ガールズ&パンツァー ~ 時空を超えた狼サムライ~ 作:鷹と狼
翌朝、目が覚めた勇介は、まだ時間に余裕があったのでゆっくりと朝の身支度をして、学園から特別に支給された大洗の男性学生制服を着用した。
そして軽い朝食を済まし、腰に軍刀狼虎を帯刀し、P-38拳銃をホルスターに入れて部屋を出た。
晴香、アリシア、パウラも大洗学園の制服を着用し、学園に通学した。
「学校か…俺の年齢はまだ学生の身分でありながら…行くのが久しいな~!」
勇介が暫く歩いていると目の前にふらついて歩く大洗女子学園の生徒がいた。
どこか具合でも悪いのか、本来人とあまり接触してはいけないが困っている人を見捨てる様な薄情な奴ではないため心配した勇介は、その女子生徒に声をかける事にした。
「おい!あんた大丈夫か?どこか具合でも悪いのか?」
「辛い…」
「は…?」
「生きているのが辛い…これが夢の中ならいいのに…」
「おい!君しっかりしろ!」
「だが、行く!…行かねば」
彼女は極度の低血圧の様だったために、それでも登校しようとするその根性は褒めてあげるにも関わらず
「肩は…無理か…仕方が無い」
肩を貸そうとしたが勇介と彼女の身長の差は開き過ぎるため断念して、勇介は彼女の前に出て屈む。
「乗れ、途中までおぶって行ってやるから!」
「…すまない、親切な人恩に着る…」
彼女は、遠慮なく勇介の背中に乗せる。
女性の体重は意外と軽く、自身が武装する人間に対して警戒心が薄い事を考えながら暫く歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「桜井さん!!」
「西住さん?」
声のした方を振り返るとみほが走ってやって来た。
寝坊して慌てて来た様子で、みほは勇介の背負っている女子生徒を見て事情を聞いて来た。
「どうしたんですか?この人背負って!?」
「あぁ、実は学園に向かう途中この子が貧血でふらついて歩いていんで学園まで手を貸してあげているんだ」
「そうだったんですか。やっぱり桜井さんは、優しい人です。五十鈴さんが怪我をした時もこの人が困っている時も桜井さんは助けてくれる優しい人です」
「う…よしてくれ、俺はそんな大層な人間じゃない」
そんな風にみほと会話して歩いていた。
背負っている彼女は、ほぼ寝ている状態だったが、そんなこんなで学園の校門の前まで来ていた。
「西住さん、後はこの子の事頼めるか?」
「はい!分かりました。それじゃあ後で」
「あぁ」
勇介は、彼女を下ろしてみほに彼女の事を任せる事にした。そして、別れ際に彼女から声を掛けられた。
「親切な人…あんた名前は?」
「桜井勇介だ、本日付けでこの学園に通うことになった」
「覚えた、わたしは冷泉麻子。桜井さんこの借りは必ずいつか返す」
別れ際に彼女、冷泉麻子から学園まで運んでくれた恩を返すと言われた。
他人に受けた恩をきっちり返すとは義理堅く。
そう思い勇介は、人気のない裏門から学園内に入る事にした。
そして、校門の前には風紀委員の腕章を付けたおかっぱ頭の少女園みどり子が校門前に立っていた。
「冷泉さんこれで連続245日の遅刻よ」
「朝は何故来るのだろうか…」
「朝は必ず来る物なの!成績がいいからってこんなに遅刻ばかりして留年しても知らないよ」
「えっと西住さん。もし、途中で冷泉さんを見掛けても今度からは先に登校する様に」
「あ、はい」
「…そどこ」
「何か言った?」
「別に…」
麻子は、反発する様に園みどり子の名前を略してそど子と呼んだ。
聞こえたみどり子は、キリッと睨みつけて言うと、麻子はさっき言ったそど子呼びをはぐらかして、みほに担がれながら校内に入って行く。
結局麻子は、勇介に背負って貰ったのにみほと揃って遅刻確定だった。
「あんたも悪かった…」
「あ…いえ」
「いつか借りは返す」
彼女は勇介だけではなく、みほにも礼を言って借りを返すと言って二人は教室へと向かった。
その後、午前の授業が終わり午後になり戦車道履修生達と、軍服に着替えた勇介達が戦車格納庫に集合していた。
「遅いから心配しました」
「寝過ごしちゃって」
「そう言えば勇介車長も遅かったですね。何かあったの?」
「何って…人助けってやつだ」
「教官遅〜い焦らすなんって大人のテクニックだよね」
すると、空からジェットエンジンの独特の轟音が聞こえて来た。
上空から戦後に設立した防衛組織、航空自衛隊の『C-2改』が飛んで来た。
C-2改は低空飛行を開始すると後部のハッチを開けてそこから帝国陸軍の後継組織、陸上自衛隊の最新鋭10式戦車が空挺降下して来た。
着地した10式戦車は、駐車場に停めてあった赤い車に激突し赤い車はそのまま吹っ飛ばされる。
「学園長の車が!」
「あ〜やっちゃったね〜」
そのまま10式はバックして赤い車を踏み潰してぺしゃんこにしてしまう。あの戦車の乗員はいつか学園長から訴えられるんじゃないか?
