をやると、そこにはやはり彼がいた。

 

「れ、レオ……さん」

 

 ブロンドの髪、白いワイシャツ、深緑色のレザーパンツ。気怠げな瞳で私たちを見下ろす長身の男。

 いつの間にかこちらの背後をとっていた彼は、眠たそうにあくびをしながら呟いた。

 

「なんで敬語なんだよコイツ」

「──ッ⁉」

 

 いきなりダメ出しされて、大きく目を見開いた。

 なにか言ってやりたい気持ちにはなったものの、如何せん呼吸をとめているので言葉が出てこない。

 いや、そうでなくても怖くて言い返せないか……。

 一応、私とレオは二人きりの『チーム』なわけで、つまり、言いかたを変えればパートナーという扱いになるはずなんだけれど……。

 すでに幸先不安しかない。かと言ってなにも言い出せない。

 なんだか虚しくなって、私の視界はぐわんぐわん揺れまくった。

 すると、そんな私を哀れに思ったのか、アリエスがおもむろに立ち上がる。なにか言い返してくれるつもりなのか──。

 

「レオの顔がこわいからじゃない?」

「──……ッ!?!?!?」

 

 面と向かってなんてこと言うんだコイツ⁉

 さっき『ヒツジがライオンに勝てるわけない』なんて言っていたくせに、アリエスは罪悪感とか恐怖心のない満面の笑みで言葉を続ける。

 それどころか……。

 

「もーちょっとさ、こう……表情筋を柔らかくしてー」

「ふ──ッ!?!?!?!?」

 

 まるでお団子でもこねるかのように、彼女はレオのほっぺたをぐにぐにと弄り始めた。

 一方レオは、自分の頬を捏ねくり回すアリエスを相変わらずのダルそうな目でじーっと見つめている。

 

 く、食われる……。アリエスがレオに食われる……。

 

 パニックになり両手をあわあわと震えさせることしか出来ない私をよそに、アリエスはトドメの一撃をレオに食らわせる。

 

「で、こう!」

 

 両手の人差し指で、レオの口角をぐい──っと持ち上げる彼女。

 対して、彼は──。

 

「ひ、ひぇ……」

 

 情けない声が出たが、それくらい気味の悪い光景だった。

 柔らかく吊りあげさせられた口角に対して、目が笑ってない……。

 しかし、それに気づいていないのか、アリエスは満足そうに「よしよし、そんな感じ」と呑気に頷いている。

 

 よくない……。全然よくない……。

 

 私が恐怖に震えていると、レオはおもむろに彼女の指に手を伸ばした。

 あ、さよならアリエス。最初は指からだね……。

 短い付き合いの友人に別れを告げた刹那、レオは、

 

「こうか?」

 

 アリエスにつくられた笑顔を、その両手で固定した。

 

「……???」

 

 はい?

 

「おっけー、少しはマシになったんじゃない?」

 

 レオの両手が彼の頬に添えられたことを確認すると、アリエスは一歩引き下がる。

 

「うーん、目が笑ってないね」

「それはしらん」

 

 無理やり頬を吊りあげているせいで、声がこもって聞こえる。

 そんな彼は、相変わらず不気味にしか見えない表情をそのままに、私の方を向いて言った。

 

「どうだ、少しはマシになったか」

「いや……ぜんぜん……」

 

 思考が追いつかずに、思わず本音が漏れる。

 しまった! と私が口をふさぐと同時に、レオも自らの頬を両手から開放した。

 そして、どことなく残念そうに。

 

「だってさ、アリエス」

「んー、やっぱり目が笑ってないのが良くないね」

「だからしらねーって……」

 

 レオはバツの悪いような表情で頭をかくと、改めて私を向き直した。

 

「オレのなにが怖いのかは知らねーけど、敬語はやめろ。なんかきもい」

「き、きも……」

「言葉遣いにも問題ありだね」

「お前さっきからなんなの……」

 

 自身の言動をことごとく指摘するアリエスに、彼は「はあ」とため息をついた。

 意外と効いているのだろうか……?

 

「……わかった。オレも気をつける。だからさ、敬語はやめてくれ。マジでき……じゃなくて……なんかムズムズする。最初に出会ったときの感じで、いいから」

 

 言葉を探るように会話する彼は、これまでの無神経で強引な雰囲気とは少し違った印象を受けた。

 アリエスの言う通り、本当に怒ってはいないのかもしれない。

 だとすれば、ほんの少しくらい警戒をといても問題はないのだろう。

 

「わ、わかった。じゃあ……レオ。えっと、なんの用事?」

「ああ、出発の準備ができたから、声かけに来た。それだけ」

 

 軽く、唇を噛んだ。

 行方不明の12宮の捜索、そして記憶のカードと十二神皇の回収。それは本来、私が担当するはずのなかった任務なのだ。

 とくに取り柄のない私よりも、適任者は他にいそうなものである。はたして、私なんかに務まる仕事なのだろうか?

 だが、今の私は彼に従うと決めている。強者に服従するのは動物の本能だ。

 拒否することはできない。私は立ち上がって続けた。

 

「私も、準備できてるわ。いつでも行ける」

 

 なんとか笑って返事をする。もちろん空元気。

 

「よし。とりあえず、最初に会わなきゃいけねーやつがいるから、まずはソイツのところに行くぞ」

「わかった」

「鈴仙、ちょっと待って」

 

 レオに続き外へ向かおうとする私の手を、アリエスが掴んだ。

 

「なに?」

「ううん、大したことじゃないんだ。ただ……」

 

 彼女は穏やかな微笑みを浮かべて言った。

 

「きっと大丈夫だよ。とだけ、言っておくね」

「……?」

 

 小首を傾げる私に、アリエスは「いってらっしゃい」と手を振った。

 今の私には、その言葉の意味なんて、さっぱり分からなかった。

 

 

 

 

 問題が山積みの私たちは、利家の進言により、役割を分担することとなった。

 彼の発言と、レイセンを筆頭にした『青の邪神対策チーム』の発足を皮切りに、会議はスムーズに進行した。

 

 チームは大きく分けて六つ。

 

『赤の邪神対策チーム』『青の邪神対策チーム』『魔侯対策チーム』は、読んで字のごとく、それぞれの邪神を討伐するために組まれたチームである。

 どのチームも、各邪神に因縁のあるメンバーで構成されており、様々な感情や思惑をはらんでいることもあってか、各陣やる気が漲っている様子がうかがえた。

 

 対策チームのなかで唯一イレギュラーなのは、『紫の邪神対策チーム』だろう。

 なにせ紫の邪神であるマグナは、博麗霊夢の活躍により早くも囚われの身。本人も今のところ反撃してくる気配がないため、その監視に徹底する役割を担っている。

 構成は、咲夜、霊夢、魔理沙、リブラの四名。粒揃いのメンバーである。

 

 八意師匠とアクエリアス、その他のメンバーで構成されたのが『支援担当チーム』。

 こちらも読んで字のごとく、戦場に赴く戦士たちの生活支援・体調管理などを行い、全面的にバックアップする役割のチームであり……できれば、私もそこに収まりたかった。

 師匠の指示に従っていれば間違いないのだから。なんて、嘆いても仕方ないが。

 

 さて。そんな私が所属することになってしまったのは、レオ率いる『捜索チーム』だ。

 このチームの役割は多岐にわたる。

 行方不明の12宮の捜索、未発見の記憶のカードと十二神皇の回収、そして、未だ存在が確認されていない『緑の邪神』の発見などなど……。

 

 

「……なんか、私たちだけ仕事多くない?」

 

 竹林を抜けて、人間の里に向かう田舎道を通るさなか、私はレオに問いかけた。

 夏の日差しで乾ききった砂利道の隅には、里に向かって用水路が走る。

 体中の水分が蒸発してしまいそうな猛暑日にも関わらず、となりを歩くレオは涼しげな表情で言った。

 

「いわゆる〝その他もろもろ〟を請け負うチームだからな」

 

 頭のうしろで腕組して、なんでもないことのように大きく欠伸をする。

 このチームは、会議の中でレオ自身が考案して結成されたものなのだが、当の本人にはやる気があるのかないのか、その辺の判断は相変わらず出来ない。

 飄々とした彼の態度に惑わされながらも、私は言葉を返す。

 

「でも、仕事量と人数がつり合ってないような気が……」

「他のチームと違って、オレたちには明確な〝脅威〟がないんだよ。強いて言えば緑の邪神の存在だけど……」

「み、緑の邪神……」

「心配すんなよ」

 

 そこはオレの出番だろ、とレオはサムズアップする。未発見の脅威に対してすら、その自信を貫けるのは本当に羨ましい。

 

「それに、行方不明のメンバーを探すって言っただろ。ソイツら見つけたら、このチームに取り込んでやればいい。そのためにまず、人間の里ってとこに向かってんだ」

「行方不明のメンバー……」

 

 私は、指を一本ずつ立てながら、会議で名前の挙がった〝捜索対象〟たちの氏名を陳列していった。

 

「キャンサー、ジェミニ、ヴァルゴだっけ」

 

 それぞれ、蟹座、双子座、乙女座だ。

 いずれも、私にとっては未知の12宮である。レオいわく、この中の誰かが人間の里にいるということらしい。

 

「そーだな。けど、キャンサーは心配しなくても自分で合流する。だから、オレたちが探さなきゃいけねーのは残りの二人だ」

「わかるの?」

「あのジジイは耳がいいんだよ。だから、ピオーズが一声かければすぐ飛んでくる。この会話もどっかで盗み聞きしてるかもしれねーな」

「そ、そうなんだ……」

 

 それはそれで心配だが……。

 ただ、キャンサーについては、華扇が口にしていた言葉を覚えている。

 

 ──彼なら話を聞いてくれるんじゃないかと思って。

 

 彼女はそう言って、キャンサーを探しに出ていったのだ。ならば、キャンサーについては彼女を信じて任せればいい。

 そう納得した私は、話をもとに戻す。

 

「じゃあ、残りの二人は、発見さえできれば協力してくれるってことでいいの?」

「……」

 

 突然、レオが黙りこくった。相変わらずの仏頂面で。

 

「え?」

「いや、ジェミニはいいけどさ。ちょっと頑固なところはあるけど、話せば聞いてくれるだろーし、なにより好戦的なヤツじゃないからな。ただ……」

 

 問題はヴァルゴだ。レオは立ち止まって私を見つめた。

 

「な……なに?」

「正直、アイツはお前次第としか言いようがない」

「へっ⁉」

 

 彼の思わぬ回答に、私の肩が跳ね上がる。

 

「ど、ど、ど、どうして⁉」

「素直にひとの言うこと聞くようなヤツじゃねーんだよ、あのクソアマ。それに、オレとアイツはどーもウマが合わない」

「そ、それと私になんの関係が……?」

「んなもん、決まってんだろ」

 

 瞬間──真夏だと言うのに全身を寒気が駆け巡り、私は眉をしかめた。

 気のせいだろうか? 

