ガールズ&パンツァー ~ 時空を超えた狼サムライ~ 作:鷹と狼
生徒会室ー
勇介たち4人はみほたち3人に生徒会室に案内され、生徒会長たちを待っていた。
「…あの方たち、なんでパンターⅡごと森林に…謎でありますね…」
「でもあの車長さん、スッゴくいい男性~///彼氏になってくれるかな~///」
「さっきまで野蛮、暴力的でブツブツ呟いたのにですか…?」
「わ〜わ〜!!……仕方ないじゃん、顔がどす黒く汚れててわからないよ///」
優花里は神妙な目付きで睨み、沙織は車長の勇介を見て赤面したものの、華が発見した当時の言葉を呟いた。
「あいつら、なんであたしをここに寄越したのでしょう?」
「まぁまぁパウラ。西住さんから聞きましたがここは学園艦と説明をしてくれましたが、どうやってベルリンから……それに、長い間で憧れた日本にいるなんて夢みたいです///」
「日本ねぇ〜…確かに所々日本語が書かれてあるが、どうも日本には思えない…ねぇ、車長…車長…?」
パウラはなぜ乗員をこの部屋に案内したのか疑問に感じ、アリシアはやや興奮しがちで、長年の夢であった日本への訪問だった。
晴香はこの大洗女子学園艦とは疑念に感じ、未だに信じられなかった。
右手に軍刀の狼虎、頭部と左肩に包帯を巻かれた勇介は窓越しで景色を観察していた。
「(…あの夢は一体何なんだ…兄貴と雪義姉さん……澪はどうしているんだ…)」
考えていると扉が開く。
そしてそこから小柄で女子学生、ツインテールで干し芋を片手に持つ少女と、少し背が高く、親しみやすそうな少女、そして黒髪で片眼鏡をかけた目の鋭い少女、そして最後に勇介たちを救助した4人組の女子だった。
勇介たちは、軍隊経験者の癖で起き上がりビシッっと直立の姿勢を取ろうとする。
「ああ、いいよ。そんなに畏まらなくて」
干し芋を持った少女、角谷杏がそう唱える。雰囲気としゃべり方を見て恐らくこの子が責任者なのだろう
「……あんたがここの責任者か?」
「まぁ〜そうなるかね〜私はこの大洗女子学校の生徒会長の角谷杏だ。よろしく」
「あ…あんたが…生徒会長さんか…」
理事長か校長じゃないのは残念だが、学校の生徒の中ではトップという立場には変わりない。
勇介は彼女たちの前に向けようと体を動かそうとすると角谷杏は
「いいよ、無理しないで怪我しているんだし」
「いいえ、大丈夫です」
初対面の相手に体を横向きにするのは失礼と実感しながらも、勇介たちは体を彼女の前に向ける。
「あなたたちが俺たちをここに運んでくれたのですか。生徒会長さん。それと後ろにいるのは…?」
「うんそうだよ。あ、あと後ろにいるのが同じ生徒会の…」
「生徒会副会長をしています。小山柚子です」
「河嶋桃だ、生徒会広報をしている」
「そして、そっち居る四人の子達が君達を見つけ救助した」
角谷杏会長が右側の生徒会役員の紹介をすると左側にいる四人の女の子が自己紹介する。
「えっと、西住みほです。よ…よろしくお願いします」
「自分は秋山優花里です」
「私、武部沙織であります!」
「わたくしは五十鈴華と申します」
と、礼儀正しく挨拶をした。
「あなたたちが助けてくれたのですか…心より感謝します」
と、勇介は頭を下げ、その動作に晴香達も頭を下げる。
「あっ!?いえ、そんなに頭を下げないでください。私たちは当たり前のことをしただけですから!?」
西住みほと名乗った子は慌ててそう言うが勇介は
「いえ、命を救ってくれたんです。頭を下げて礼を言うのは当然です」
と、そう言うと。会長たちは感心した表情をしていた。
「ふ〜ん…君は礼儀正しいね…で、君達は一体何者なの?うちの学校の裏山にいたけど?」
そう言うと、勇介は目線で晴香達を見ると彼女達は頷く。彼の言いたいことが分かったのだろう。
そして勇介たちは角谷会長たちに自己紹介をする。
「俺は大日本帝国陸軍第4戦車連隊、欧州派遣外人部隊、戦車連隊所属、桜井勇介。階級は少尉です!」
