ガールズ&パンツァー  ~ 時空を超えた狼サムライ~   作:鷹と狼

12 / 14
第10話 いざ行かん、大洗へ

 

 

 

 

 

勇介達は、戦車道の訓練に明け暮れていた。

 

 

訓練内容としては、走行訓練、射撃訓練など勇介達にとっては基礎中の基礎と言える様な初歩的なものばかり。

 

勇介は、訓練中各チームの力量を測ってみた結果、全員が素人。これで全国大会出場出来るか不安になっていた。

 

彼らは、各チームの戦車の特徴を活かす為、訓練内容を考える必要があった。

 

東南アジア、欧州の米英露戦の戦車戦で激しい死闘を経験した勇介は、これ以上に機動力が重視されると考え、大洗女子学園の戦車道履修生達を敵陣の守備を突破出来る機動性に優れた攻撃部隊に育てようと考えた。

 

その中で、沖田進次郎の孫、沖田真澄も勇介たち4人からパンターⅡの操縦を受けていた。

 

 

「…おばあちゃんもこの席で、死にもの狂いで操作して戦ったんだ!やってやる、冷泉先輩みたいに超一流の操縦士になってやる!!」

 

 

 

夕方 

 

 

「今日の訓練ご苦労であった!」

 

 

『お疲れ様でした〜』

 

 

「えぇ、急ではあるが、今度の日曜日練習試合を行う事になった」

 

 

戦車道の訓練が終わり空はすっかり夕暮れ時に成っていた。

 

生徒会の号令と共に挨拶、皆が疲れ果てている中で、河嶋が突然の他校との練習試合の話が出て皆戸惑い騒ぎ出す。

 

 

「相手は聖グロリアーナ女学院」

 

 

すると、勇介が相手校の学校名を聞いて難しい顔になる。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「聖グロリアーナ女学院は全国大会で準優勝のした事のある強豪です」

 

 

「準優勝!?」

 

 

優花里が聖グロリアーナ女学院が準優勝を収める程の実力者と言うのだ。

 

 

 

「聖グロリアーナ女学院…か…いっちょ調べてみるか…」

 

 

勇介が小声で学院名を呟き、興味本位で調査しようとした。

 

 

「日曜は学校へ朝6時に集合!」

 

 

そんな中、集合時間を聞いて絶望の顔をする人物がいた。

 

 

「…やめる」

 

 

「はい?」

 

 

「やっぱり戦車道やめる」

 

 

「もうですか!?」

 

 

麻子が突然戦車道を辞めると言い出し、みほ達は戸惑う。

 

 

「麻子は朝が弱いんだよ…」

 

 

 

沙織が麻子の朝弱い事を皆に伝える。

 

彼女は昨日の朝会った時かなりフラついていた。そして、帰って行く麻子をみほ達は追って必死で説得しようとする。

 

 

「ま、待ってください!」

 

 

「6時は無理だ!」

 

 

「モーニングコールさせていただきます!」

 

 

「うちまでお迎えに行きますから」

 

 

「朝だぞ…人間が朝の6時に起きれるか!?」

 

 

麻子は言う。

 

そして優花里が更に麻子に追い討ちを掛ける言葉を放つ。

 

 

「いえ、6時集合集合ですから起きるのは5時ぐらいじゃないと」

 

 

「人には出来る事と出来ない事がある!短い間だったが世話になった!」

 

 

言って立ち去ろうとしている麻子を勇介が呼び止める。

 

 

「…待てよ、冷泉さん」

 

 

「何だ?桜井さん……」

 

 

「君の決めた事に俺はとやかく言ったり意見を押し付ける気はないが、君が俺と西住さんに借りが合ってその借りを返す為に戦車道に入ったんだろ?なのに自分は早起き出来ないから戦車道を辞めると?一度引き受けた事を途中で放り投げるっては俺は感心せん、そう言うのを恩を仇で返すって言うんだぞ!」

 

 

「うっ」

 

 

「そうだよ、麻子!!麻子が居なくなったら誰が運転するのよ!?それに良いの単位!!」

 

 

「うっ…」

 

 