 仏頂面のレオが、ほんのわずかに口角を吊りあげた気がして……。

 なにかやばい、と思って一歩引き下がったころには、時すでに遅し。

 

「今からソイツに会いに行く。鈴仙、お前がヴァルゴを説得しろ」

「っ──……」

 

 

 それからしばらく、記憶がない。

 

 レオが、ヴァルゴという人物について教えてくれたような気もするけれど、それどころじゃないくらいに頭がいっぱいで、なにも覚えていない。

 

 ──お前次第としか言いようがない。

 

 彼の言葉が、ぐわんぐわんと頭を駆け巡っていたのだ。

 レオをして「素直にひとの言うことを聞くようなやつじゃない」と言わしめる、乙女座の12宮。

 その人物を、私なんかが説得して、仲間に迎え入れる?

 無理だ。私にそんな話術はない。会話療法なら輝夜様が適任だ。彼女のほうが私の何倍も話術に優れている。私なんかじゃなくて輝夜様を連れてくればよかったのに……。

 異変の黒幕をあぶり出し、対抗するためには、12宮の集合は不可欠。乙女座の説得は超重要な任務のはずなのに。

 本当に、レオはイジワルだ。

 ただひたすら、そんな考えばかりが脳内を支配していた。

 ただ、気がついたときには人間たちの喧騒が遠くに聞こえてきて、ああ、もうすぐ里につくんだな。と理解することができた。

 

「うあっ……」

 

 慌てて、ポケットに丸めて突っ込んでいたベレー帽を取り出し、兎耳を隠すようにしてかぶる。

 人里に妖怪がいることがわかれば、それだけで問題になってしまう。

 騒ぎを起こさないようにと努めるだけの精神力が残っていたことは、私にとって唯一の救いだった。

 

「あっ……れ、レオ?」

 

 慌てて顔を上げる。

 相当ノロノロ歩いていた気がするけれど、レオの背中は私の目の前にあった。

 歩調を合わせてくれていたのだろうか。だとしたら、イジワルなのか親切なのか、なんだか判断に困ってしまう。

 いや、違うか。

 私を逃さないように貼り付いてるだけ、というのが正解だろう。

 彼はイジワルだから。

 

「もーすぐだぞ」

 

 私があれこれ考えているうちに、レオがこちらを一瞥して言った。

 もうすぐ、がなにを意味しているかは、推して知るべし。体がこわばり、キリキリとお腹が痛んだ。説得するのはいいが、もっと具体的な方法を教えて欲しいところだ。

 人里と外とを繋ぐ八脚門をくぐり、人間のテリトリーへと侵入していく。

 

「アクエリアスからの情報だと、昼過ぎに突然、ヴァルゴのそばに置いていた分身体が消滅したらしい」

 

 どんどん先へ進みながら、レオはそう説明する。

 アクエリアスの分身体とは、〝ヴァルゴの護衛用〟と〝仲間の捜索用〟に用意された、その名の通り、彼を形どった分身だ。

 それらすべてはヴァルゴの能力で創られたもの、らしいのだけれど……。

 

「消えたって、どういうこと……?」

「ヴァルゴが消したんだよ。分身体はアイツの魔力で動いているから、ヴァルゴがエネルギーの供給を止めちまえばすぐに消滅する」

「邪神とかに襲われた可能性は……」

「可能性としちゃーなくはないけど、場所が場所だったからな。だからアクエリアスは、『ヴァルゴ様がご自分で消されたのでしょう』って」

「場所……?」

 

 わざわざ、自分を守ってくれるナイトを引き離す必要がある場所……?

 私が首を傾げていると、レオが立ち止まった。

 

「ここだな」

 

 彼が指差す先を見つめれば、そこにあるのは一件の古びた木造住宅。

 

「甘味処……〝天露掬(てんろすくい)〟……?」

 

 私は口をぽかーんと開けた。

 天露掬は、里でもそれなりに人気のある甘味処である。

 羊羹やお団子、お汁粉といった甘みの数々はもちろんのこと、甘ったるくなったお口をリセットしてくれる軽食(椀子うどんとか味噌汁とか)も中々に美味しいと評判だ。

 じつは私も、里へ薬の交換に出向いた際にはこっそり寄っていくことがある。

 お値段もかなり良心的なので、お小遣いの少ない私でも無理なく買えてしまうのがまた魅力的。まさに庶民に愛されるお店というわけだ。

 ただ、今回はべつに甘みとか軽食をいただきに来たわけではないので……。

 

「あの……レオ?」

「ああ、ここだ。間違いねえ」

 

 犬みたいに鼻をスンスン動かしながら、レオは言った。

 

「かなり濃い〝魔力〟の匂いがする。ヴァルゴで間違いない」

「え?」

 

 私は目と耳を疑った。

 ここに乙女座の12宮が? まるでイメージが湧いてこない。

 失礼ながら、ここは『庶民の味方』というイメージのお店であって、ハッキリいってオシャレさや神々しさとは程遠い場所だ。

 仮にも〝女神〟である乙女座の12宮が、わざわざここを羽休めの場所に選ぶものだろうか?

 店主に失礼極まりない疑念をふくらませる私をよそに、レオは続ける。

 

「分身体が消えたのも納得だな。自分の食事を見られたくなかったわけだ」

「そう……なの?」

「まあ、見ればわかるだろ」

 

 入るぞ。なんの躊躇いもなく暖簾をくぐろうとするレオを、私は咄嗟に引き止めた。

 

「ま、まって!」

「なに?」

「その……こ、心の準備が……」

「……」

 

 レオが静かになったのを見て、神経がこわばる。

 どうせ言っても無駄だろう。

 だが、すでに自分の無力さを嫌というほど思い知ってきた私には、どうしてもこれが最善だとしか思えなかった。

 

「や、やっぱり無理……! ごめんなさい!」

 

 とにかくありのままを伝えて、深々と頭を下げる。

 お願いだ、わかってくれ。

 こんな小心者のウサギに、そんな重要な任務を預けるのは無謀なんだと、理解してほしい。

 

 自分でなにかを考え、責任をもって行動する。そういうのが一番無理なのだ。

 

 例えレオとヴァルゴが相性最悪だったとしても、こんな私よりはマシだ。

 私は天に祈るように、恐る恐る顔を上げた。

 

 すると──。

 

「あっそ。じゃーいいよ、オレがやるから」

「へ?」

 

 意外すぎるあっさりとした返事に、私はまた阿呆な声を漏らした。

 レオが、暖簾の奥へと姿を消していく……。

 

 あ、それでいいんだー……ふーん……。

 

 ──いやいやいや!

 

「えっ、あの、あの⁉ ちょっと待って!」

 

 レオのあとを追って、大慌てで甘味処へ駆け込んでいく。

 私、ものすごーく真剣だったつもりなんだけど……。

 出会って半日程度だが、私はすでに、レオを理解することを諦めかけていた。

 

 

 

 

「うあ……」

 

 店内の異様な雰囲気を感じ取り、そんな声が漏れた。

 古びた外観に反してそれなりに人気のお店なので、店の中にはいつもどおり、年齢も性別もバラバラのお客の姿が散見される。

 奇妙なのは、そのお客たちがちりぢりになって、壁際の席に座っていること。そして全員が、店の奥にあるカウンター席に視線を集中させているということだ。

 

 奇異の目でそれを見つめるもの。

 

 畏怖の目でそれを見るもの。

 

 あるいは、愛でるようにそれを見守るもの。

 

 里の甘いもの好きたちの視線を総なめにしているのは、小柄な女の子だった。

 肩甲骨まで伸びた美しい白銀の髪、白を基調とした制服、黒のミニスカート。

 肩に巻き付く白いマントも相まって、私の脳裏には『少女騎士』という単語が浮かび上がった。

 

 ただ異常だったのは、彼女の席に乱雑に積み上げられた木皿の数々である。

 

 一心不乱にという他ない様子で、少女が甘味を平らげていく。

 華奢な体躯とはあまりにもかけ離れた食欲に、私の顔は思わず引き攣った。

 

「お……お嬢ちゃん、よく食べるねえ~」

 

 男性客の一人が、そろりそろりと少女に近づく。

 

「甘いもの、好きなのかい……? 近くにもっといい店がある。よかったら、オレと一緒に遊びに行かないか?」

 

 ニヤついていて、しかしどこか恐怖心を孕んだ笑顔だった。

 異常な雰囲気に威圧されながらも、ナンパ根性が出たのだろう。彼女の愛らしい容姿には抗いきれなかったと見える。

 野良犬にでも近づくような姿勢で、彼は一歩ずつ、少女に歩み寄っていく。

 すると、彼女は男性客を一瞥し……。

 

「あ?」

「ひッ⁉」

 

 瞬間、男性客は跳ねるように店から逃げ出していった。

 

「な、なにあれ……?」

 

 私も、反射的に一歩後ずさる。

 たったひと言……それも、表情は見えなかったけれど、凄まじい威圧感だった。

 マグマのように怒りを溜め込んだ、ヤンキーという表現がよく似合いそうな声。

 それをきっかけに、他のお客たちも、私たちの脇を通って足早に店を去っていく。ここにいるのは危険と判断したのだろう。

 正直、私も逃げたいのだけれど……。

 

「あ、あれがヴァルゴ……?」一応、確認のために。

「おう、間違いないな」

 

 嘘でしょ……。

 なんというか、乙女座って、もっとおしとやかな淑女を想像していたのだけれど……。

 あ、やばい。なんか緊張で吐きそう……。

 

「まあ見てろ」

 

 彼に待機するよう促された私は、お店の隅でギリギリまで気配を隠すよう努めた。ここで命を失うのはさすがに惜しい。

 

「おい、ヴァルゴ」

 

 対して、レオは堂々と彼女に歩み寄っていく。

 すると彼女は、今まさに三色団子を口へ運ぼうとしていた手を止め、彼を振り返った。

 

