東方琉輝抄・暁   作:日立涼

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第九話『私が』

 

 

「何度言えばわかるのですか? 鈴仙、アナタの逃げ癖はですね……」

 

 また始まった依姫様のお説教にうんざりしつつ、私は「申し訳ありませんでした」と頭を下げる。私の中に謝罪の気持ちなんて微塵もなく、ただ心の中にあったのは、「私の逃げ癖を把握していながら、月の使者に勧誘したのはそちらだろうに」という、責任転嫁も甚だしい考えだけであった。

 

「とにかく以後、気をつけるように。わかりましたね?」

「はい。本当にすみませんでした」

 

 今日もこうして、口先だけでその場をやり過ごす。月のお姫様は大変優秀な御方に違いないが、お説教があまりに長いのが瑕だ。しかも、檄を飛ばすのではなく、反論の余地もないガチガチの理詰めで攻めてくるから萎えてしまう。

 

「第一、なんで私なのよ……」

 

 長いながい廊下を渡って自室に戻る最中、私は口を尖らせた。

 私が玉兎兵──月の都の防衛部隊『月の使者』にスカウトされたのは、ほんの半年ほど前のことになる。どうやら、私のもつ波長操作の特殊能力に目をつけられたらしい。

 正直、最初は嬉しかった。自分の存在が特別なのだと認められた気がして、餅をついてばかりの退屈な日常から抜け出せるのだと思って。私は、喜んでその申し出を受けた。

 それが思い上がりだったと分からされたのは、入団してすぐのことだった。

 姫様直属の部隊なだけあって、月の使者の玉兎たちは皆精鋭揃い。私の波長を操る能力なんて霞んで見えるほどの才能を持った子が大勢いて、「お前は大して特別な存在ではないのだよ」と言われたような気さえした。

 加えて、リーダーの依姫様。彼女はとにかく厳しくて、理性的で、ひとを見る目のある御方だ。私の逃げ腰な態度とやる気の無さはすぐに看破されてしまい、あっという間に、私はお呼び出しの常連にされてしまった。

 ああくそ、こんなの全部、周りのやつらのせいだ。

 なんて、呪いのようにアタマの中で唱えながら、私は毎日を過ごしていく。かと言って他人のせいにする自分もまた嫌いで、この半年間で、私の自己肯定感は地の底に墜落してしまったように思う。元々自分のことが好きだったかと言われれば怪しいが、少なくとも今は、自分が大嫌いで仕方がない。

 ……ふと、すれ違ったふたりの玉兎が、こんな会話をしているのが耳に入った。

 

「ねえ聞いた? 近いうちに、地上の奴らが攻めてくるかもしれないんだって」

「えー、タダの噂じゃないの?」

「いやいや、これが結構ガチらしいのよ。ここ最近、依姫様のご指導がものすごーく厳しくなったでしょう? あれも、地上との戦争に備えてのことなんだって」

「ふーん。地上のやつらと戦争かぁ……」

 

 自分の手足の先が、小刻みに震えているのが分かった。地上と戦争? どんなヤツらが攻めてくるのかは知らないが、そんなの、貴族でもなんでもない私たちは、使い捨てのコマみたいに前線で戦わされて消耗されるに決まっているじゃないか。

 

 嫌だ。……死にたくない。

 

 私は自室に駆け込むと、慌ただしく荷造りを始めた。

 どうせ私に役割なんて無いんだ。能無しの私がいなくなったところで、月の使者に大きなダメージはないはずだ。その事実は、戦いが始まってからも変わらないはず。

 

「私がここにいる意味なんてない。私に出来ることなんてない!」

 

 自分に言い聞かせるように呟いた私は、その日のうちに月から逃げ出した。

 その行為こそが、私の自己肯定感を殺す、トドメの一撃になったのである。

 

 

 

 

 這々の体で逃げ回っていたマグナと再会したとき、私はなぜか、そんな昔のことを思い出していた。

 彼女は酷くやつれた顔で地べたに這いつくばっていたが、私たちの顔を見るなり、その瞳孔に光を取り戻して立ち上がった。

 

「嬉しいよ。来てくれたんだね」

「……うん」

「じゃあ……してくれるかい? オレと、バトルを」

 

 そのためにここへ来たのだと、私は頷いた。彼女を暴走から解き放ち、レミリアも解放する。咲夜は私を恨むかもしれないが、そこんところも全て受け入れるつもりで来た。

 

「優曇華院様、わたくしめも」

「ううん。……このバトルは、私ひとりでやるわ」

「な、なぜ?」

 

 まさか忠誠の件を引きずっておられるので? とでも言いたげな、不安そうな目を見せた彼に、私はクスっと笑う。

 

「変な意味じゃないから、安心してよ。ただ、今回は私ひとりでやりたいの」

「ですが……」

「やらせて。……お願い」

 