勇介と沙織が麻子の痛い所を突く。麻子は、何処か後ろめたさを感じている様子だった。

 

 

「このままじゃ進級出来ないよ!?私達の事を先輩って呼ぶ様になっちゃうから!私の事沙織先輩って言ってみ!!」

 

 

「さ、さ・お・り…せん…」

 

 

「(どことなく…無理しているなぁ…)」

 

 

歯切れが悪そうに『沙織先輩』と呟く麻子。

 

そんな麻子を見兼ねて沙織が溜息を吐き、次に麻子にとっては恐怖の呪文とも言える単語を言い放った。

 

 

「はぁ〜…それにさ、ちゃんと卒業しないとお婆ちゃんめちゃくちゃ怒るよ?」

 

 

「おばぁ!?」

 

 

麻子は『お婆ちゃん』と言う単語を聞いて、先ほどまでとは打って変わり借りてきた猫の様に大人しくなったが、身体が震え、怯えた顔になった。

 

 

「(冷泉さんの婆さんは…怖い人なんだろうなぁ…)」

 

 

「わかった…やる…」

 

 

色々と迷った末に、戦車道を続ける事を承諾してくれた様子で、冷泉麻子の脱退は何とか免れた。

 

 

 

 

訓練が終わった後で勇介とみほ、他のチームの車長である磯部典子、澤梓、エルヴィンの代わりにリーダー格の装填手カエサルが生徒会室に集められた。

 

今週末の日曜日に行われる聖グロリアーナ女学院との練習試合に向けて、作戦会議が行われた。

 

 

「いいか!相手の聖グロリアーナ女学院は強固な装甲と連携力を活かした浸透強襲戦術を得意としている。とにかく相手の戦車は堅い、主力のマチルダⅡに対して、我々の砲は100m以内でないと通用しないと思え!!そこで一両が囮となってこちらが有利になるキルゾーンに敵を引き摺り込み、高低差を利用して残りがこれを叩く!」

 

 

「(成る程、聖グロリアーナはイギリス戦車のマチルダⅡか、ドイツの戦車学校で鹵獲した車輛を見物したな…)」

 

 

河嶋はホワイトボードに張られた図面のマチルダⅡと聖グロリアーナの戦い方を説明する。

 

マチルダⅡは、大戦初期のフランス侵攻時、ドイツ軍を手こずらせた戦車。

 

速度も主砲も平均的だったが分厚い装甲でドイツ軍の対戦車砲やⅢ号戦車、38(t)戦車の主砲を跳ね返していた。

 

88ミリ高射砲で撃破した影響で、後にティーガー戦車を開発するに至った。

 

 

河嶋の言葉を聞いて皆頷き勝利を確信する中で、みほだけが不安げな顔に気付いた角谷が話し掛ける。

 

 

「西住ちゃん〜どうかした?」

 

 

「あ〜いえ…」

 

 

「いいから言ってみ〜」

 

 

最初こそ遠慮していたみほだが、角谷からそう言われてみほは静かにこう言った。

 

 

「…聖グロリアーナは、当然こちらが囮を使って来る事は想定すると思います。裏をかかれて逆包囲される可能性があるので…」

 

 

「あ〜確かに!」

 

 

 

みほが言うと、皆は納得する。

 

 

「(へぇ〜中々分かっているじゃん、西住さんは流石戦車道の名家のお嬢さんってだけはあるなぁ~)」

 

 

そんな時

 

 

 

「うるさい黙れ!私の作戦に口を挟むな!!そんな事を言うのならお前が隊長をやれ!!」

 

 

 

「えぇ!!…すみません…」

 

 

 

河嶋に怒鳴られ謝るみほ。

 

 

すると勇介が進言した。 

 

 

「いや、西住さんが謝る事はない、西住さんの言う事にも一理ある。作戦に絶対に成功するなんてものは存在せん。敗北を目的とした作戦で戦闘を始める間抜けはいねぇ、戦争だろうが競技だろうが、最後の最後で何が起こるか分からないし誰にも予想は出来ん。だが、やるからには全ての力を勝利に注ぎ込むべきだ」