「ちっ」

 

 うわぁ、レオの存在を認識してから0.1秒くらいで舌打ちしてきた……。

 

 しかも、見てみればけっこうな童顔であり、切れ長の大きな目は翡翠のように輝いている。美しくもかわいらしいだけに、尚更もったいない。

 レオはとくに動じていないようで、かまわず言葉を続けた。

 

「久しぶりの再会なのにつめてーやつ」

「アンタ、レオでしょ? それじゃあ出会えても嬉しくないわね」

 

 そう吐き捨てて、三色団子を全部いっぺんに口の中へ抱え込む。

 頬いっぱいに詰め込まれたソレを、ゆっくり、ゆっくり咀嚼しながら、彼女はまたレオを睨みつけた。

 会話をする意思はない……と、そういうことだろうか? 久しぶりに仲間と再会したというのに、これではたしかに冷たい気がする。

 なるほど。レオの言ったとおり、素直にひとの話を聞くような人物ではなさそうだ。

 

「あっそ。じゃあいいや、手短に要件だけ伝える」

 

 レオが切り替える。表情一つ動かさないのは、率直にスゴいと思った。

 

「オレたちと一緒に来てほしい。邪神の脅威から互いの身を守るためにも。そして、未発見の記憶のカードと十二神皇を発見し、いずれは黒幕の正体をあぶり出すためにも」

「……」

 

 ふんっ。ヴァルゴは鼻で笑うと、口に含んでいた団子を一気に飲み込んだ。

 

「まだそんなところで足踏みをしていたとはね」

 

 彼を嘲るように、眉を寄せる。

 

「黒幕なんて、おおよそ見当がついてるでしょうに」

「……なに?」

 

 レオの表情が僅かに歪んだ。そして、私も。

 

 ──黒幕に、心当たりがある?

 

 あまりにも平然と放たれた言葉に、私たちは困惑していた。

 

「どーゆーことだ?」

「言葉通りの意味よ。私はとっくに黒幕の正体に気づきかけてる。そして、ソイツが勝てる見込みのある相手じゃないということにもね」

 

 ──勝てる見込みがない? どういうこと?

 

「くわしく。オレたちと一緒に来て、みんなにも説明してくれ」

 

 レオの「オレたち」という発言を受けて、ヴァルゴが私を一瞥する。

 

「……パートナーを捕まえたのね。アナタらしくもない」

「話を逸らさないでほしい。オレたちと一緒に来てくれるか?」

「イヤよ。私はこれから大切な用事があるの」

「用事?」

「そう。とってもとっても、と──っても大切な用事がある」

「それは、争いを止めるよりも大切なことか?」

「当たり前でしょ?」

 

 ヴァルゴは力強く言い切った。

 

「むしろ、これ以上に大切な用事なんてないわ」

「それはいつ終わる?」

「今日の黄昏時。それ以前でも以降でもなく、黄昏時の間にきっちり終わらせる」

 

 真剣な表情で告げる。その瞳は、どこか覚悟を帯びているように見えた。

 

「それは、オレたちが一緒にいたら出来ないことか?」

「……できない」

 

 一瞬、ヴァルゴが返事をためらった。その隙きを見逃すことなく、レオが続ける。

 

「用事って、なんだ?」

「……」

「具体的な内容を教えてもらえると助かる。これ以上すれ違うことはだけは避けたいからできる限り同行したい。危険だから単独行動もやめてほしい」

「……ちっ」

 

 また舌打ち。

 レオは構うことなく要件のみを伝えていくが……。

 

「お前の用事は──」

「しつこい!」

 

 ガタンっ! と椅子を蹴飛ばしながら、ヴァルゴが立ち上がった。

 私は思わず小さな悲鳴を零す。

 

「アンタは無神経にひとの心を踏み荒らしていくから嫌いなのよ。私にかまわないでと言っているのがわからないの?」

「オレも。お前のそーゆー喧嘩っ早いとこ、きらいだ。オレたちがお前を心配していることがわからないのか?」

「あ? やんの?」

 

 メンチを切る彼女。小柄な体躯ゆえにレオを見上げる形になっているにもかかわらず、その瞳にはものすごい迫力があった。

 同じく女性の12宮であるアリエスとはひとが違いすぎる。

 ハッキリ言って、怖い。やはり私が説得するには無理のある相手だったと悟った。

 

「ちょ、ちょっとお客さん困りますよ! これ以上騒ぎを起こされちゃあ……!」

「うるさい‼」

「ひいぃっ⁉」

 

 丸顔の、いかにもひとの良さそうな店主がケンカの仲裁に入るが、健闘むなしくヴァルゴに一蹴されてしまう(物理的には蹴っていないので安心して欲しい)。

 しかしだ。ここまで来ると、レオの強さにも視線を奪われる。

 あれだけヴァルゴに威嚇されているにも関わらず、未だに表情が動かないのだ。

 まさに強者の余裕。羨ましい限りで、嫉妬心にすら駆られてくる。

 

「もういちど言う。ヴァルゴ、オレたちと一緒に来い」

「いやだ」

「どうしてもか」

「絶対に、イヤ」

「……」

 

 中々譲らないヴァルゴと瞬きすらせずにらみ合いを続けるレオ。

 両者、一歩も引き下がる気配がない。

 息の詰まる光景。私の手にも思わず力が入る。

 

 だが──。

 

「はあ~~~っ」

 

 不意に聞こえてきたのは、ため息だった。

 睨み合っていたヴァルゴから視線を反らし、レオが大きくため息をついていた。

 その表情からは「やれやれ」と言わんばかりの……呆れのだろうか。どこか疲れのような感情が見てとれた。

 

「……なによ?」

「わかった。オレはおりる」

「え⁉」私は目を見開いた。

「……?」

 

 ヴァルゴも不可思議なものを見るように眉を潜めている。

 

「今日は……やけに素直ね……? いつもはもっとしつこいのに……」

「まあ、無理なもんは無理だからな。オレだって諦めるときは素直に諦める。適材適所なんて言葉もあるくらいだし……。アレだ、オレは12宮で最強だけど、お前を説得するには力及ばずだったってことだ」

「……???」

 

 レオの〝らしくない〟発言に、ヴァルゴも困惑しているらしい。

 しかしだ。私には、そんな彼の発言に込められた意図が分かりかけてしまった。

 

「え……あの……レオ、ちょっと待って」

 

 最悪のケースが脳裏をかすめ、レオに駆け寄ろうとする。

 しかし、当然ながら彼がそれを待ってくれるわけもなく。

 

「選手交代だ。鈴仙、あとは〝任せる〟」

「──っ⁉」

 

 彼は振り返って言った。

 その言葉を聞いた瞬間、私の足がピタっ──と止まる。

 思考も止まる。頭が真っ白になる。

 

 白。

 

 真っ白。

 

 ただひと言、頭の中に響いてくる言葉は──。

 

 あとは、〝まかせる〟?

 

「む、無理……!」

 

 振り絞って、出てきた言葉はやっぱりこれだった。

 

「オレも無理だった。あとはお前しかいない」

 

 レオが歩み寄ってくる。

 

「あ、アナタですら無理だったのよ? 私なんかにできるわけない」

「オレですら、じゃない。『オレはダメだった』と言え」

「なにも違わないじゃない!」

「ちがう。まったく意味がちがう」

「同じよ! だいたい、アナタさっき『オレがやる』って──」

「あとお前、『私なんか』って言うのやめろ。ウザい」

「う、うざ──⁉」

 

 あまつさえ私の発言を無視しておいて、なんて言い草だろう。

 これには流石の私もカチンときて──。

 

「そんなこと言ったら! アナタのそういう無神経なところだって、ものすっごく腹が立つんだけど!」

「そりゃ悪かった。オレもお前がウジウジしてるのに腹を立てていたんだ」

「はあ⁉ 誰がウジウジしてるって⁉」

「だから、お前だって」

「私はウジウジなんかしてないわよ! 身の丈に合わないことをしたくないだけ!」

「それをウジウジしてるって言うんじゃねーの?」

「言わない! アナタだって赤ん坊にダンベル持ち上げろなんて言わないでしょ⁉」

「いわねーけど、お前はダンベル持ち上げれるだろ?」

「できるけど! そういうことじゃなくて!」

「逆に聞きたいんだけど、お前はなにがそんなに不安なんだ?」

「そんなの──」

 

 そして、私はハッとなった。

 

 ──なにがそんなに不安なんだ?

 

「……」

 

 返す言葉が出てこなくなり、途端に黙りこくってしまう。

 彼の気怠げな瞳と視線を交わらせたまま、私は考える。

 なにが、不安なんだ?

 

 恐怖に打ち負けて、月面戦争から逃げ出して。

 それで、自分の無力を思い知って。

 

 戦国六武将に選んでもらえず、それっぽい言葉を並べてレイセンに全部押し付けて。

 それで、自分が無能だと気づいてしまって。

 

 依姫様に惨敗して、チャンピオンシップに予選敗退して。

 それで、身の丈に合わないことを、したくなくなって……。

 

 私は……?

 

「ケンカなら他所でやってもらえる?」

 

 睨み合う私たちの間に、ヴァルゴが割って入った。如何にも「迷惑なんだけど」と言いたげな顔をしている。

 はたして、彼女はやれやれとため息をついた。すると今度は、吟味するように私をじろりと見つめてくる。

 

「な……なんですか」

「アナタ、コイツのパートナー? だったらご苦労さまね」

 

 彼女は肩をすくめると、まるで同情するかのように苦笑した。

 パートナーという表現にはいささか疑問を感じるが、それよりも。

 

「無神経よね、コイツ。ひとの事情とかなにも考えてないもん」

 

 その表情に、若干の優しさが垣間見えたのは意外だった。レオのときと比べて「話が通じそう」という印象を受ける。

 

「そっ……」

 

 優しさに甘えて、「そうなんですよ」と同調しかけた、そのときだった。

 

 私の脳裏に閃くものがあった。

 

 今、私とヴァルゴには『レオに腹を立てている』という共通点がある。

 これを活かさない手はないのではないか?