 極めて真剣な目で、そう訴える。

 マグナは、私に殺されることを望んだ。敵ではあるが、彼女は私に「キミにしか出来ないお願いだ」と言った。……マコーを終わらせた私を、信じているのだろう。

 ならばこそ、私はその気持ちに応えたい。

 

「……承りました」

 

 私の覚悟が伝わったのか、アクエリアスはしばらく考える素振りを見せたあと、いつもの優雅な礼を見せた。

 

「鈴仙、本当に大丈夫?」

 

 ヴァルゴも強張った視線を私に向ける。僅かでも隙を見せれば彼女の心配性は止まらなくなるので、私は堂々と笑って「ありがとう、大丈夫だよ」と回答した。その様子を見ていたジェミニが肩をすくめたので、ギロリと睨みつけておいた。

 

「オーディア。これなら本当に大丈夫そうだね、ヴァルゴ」

「……うん」

 

 ふたりの会話を背に、私は一歩、前に出る。マグナも私の正面に立つ。

 ふと、思うところがあって、私はポケットに手を突っ込んだ。そこから一枚のカードを取り出し、私は〝ソイツ〟に呼びかける。

 

「……マコー」

 

 消滅の直前に託された、彼の真っ黒な魂。この一戦は、一応彼への弔いにもなるのかもしれない。そう思うと、私はコイツをデッキに忍ばせずにはいられなかったのだ。

 

「準備はいいかい?」

「うん。……始めましょう」

 

 開戦を告げる言葉を、私たちは静かに発した。

 

 

 

 

 邪神域に立ったマグナは、もはや暴走を抑える必要はないと踏んだのか、あるいは「本気で来ないとお嬢ちゃんが死ぬぜ?」というアピールなのか、はたまた限界を迎えただけなのか、必死に抑え込んでいた暴走を解き放ち、あの好戦的な態度を見せてきた。

 

第一ターンを《機巧城》の配置のみで終わらせた私に対して、マグナは第二ターンから《ナイト・ブレイドラ》、《パイオニア 吸血鬼アンジィ》、《相棒武者オボロ》を召喚。手札を増やしつつ、バーストセットして一斉攻撃を仕掛けてきた。

 一ターン目から、こちらのライフを二つにまで減らしてくる。という点で咲夜と共通しているわけだが、マグナの場合そこに、攻撃し終えた《アンジィ》を《オボロ》の効果で破壊して手札を増やす、という一手間が加わっている。同じ紫の速攻デッキでも、やはりプレイングは微妙に異なっているらしい。

 

 次のターンからは、私も負けじと攻撃を仕掛けて行く。中心になるのは、《天王神獣スレイ・ウラノス(Rv)》や《月光龍ストライク・ジークヴルム(Rv)》、赤属性の異魔神ブレイヴ《真・炎魔神》だ。攻防を兼ねた陣形だったが、『魔影』を中心とした、マグナのテクニカルかつ攻撃的な戦術を前に、中々勝機を手繰り寄せられない。

 気がつけば、すでに第六ターン。私のフィールドには、レベル2の《月光神龍ルナテック・ストライクヴルム(Rv)》と、彼に合体している《真・炎魔神》、そしてネクサス《機巧城》が存在している。バーストエリアには《メカニポリス》のミラージュと一枚のバーストカード。手札二枚に対して、コアは九つ。カウントは未だ二止まり。そして、残りのライフも二つである。

 

 対するマグナのフィールドには、レベル1の《相棒武者オボロ》が存在するのみ。前のターンまでは《飛電の竜騎士長ジャンヴァルジャン》の転醒時効果で召喚された《ソーディアス・ドラグーン(ドラゴニック・アーサー)》とか《スグライヴァー》とかにフィールドを埋め尽くされていたが、《ルナテック》と《真・炎魔神》がなんとかやってくれた。

 バースト等はないが、手札は六枚もあり、コアも九つ。ライフ三でカウントも四。まだまだ油断は禁物だ。

 現状を見てか、ジェミニが顎をいじる。

 

「鈴仙のプレイングがおぼつかないね」

「そう?」と私が口にする前に、ヴァルゴが同じことを言った。

 

 ジェミニは続ける。

 

「なんとなくだよ。攻めっ気がないと言うか、迷ってる感じがある。スピリットの除去は入念にしているけど、ライフを打つことには積極的じゃないみたいだ」

「迷ってる……ってことは、やっぱり鈴仙は、マグナを殺すことを躊躇っているの?」

「多分ね」

 

 唇を噛むほか無かった。ヴァルゴたちの視線に、酷い喉の乾きを覚える。

 自分なりに覚悟を決めていたつもりだったが、いざ、目の前にいるひとを殺すのだと意識すると、どうしても手が伸ばせない。私は医者。本来はひとの命を救うべき存在だ。

 こんな私の甘ったれた思考に、マグナは唇を震わせていた。

 

「おいおい、ふざけないでくれよ。キミに出来ないと言うなら、オレは他の誰に、こんなオツムの逝ってるお願い事をすればいいって言うんだ?」

「それは……大丈夫。私が、やってあげるから」

「だといいけどね」

 

 鼻先で笑った彼女は、これ以上は話すだけ無駄とでも言いたげに、ターンを進行した。

 

「《獄土の騎士レフティス》を召喚。召喚時効果で一枚ドロー。……そして」

 

 彼女の背からどす黒い覇気が放出され、私は本能的に身構えた。

 やばい。……なにか来る!