「同じく、第4戦車連隊の大賀晴香。階級は曹長です」
「ドイツ国防陸軍、アリシア・A・フェアバンク。曹長ですわ」
「ドイツ国防陸軍、パウラ・M・オットー。伍長です」
と自己紹介するが、角谷会長らはまるで訳が分からんというような表情をしていた。
その裏で優花里と華はこそこそ話しをしていた。
「(日本陸軍って…随分前に解体されたよね優花里さん?)」
「はい…1945年の敗戦と同時に無くなったはずです。それに遣欧部隊とかいう部隊は聞いたことがありません)」
と、何やら話しているみたいだが声が小さいため聞き取れなかった。すると角谷は
「ふ~ん…で、生年月日と出身は何処?」
「え?1927年7月16日、兵庫の神戸です」
「あたしは1928年12月11日、鹿児島の錦江村出身」
「私は1928年10月27日、ドイツのミュンヘン出身ですわ」
「あたしは1929年4月10日、ドイツのベルリン出身です」
と、そう言った瞬間、余計に角谷たちの顔が曇った。
だが、勇介はそんなことを気にせずに質問した。
「…すみませんが角谷会長さん。こちらからも質問しても構いませんかね?」
「ん?何?」
角谷会長がそう訊き、勇介はあることを訊いた。それは
「戦争はどうなったんだ…終わったのか…どうなったんだ?」
「「「「 え? 」」」」
勇介の質問に角谷たちは目を点にし驚いた顔をする。
彼は気になった。あのベルリンの戦いのあと、戦争がどうなったか、それを確認したかった。
「戦争って何?まさか第二次世界大戦?」
角谷が首をかしげてそう訊くと
「第二次世界大戦…?」
「ねぇ…ベルリンは…?ドイツはどうなったの…?」
パウラがそう訪ねると、河嶋と名乗る女が
「貴様!!いい加減にしろ先から聞いていれば、日本陸軍だとかベルリンとかデタラメな事ばかり言って!ちゃんと真面目に答えろ!!」
と、いきなり怒鳴ってきた。その言葉にパウラが
「真面目に答えているわ私たちはドイツ軍と日本の軍人!さっきまでベルリンで戦ってたの!あんたこそ、ここが日本の学園艦だなんて、おかしなことを!!」
「なんだとっ!黙って聞いていれば!!」
と、勇介たちにつかみかかろうとした瞬間
「車長、軍刀を借りるよ」
晴香は勇介の狼虎を鞘から抜き、河嶋の首筋に刃を近づけた。
「あなた、負傷しているあたしの妹分に手を出せば、首をバッサリ切り、皮膚を引きずりだすわよ」
「ひっ!?」
「も、桃ちゃん!?」
「晴香姐さん!?」
と、晴香が河島の腕を掴んで抑え込み、首筋に狼虎の刃をつけて、殺気のこもった眼で静かに呟いた。
「え!?」
「あら、狩人みたいですね」
「いや、違うと思うよ?」
「おおっ!あの人の持っている軍刀、綺麗に輝いていますね!」
角谷の後ろで沙織たちが驚き、他の人たちは違ったことを言っていた。
「お、お、お前は!?」
「彼の補佐官であり副長よ。それよりあなたがケガ人相手に手荒なことをしようとするなんて、あまり褒められた行為ではないわ…あたしは短気な奴は大嫌いなんで、いっそここで始末してあげちゃる…徴兵される前、あたしは狩人をやっていたんで…」
「ひっ!?ゆ…柚子ちゃん助けて~!!」
晴香の言葉に、河嶋は泣きながら嘆いた。
「晴香、止めんか。この人達は俺たちをここまで運んでくれた人だ。それに、狼虎を返せ!」
「…分かりました。」
そう言い晴香は河嶋の手を放し、軍刀狼虎を勇介に返却した。
そして河嶋は腰を抜かしたように座り込み、ガタガタ震えていた。
「すみませんな会長さん、どうやら互いに話の噛み合わないところがある。ここはひとつ情報交換しながら互いの状況を確かめたい」
「お〜いいねぇ、君は話の分かる人で良かったよ。あと、さっきの河嶋の行為はごめんね~河嶋は結構気が短いところがあるんだよ」
「いや、謝るのはこちらの方だ。民間人、学生さんに刃物を向けてしまった。ほれ晴香、謝れ…」