 

「そう……ですよね。ヴァルゴさん、でしたっけ。アナタから見ても、彼はずっとあんな調子なんですか?」

「そうね。私たちは記憶をなくしてるから、ソレ以前のことは分からないけれど」

「それは大変でしたね……」

「ほんとね。ピオーズたちもよく付き合ってやれるなって関心するわ」

「なんかひでー言われようだな……」

 

 不満げに呟くレオを見て、ヴァルゴがニンマリと笑う。

 勝ち誇ったような笑み。

 ここまで見られなかった彼女の表情を見て……。

 

──いけるかもしれない。

 

 私の〝スイッチ〟が入った。

 掴めるかもしれない。彼女の性格の本質を。

 

「ピオーズですか。彼もずいぶん温和なひとですよね。レオが会議をサボタージュしたってひと言も怒らないんですから」

「ああいうのを甘いとも言うけどね」

「同感です。ちなみに、ピオーズさんも以前から……?」

「私の知る限りはね。アイツ、チームの輪を人一倍大切にしてるから……。まあ、そのせいでときどき怖いんだけど」

「こわい?」

「そうそう、たまーに私が〝冗談〟を言うとね、すっごく怒るのよ。そのときの目がもう怖いのなんのって」

 

 クスクスと笑いながら、「アレは私が悪いんだけどね」とフォローを入れる。

 

「お前のアレは冗談に聞こえないのが悪い」

「うっさいわね。アンタは黙ってなさい」

 

 ……変えた。

 

 さっきまで理性的に会話していた彼女が、レオに声をかけられた瞬間、また最初の暴力的な口調に戻ってしまった。

 急いで、しかし焦ることなく会話をもとに戻さなければいけない。

 

「あの、ヴァルゴさん」

「あら、ごめんなさい。えーっと……」

「鈴仙です。私の名前は鈴仙・優曇華院・イナバと言います」

「鈴仙ね。うん、覚えた。それで、なんだっけ?」

「冗談が通じないと辛いよねって話です。私もよくお師匠様に怒られるので……」

 

 相手に気を遣わせないように、バカっぽくにへらと笑う。頭の後ろを掻くというアクションをつけることで、リアリティを持たせたつもりだ。

 

「ねー、ほんともう大変。あーでも、カプリコーン……じゃないわね。あのクソ野郎にも言われたのよ、『殺意が剥き出しすぎる』って。」

「かお、怖くなっちゃう感じですか?」

 

 聞くまでもない。レオと会話しているときのヴァルゴは死ぬほど怖かった。

 というか、今もしれっと「クソ野郎」って言ってたし……。

 

「らしいわ。ふとした瞬間に出ちゃってるらしくてねえ。本当は早急になおしたいのだけれど、全然ダメ……」

「なおしたい? なにか不便なことでもあるんですか?」

「ええ、ちょっと大切な用事があるから……」

 

 言いかけて、ヴァルゴは「あっ」と声を漏らした。

 慌てた様子で口を塞ぎ、訴えるように私を見つめる。見てみれば、頬のあたりがほんのり赤く染まっていた。

 

 ──ん?

 

 顔が怖くなってしまうことと、

 

 その悪癖をなおしたいことと、

 

 このあと控えているという大切な用事。

 

 そして、赤く染まった頬……。

 

「……え、ヴァルゴさん用事ってもしかして」

「うわーっ⁉ だめだめだめだめだめ‼」「はぷっ⁉」

 

 口を押さえられた私は、攫われるように店の外へと連れ出されてしまった。

 道行く人々の視線が若干気になるが、まだ許容範囲内だ。

 

「あ……あぶなかった……」

「はほ、ふぉふひふぁんふぇふはふぁふふぉふぁん」

 

 口を押さえられているので上手く喋れない。

 ちなみにこれは「あの、どうしたんですかヴァルゴさん」と言っている。正直期待していなかったけれど、どうやら彼女には普通に通じたようで。

 

「どうしたじゃないわよ! なんてこと言うの! もう!」

 

 そう言って、手を放す。

 

「私まだなにも言ってませんよ⁉」

「う……⁉」

 

 ヴァルゴは目を見開いた。奥歯を噛み締めているのか、口角がよくわからない形に歪んでいる。

 なにも言っていないとは言ったけれど、どうも図星らしい。

 墓穴をほって頭を抱えているヴァルゴを見れば、それは一目瞭然である。

 

「うう……やってしまったわ……。〝女の子〟だからと……うっかり口を滑らせてしまうだなんて……」

 

 またひとつ理解できた。ひと言あれば十分だ。

 

「レオとの態度の差は、そういうことだったんですね」

「……」

 

 恨めしそうに頬をふくらませたのは、肯定という意味で受け取っておく。

 なんにせよ、わかった。

 ヴァルゴの凶暴な一面は、男性に対してのみ出てしまう悪癖らしい。単に男性が苦手なのか、過去にトラウマでもあるのか、はたまた別の理由か……。

 その辺は、これから判断するとして。

 

「大丈夫ですよ、レオさんには言いません」

「……」

「一応、確認するんですけど……気になる相手が?」

「…………いる」

「やっぱり」

 

 思わず微笑みがこぼれた。頬を真っ赤に染める彼女の、なんと可愛らしいこと。

 

「じゃあ、このあと控えている用事というのも……」

「呼ばれたのよ、ソイツに。……あっちから呼び出してくるなんて、初めてだわ」

 

 アクエリアスが受け取ってきたという手紙を、ヴァルゴは控えめに差し出した。

 

 

〝十五夜の月が上る日、誰そ彼時に、霧の湖でキミを待つ〟

 

 

 手紙には、極めて流暢な筆跡で〝Gemini〟と銘打たれている。どうやら彼女を呼び出したのは、双子座の12宮・ジェミニらしい。

 

 十五夜の月が上るのは今日。

 それも、指定された時刻は誰そ彼時。

 

 私が真っ先に連想したのは、『黄昏時効果』だ。

 ひとの思考や判断能力は、夕方になると疲労や周囲の暗さなどが相まって低下するとされている。これを黄昏時効果という。

 それを利用して、黄昏時に告白すると成功しやすくなる──というのが、黄昏時効果を使った恋愛のテクニックだ。

 

「えーっ! 黄昏時って……じゃあじゃあ、もしかして告白されちゃったりとか?」

「ええい! 知らないわよそんなもん! 黄昏時効果がなによ! 私の頭は夕方になってもバッチリ覚めてるんだから!」

 

 わざと大げさに反応してやると、ヴァルゴはかわいらしく手を払い、言葉を遮ろうと必死になる。

 どうやら黄昏時効果についてもご存知のようで。

 しかし、なんだ。理解してしまえば、なんてことはないじゃないか。

 最初こそ、凶暴なヤンキーだと誤解していた乙女座の12宮。そんな彼女も蓋を開けてみれば、ひとりの恋する乙女に過ぎなかったというわけだ。

 そろそろいいだろう。そう思った私は説得に入る。

 

〝行ける流れ〟だ。

 

「あの……本当に、差し支えなければでいいんですけど、その告白の瞬間を見守らせてもらうことは出来ませんか?」

「こっ──⁉」

 

 見る見るうちに、ヴァルゴの顔が真っ赤になっていく。真夏だというのに、彼女の両手は氷の上にいるかのように震え上がっていた。

 

「じょ、じょじょっじょお、冗談じゃないわよ! っていうか、誰が告白なんか!」

「アナタからしなくても、向こうからしてくるかもしれませんよね?」

「んっ⁉」

 

 という話は、さっきしたはずなのだけれど……。

 

「そっ……ないないないないないない……いや……でもそうだとしたらふつうにうれしいいやでもそんないやいやべつにわたしそんなじゃないしいやいやいやいやでもそうよねきゅうによびだすなんていままでなかったのにあのこそういうことなのいやでも……」

 

 面白いくらいに早口。しかも小声。聞き取るのも精一杯である。

 畳み掛けるなら今がチャンスだ。

 

「まあ、告白云々が私たちの思い込みという可能性もありますけど……。ただ、ハッキリ言って、ヴァルゴさんがその調子だと私まで不安になっちゃいます」

「えっ」

「もう十分思考能力が落ちているとは思いませんか? 食べすぎて、お腹に血液が集中しているせいでしょうか」

「はあ⁉ いや、わ、私の能力は魔力の燃費が悪いのよ! めっちゃくちゃお腹すくのよ⁉ アクエリアスの分身を二体も創って、もうお腹と背中がくっつくかと思ったんだから!」

 

 私は悪くない! と、ヴァルゴは拳を握りしめた。

 あのドカ食いにはそんな理由が。なるほど。

 

「黄昏時までそれほど時間もありませんし、このまま一人でいくのは色んな意味で危険だと思います。レオの肩を持つわけじゃないですけど、邪神に襲われる可能性だってあるんですよ。そうなったら告白どころじゃありません」

「っ……! っう……!」

 

 頭を抱えて悶える彼女。ついに「告白」というワードを否定しなくなってきた。

 これには私もしめしめとほくそ笑む……。

 

 ──そのときだった。

 

 彼女の手の震えが、ピタリと止まる。

 何事かと思い、眉を寄せる。すると、彼女はゆっくり顔を上げて、しっかりとこちらを見据えた。

 

 その目は──。

 

「ひっ⁉」

 

 レオに見せていた、あの目だった。

 

 ヤバい。怒らせた。一歩引き下がって間合いをとる。

 そりゃそうだ、これだけ羞恥心をいじられたら、誰だって理性を失うだろう。

 レオに助けを求められるように、大声を出すための空気を肺に溜め込んでおく。

 また一歩後ずさる。華奢な体躯の女神だが、仮にも12宮の一柱。私なんかが素手で勝てる相手ではないだろう。

 

「勝負よ……!」

「へ……?」

 

 鋭く突きつけられた人差し指は、当然のことだが私を捉えている。

 

「しょ、勝負って……」

「私とバトルしなさい! アナタが勝ったら、私についてくることを許可するわ!」

「バトル……?」

 

 つまり、バトルスピリッツでの対戦ということだ。

 このまま殴りかかってくるものとばかり思っていたので、内心ほっとする。

 

「でも、私が負けたら……?」

「んなもん決まってんでしょ! ついてくんな! レオと一緒に帰れ!」

「で、でも……!」それは困る。ここまでの努力が水の泡だ。

 

 しかし。

 

「いーよいーよ、そうしようぜ」

 

 緊張感のない軽口が聞こえてきて、私は目を見張った。

 

「レオ⁉」いつの間にか店から出ていたようだ。

 

 いや、そんなことはどうでもいい。

 

「なに言ってるの! 負けたら説得が水の泡なのよ⁉」

「いや、すげー進歩だって。話すら聞いてくれなかったのに、バトルでの賭けにまで持ち込んだんだからさ」

 