 

「《獄土の騎士レフティス》の効果、スピリットソウル発揮! オレがアルティメットを召喚するとき、このスピリットに紫のシンボル一つを追加する!」

「アルティメット……!」

 

 彼女は、一枚のカードを鋭く大地に突き立てた。

 

「降臨せよ! 最初ノ闇、狂喜の大地! 《獄土の四魔卿マグナ・マイザー》を、レベル3で召喚! 不足コストは《レフティス》から確保だ!」

 

 大地が裂け、底の見えない地下深くから、大量の闇が湧き上がってくる。深淵からその姿を見せたのは、禍々しくも凛々しい甲冑に身を包んだ、人馬一体の騎神だった。

 

「ついに現れましたね」

 

 アクエリアスが拳を固く握りしめる。外野にいても伝わってくる絶対的な威圧感と恐怖は、私自身も《イル・イマージョ》のときに経験済みだ。

 そしてソレは、真正面から対峙したとき、最大限に高まる。許されるなら今すぐ山札に手を置いて、サレンダーしてしまいたい。レイセンはこんなのを相手に冷静さを保ち続けていたのか? 心臓どうなってるんだあの子。ヤバすぎだろ。

 ひとり脳内でレイセンへの驚嘆を述べる私に、マグナは容赦なく、指で象った銃口を突きつける。

 

「アタックステップ! 《獄土の四魔卿マグナ・マイザー》でアタック! トリプルアルティメットトリガー、ロックオン!」

 

 私のデッキから、三枚のカードがはじき出された。

 

「弾いたカードのコストが、この《マグナ・マイザー》よりも低ければヒット。効果を発動できる。さあ、コストはなにかな?」

「……コスト1の《イグア・バギー(Rv)》と、コスト5の《砲凰竜フェニック・キャノン(Rv)》、そして、コスト9の《秩序龍機νジークフリード》!」

「む……? これはあまり喜べないな。ダブルヒットか……」

 

 途端に肩を落とした彼女は、折れ曲がった指先から粗雑な感じで光弾を発射する。

 

「まあいいや。ダブルヒットの効果で、キミの《ルナテック・ストライクヴルム》からコア4個をトラッシュに置き、相手のライフを一つ破壊する!」

「うあっ……!」

 

 バリアの砕け散る衝撃が、心の臓まで伝わっってくる。思わず閉じた目を開けてみればキースピリットは消滅しているしで散々だが、今は苦心している場合じゃない。

 

「自分のライフ減少により、バースト発動! 《クリアウォール》のバースト効果でカウントを二つ増やして、私のライフをひとつ回復する!」

「それがどうしたんだい? オレのアタックはまだまだこれから! キミのライフを削り切るには十分過ぎるんだぜ」

「まだよ! 私のライフが減少したことで、手札の《ディメンションシフト》が効果を発揮できる! その効果で、アナタの《相棒武者オボロ》を手札に戻すわ!」

「ッ……!」

「《マグナ・マイザー》の攻撃はライフで受ける!」

 

 巨大な槍の一撃が、私のライフを重々しく貫く。だが、これで戦闘不能になったわけではない。ライフは一つ残っているのだ。

 未だ戦場に立ち続ける私に、マグナは瞳を大きく広げた。狂喜するように釣り上がった広角。ただ、その呼吸はひどく乱れているようにも見える。

 

「まだやれるんだね。嬉しいよ! ターンエンド!」

「な、なんとか防いだわね……」

 

 ヴァルゴが大きく息を吐きだすと、アクエリアスもこれに首肯した。

 

「ですが、ここからが正念場でございます。なにせ優曇華院様のライフは残り一つ。次に《マグナ・マイザー》のアルティメットトリガーがダブルヒット以上してしまえば、その時点で敗北は免れません」

「手札も残り少ないわ。どうするの? 鈴仙……」

 

 追い詰められたと断言できる展開に、カードを繰る私の動作もぎこちなくなる。

 次のターン、私は《サポートロボ ピック》の効果で魂状態の《ストライク・ジークヴルム》を召喚し、ドローとカウントアップを行う。ありったけのコアを二体のスピリットに乗せ、《真・炎魔神》を《ストライク・ジーク》に合体。バーストもセットした。

 

「アタックステップ! 《ストライク・ジークヴルム》でアタック! 《真・炎魔神》の追撃で、BP20000以下の相手のアルティメット、つまり《獄土の四魔卿マグナ・マイザー》を破壊するわ!」