「車長の命令と言えどもヤダ、あたしはあんな奴に頭を下げたくない」
「あはは~じゃあ、お互い様だね」
勇介の言葉で、晴香はそっぽ向いた。
「ええ…では、ここで互いの問答をしましょうか」
勇介たちと角谷は自分たちの知っている状況を交換し始めるのであった。
「じゃあ、桜井君だっけ…今は何世紀の西暦何年?」
「今は20世紀の1945年でしょ?」
「…」
聞かれた西暦を答えると角谷達一同が急に黙り込みそして歯切れの悪そうに勇介達に言う。
「えっと…非常に言いにくいんだけど、今は21世紀で2012年なんだけど…」
「「「「 えっ!? 」」」」
角谷から今は21世紀で、勇介達のいた1945年から約70年も経っていると言われ彼らは絶句した。
「2012年だと!?あたしたちがいるのは1945年!2012年って70年後の未来じゃないか!?」
「まさか、あたし達がちょっと気絶している間に70年の時が流れた訳じゃないよねえ!?」
「ですけど、わたくし達は全然歳をとっていないですよね?本当に70年後ならわたくし達は80超えの老人に成っている筈ですわよ?」
「それに、数時間気を失っていただけで…そこはもう未来だったなんてそんな小説みたいな事…」
「まるで、『浦島太郎』みたいだ」
晴香とパウラが驚愕し、アリシアは疑問を浮かべていると勇介は、日本の民話にある『浦島太郎』に例えた。すると
「じゃああたし達は、本当に未来の世界しかも70年後の日本にいるって事!?」
「そんな…まさか!!」
騒ぎ立てる。一方それを他所に角谷達は
「(会長、彼等のあの反応を見る限り嘘をついている様には見えないですし、もしかしたら彼等はタイムスリップして来た人達なんじゃあ)」
「(タイムスリップって、あの過去や未来の時代に時空移動する?どう思う河嶋、彼等がタイムトラベラーだと思う?)」
「(にわかには信じられないませんが、彼等の持っていた銃や刀が本物だった事に加えて、彼等の乗っていた戦車の登録番号を調べてみましたがどこの学校の物とも一致しませんでしたから断定は出来ません)」
と耳打ちし、角谷達の左隣のみほ達も
「(え〜とっ…つまりあの人達は現代の人じゃなくて過去の人って事かな?)」
「(そう言う事ですよ西住殿!まさか、ドイツ軍の外人部隊に日本人が居たとは知りませんでした…)」
「(要するにあの人達は、過去からやって来たって言う事なの!?)」
「(これはあまりにも荒唐無稽な仮想小説の内容みたいです!)」
そんな事を耳打ちするみほと沙織、華と優花里。
すると勇介達は、冷静に落ち着きを取り戻すと彼は生徒会役員とみほ達に向き直り真顔でこう問いかけた。
「本当に此処が未来の世界なら、教えてくれ戦争はどう成ったんだ?」
『!!』
勇介からそう聞かれて一同はばつが悪そうな顔をする。
「それを聞いていいの?君達にとっては残酷な事実かもしれないそれでも聞くの?」
「構わない、それに知りながら目をそむける者は知らずにいる者よりも罪は重い!」
「そう、世の中には知らない方が幸せって言うけどわかったよ…」
勇介達に、その後の戦争の行方を説明する為この中で一番そう言うのに詳しい勇介が適任と考え角谷は、秋山優花里に任せる事にした。
「では、ここからは秋山優香里がご説明させていただきます!!」
1945年4月30日ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーが自殺し5月2日ソ連赤軍によりベルリンが陥落、ドイツ第三帝国崩壊、ドイツは無条件降伏した。
8月15日、同盟国である日本も無条件降伏し第二次世界大戦が終結した。
そこからナチスドイツのユダヤ人の大量虐殺などが発覚しドイツは戦争責任を問われた。
戦後ドイツはアメリカとソ連に東西で分割統治され西ドイツと東ドイツに別れ再びドイツが統一したのち、1990年10月3日「東ドイツ」が『ドイツ連邦共和国』に編入された。