 あとは勝つだけじゃん。彼はそう言って、私の肩をバンと叩いた。

 

「か、勝つだけって……そんな簡単に」

「なに言ってんだよ。そのためのオレだろーが」

 

 レオは親指で自身の胸を指すと、ヴァルゴを振り向いて言った。

 

「バトルをするのは鈴仙って言ったけど、オレがデッキに入るのは問題ないな?」

「上等じゃない。精々その子の足を引っ張らないようにすることね」

 

 鼻で笑う彼女との間に、一陣の風が舞う。

 こんなの私でも分かる。もう後に引けないところまで来てしまっている。

 

「鈴仙」

 

 レオが言った。

 

「任せたぞ」

 

 私がもっとも苦手な言葉を。

 異変が始まって数週間。図らずも、私は12宮とのバトルを初めて体験することになってしまった。

 

 

 

 

 私とヴァルゴの戦いは、人里から少し外れた林の中で行われることになった。

 

 戦場として使用しているのは、チャンピオンシップの予選で用いられた模擬バトルフィールド。使用感は本物のソレと相違ないが、ライフ減少による身体へのダメージがないことが大きな特徴だ。

 加えて、〝自分たちが今いる場所がバトルフィールドになる〟という特徴もある。どこかの別次元にある、あの薄暗い空間に飛ぶ必要がないので、気分が数倍楽だ。

 これらの特徴はすべて私にとっては大きなメリットなのだが、血気盛んな幻想郷の住民たちには少々物足りなく感じるらしい。

 

 私にはわからない次元の話だ。痛くないから物足りないなどと語っている連中は、彼女の猛攻を食らっても同じことが言えるのだろうか?

 

 ヴァルゴのプレイスタイルはとにかく〝攻め〟だ。

 

 私の先攻で始まったバトルは、序盤からお互いのプレイスタイルの差が如実に表れていた。

《ノーザンベアード》のブロック時効果や、白の防御マジックを使用して守りを固めるばかりの私に対して、ヴァルゴは最初のターンから徹底的にフルアタックの姿勢を取り続けていた。

 主に使用されるのは、《白猿のシャラバ》や《壬の火猿ニーラ》といった低コストのスピリットたちと、手札を切らさないための《夢中漂う桃幻郷》。そこにアクセルやマジックカードを織り交ぜることで、白属性の防御網をするりと抜けてライフを奪う。

 実際、四ターン目にもなれば私は残りライフ二つにまで追い込まれ、ひたすら防戦を強いられる状態になっていた。

 基本的に〝勝ちを確信するまで動かない〟私とは対照的なバトルスタイル。こちらはすでに息が切れかけていたけれど、第六ターンでさらに大きな動きがあった。

 

「轟け! 《申の十二神皇ハヌマーリン》をレベル2で召喚!」

 

 ヴァルゴの詠唱とともに、上空に雷雲が立ち込める。そこから降りてきた巨岩が落雷に打たれると、中から巨大な猿の姿をしたスピリットが出現した。

 

「十二神皇⁉」

 

 私は目を見張った。十二神皇は私とレオの捜索対象のひとつであり、大昔に12宮が自分たちから切り離した〝本来の力の一部〟だ。

《申の十二神皇》がすでにヴァルゴと合流していたのは予想外だ。本来喜ぶべきことなのだが、今の私には立ちはだかる強敵としか認識できない。

 その後、《桃幻郷》の効果でデッキから一枚ドローしたヴァルゴは、すぐさまアタックステップを宣言した。

 

「《ハヌマーリン》でアタック!」

 

 金色の猿が雄叫びをあげる。

 なにか仕掛けてくることは間違いないので、素早く盤面を確認した。

 

 私のフィールドでは、レベル1の《イグア・バギー(RV)》、レベル3の《戦機皇ライドフェンサー》、レベル2の《丁未機グロリアス・ラクーン》が相手の攻撃を見て迎撃態勢をとっている。

 そのうち、《ライドフェンサー》と《グロリアス・ラクーン》は異魔神ブレイヴ《幻魔神》と合体中だ。《ライドフェンサー》は右側、《グロリアス・ラクーン》は左側。白の光線がスピリットとブレイヴを繋ぎ、エネルギーを分け与えている。

 ネクサスやバーストはなく、手札は二枚。ソウルコアは《ライドフェンサー》に置かれている。

 

 一方、ヴァルゴのフィールドではさっき召喚されたレベル2の《ハヌマーリン》が攻撃の真っ最中。あらかじめ展開されていたレベル1の《白猿のシャラバ》二体が後ろから手を叩いてエールを贈っている。ネクサスは《夢中漂う桃幻郷》があり、バーストはなく、手札は四枚。ソウルコアは《ハヌマーリン》が抱えている。

 

 ヴァルゴが自分の手札に触れた。

 

「《ハヌマーリン》の効果! お互いのアタックステップ中、私は手札の【アクセル】をコストを支払わずに使用できる!」

「なっ⁉」

 

 嫌な予感がして身構える。

【アクセル】は、一部のスピリットやブレイヴが持つ能力だ。マジックカードのようにコストを支払うことで、手札からメインまたはフラッシュ効果を発揮する。

 嫌な予感というのは、それらはマジックカード同様にコンボ性が高いことだ。普段は使用コストの観点からある程度リミッターがかけられた状態になっているが、《申の十二神皇》がソレを解除してしまっている。

 

「手札から《猿道士オンコット》の【アクセル】を発揮! このターンの間、私の黄のスピリットすべてに黄のシンボル一つを追加!」

 

 さらに、ヴァルゴは使用した《オンコット》を盤上に叩きつける。

 

「《ハヌマーリン》のさらなる効果! 【アクセル】の効果発揮後、そのスピリットをコストを支払わずに召喚できる!」

 

 不足コストを《白猿のシャラバ》から頂戴し、《猿道士オンコット》がバトルフィールドに現れる。恐ろしいのは、今召喚された《オンコット》にも黄のシンボルが追加されているということ。こんなもの誰だって表情が引き攣るだろう。

 

「まだ続くわよ」

 

 ヴァルゴが不敵な笑みを浮かべる。

 

「フラッシュタイミング! 《甲の猿王スグリーヴァ》の【アクセル】発揮! このターンの間、系統『想獣』を持つ私のスピリットすべては、相手によって破壊されたとき、回復状態でフィールドに残ることができる!」

 

 そして召喚。威厳ある赤顔の大猿が、バトルフィールドに出現する。例によって《シャラバ》からコストを確保しており、二体目の白猿も消滅した。

 

 なるほど、厄介なコンボだ。

 

 最初に使用された《オンコット》がシンボルを増やし、続く《スグリーヴァ》でBPの低いスピリットたちのチャンプアタックを威圧的なものに激変させている。

 

「っ……《イグア・バギー》でブロック!」

 

 事実上の回復を防ぐため、よりBPの低いスピリットを差し向ける。勇んで駆け出した機獣は、ハヌマーリンの剛腕にあっさりと殴り飛ばされ、爆散した。

 

「次は《スグリーヴァ》でアタック!」

 

 間髪入れずに、赤顔の大猿が噴煙の向こうから飛び出してくる。BPは7000。こちらのすべてのスピリットを下回ってしまっている。

 

「《ライドフェンサー》でブロック!」

 

 大猿に立ち向かうのは巨大なロボットだ。背部のブースターから高出力のエネルギーが噴射され、《スグリーヴァ》との距離を一瞬で詰める。

 

「ブロック時効果で、BPプラス5000! さらに、ネクサス《夢中漂う桃幻郷》を手札に戻す!」

「ふーん、BPを上げてしまうのね……」

 

 バウンスされた《桃幻郷》を手札に加えながら、にたりと笑う。言わんとすることがわかるだけに、奥歯を噛みしめるしかない。

 実際、今にフィールドでは《ライドフェンサー》が大猿との取っ組み合いを征してしまっており……。

 

「《スグリーヴァ》の効果で、破壊された『想獣』は回復状態でフィールドに残る」

 

 爆炎の中から、何事もなかったかのように大猿が姿を現した。こちらを挑発しているのか、ニヤついた顔で白い歯を見せつけてくる。

 これには《ライドフェンサー》も後退するしかない。

 

「もう一度、《スグリーヴァ》でアタック!」

 

 ヴァルゴのスピリットが全員ダブルシンボルである以上、残りライフ二つの私に「ライフで受ける」という宣言はできない。

 私は、二枚しかない手札のひとつを切った。

 

「フラッシュタイミング! マジック、《スクランブルブースター》を使用! このバトルの間、私の《ライドフェンサー》は疲労状態でブロックできます!」

 

 マジックカードの恩恵を受けた《ライドフェンサー》が、疲れた身体にムチを打つようにして立ち上がる。

 

「守って! 《ライドフェンサー》!」

 

 彼は大猿の前に立ちはだかった。

 

「無駄よ? だって《ライドフェンサー》は《スグリーヴァ》に勝ってしまう」

「わかってます!」

 

 狙いはそこではない。私はもっと〝先〟に賭けているのだ。

《スグリーヴァ》が《ライドフェンサー》殴り倒され、再び爆散する。当然、自身が放った【アクセル】の効果により、《スグリーヴァ》はフィールドに残るが……。

 

「《スクランブルブースター》の効果! このマジックの効果を受けたスピリットが、BPを比べて相手のスピリットを破壊したので、私はデッキから二枚ドローできます!」

 

 デッキトップから浮かび上がった二枚を手に取る。白属性には貴重なドロー効果だ。

 私の狙いはこっちだったのだが……これは──……?