 

 逆巻く炎の魔神が、その拳を超高速で回転させ、発射する。炎の鉄拳に貫かれた《マグナ・マイザー》はたちまち爆散するが、私はどうしても喜ぶことが出来なかった。

 なにせ相手は、蘇生効果に長けた紫属性。一度破壊したところで、またすぐに復活してしまうのではないかと思ったのだ。

 

「やるね! オレはライフで受ける!」

 

 月光龍が電撃を放ち、マグナのライフが二つ破壊される。そのタイミングで。

 

「ただし、このライフ減少はコイツのトリガーになる」

 

 と、マグナが一枚のカードを提示してきた。

 

「《キャバルリースラッシュ》の【覇導】の効果は、相手によって自分のライフが減ったとき、コストを支払わずに発揮できる。キミの《サポートロボ ピック》のコア3個をリザーブに置かせてもらうよ」

「っ……」

 

 軽率だったと後悔する。キースピリットを守ることに必死で、余ったコアのうち、実に7つものソレを、私は《ストライク・ジーク》に割いていた。その結果、《ピック》にはコアがたったの3個しか置かれていなかったのだ。

 マグナは続ける。

 

「それだけじゃない。この効果でスピリットを消滅させたとき、このマジックカードはスピリットカードに【転醒】することが出来る!」

「えっ⁉」

 

 マグナが宙に放り投げたソレに闇が纏わりつき、白銀の甲冑を身に着けた騎士となって戦場に降臨する。その姿は、咲夜の使う《騎士の覇王》に大変酷似していた。

 

「コイツが《ソーディアス・アーサー・オリジン》だ。転醒時効果で、トラッシュからコスト7以下かつ紫一色のスピリットカード一枚を、ノーコストで召喚できる! さあ出てきなよ! 《竜騎士皇アヴァルケイン》!」

 

 掲げられた聖剣のもとに、新たな竜騎士が姿を現す。抜かり無いことに、ソレは随分とターン、マグナが《アンジィ》の効果でトラッシュに送っていたスピリットだった。

 自分のライフ減少をトリガーにする戦術。条件自体は私と同じなのに、どうしてここまで差が出てしまうのだろう。

 

「……ターンエンド」ああ、彼女のライフは残りひとつなのに。

「じゃあ、オレのターンだね」

 

 歪な笑みでターンを進行するマグナは、メインステップをスピリットのレベルアップのみに費やした。ギラつく瞳で私を見据え、喜々とした表情で舌を舐めずると、彼女の唇は不気味なほど真っ赤に染まった。

 

「アタックステップ! 《ソーディアス・アーサー・オリジン》でアタック!」

 

 白銀の騎士が、怒涛の勢いで戦場を駆け出した。

 

「アタック時効果で、疲労状態の相手のスピリット一体を破壊!」

「《ストライク・ジークヴルム》は、契約装甲の効果で紫の効果を受けません!」

「知っているとも! だから、《ソーディアス・オリジン》の第二の効果! 自分のカウントが3以上あるとき、相手のライフのコア一個をボイドに置ける!」

「っ?」

 

《ソーディアス・オリジン》が剣を一振りすれば、衝撃波が刃のごとく私に迫った。

 私の目はまばたきすることを忘れ、その刃を甘んじて全身で受け止める。一つしか無いライフが音をたてて崩れ始め、震撼する大気に膝をつかされる。

 

 あ、ヤバ──。

 

「鈴仙!」

 

 ヴァルゴの、悲鳴にも近い叫び声が聞こえた。次の瞬間、私を捉えていた紫の刃はバリバリと音をたてて凍りつき、宝石にも見える結晶を撒き散らして霧散していく。

 

「ん……?」

 

 マグナが大きく首を傾げる。フラフラ立ち上がる私を、おかしいな、どうして生きているんだろう。とでも言いたげなその顔で見つめている。

 そんな彼女に、私は一枚のカードを提示した。

 

「《白晶防壁(Rv)》の効果……! 相手の効果で自分のライフが減るとき、手札からこのカードを破棄することで、減少するライフの数を一つ、減らすことが出来る!」

「へえ……。そういえばあったね、そんな効果。だけどこのアタックは──」

「相手スピリットのアタックにより、バースト発動!」

 

 私は乱雑にテーブルを叩いた。

 

「《煌星銃ヴルムシューター》のバースト効果で、デッキから一枚ドローする!」

 

 そのカードを手札に迎えた瞬間、私は思わず口を開いていて。

 

「え……?」

 

 しかしそれ以上は、なにも言葉に出来ない。

 真っ黒な、魂の欠片だった。彼への弔いを兼ねたこのバトルで、お守りのつもりで入れていただけのそれが、なんの気まぐれなのか、ここにある。

 

「ここで手札を増やしてきたか……。けど、フラッシュタイミング! 《邪神再臨》を使用して、トラッシュから《獄土の四魔卿マグナ・マイザー》をノーコスト召喚!」

 

 ハッとなって顔を上げる。再び大地が裂け、深淵から純黒の騎士が這い上がっている。防御に使える札を切ってしまった今、アイツのアタックを許したら終わりだ。

 

 どうして、いまなの。アナタがここへ来たことに、なにか理由があるの?