 

 

「桜井さん…」

 

 

「なんだと!桜井!貴様まで私の作戦に異論を唱えるのか!?」

 

 

みほを庇うと河嶋は、今度は勇介に突っかかる。

 

 

「この作戦の本質自体は悪くないので良いとして、問題は相手は準優勝の強豪校なんだろ。この作戦が必ず成功するって保証はどこにも無い。作戦ってのは最悪の事態を想定し、相手の先の先まで策を練らなければならないのが勝負の鉄則だ。この作戦には失敗した時の具体的にどのような行動にでるか明確に示されん、第一の段階で失敗した時点で大洗が勝利する全ての可能性が消失する。その程度の事も見抜けず慢心している様じゃ、まだまだ甘ちゃんだな」

 

 

「何を!?偉そうに、何様のつもりだ!!」

 

 

「日本陸軍少尉だ。戦争や戦車戦もろくに知らない小娘が!軍人の言葉に耳を貸さんか!」

 

 

「ひぃっ…」

 

 

河嶋の怒声を聞いた声で、勇介は軍人と言いながら軍刀を床に突き立てた。

 

大戦初期のマレー、フィリピン、ノルマンディー、アルデンヌ、ベルリンの戦車戦闘を経験した熟練の若干軍人。その光景を見た河嶋は涙目で脅えた。

 

そんな中、角谷が納めに入る。

 

 

「まあ、まあ、でもまぁ、隊長は西住ちゃんが良いかもね」

 

 

 

「はい?」

 

 

 

「西住ちゃんがうちのチームの指揮取って!」

 

 

 

「へ!?」

 

 

 

「あ、それと桜井君」

 

 

 

「何だ?」

 

 

 

「君には副隊長補佐兼と隊長代理を務めてくれないかな?本当は副隊長は君にやってもらいたいんだけど〜、副隊長は河嶋にもう決まっちゃってるんだけど、河嶋だけだと心配だからさ、その補佐役をやって貰いたいんだ。それに君との約束に有事の際の指揮権の移譲も有るからね。西住ちゃんに何かあった時はその時はよろしくね〜」

 

 

そう言うと角谷は笑顔で拍手をし、それに釣られる様に他の娘たちも拍手をする。

 

 

「(副隊長補佐か、小隊長の俺が補佐役と隊長代理とはねぇ)…わかりました。陸軍少尉、桜井勇介、引き受けます」

 

 

 

「頑張ってよ〜っ、二人とも勝ったら素晴らしい賞品挙げるから」

 

 

 

「え!?何ですか?」

 

 

 

「干し芋3日分!!」

 

 

「(要らねぇ~)」

 

 

「あの、もし負けたら?」

 

 

 

磯部典子が負けた時の処遇があるのか聞く

 

 

「大納涼祭りで履修生全員アンコウ踊りを踊ってもらおうかな〜?」

 

 

「(アンコウ踊り…なんじゃそりゃ…?)」

 

 

そう角谷が言うと皆が固まり、顔が青ざめていた。

 

みほは、転校してきたばかりなのでアンコウ踊りを知らず、勇介は神戸と欧州暮らしだったのでそもそも知らないので首を傾げる。その後、作戦会議はお開きになり各々帰宅して行く。

 

勇介とみほは、帰りを待っていた沙織達と晴香たちと合流する。

 

 

「アンコウ踊り~!?」

 

 

「ねぇ真澄…なんなの、アンコウ踊りって…?」

 

 

「うぅ…聞くだけでもおぞましい~…」

 

 

アリシアとパウラの質問で、真澄はアンコウ踊りを聞いただけで震えた。

 

 

「アンコウ踊り…恥ずかし過ぎる!!あんなの踊っちゃたらもうお嫁に行けないよ!!…いや、今すぐ桜井さんと婚約すれば…」

 

 

「絶対ネットにアップされて全国的な晒し者になってしまいます」

 

 

「一生笑われますよね」

 

 

「そんなにあんまりな踊りなの…?」

 

 

「どんな踊りか逆に気になるが、そんなに嫌なら勝てば良いだけの話だ!」

 