 

「他にやることがなかったと」ヴァルゴは鼻で笑った。「いいカードは引けたかしら?」

 

 感情を悟らせないために、目つきを鋭くして彼女を睨みつけた。

 

「……いいわね。答えは《スグリーヴァ》に聞いてもらうとしましょう」

 

ヴァルゴがカードを横に倒した。《スグリーヴァ》の三度目の攻撃だ。

 

「……フラッシュ! マジック、《ラークドライブ(RV)》!」

 

 カードを提示すると、上空から雨のように水が降り注いだ。

 身を挺して私を守ってくれた《ライドフェンサー》から、ソウルコアを含む三つのコアを貸してもらい、その効果を読み上げる。

 

「このバトルをただちに終了させ、さらに、コストにソウルコアを使用していたとき、相手のスピリット一体を手札に戻します!《猿道士オンコット》、戦場から去れ!」

 

 雨にやる気を削がれたのか、《スグリーヴァ》が表情を曇らせて歩みを止める。道士服を着た小猿もまた、濡れることを嫌ったのか戦場からそそくさと逃げ出してしまった。

 

「レオのカードね……。いいわ、ターンエンド」

「やっぱり……」

 

 さっきから、《ライドフェンサー》やら《幻魔神》やら、入れた覚えのないカードが紛れ込んでいると思っていたけれど、どうやらレオのカードだったらしい。

 なにはともあれ、お陰でこのターンを凌ぐことは出来た。そして──。

 

「私のターン」

 

 無事にターンが回ってきたことを噛み締めながら、盤面を操作していく。

 

「スタートステップ」

「コアステップ」

「ドローステップ──」

 

 手札に加えたカードを見て、思わず動きが止まった。

 

 ──《獅子星鎧レオブレイヴ》。

 

 レオだ。

 

「今までなにやってたのよ」

 

 カードの姿になった彼に、嫌味を飛ばした。

 正確には、カードは〝窓口とスピーカー〟の役割を果たしているだけであり、彼らはこの窓の〝向こう側にある部屋〟にいるらしいのだけれど。

 

『頃合いを見てたんだよ』

 

 レオの声が聞こえてきた。カードからというよりは、脳内に直接響くような感覚。

 

『つーかお前、マジでぜんぜん攻めねーじゃん。なんなの』

「悪かったわね。〝負けないバトル〟がプレイスタイルなのよ」

『物は言いようだな』

「……どういう意味?」

『だってお前、自分じゃ攻めるタイミングが決めらんねーだけだろ?』

「……は?」

 

 私は眉を寄せた。カードを持つ手にも、自然と力が加わる。

 ひとの数だけプレイスタイルがあり、私の場合はそれが〝負けないバトル〟だったというだけの話なのに、コイツはなにを言い出すのだ。

 アリエスの言う通り、レオは言葉の選び方に難がある。いちいち反応していたら埒が明かないだろう。

 私は下手に追求することを避け、ターンを進めることにした。

 

「リフレッシュステップ」

「メインステップ」

 

 癪に障るが、彼を出すしかない。

 

 ──それに。

 

「……アナタ、私が『自分じゃ攻めるタイミングを決められない』と言ったわね」

『おう』

 

 あっけらかんとした返事が、ますます堪忍袋を刺激してくる。

 いかん。冷静になれ。

 私は頭をぶんぶん横に振り、彼に問いかけた。

 

「じゃあ、アナタなら、いつ攻める?」

『〝今〟』

「……言質とったからね」

 

 それを聞いた私は、安心して手札のカードを盤面に送り出した。

 

「《砲凰機神フェニック・セイザー》をレベル1で召喚!」

 

 フィールドに、鋭利なフォルムをした美しいロボットが舞い降りる。

 

「召喚時効果発揮! 私の手札にあるブレイヴカード一枚を、一コスト支払って召喚することができる!」

「〝一コスト支払って〟……なるほど、来るわね」

 

 彼女の目つきが、より鋭く、より真剣になる。

 アイツが来ると理解したのだろう。

 

「星の光をその身にまとう、凶暴凶悪な百獣の王! 《獅子星鎧レオブレイヴ》召喚!」

 

 フィールドに出現した星雲から、雄叫びを上げてレオが飛び出してくる。細身な人間態と比較してかなり巨体で、全身に武装を施した機械仕掛けの獅子だ。

 

「《ライドフェンサー》と《幻魔神》の合体を解除して、新たに《フェニック・セイザー》を《幻魔神》の右側に合体させる!」

 

 私の後方に鎮座する《幻魔神》とフィールドの《ライドフェンサー》を繋いでいた光線がほどけ、新たに《フェニック・セイザー》へと接続される。

 

「そして、《獅子星鎧レオブレイヴ》を、《戦機皇ライドフェンサー》に合体!」

 

 はるか上空に飛び上がった二体が、複雑な変形合体を経て一つのスピリットになる。もともと巨体だった二体は、合身することでさらに巨大なロボットへと変貌を遂げ、大地を隆起させるほどの勢いで地上に飛来した。

 

 裏12宮合体スピリット──これで、レオが本領を発揮できるようになった。

 

「アタックステップ! 合体スピリットでアタック!」

 

《ライドフェンサー》と《レオブレイヴ》の合体スピリットが、ロケットブーストとともに戦場を駆け抜ける。レベル2の合体時効果でBPプラス5000。合計で16000のダブルシンボル。しかも、ヴァルゴのフィールドにブロッカーはいない。

 

 チャンスだ。

 

 しかし、ヴァルゴはまるで焦る様子もなく、

 

「ライフで受ける」

 

 極めて冷静に、合体スピリットの攻撃をその身に浴びる。

 彼女の前方に二つのバリアが展開され、合体スピリットの攻撃がソレを砕いた。

 あまりに落ち着いている。やはり手札になにかあるのだろう。

 

 しかし──。

 

「《グロリアス・ラクーン》でアタック! 《幻魔神》との合体で、BP9000のダブルシンボルです!」

 

 勇んで次の一手を仕掛ける。とにかく圧力をかけて、次のターンからヴァルゴ側のブロックを誘うつもりだ。そうすれば、《レオブレイヴ》の『相手のスピリットが疲労したとき回復する』効果を発揮することができる。

 なにより、あの冷静さがハッタリという可能性も捨てきれない。レオの言質をとっている以上、攻めに失敗しても責任は半々。いらぬ心配をする必要はなかった。

 

「フラッシュタイミング! 【アクセル】発揮! 《レーシングペンタン》!」

 

 しかし、ヴァルゴが投げたカードがフィールドに展開され、《グロリアス・ラクーン》にビームを発射する。《レーシングペンタン》の【アクセル】効果は、スピリット一体のシンボルを0に固定する強力なものだ。

 しかも《ハヌマーリン》の効果でコストを支払わずに効果を発揮し、フィールドにまで駆けつけてくるのだから厄介極まりない。

 

「……ターンエンド」

 

 力なくへたり込む《グロリアス・ラクーン》を見て、深追いはするまいと決断する。やはり彼女の冷静さはハッタリでなかったのだ。

 

『ふーん……』

 

 レオが唸ったので、反射的に反応する。「なによ?」

 

『いいや、悪くないと思ってさ。やれば出来るじゃん』

「なにそれ」

 

 口が悪いくせに、急にひとを褒めだすのだから意味がわからない。

 

「私のターン」

 

 私がレオを訝しんでいる間にヴァルゴがターンを進め、疲労していたスピリットたちが立ち上がる。

 メインステップになり、彼女はすべてのスピリットが最大レベルになれるようコアを分配した。恵みの雨を受けた獣たちが、歓喜の咆哮をあげる。

 

「……ひとつ、聞いておきたいことがあるわ」

 

 不意に、ヴァルゴがゲームを進める手を止めた。

 

「なんですか?」

「私は言ったわよね。この争いの黒幕に心当たりがあること。そして、それが私たちの力の及ぶ存在ではないことも」

「レオと話していたやつですね」

 

 願ってもないチャンスだった。私も、おそらくレオも、彼女のその発言が引っかかっていたのだから。

 

『ヴァルゴ、オレは今回の争いの黒幕が、カプリコーンに取り憑いているヤツだと考えていた。違うのか?』

 

 好機とばかりにレオの声が響く。

 

「違うでしょうね。あんなの黒幕の手駒にすぎない。将棋の歩兵、チェスのポーンのような存在だと、私は考えてる」

『アイツは邪神の一柱が創った存在だ。黒幕は邪神の中にいると?』

「それも不正解」

 

 ヴァルゴは一瞬うつむいたが、すぐに顔を上げて言った。

 

「おそらく、邪神も私たちと同じ。タダの被害者にすぎない」

『なんでそう言える? オレもお前も、まだ記憶を取り戻していないのに』

「わかるわよ」

 

 どこか自嘲気味に、彼女は笑う。

 

「私はね、記憶を失くしてからずっと調べていたのよ。自分は何者だったんだろうって、不安で、心細くて仕方がなかったから。だから、過去を知りたいって思って。アルティメットと戦争になったときのこと、ピオーズのこと、十二神皇と邪神の争いのこと。全部ぜんぶ調べたのよ。……だから知っているの」

「……」

 

 返す言葉がなかった。記憶を失った恐怖など、当人たちにしか分かるはずがない。

 

「だけど、調べていくうちに違和感に気がついたの」

「違和感……?」

「ええ」

 

 ヴァルゴの表情がますます真剣になる。

 

「永いながい年月をかけて、グランロロから〝積み木のパーツ〟が一本ずつなくなっているということよ」

「積み木の、パーツ?」

 

 私は顔をしかめた。いったいどういう意味なのだろう?

 ヴァルゴは続ける。

 

「最初にアスクレピオーズが失われてからというもの、グランロロは立て続けになにかを失い続けている。邪神も、そして私たちの記憶も、戦争で消えた数多の命もすべて、グランロロが失った、あるいは〝奪われた〟積み木のパーツのひとつ」

『……ヴァルゴ、つまりお前はなにが言いたい?』

 

 レオが結論に迫った。

 

「大いなる存在が、グランロロと幻想郷を崩壊に導いているとしか思えない」

「大いなる存在……?」

 

 ヴァルゴが小さく頷く。

 

「おそらく、なんらかの〝創界神〟が争いの影にいる」

「──……」

 

 瞬間──。異常な寒気が全身を駆け巡った。

 

「っ⁉」

 

 誰かに見られている感覚。とっさに周囲を見渡すが、草木の生い茂る林には人っ子一人見つけられない。

 フィールドのスピリットたちに目をやる。彼らもまた、何者かの気配を感じ取ったかのように首を振っていた。

 

「……グランウォーカー……って?」

 

 恐る恐る、その名を口にする。

 また、誰かに見られている気配があって、頬を汗が伝った。

 

「……話を戻すわ」

 

 ヴァルゴもまた、大粒の汗を額に滴らせている。

 とてつもない気配から逃れたくて、私も無言でうなずいた。すると、誰かの視線は瞬く間に消え去ってしまった。

 

「今のは……」

「〝大いなる存在〟とだけ言っておくわ」

 

 おそらく、ヴァルゴの言っていた《創界神》なる存在だろう。ソレが、この争いの影にあるというのか?