 

 ここにいないヤツに問いかけをする辺り、どうやら私は、自身の敗北を本気で悟ったらしかった。

 

 ……そんなときだ。

 

『やはり、どうしようもなく愚かな御方なんですね』

「……?」

 

 錯覚を覚えた。周囲が真っ暗になって、私の眼の前にアイツがいる感覚。

 

「マコー……?」

 

 視界のど真ん中でぼやつく影に問いかけると、彼は口角をニンマリ歪めた気がした。

 

『相変わらず、命を守ることでしかひとを救えないと思っている辺りが、大変度し難い』

「は……?」

『アナタがマグナ様に託された願いは、彼女を終わらせることのはず。望まぬ暴走を繰り返し、不本意にひとを傷つけ続ける彼女が切望する、一番の救済。……そのことに、アナタはいつ気がつくのですか』

「……それは」

『自分がやると言ったはずです』

 

 アイツの声が、これまでにない真摯な鋭さを帯びた気がした。

 

『彼女を終わらせる。……そのために必要な〝闇の心〟を、なぜアナタは未だに持っていないのですか』

「闇の、心……」

 

 口に出すのも躊躇われる、そんな言葉に思えた。それを受け入れてしまったら最後、なにもかも変わってしまいそうな気がする。

 マコーは続ける。

 

『本心を言えば──私は、アナタにはそうなって欲しくなかった。アナタは私にすら手を差し伸べたほどの愚か者であり、私が初めて見た、光だから』

「……マコー? なにを言って」

『で・す・が!』

 

 唐突に声を張り上げられて、私の背筋はシャンと伸びる。なんなん? ホントに。

 

『……コホン。さっき言った通り、アナタは自分で宣言してしまったのです。自分がやるのだと、自分が彼女を解放するのだと』

「……うん」

『ならばその時点で、私に選択を歪ませる権限はない。アナタにも、逃げる選択肢はないはずなのです』

「……わかってる」

『ならば何故うつむくのです』

「……これは現実の問題なの」

 

 私はマコーに、今の手札を見せつける。

 

「迷ってるうちに、こんなに追い詰められちゃって……。もう、手札にいるのはアナタだけなの。マグナの攻撃を防ぐ手段がないんだもん」

『ふーむ。言い訳とはいい度胸ですね』

「はあ?」

 

 胸の前で腕組する彼に、私は目を見開いた。

 

「いや、言い訳ってなに? 大体、この状況でくるアナタにも問題があると思うけど!」

『あー、あー。見苦しいみぐるしい。女の言い訳は本当に見苦しい』

「はなし聞いてんのかコラ!」

『聞いてますよ』

 

 ズイズイ近寄る私を、彼は、その冷たい人差し指で静止させた。

 

『つまり、私がこの状況を、何とかすればいいのでしょう?』

「……え?」

 

 また、目を開かされる。今なんと言った?

 口をポカンと開けたままの私に、彼は深めのため息をついた。

 

『私の本来の名前は《龍魔侯オーバーヴェルム》。ですが、アナタが手にしているソレは、私の魂のほんのひと欠片に過ぎず、今はまだ白紙の状態にあります』

「真っ黒だけど……」

『あー、おホン、おホン。……とにかく、ソレには無限の可能性があります。アナタが望むのであれば、私は邪龍にも聖龍にもなってみせる。……言い訳はさせません。アナタが本当に、マグナを終わらせたいと願うのなら、私はそのための牙になりましょう』

「……私が」

 

 私は、そのカードをしばらく見つめていた。真っ黒なくせに白紙の一枚。私が勝ちたいと願えば叶えてくれるという、言い訳を許さない嘘みたいな切り札。

 そして残酷にも、その願いが叶うとき、目の前にいるひとが終わりを迎えるのだ。

 

 だけど。

 

「……私が立ち止まってたから、一緒に歩いてくれるために来たって、初めから言ってくれればいいのに」

『……そう言えば、アナタは前に進めるのですね?』

 

 顔を上げて、マコーを真っ直ぐ見つめる。薄ぼんやりとしか分からなかった彼の表情が晴れて見えたとき、初めて、彼が微笑んでいることを知った。

 濁りのない、優しい笑みだと思った。

 

「うん。……一緒に来てくれる?」

『ええ。──罪を犯すことには、慣れてますから』

 