「そうか、結局ドイツ…祖国日本は戦争には勝ってなかったか…」
「あたし達のやってきた事は全て無駄だったって言うの…」
「クソ、あたしらは何の為にここまでして来たんだよ…」
悔しそうに悪態をつくも直ぐに冷静さを取り戻した。
「次は私達が、君達に訊く番だね〜」
と今度は角谷が、勇介達がどう言った経緯でここに来たのかを訊いてきた。
そして、勇介はことの経緯を話す。
第二次世界大戦が始まる以前、陸軍幼年学校に入学。
様々な理由により新設したばかりの戦車学校に志願し、1941年12月の開戦、マレー半島の攻略、翌年にフィリピンの攻略に参加。
攻略を終えた勇介は本土に帰還、1年弱で戦車学校の教官に着任。
だが、対戦車戦闘の技術を習得するために、下士官少女の大賀晴香と共に1943年、ドイツに留学。
ドイツの戦車学校で学んで1年後、通信科のアリシア、駐在武官の一員のパウラと共にフランスのノルマンディー前夜に、戦車部隊に配属され米英など連合軍の上陸に備え、防衛に参加したが、連合軍を撃退せず、日本の航路を断たれ、絶望した。
戦争末期、ドイツ国防軍兵士は寄せ集めの実戦経験の少ない外人達をとるに足らない格下の連中だと見下していた。
勇介たちをみくびり、日本人は拳銃しか使えず戦車もろくに動かせないとバカにしていた為、自分達は戦場で手柄を立てる必要があったのだと。
最初は慣れないパンターⅡ戦車を受領、戸惑っていたがフランスのノルマンディー攻防戦で重ねる事によって次第に鍛えられていき、腕を磨いた勇介は、数々の戦場で国防軍の為に戦線を突破して道を切り開いて行ったのだと。
その後勇介達はその功績が認められてドイツ国防軍の精鋭部隊ラスナー戦車部隊に配属になり、戦争末期最大のラインの守りこと、アルデンヌ攻防戦と撤退戦。
1945年の4月末にソビエトロシア軍が大規模な攻勢に出た為、自分達が単独で、ベルリン駅に集うドイツ民間人、日本異邦人をキール、ヴィルムスハーフェン港からスウェーデンに逃す為に守ることに阻止を図り、多数のソ連軍戦車を撃破するもその間に自分達の戦車が損傷を負い、ベルリン駅で意識を失った事を話した。
「話を聞く限り君達は、何かの拍子で時代を超えて未来にやって来たと考えられるんだよね〜」
「そうなるのかな?」
「それで…あたしらこれからどうすればいいんだろう…」
「その事で君達と話をしに来たんだよ。君達は、これからどうする?元の時代に戻りたい?」
杏が勇介達の今後の事についての話に移った。
「いいや、俺達は生きているそれだけで十分だ」
「家族のことは?親兄弟とかは」
そのことで勇介たちはハッとした。
アリシアとパウラは一人っ子で、ドイツにいる家族はどうなったか分からない。
晴香の兄は戦闘機パイロットであり、家族は消息不明。
勇介の両親は水害で亡くなっていた為に、姉は従軍看護婦、兄は戦闘機パイロットであった為に消息が不明。
そして、パンターⅡの操縦士の豊田純子と、自身の婚約者の西澤澪の行方が気になっていた。
「親族は戦死通告を受けた筈だ。戻る必要はない死人は戻らなくていい。それに例え戻れたとしても俺らにはもう居場所はない、ソビエトロシア軍を散々苦しめた俺達を連中が見逃してくれるはずがない恐らく激しい報復が待っているだろうな…」
「そうなると君達はこれからどうやった生活していくの?」
「そうよ、住む場所と生活費とかはどうするの?アルバイトをして稼ぐにしても履歴書の作成や住民票とかが必要になるんだよ?」
「そうだ、お前達は過去の人間なんだ、本来なら存在してはならないんだぞ!それに、お前達この時代の日本のお金なんか持っていないだろ!!」
「確かに、…あたし達の今後の生活を考えると衣食住も必要だねぇ。それにあたし達の待ち合わせってドイツのライヒスマルクしか持っていないよ」