 

 存在を口にすることすら憚られる存在とは、一体なんなのか。

 

「勝ち目はないわよ。アレは、私たちも、邪神も、ダイオリジンやデスピアズにすら超えられない存在。……アナタたち、負け戦をしたいと思う?」

「……それが、アナタの聞きたかったことですか」

 

 彼女がうなずき、私は黙りこくった。

 答えはとっくに決まっている。私に負け戦をするような趣味はない。そもそも戦いそのものが嫌いなのに。そうでなければ、月面戦争から単身逃げ出したりはしない。

 それでも答えに詰まってしまうのは、他でもない、依姫様やレイセンの存在があるからだ。彼女たちはなんて答えるだろう?

 

 多分──答えはこうだ。『負けるかどうかではない。やるかやらないか』

 

 わかってる。そんなことはわかってる。

 

「私は、負け戦なんてしたくないわ」

 

 私が答えるよりも先に、ヴァルゴが口を開いた。

 

「もしソイツに世界が滅ぼされるとしても、負けるとわかっているなら、わざわざ戦ったりはしない。その時間を、やり残したことに費やしたほうがよほど有益でしょう?」

 

 そう言って、自虐のように笑みを浮かべる。

 

 ──だから、レオの要求よりもジェミニとの約束を優先したのか。

 

 彼女の気持ちには共感できる。私の考えも似たようなものだから。

 

「わかってくれるなら、アナタもレオも、今後、私には関わらないでほしい」

「……」

 

 ここで口を開いて、「YES」と答えてしまえば楽だろう。彼女のことは彼女自身に任せてしまえばいい。なんなら、私に共感した彼女がレオを追い払って、私を自由にしてくれる可能性だってあるのではないか? 

 それなら、私にとっても都合がいい。そもそも私がこうして戦うハメになったのはレオのせいなのだ。最初から、私自身に戦おうという気持ちは微塵もなかった。

 

 だから──。

 

「レオ」

 

 私は、うつむきがちに口を開いた。

 

「アナタなら、どうする?」

『〝戦う〟』

 

 即答だった。

 

 私はうなずいて、顔を上げる。見れば、ヴァルゴは驚いたような、呆れたような表情で私を凝視していた。

 

「……レオに委ねると言うの? アナタの意思は?」

「理由や経緯がなんであれ、今の私は、レオに従うだけですから」

 

 そうだ。

 昔から、そうだったのだ。

 前向きであれ後ろ向きであれ、私が自らの意思を遂行しようとしたときは、大抵ロクなことがなかった。

 今回だってそうだ。戦いに出ることを拒み、皆のサポートに回りたいと考えていたはずなのに、けっきょくレオに台無しにされてしまった。

 私が意思を持つと、いつもそうなのだ。

 だったら、最初から誰かに従っていれば、そこに間違いはない。私のような無能が自らの意思でなにかを成そうとすることが、そもそも間違っているのだ。

 レオが繰る《ライドフェンサー》の背中を見つめれば、なんと大きく、なんと頼もしいことだろう。私の行動のすべてを、彼に一任してしまえばいい。

 レオが、もっと具体的な指示をくれるのなら。

 ただ〝言われたことをやってればいい〟としたら。

 そうすれば、なにも考えなくていい。不安を抱くこともない。

 自分の判断が正しいかどうかなんて、悩む必要がなくなるのだ。

 

「……そう。そうなのね」

 

 ヴァルゴは残念そうにうつむくと、盤上のカードに手を伸ばした。

 

「なら、勝利してわからせるわ。《ハヌマーリン》でアタック!」

 

 彼女の指示を受けて、金色の猿が雄叫びを上げる。だが、アタックそのものは本命ではない。このあと来るフラッシュタイミングで、《申の十二神皇》の本領が発揮されるのだ。

 ならば、あの十二神皇がいる状態で、フラッシュタイミングを回してはいけない。

 

『鈴仙』レオの声が響く。

『〝勝て〟』

「ラジャー」

 

 頭がス──っと冴えていく。欲を言えばもっと具体的な指示が欲しいが、ことバトルスピリッツにおいてはコレで十分だと思えた。

 

「フラッシュ! マジック、《ドリームバリア》!」

 

 足りないコア一個ずつを、レベル2の合体スピリットと《グロリアス・ラクーン》から分けてもらう。すると、フィールドに《ドリームバリア》のカードが展開され、そこから一筋の光線が《ハヌマーリン》めがけて発射された。

 

「《ドリームバリア》の効果で、《申の十二神皇ハヌマーリン》を手札に戻す!」

「っ!」

 

 手応えあり。《申の十二神皇》の退却を受けて、ヴァルゴがわずかに頬を歪ませた。

 

「さらに、私の異魔神ブレイヴ一つにスピリット二体が合体しているなら、このターンの間、私のライフは減りません!」

 

 後方から《幻魔神》がエネルギーを放出し、私を守るようにバリアを展開する。これで私の手札は0だが、このターンは守りきれるはずだ。

 

「……ターンエンド」

「よし」

 

 静かに頬を吊りあげた私は、素早く自分のターンを進行する。ヴァルゴと同じようにすべてのスピリットを最大レベルにまで引き上げると、クールな機械兵士たちは静かに拳を握りしめた。

 

 命令を遂行するだけなら、自分で考える必要はない。ただひたすら攻めるだけだ。

 

「アタックステップ! 合体スピリットでアタック!」

 

 号令のもと、レオの繰る《ライドフェンサー》が大地を蹴る。【合体中】のアタック時効果によるBP上昇を含めると、そのBPは18000。ダブルシンボルと回復効果も相まって、彼のかける圧力は半端なものではない。

 

「フラッシュタイミング! 二枚目の《レーシングペンタン》よ!」

 

 前のターンと同様に、ヴァルゴが提示したカードから合体スピリットに向けて光線が発射される。いくらダブルシンボルの裏12宮合体スピリットとは言え、シンボルを奪われてしまっては赤子同然。ダメ元で肩の砲身からビームを発射するも、その光がヴァルゴのライフを砕くことはなかった。

 ただし、前回とは違うところもある。今回は《ハヌマーリン》の不在によりコストを支払っているし、《レーシングペンタン》がそのまま召喚されることもない。

 やはり、このターンがチャンスだ。

 

「《砲凰機神フェニック・セイザー》でアタック!」

 

 大地に膝をつく合体スピリットの頭上を、白き翼が飛翔する。彼もまた《幻魔神》と合体しているため、白のダブルシンボル。さらに、

 

「アタック時効果で、ターンに一回、このスピリットは回復します!」

 

 このシンプルな能力が、彼の攻撃性能をぐんと引き上げる。

 

「《レーシングペンタン》でブロック!」

「でも、BPはこちらが上です!」

「なめんな! フラッシュタイミング!」

 

 焦った様子のヴァルゴが乱暴にカードを投げつけた。

 

「《壬の火猿ニーラ》の【アクセル】発揮! このバトルの勝利条件を、〝BPが高い方〟ではなく〝BPが低い方〟に変更する!」

「──!」

 

 どこからともなく降り注いだ火の粉が《フェニック・セイザー》に襲いかかり、自慢の機動力をことごとく削ぎ落とす。次の瞬間、「隙あり」と目を光らせたペンタンが自慢のゴーカートもろとも彼に突っ込むと、白き翼は呆気なく爆散してしまった。

 

「どうよ! 破壊してしまえば、回復なんて意味がないのよ!」

 

 自慢気に私を指差すヴァルゴ。しかし──。

 

「それはどうでしょうか?」

「……え?」

 

 明確にヴァルゴを捉えて、彼女を睨みつける。

 この瞬間、私の勝利が確定したのだ。

 

「《グロリアス・ラクーン》でアタック!」

 

 豪華な武装を施された機獣が、勇み足でヴァルゴに向かっていく。その様子を、彼女は信じられないという様子で見つめていた。

 

「な、なんっ……《スグリーヴァ》の方がBPは上なのよ⁉」

「かまいません! フラッシュタイミング!」

 

 任務遂行のために、一枚しかない手札をここで切る。

 

「マジック、《バルムンクショット》! 相手のスピリット一体を、手札に戻す!」

 

 宣言とともに、《甲の猿王スグリーヴァ》が光に貫かれ、フィールドから姿を消す。

 これで、彼女を守るスピリットはいなくなった。

 

「だからなに……? 私のライフはあと三つ! アナタの《グロリアス・ラクーン》はシンボル二つ! これじゃあ……!」

「とどめを刺すのは《グロリアス・ラクーン》じゃあないです」

「え──」

 

 突如として、《ライドフェンサー》が微かに光を放ち始める。

 このマジックカードの真の能力は、ここからなのだ。

 

「《バルムンクショット》のさらなる効果。私の合体スピリットを好きなだけ分離させることができ、分離したブレイヴ一体につき、相手のスピリット一体をデッキの下に戻すことが出来ます」

 

 ただし、メインステップでは使えない効果ではあるが──今は些細なことである。

 

「《ライドフェンサー》から《レオブレイヴ》を分離」

 

 白き巨人を構成していたパーツが分離され、複雑な変形工程を経て、一体のスピリットと一体のブレイヴに分かたれる。

 獣の姿を取り戻したレオが咆哮をあげる。その波動はフィールドを走り、《レーシングペンタン》をデッキの下へと吹き飛ばしてしまった。

 

《グロリアス・ラクーン》の攻撃がバリアを砕き、彼女のライフは残り一つ。

 

「《レーシングペンタン》の効果を受けたのは《ライドフェンサー》。つまり、《レオブレイヴ》はシンボルを奪われていません。そして──」

 

 それを警戒していたはずのヴァルゴなら、とっくに理解しているだろうけれど──。

 

「《ライドフェンサー》と《レオブレイヴ》は、さっき《レーシングペンタン》が疲労したことで回復しています」

「──……」

 

 それは、《フェニック・セイザー》が破壊された、あの一幕。戯れのようにも見えたバトルの影で、『相手のスピリットの疲労』という条件を満たした合体スピリットは、静かに立ち上がっていたのである。

 

 これが、獅子座の裏12宮ブレイヴの能力。

 

 すべてを理解したのか、わなわなと手を震わせるヴァルゴ。だが、もう遅い。その手に握られている四枚のカードは、《夢中漂う桃幻郷》、《猿道士オンコット》、《甲の猿王スグリーヴァ》、そして切り札の《ハヌマーリン》なのだから……。

 

「アナタの手の内は、文字通りすべて視えています」

「……」

 