 だからどうか、彼女を救ってくださいませ。

 その言葉を最後に、私は錯覚から目を覚ます。視界を覆っていた闇が晴れたとき、私の手札には一枚の〝スピリットカード〟があった。

 顔を上げれば、マグナの《ソーディアス・オリジン》が目の前まで迫っていた。

 息遣い荒く、マグナが叫ぶ。

 

「さあ、どうする! 次に《マグナ・マイザー》のアタックを許したら、キミは今度こそ終わってしまうんだぜ!」

「鈴仙、なにかカードを!」

 

 ヴァルゴの祈るような声に、手札の彼も淡い光をもって同調した。

 使え。……そう言っているんだと分かった。

 

「うん。……一緒に行こう、マコー」

 

 そよ風にすらかき消されてしまいそうな声で、私は囁いた。

 そして、そのカードを天に掲げる。

 

「フラッシュタイミング! 契約煌臨!」

「契約煌臨……? だけど、《ルナテック》の煌臨は自分のターンだけのはず……」

「そうよ! でもこれは、私の新しい仲間だから──!」

 

 そのとき、邪神域に闇が充満した。地上の砂粒ひとつから、空に浮かぶ雲も切れっ端に至るまでのすべてが覆い隠される。

 その暗闇の奥底から、一体の光が羽ばたいた。

 

「聖と邪をその両翼に宿し、闇を蝕む龍魔侯! 《超月光神龍ストライクヴルム・エクリプト》を、《月光龍ストライク・ジークヴルム》に煌臨!」

 

 白銀の機械龍が闇へ飛び立ち、暗黒の彼方から舞い降りた光と交差する。真っ黒な帆布に白い絵具が染み込むように、闇が光に蝕まれていく。

 次の瞬間、目を開けていられないほどの閃光が走ったかと思うと、ソイツが邪神域の上空から私たちを見下ろしていた。

《ルナテック・ストライクヴルム》に酷似した、神々しい白銀の龍。しかし、その鋭利な六枚の翼は、この世界のなによりもドス黒い輝きを放っていた。

 

「──マコー……?」

 

 天を仰いだままの姿勢で、ヴァルゴが声を震わせる。

「いやしかし」「アメイジング」と、残るふたりも静かに頭を振る。姿かたちは変わっていても、やはりかつての怨敵。その気配を感じ取れないなんてことは無かったらしい。

 私は天高く、彼に向けて手を伸ばした。

 

「《蝕むもの(エクリプト)》……。アナタの新しい名前、気に入ってくれるかな」

「冗談だろ? 龍魔侯の執念か……? 魂レベルで消滅させたはずなのに、なんで」

 

 小刻みに体を振るわせ、浅い呼吸を繰り返す彼女に、私は向き直った。

 

「《エクリプト》の煌臨時効果! 相手のスピリット・アルティメットすべてをデッキの下に戻す!」

「ッ⁉」

 

 私は右手で銃を象り、マグナに突きつける。その動きに合わせて、エクリプトがビームランチャーと思われる武器を構えた。六枚の翼が変形し、彼の背で円環を成していく。

 円環が、光を蓄え始める。邪神域の荒んだ景観が闇に染まり、周囲から奪った光エネルギーを充分に蓄えた彼だけが、遥か大空の彼方で、満月のように美しく輝いていた。

 

「──撃って!」

 

 私が指先をバンッと弾いた瞬間、マグナのフィールドに、想像を絶する量の光が降り注いだ。大地を抉ることなく、ただ静かに、ただ眩く。

 光が霧散し、邪神域がもとの埃っぽい景観を取り戻したとき、そこに《ソーディアス・アーサー・オリジン》や《マグナ・マイザー》の姿は無かった。

 

 光が、闇を蝕んだ。

 

「四魔卿を……こんなに呆気なく……」

 

 ポカンと口を開けるジェミニは、その圧倒的な能力を前に、持ち前の冷静さを若干欠いているように見えた。反対にマグナは、困惑と興奮の入り交じる目を輝かせ、鼻息荒く言葉を吐き出した。

 

「だけど、一掃とはいかなかったようだね! オレの《アヴァルケイン》は、自身の効果で相手のスピリットの効果を受けない!」

「《エクリプト》の効果は、まだ終わってないわ」

「え……」

 

 エクリプトがその翼を羽ばたかせ、ゆっくりと、私の後ろに舞い降りる。彼は放出した光の僅かな残りを、私に向けて静かに吐き出した。

 

「《エクリプト》の煌臨時効果には続きがあるの。相手のフィールドに残っているスピリットとアルティメット一体につき一個、私のライフを回復できる」

「おお……! ターン……エンドだ……!」

 

 吊り上げた口角をワナワナと震わせ、マグナはターンを終了する。

 

 回ってきた。

 

「私のターン!」

 

 もはや自分に出来ることは少ない。私はメインステップをなにもせずに終えると、エクリプトのカードに手を重ねた。

 

「《エクリプト》でアタック!」

「《アヴァルケイン》でブロックだ!」

 