 

負けたらアンコウ踊りを踊らされる羞恥と絶望する皆に、勇介が勝てば良いと言う。

 

 

 

「そうよ、勝とうよ!!勝ってばいいでしょ!!」

 

 

 

「わかりました!負けたら私もアンコウ踊りをやります!西住殿一人だけに辱めは受けさせません!!」

 

 

「わたくしも恥を忍んでやります!」

 

 

「私も!」

 

 

負けたらあんなに嫌がっていたアンコウ踊りをやると言い出したのだ。

 

みほはいい友達を持った様であり、勇介は少し微笑んだ。

 

 

「皆でやれば恥ずかしくないよ!!」

 

 

「ありがとう」

 

 

「それよか、私は麻子がちゃんと来るかの方が心配だよ…」

 

 

「仕方ねぇ、俺も一緒に行って冷泉さんを起こすの手伝ってやるよ」

 

 

「ありがとう~桜井さぁ~ん」

 

 

 

皆の一番の心配事は今この場に居ない麻子がちゃんと起きてくる事かだった。

 

早起きが苦手な遅刻魔の麻子が時間通りに来る確率は低い。

 

そこで、勇介も彼女を起こすのを手伝うと述べると、沙織が泣き付いてきた。その後皆はそれぞれ家路に着いていく。

 

 

翌日、時刻は日がまだ登らない4時、勇介は目を覚ます。軍人として規則正しい生活を送って来た為、早朝に起きるのは難しくなかった。

 

ベッドから起き上がると顔を洗って歯を磨いた後軽く朝食を取り軍服に着替えて、寮を出る。

 

 

「あ!おはよう桜井さん」

 

 

寮の前で沙織が待っていた。昨日、一緒に麻子を迎えに行くと約束したが勇介は彼女の家の場所を知らない為、寮で待ち合わせする事にしたのだ。

 

 

 

「おはよう武部さん。それじゃぁ、早速行こうか」

 

 

「うん、ねぇ桜井さん、ちょっと手を繋いでいい…///」

 

 

「え...?///」

 

 

そして、勇介は沙織に麻子の家に案内してもらう形で向かう。

 

 

「なぁ…武部さん……」

 

 

「…えへへ…私はちょっとでも、桜井さんと恋人のつもりでいたいの…///」

 

 

「そ…そうなのか…」

 

 

数十分くらい手を繋ぎながら歩いて川沿いにある赤い壁の1階建ての平屋に着いた。

 

そして沙織がインターホンを鳴らす

 

 

 

「麻子!!起きてる試合に行く時間だよ!!」

 

 

玄関前でそう言うが返事は無かった。

何回かインターホンを鳴らすも返事が無く、完全に爆睡していると直感した。

 

すると、沙織は携帯を取り出して誰かに電話を掛ける。

 

 

『もしもし?』

 

 

「もしもしみほ!今、麻子ん家何だけど、やっぱ起きなくてさぁ!!どうしよう?」

 

 

みほに連絡して応援を要請する、電話の向こうでみほがため息を吐いているのを想像する。

 

その後、沙織が電話を切ってポケットにしまうのと入れ替わる様に鍵を取り出した。

 

 

「も〜うこうなったら中に入って起こすしか無い」

 

 

 

そう言って沙織は、玄関の扉の鍵を開けて中に入って行く。

 

 

 

「桜井さんも上がって!多分麻子はまだ寝室で寝てると思うから。麻子!起きてよ!!」

 

 

 

そう言うと沙織は麻子の寝室に直行した。

 

勇介も玄関に入って上がり、ある事に気づいた。玄関の靴置き場には入って行った沙織の革靴の他に麻子の物と思われる革靴と他の靴もサイズからして彼女の靴の様だ。

 

他の靴は一切見当たらなかった。それに、あれだけインターホンを鳴らして家族の誰一人として出て来なかったのも不思議だった。

 

そんな事を考えながら勇介は麻子の寝室に向かう。そこでは寝ている麻子の布団を武部が剥ぎ取ろうとしていた。

 

 

 

「うーんもう麻子起きてよ!!試合なんだから!!」

 