 返事を待つことはなく、ただ盤上に手を伸ばす。

 

 ただ、勝てばいい。

 

 これは命令なのだから。

 

 他のすべては二の次で良いのだ。

 

「──《レオブレイヴ》でアタック!」

 

 機械仕掛けの獅子が吼える。駆ける。宇宙の輝きをその身にまとい、ひとすじの光となって大地を蹴るその姿は、さながら地上の流れ星だ。

 

「……はぁ。ほんっと、これだからレオは嫌いなのよ」

 

 彼女は諦めたように肩を落とすと、飛びかかるレオを静かに見据えた。

 

 不思議と、穏やかな目で。

 

「ライフで受ける」

 

 そのラストコールは、まるで鈴の音のように響き渡った。

 

 

 

 

「勝敗に則り、アナタの同行を許可するわ」

 

 バトルフィールドが解除されるなり、開口一番、ヴァルゴはそう告げた。

 私とヴァルゴ、そしてスピリットたちが火花を散らすほど睨み合い、狼だって近づくことをためらうような緊張感に包まれていた林も、普段の静けさを取り戻す。

《レオブレイヴ》の姿になっていた彼も、いつの間にかブロンド髪の青年の姿へと戻り、私の後ろに突っ立っていた。

 

「あの……い、いいんですか?」

「いいもなにも、そういうルールだったでしょ?」

「いえ、まあ、そうなんですけど……」

 

 阿呆のように、手をオロオロと震わせる。

 ヴァルゴの対応が想像以上にあっさりしたものだったので、逆になにかあるのではないかと勘ぐってしまったのだ。

 すると、ヴァルゴは呆れたように肩を落として、小さくため息を付いた。

 

「こうなった以上、もうジタバタしないわよ。諦めが肝心ってね。だから、ほら」

 

 彼女が手を差し出す。私も恐る恐る手を差し伸べると、細くしなやかな指の感触が手のひらを伝った。

 それほど強くなく、包み込むような優しい握手だった。

 

「強かったわよ、アナタ。レオが側に置くだけのことはある」

「そんなことないと思いますけど……」

 

 首を傾げながら、眉をひそめる。事実、勝利できたのはレオが紛れ込ませたカードの存在が大きい。

 ともあれ、これでヴァルゴに認めてもらえたことは確かだろう。

 

「じゃあ……これから、よろしくお願いします」

「よろしく。レオのことは気に入らないけど、レオが目をかけたアナタのことは信じてあげるわ」

「素直じゃねーなぁ……」

 

 大きく欠伸をしながら、レオがボヤいた。

 

「んで? オレが勘定してる間に話が進んでたからわかんねーんだけど、けっきょくお前の用事ってなんなんだ」

「ああ、それは……」

「いいのよ鈴仙、こんなやつに説明してやる必要ないの」

 

 ヴァルゴは私の口を人差し指で押さえると、意地悪な笑みをレオに浮かべた。

 

「レ~オ~? アナタねぇ、なにか勘違いをしているんじゃなぁい? 私が〝同行を許可する〟と言ったのは鈴仙だけよ」

「「は?」」

 

 私とレオの声が重なる。

 どういうことだ?

 

「最初から、二人の同行を許可するとは言ってないでしょう? 都合よく勘違いしたのねアナタたち。私が連れて行くのはこの子だけ」

 

 ヴァルゴはそう言うと、強引に私を引っ張って抱き寄せた。

 なるほど、してやられたらしい……。

 

「女の子なら心配ないだろうし。残念だったわねえレオ」

「……?」

 

 愛おしげに私の頭を撫でる彼女。その言葉に、閃くものがあった。

 もしかして、ヴァルゴが男性を過剰に拒絶するのは──。

 

「ジェミニさんに勘違いさせないため……?」

「んー?」

 

 ポツリと呟くと、私を抱きしめる彼女の腕がわずかに力を増した。これ以上は言わないほうが身のためだろう……。

 

「……まあ、オレは一人でも大丈夫だから、べつにいいけどさ」

 

 レオが言った。

 そう言わずに助けてよ。……と言ってやりたかったけれど、生憎、ヴァルゴにガッチリ掴まれているのが怖くて声が出せない。

 

「わかった。付いていくのは鈴仙だけだな? ただし、自分の身はちゃんと守ることを約束してくれ。んで、用事が終わったら永遠亭に集合してほしい」

「はいはい、わかりましたよーっと」

「それから」

「まだなにかあるの?」

「……鈴仙にも、無理をさせないようにしてくれ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ヴァルゴの腕の力がふっと抜けた。慌てて離れて見ると、彼女はポカーンと口を開けてレオを見つめていた。

 

「……驚いた。アナタがそんなこと言うなんて」

 

 心の底から「意外だ」と感じているのが、声色でわかった。

 

「当たり前だろ。強引に結んだ契約とは言え、ソイツはオレの下僕なんだぞ」

 

 下僕になった覚えはない。

 ともあれ、驚いたのは私も同じだった。レオの口からそんな言葉が聞けるとは思わず、私もただ黙って彼を見つめていた。

 

「二人揃ってひでーな。本当なら下僕を守るのは王様の役割なんだぞ? だから、もしなにかあったら、そのときはお前がオレの代わりに鈴仙を守れ。これは絶対だ」

「〝げぼく〟って言い方を除けば、珍しく良いこと言ってるわね……」

 

 引きつった表情のまま、ヴァルゴが言った。

 私も〝げぼく〟という言い方には疑問を感じたけれど(あとレオを王様と思ったこともない)、言っていることは比較的善良である。

 

「鈴仙もだ。お前も、なにかあったらヴァルゴを守れ。いいな? 互いを守り、互いに無理をさせるな。これは命令だぞ」

「わ、わかった……」

 

 意外にも真剣な表情でそんなことを言うので、私はひとつ返事をしてしまった。

 少なくともコイツは暴君ではない。そう思った。彼の治める国が、豊かで平和な楽園になることは想像に難くない。

 

 しかし、離れる間際に命令を残してくれたことはありがたいけれど、そんな重大な責任を私なんかが背負えるだろうか?

 

 私が自問していると、レオはなにかを察したように肩を落とした。そして、ゆっくりこちらに歩み寄ると、私の頭にポンを手を置いた。

 

 彼の剛腕からは想像もつかないほどのソフトタッチで。

 

 赤子を撫でるような、臆病な手付きで。

 

「鈴仙」

「なに」

 

 しばらくの沈黙のあと、彼は言った。

 

「……ありがとな。バトルやってくれて。ヴァルゴにも、付き合ってくれて。迷惑かけるけど、頼むぞ」

「…………」

 

 ひとつひとつ、言葉を選んでいるようだった。私が目を丸くしていると、レオはバツの悪い様子でそっぽを向いた。

 

「仕方ねえだろ。アリエスが『言葉遣いが悪い』とか言うんだからさ」

「………………」

 

 彼なりに、アリエスの言葉を真摯に受け止めているらしい。そう言えば、アリエスのダメ出しを受けたときも、彼なりに言葉を選んで会話してくれていたっけ。

 

 レオは続ける。

 

「今回ヴァルゴの言う通りにしてやるのは、鈴仙、お前を信じてるからだ。さっきのバトルでお前が強いってことはわかった。だから信じる。オレの下僕としてな」

「……下僕になった覚えはないけど」

 

 まだまだ言葉遣いには難ありだ。

 レオは大きく咳払いすると、言葉を続けた。

 

「とにかく、そういうことだ。鈴仙もヴァルゴも、くれぐれも無理すんなよ」

「……うん」

 

 私が頷くと、レオはそっと手を離した。そんな彼を、ヴァルゴもまた不思議そうに見つめていた。

 

 よくわからない男だ。

 

 会議をサボって昼寝していたかと思えば、私を巻き込んで強引に「捜索チーム」を発足したり、ヴァルゴの説得を私に任せたかと思えば、今度は自分が引き受け、失敗したらまた私に押し付け、かと思えば私のことを心配したり、褒めたり……。

 

 ──大丈夫だよ。

 

 アリエスの言葉が、耳底に反響する。

 彼女は、レオのことをわかっているようだった。彼の行動に一定の理解を示していたからこそ、私にああ言ったのだろう。

 つまり、彼の意味不明な行動の数々には、なにかしらの意図があるはずなのだ。

 

 レオとヴァルゴは、集合場所や他のメンバーの状況を口頭で確認しあっていた。互いに悪態をつきながら。それでも、必要な情報は真剣に引き抜いていく。

 なんだかんだ言って、協力的なのだ。

 

「……しまったな」

 

 二人には聞こえないように、小さく呟く。

 

「レオのこと、もっとアリエスから聞いておくんだった」

 

 彼のことをもっと知りたい。

 彼の行動を理解したい。

 ソレが出来たとき、こんな私にも、なにか小さな変化があるのではないかと思った。

 

「それじゃあ鈴仙、行きましょう。時間に遅れてしまうわ」

 

 話を終えたヴァルゴが、レオに背を向けて歩き出す。彼女に置いていかれないよう駆け出してから、私はちらっと後ろを振り返った。

 そこにいた彼が小さく頷く。言葉はない。もっとも、口を開いても「行って来い」とか短い言葉で済ますのだろうけど。

 しかし、そこには彼なりの、相手への信頼や心配が込められているのだろう。

 口が悪ければ、言葉も足りない。だから無神経だと思われてしまう。

 予想でしかないけれど、今の私が思う「レオ」という男は、そういうヤツだ。

 

 ……そんなことを思っているうちに、ふと、不思議な感覚に襲われた。

 

 最初は彼と一緒に行動することを不安に思っていたはずなのに、今は、彼と離れることを酷く不安に感じている。

 この気持ちの正体はなんなのか、今の私にはわかるはずもなかった。

 

 

  続

 




 お疲れ様です。ここまで閲覧ありがとうございます。
 作者の白熊すずむです。
 ご意見・ご感想などお待ちしておりますので、お気軽にコメントしてくだされば幸いです。
 なんとなく予想がつくとは思いますが、次回は彼の出番です。
 楽しみにお待ちください。

⚫︎追記(7/16)
 誤字報告ありがとうございます。必要と感じた箇所について修正させて頂きました。
 ただ、漢字・ひらがなの件(例:「ともに」ではなく「共に」、「いる」ではなく「居る」の方が良いのではないか?)につきましては、もうしばらく様子を見てから決めさせて頂きたいです。ご協力をお願い致します。
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