 空を駆ける大罪龍の前に、気高き竜騎士が立ちはだかる。だが、エクリプトの容赦ない砲撃の嵐に、彼は成すすべなく爆発四散した。

 巻き上がる黒煙の中から、エクリプトがその銃口をマグナに突きつける。

 

「《エクリプト》のアタック時効果。ターンに一回、バトル終了時に自分のスピリット一体を回復させ、さらに、相手のライフのコア一個をリザーブに置ける」

「……《エクリプト》が出た時点で、キミの勝ちは決まっていたってことか」

 

 わからないけど。そんなふうに黙って首肯する私に、マグナは喜び溢れんばかりの笑顔を浮かべた。今は、暴走を抑えているのだろうか。その表情は胸が締め付けられるほどに穏やかで、優しくて。瞳孔の奥が、ひどく、熱を帯びてしまった。

 

「……ごめんなさい」

「謝らないでおくれよ。オレが頼んだことなんだから」

 

 エクリプトも、本当によくやってくれた。ありがとう。そしてごめん。

 彼女はそう言って両腕を大きく広げると、まるで我が子を抱きしめるときの、「おいで」の言葉のように、愛情あふれるその一言を放った。

 

「ライフで受ける」

 

 

 

 

「ありがとう、鈴仙。おかげでやっと終われる」

 

 バトルを終え、息も絶えだえに膝をつくマグナは、私にそう笑いかけた。そのままにしておけばいつ倒れてしまうかも分からない彼女を、私は慌てて支える。

 

「……ごめん。随分と、気を使わせてしまったね」

 

 私の顔を覗き込んで、落ちくぼんだ顔で言う。違う。かつての仲間たちを傷つけたくなくて、ずっと死を望み続けていた彼女こそが、誰よりも周りに気を使っていたはずだ。

 なにも言えず、ただ首を左右に振り続ける私に、彼女は力なく微笑みかえす。

 

「キミにお願いして、本当によかった。キミにしか出来ないことだと思ったんだ。オレを殺して、この苦しみから解放してくれるのは、キミだって。キミがマコーを倒したときに確信したんだ」

 

 そんなことない。そう言おうとして、だけど、言葉に詰まった。

 レミリアを包んでいる黒いモヤが、ブチブチと音をたてて崩れていく。

 不意に、誰かが私たちの名前を呼んだ。

 

「鈴仙! マグナ!」

 

 顔を上げれば、裏路地にかけてくる霊夢の姿があった。魔理沙と、リブラと、それに咲夜も一緒だ。どうしてか、咲夜は霊夢に手首をガッチリ掴まれていて、半ば引きずられるような形で歩かされていた。

 

「霊夢……」

「アナタが咲夜の代わりにマグナを倒しに行ったって聞いて、心配したんだから」

「え。ご、ごめん……」

 

 なんかヴァルゴみたいなこと言うなことひと。

 私に抱き抱えられ、崩れ落ちる寸前のマグナを見て、霊夢は続ける。

 

「でも、良かった。啖呵切っただけあって、ちゃんと倒したのね」

「……うん」

 

 煮えきらない反応しか出来ない私になにかを感じたのか、霊夢は眉を上げたまま黙りこくった。それから、マグナが震える声を発するまで、しばらく沈黙が続いた。

 

「……咲夜」

 

 今にも事切れそうな、掠れた呼びかけだった。

 

「……なに」

 

 咲夜がそっぽを向いて返す。なんて素っ気ない返事だろう。それでも私は、真実を伝えることが出来ずにいた。

 そんな彼女に、マグナは続ける。言葉を選ぶように、慎重に、一言ひとこと。

 

「ごめん、ね。キミと、戦えなくて。オレ、どうしても、キミとだけは」

「……知ってるから、言わなくていいわ」

「え?」

 

 声をあげたのは、私だった。マグナも、私の腕のなかで目を丸くしている。

 

「咲夜? らしいわねって、どうして……?」

「……リブラが気づいたのよ。鈴仙の能力が『波長を操る』ことなら、私を無理やり落ち着かせることくらい、いくらでも出来たはずだって。でも、アナタはそれをしなかった。それは何故なのか。なにかのっぴきならない理由があるはずだって」

「……」

「そしたら、マグナの昔話を聞かされて、それで多分、お嬢様と騎士の誓いを交わしたんじゃないかって、それで……」

「……ああ」

 

 合点がいった。ジェミニが言っていた「保険」とは、このことだったのだ。結果的には彼の勘違い(むしろ私の凡ミス)だったわけだが。それにしても、私の能力名ひとつからそこまで推測してみせるリブラも中々の知恵者である。そしてその結果、私が過去のマグナを知ったように、咲夜たちもまた、かつてのマグナを知るに至った。

 咲夜は、うつむき加減にボソリと呟く。

 