 

 

「…眠い」

 

 

「単位はいいの!!」

 

 

「よくない…」

 

 

「だったら起きてよ!!」

 

 

「不可能なものは不可能…」

 

 

沙織がどれだけ布団を引っ張ってもびくともしない。側には目覚まし時計が2、3個置いてあるにも関わらず起きられない。

 

勇介は、麻子に近づいて布団越しから冷泉の頭を人差し指で突っつく。

 

 

「おい冷泉さん、起きる時間だ。早く起きないと遅刻するぞ!」

 

 

 

「…ん?…っ!?な…なんで桜井さんがここに居るんだ!?」

 

 

「昨日、武部さんと一緒に冷泉さんを起こしに行くと約束したんだ」

 

 

「そ、そうか…だが…いきなり女子の部屋に入って来て…突っついて来るのは…い、いただけないぞ!」

 

 

「はぁ~そいつは悪りぃな、だがこうでもしないと冷泉さん起きないだろ!」

 

 

 パッパラパ~!

 

 

「っ!?」

 

 

すると、突然外からラッパの音が鳴り響き、勇介は軍人の癖で身体が動き、沙織が窓を開けるとそこには優花里が居た。

 

 

「おはようございます。桜井殿!」

 

 

「「 お~おはよう… 」」

 

 

勇介が挨拶をして来たので二人も挨拶を返すと向こうからⅣ号がやって来てⅣ号の砲身が上を向くと

 

 

 

ドカーン

 

 

 

Ⅳ号がいきなり発砲する。

 

 

「なんだ!?」

 

 

「どうしたの!?」

 

 

Ⅳ号の砲撃音に驚いて目を覚ます近隣の住民達に

 

 

「すみません!空砲です!」

 

 

キューポラから顔を出しているみほがそう言って砲撃音で驚いてしまった人達に謝罪する。

 

 

「(やれやれ…騒音出されればそりゃ近所迷惑だな…)」

 

 

 

「「 おはようございます 」」

 

 

「はぁ〜…私を起こすだけなのに…ここまでするとは…」

 

 

「それぐらいやらないと冷泉さん起きないだろ」

 

 

 

その後、麻子は渋々起き上がり、制服を持ってパジャマのまま沙織に担がれる形でⅣ号に乗り込む。

 

 

「あの、桜井さんも一緒に乗って行きますか?」

 

 

 

「ありがとう西住さん、その気遣いは無用だ。…そろそろ来る頃だな」

 

 

勇介はみほの誘いを断り自身の腕時計を見る。すると、地震のように家の家具が揺れ始め、それと同時に独特のエンジンの馬力の音と履帯の動く音が聞こえて来た。

 

 

「おっ、来たな!」

 

 

勇介がそう言うと、みほ達も後ろを振り返ってみると向こうから勇介の愛車パンターⅡがやって来た。

 

パンターⅡは、Ⅳ号の後ろで止まり、キューポラから晴香達が顔を出す。

 

 

「迎えに来ましたよ~車長~!」

 

 

「さっさと行きましょう!もうみんなは先に行って待ってますよ~!」

 

 

「もう残っているのはあたし達だけだよ」

 

 

「早く行こう!!」

 

 

「あぁ、万が一の時のためにメンバーを呼んでおいた。もし、冷泉さんが起きなかった場合最終手段としてそのままパンターに乗せていくつもりだった」

 

 

そう言って勇介は、パンターⅡに搭乗した。

 

 

「じゃあ!桜井さん達は、私達の後について来て下さい!」

 

 

「わかった。よし、沖田さん!このままⅣ号の後に付いて行くぞ!」

 

 

 

「了解です!」

 

 

 

そして、Ⅳ号が発進すると勇介達のパンターもⅣ号に続く様に動き出し、真澄の操作で住宅地を走行して行く。

 

 

「なになに?」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「す、すみません」

 

 

朝っぱらの住宅地で戦車の走行音に住宅の人々が家から顔を覗かせる。みほは、騒音を出している事に謝罪する。

 

 

 