「そこで、君達に提案なんだけど〜、まず第一に君達が大洗女子学園に身を置くそうすれば色々と援助してあげるし、君達の身の安全や秘密の保障を取り付けてあげるよ」
杏は、勇介達に都合のいい提案を持ちかけて来る。しかし、これには何か裏があると感じた勇介は、こう問い返す。
「それで、見返りは何だ?そこまでしてくれるからには何かしら条件があるんだろ?」
「察しがいいね〜、話が早くて助かるよ桜井勇介君、実は君達と君達の乗っていた戦車共々うちの学園の戦車道に入って手を貸してほしいんだ。これが条件なんだよ〜」
勇介達には拒否権がない条件だった。
この時代、そしてこの日本には彼らの頼れる身寄りがない為、断る事は得策ではないと考える。
「戦車道?何だそれ…初めて聞くね?」
「あたしも聞いた事がない?」
初めて聞く単語に晴香とパウラは頭を傾げ、角谷が戦車道について説明する。
「戦車道ってのは、その名の通り戦車を用いて行われてる武道だよ。今じゃあマイナーな武芸となっているけど、昔は華道や茶道と並び称される程の伝統的な文化で、世界中で女子の嗜みとして受け継がれて来たんだよ。礼節のある、淑やか慎ましく、凛々しい婦女子を育成する事を目指した武芸なんだよ〜」
「戦車で、婦女子を育成ですか…なにか全然結び付かないですね…わたくし達が居なかった戦後では世界はそこまで様変わりしていたんですねぇ…」
と戦車道と言う初めて行く武道にアリシアは、人殺しの兵器である戦車が今では、スポーツの一環という事に驚いたがちょっと納得がいかない様子だった。
それから勇介達は、角谷から戦車道と言うものを色々聞かされ、そして数年後に日本で行われる世界大会に向けて文部科学省から全国の高校や大学へ戦車道へ力を入れるよう要請があり、これにより大洗女子学園がかつて存在した戦車道を復活させる事や、戦車道の履修者への特典や優遇措置の約束をした事や戦車道の西住流の名門家の西住みほ戦車道に入ってもらって近く開催される全国大会に出場する事などを話した。
「成る程話は大体は分かった。しかし、解せねぇなぁ…何故俺達に好条件を出してまでその戦車道に参加して欲しいんだ?人数や戦車の数も揃ってしかも戦車道の名門の西住みほさんが居るのに?そもそも戦車道の履修者を集めるにしてもこの高待遇は異常だ!角谷会長あんた、他に何か隠しているんじゃねぇのか…?」
机を叩き、述べながら勇介は睨んだ。
「…いや〜ちょっとそれは言えないんだよね〜。事情は後々説明するからぁ、だからここは取り敢えず納得して貰えないかな?」
「まぁ、人には言えない事が一つや二つあるから、これ以上の詮索はせんが…」
「…そうしてくれると助かるよ…」
冷や汗と頬を掻く角谷を見て勇介は、これ以上の詮索はやめとく事にした。
角谷は、笑って誤魔化してはいたが何処となく真剣な目をしていたのでこれは、ただ事ではない重大な事があると勇介は悟った。
「(いいんですかこの学園の事を言わなくて?会長、もし言えば彼等が協力してくるかも知れないですよ?)」
「(それもそうだけど、あの子達の目もあるしさぁ〜その際であの子達に余計な心配や重い責任を負わせたくないし)」
耳打ちしてくる河嶋を他所に杏は、後ろのみほ達の方を見る。当のみほ達は、高待遇の訳にそこまで気にしている気配はなかった。
「まぁ、そう言うわけで君達も私達も一緒に全国大会で出場して優勝すれば、全国から人気者になれるかも知れないし楽しいと思うよ〜。それに戦車道に男性がやっちゃいけないってルールもないし大丈夫だよ」
角谷はそう言って干し芋を食べる。
それを聞いて勇介は、ある一言を角谷達に問い質した。
「楽しい…なぁ、あんた達は…人を殺した事があるか?」
『え!?』
「ないよー」
「ある訳ないだろ!!何を聴いてくるんだ貴様!!」
「私もありませんよ!」
と真顔で答える杏や怒号する河嶋や困った顔する小山がそれぞれ否定する。
「ふぇっー!?いや…あのその…あ、ありません!」