「ごめんなさい」

「……え?」

「その、お嬢様のことで、頭がいっぱいで。アナタなりに色々考えてくれてたのに、全部否定するようなこと言っちゃって」

「そんな。私のほうこそ、もっと正直に伝えておくべきだったのよ」

 

 私の謝罪を受けとるつもりはないらしく、咲夜は静かに頭を振る。こういうところは相変わらず強情なのだ。でも、それが彼女の強さでもある。

 咲夜は次に、膝をついてマグナと目線を合わせた。

 

「マグナも、ごめんなさい。お嬢様との約束を必死に守ろうとしていたなんて、思いもしなかったわ」

「……レミリアは、素晴らしい、従者に、恵まれたね」

 

 マグナは小さく首を振ったあと、閉じかけの瞳で私に手を差し出した。

 

「これ……、キミに。イルも、マコーも、なにか遺しただろ? だから、オレも」

「……これは」

 

 彼女の手にあったのは、白く輝く《未の十二神皇》のカードだ。

 

「……いいの?」

「これから、キミは……ヴァンと戦うことになる、はずだ。そのとき、きっとこいつが必要になる……」

 

 水面のように光を反射する瞳。振り絞るように、彼女は震える声を発した。

 

「ヴァンと、ブラムを、殺して。そうすれば、きっと……」

 

 

 

 

 マグナを看取ったあと、私たちは、ある人物を探していた。

 月に仇なす仙霊、純狐。今回の異変にも深く関与していて、一応、幻想郷側の勢力という扱いで会議にも出席していたひとだ。

 それは、霊夢たちと互いの持ちうる情報を交換していたときのこと。行方不明になったレオを探しているという話をしていたとき、リブラがふと呟いた。

 

「……霧の湖に痕跡ひとつ無かったと言うのは、かなり奇妙だ」

「どういうこと?」

 

 ヴァルゴが反応した。ジェミニも興味深げに首をひねっている。

 

「考えてみてほしい。オレたち12宮の中で最強を誇るレオと、同じく四魔卿で最強を誇るヴァンディール。ふたりが激突したあとに、痕跡一つないのは奇妙でしかない」

「……たしかに」

 

 これは不注意だったな。顎を撫でるジェミニに、リブラは真顔で続ける。

 

「オレが思うに、誰か、意図的に痕跡を消して回ったヤツがいる。だが、それはレオでもヴァンディールでもない。イルの証言では、ヴァンディールは満身創痍と言って差し支えない状態だったらしいな。だが、彼をそこまで追い詰めるのに、レオが十分な体力を残せていたとは考えにくいし、なにより、アイツはそこまで小回りが利く男ではない」

「じゃあ、誰なんだよ?」

 

 魔理沙が、頭の後ろで手を組んで問いかけた。リブラは12宮たちを順番に見回す。

 

「ひとりいる。オレたち12宮の中に、負傷したレオを抱えつつヴァンディールから逃げきり、さらに、他の連中に追跡されぬよう一切の痕跡を消して回れるだけの速さを持った剣士が」

「キャンサーか……!」

 

 ジェミニは拳で平手をうった。リブラもこれに首肯する。

 

「だが、流石にキャンサーひとりですべてをやったとは考えづらい。誰か、アイツに協力した者がいれば、あるいは……」

「……いるわね。ひとり、キャンサーと一緒にいそうなひとが」

 

 私が呟き、魔理沙も「ああ」とうなずく。

 

「華扇だな。アイツはキャンサーを探しに行くと言っていたぜ」

「……話が繋がってきたわね」

 

 私は霊夢を見やった。

 

「霊夢、茨木華扇の仙界はどこにあるか知ってる?」

「……なるほど。確かにあそこなら、誰からも干渉されずに傷を癒せる」

 

 だけど。と霊夢は首を左右に振った。

 

「ごめんなさい。私も行ったことはあるんだけど、どうやって行ったかまでは覚えていないのよ。華扇に無理やり引きずられる形だったから」

「そう……」

「でも、知ってそうなヤツはいる」

「えっ!」と目を見開いた私に、霊夢は人差し指を立てて言った。

「小野塚小町みたいに、華扇の仙界をしょっちゅう出入りしてるヤツはいるわ。それに、これは私の予想だけど、自分の仙界を持っているヤツなら、華扇の仙界を見つけることくらい簡単にできるかも」

「自分の仙界を持ってるやつ……?」

「ええ。例えば、純狐とか……」

「あのひとか!」

 

 あの入院中に脱走する常習犯か! 興奮して霊夢を指差す私に、彼女は「それは知らないけど」と困惑気味に笑ってみせた。

 

「彼女はたしか、ブラムが隠れられそうな場所として、妖怪の山を探ってみるって言っていたわ。ヘカーティアとタウラスも一緒にいるはず」

「うん。……うん! わかった! 探してみる!」

 

 だからこうして、私たちは妖怪の山へ向けて歩を進めているわけである。

 

 レオを見つけ出せる。ようやく掴んだ、その希望を抱いて。

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