「あら〜Ⅳ号久しぶりに動いているの見たわね〜おや!?パンターは初めてだね、うちにあったんだね?」

 

 

「すご〜い戦車!」

 

 

「戦車道復活したって本当だったのね」

 

 

「試合か、頑張れよ!」

 

 

「ありがとうございます!頑張ります!!」

 

 

 

花に水やりをしていた老婆は動いているⅣ号を見て懐かしむと同時に大洗にパンターがあった事に驚いた。

 

そして、家の二階の窓から顔を出している子供と母親は興奮しながら戦車を見て、隣の家のおじさんは応援してくれた。そして、みほがお礼を述べる。

 

 

勇介、晴香、アリシア、パウラが、この様に住民から暖かく見送られるのはドイツの首都ベルリン防衛以来。

 

 

「こうやって、人々に見送られるのも久しぶりですわね車長…」

 

 

「あぁ、あの世界大戦で6000万人の人々が命を落としたのにそれを皆70年で簡単に忘れ、兵器である筈の戦車が今では競技の一つとしてこうして人々に普通に受け入れられているんだな」

 

 

「そうね…」

 

 

 

「「「 … 」」」

 

 

 

そんな人々とは、裏腹に70年の時を越えた勇介達は複雑な心境だった。彼らは、未だに戦車が競技の一つとして扱われることに抵抗があった。それは、あの戦争を戦った人達は多くの戦友を失い、多くの敵兵を殺してきたことだ。

 

その戦車が、競技となっているなど戦争を命懸けで戦った兵士達や死んで行った者達に対しての侮辱でしか無い。

 

その後、みほ達や勇介達は他の戦車道の履修生達と合流して学園艦の甲板に大洗に寄港するのを待っていた。

 

 

「久しぶりの陸だ。アウトレットで買い物したいなぁ」

 

 

「試合が終わってからですね」

 

 

「えぇ〜昔は学校がみんな陸にあったんでしょ…いいなぁ、私その時代に生まれたかったよ」

 

 

「私は、海の上が良いです。気持ちいし星もよく見えるし」

 

 

「西住さんは、まだ大洗の街歩いた事無いですよね?」

 

 

「あ、うん」

 

 

「あとで、案内するね」

 

 

「ありがとう」

 

 

大洗に来たことのないみほに大洗の街を案内しようと提案する。

 

一方の勇介達は陸地の方を見ていた。

 

 

「いよいよ…70年の未来とは言え、母国の日本に帰って来たんだ!」

 

 

その後学園艦は大洗の港に着き、港に着きみほ達は、学園艦を降りて行く。

 

勇介たちのパンターⅡが降りて、真澄以外は次々と下車した。

 

 

「やりました…ここが日本に到着しましたのね…お婆様の故郷、坂東はどこかしら…」

 

 

「やっと日本だよ…ステラ…マリー…シャルロットさん…あたしとアリシアさんは一足先に…」

 

 

「…ここが未来の…お父ちゃん…お母ちゃん…虎雄兄ちゃん…あたしは日本に帰ってきたよ…」

 

 

「日本だ…日本の土だ!…3年振りに帰って来たんだ~!」

 

 

アリシア、パウラ、晴香、勇介は日本の地に足を踏み入れ、歓喜の余り涙を流した。

 

 

その時、大洗の学園艦の隣に大洗よりも一回りも二回りも巨大な学園艦が大洗に寄港して来た。

 

 

 

「デカっ!!」

 

 

「あれが…聖グロリアーナ学院の戦車ですか?」

 

 

「うん……」

 

 

皆は、その巨大さに圧倒されていた。そして、学園艦からチラッと聖グロリアーナ戦車が見えた。

 

 

「(マチルダⅡと、その前方には…チャーチル戦車か…面倒な奴がいるな)」

 

 

マチルダの先頭を走るチャーチル歩兵戦車を見てそう述べる勇介。

 

チャーチル歩兵戦車は、戦時のイギリスの首相ウィンストン・チャーチルの名が付けられた戦車。

 

 

最後の侵攻作戦となったアルデンヌ戦にも導入され、勇介達も何度か戦った事のある相手だった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。