「自分もそんな事はしませんよ!」
「わたくしもありませんわ!」
「ある訳ないよ!そんなの!!」
みほ達も否定する。突然、勇介から思わぬ事を言われて最初皆戸惑うが否定した。
「そうか、俺自身は家族と別れ、生活に困らない陸軍に志願し、彼女たちは別に兵隊になって、殺人狂な訳じゃないし好き好んで殺していた訳でもない。ただ、あんた達と違う事は…この軍服を着てるって事だ。命令…とあらば殺るのが俺達軍人だ。だから俺達は、殺られる前に殺る相手が俺達を殺す気なら俺達は躊躇なく相手を殺す!だから、俺達は常に米英、ソ連兵を憎み、一人でも多くの敵を殺さなければならない、そうしなければ自分が殺されてしまうからだ。だから俺たちはずっとそうやって多くの敵を殺して来た。それが俺達軍人の仕事だからだ。何故人を殺すのか?それが兵士に与えられた任務だからだ」
「な…貴様らは、人を殺して何も感じないのか!?心が痛まないのか!罪悪感は無いのか!命令だから任務だからと割り切るのか!!」
「なら、聞くがお前達は今まで殺した虫の数を覚えているか?虫を殺して何か感じるか?そんな事引きずって気にしていたらこっちがやられる戦場では、一瞬の迷いが命取りになる。目の前の敵を一瞬でも早く殺した方が生き残る。何も感じないと言えば嘘になるがそれでも俺達はやるしか無かったんだ。死にたく無い、戦いたく無いと思っても相手はこっちの意を汲んでくれない。軍人は、本来国民の生命と財産、国家の主権を守る為に存在している。決して、安直なヒューマニズムによって戦うものではない。戦場はそもそも敵を殺す場所だ。俺達は、その覚悟を持ってこの軍服を着ている。死から目を背けてはならない、殺した人々を忘れてはならない、何故なら、彼らは殺した俺達の事を決して忘れないのだから。話を聞く限りあんた達は、戦車に対する意識が甘く・危機感に疎く・戦車を武道の一環と勘違いしている様だが戦車が活躍するのは人々が狂い殺し合う戦争だ!結局戦車は兵器で人殺しの戦争の道具、戦車の操縦は殺人術、どんな綺麗事やお題目を口にしても、それが真実!戦車は祖国を守るために戦い、多くの伝説を残したかも知れんが、その伝説は多くの人々の屍の犠牲の上に成り立っている。あんた達には、戦車を操るという事が人を撃つ事がどういう事かどんな気持ちか分かるか?撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ!あんた達には、その覚悟があるのか?戦争の反省をどう活かし恒久の平和でいられるかを考えるのが今を生きる君達の使命なんじゃないか?」
『…………』
皆が黙り込む。
確かに戦車は人を殺す為に造られた殺人機械だが、彼女達にとっては一種のステータスに等しい。戦車と言う兵器が及ぼす影響知らず・考えずに乗りこなそうとしている。
あの地獄の様な戦場で、対米英露戦を経験している勇介達にしてみれば、兵器を扱うと言う事にどれだけの多くの兵士の命を救うと同時に多くの兵士の命を奪うと言うのか嫌と言うほど経験した。
「勇介車長、落ち着いて!気持ちはわかるけど冷静になって」
「すまない晴香、すみませんな角谷会長少し熱くなったしまた」
勇介が謝ると角谷は首を左右に振った。
「うんうん。ごめんね…君達の気持ちも考えないで」
「いえ、角谷会長。悪いが条件を呑むかどうかは少し仲間達と考えさせてもらえませんかね。こっちも色々と気持ちの整理とかもしたいので」
「うん分かったよ〜じゃぁ落ち着いたら生徒会室に来てね。待っているから〜」
角谷が別の用事で生徒会室から退室しようとする。
「あの…桜井さん、桜井さん達はなんで戦うですか?」
みほが何故戦うのかを聞いて来た。そして
「西住みほさんだったっけ…簡単だ"死にたくない"ただそれだけだ。理由はいつだって単純だよ」
「そうなんですか」
そう聞くとみほも生徒会室から退室して行く。