「ポテチ…」
「あぁ…ありゃ完全に廃車だな」
学園長の車をお釈迦にしたにも関わらず10式戦車はこっちに向かって来て停車する。そして女性が上半身をキューポラが出して挨拶して来た。
「こんにちは!」
そして、みんなはそれぞれのチームで整列をし、その前に戦車道の教官が立つ。
「騙された」
「でも、素敵そうな方ですよね」
沙織は女性の教官だったので落胆し、華がフォローする。
普通戦車道の教官なんだから女性だと、心の中で実感した。
「特別講師の戦車教導隊蝶野亜美一尉だ」
「よろしくね。戦車道は初めての人が多いっと聞いていますが、一緒に頑張りましょう」
元気よくあいさつをする蝶野亜美一等陸尉。
そして蝶野が周りを見て回るとみほの方に目が止まった。
「あれ!?西住師範のお嬢様じゃありません?師範にはお世話になってるんです。お姉様もお元気?」
「あぁ…はい」
「西住師範って?」
「有名なの?」
周りが騒めくと蝶野が西住流について説明する。
「西住流って言うのはね、戦車道の流派の中でも最も由緒ある流派なの」
「(…西住流…お姉さん…やはり、テレビとやらに写っていた人物が…西住さんのお姉さんか…)」
昨日、戦車倶楽部のテレビでインタビューで応えていた人物が、みほの姉だったのを勇介は確信した。
「教官!教官はやっぱりモテるんですか!?」
そんな中、みほの顔が暗くなって行くのを察した沙織は手を挙げて蝶野に質問をする。彼女の質問に蝶野は首を傾げる。
「うん…モテると言うより狙った的を外した事はないはないわ!!撃破率は120%よ」
「「「「 おおお!! 」」」」
「「「「(それ、答えになっていないでしょ?) 」」」」
心の中で勇介たちはそう突っ込んだ。
すると蝶野がそう言って周りを見渡していると勇介達の方を見てやって来る。
「君達が過去からタイムスリップして来たって言うのは、角谷さんから聞いているわ。初めまして私は、日本国陸上自衛隊戦車教導隊蝶野亜美階級は一等陸尉よ。他国では大尉に相当するわ」
「整列!!」
勇介は階級で反応し、彼の合図で、3人は一子乱れぬ横列に並んだ。
「此方こそ一尉、自分は大日本帝国陸軍少尉、第4連隊戦車部隊所属、遣欧戦車外人小隊の桜井勇介です!」
「…桜井…勇介…?…あっ…ドイツのベルリンで民間人を守った伝説の……し、失礼しました!桜井大尉殿!!」
勇介の存在を知った蝶野は慌てて彼に敬礼した。
時代と組織は違えど、彼の階級は蝶野と同じ位、まさか年下の人物が同じ階級、最も、自身が戦車に関する戦史で刻まれていた事に驚いた。
「かしこまらなくっていいですよ。自分はそう言う堅苦しいのは苦手ですので一尉。それにあなたはこの学校の戦車道の教官として、私はそれを習う生徒としていますので立場上はあなたが上です!」
「そう言っていただけると助かります、大尉殿!」
安心したように言う蝶野
「こちらが、パンターⅡの搭乗隊員です」
「大賀晴香、陸軍曹長。砲手担当です!」
「アリシア・A・フェアバンク、国防陸軍曹長。通信担当ですてよ」
「パウラ・M・オットー、国防陸軍伍長。装填担当です!」
「(この方たちが、ベルリン駅で民間人を守り、戦った伝説のメンバー…そして、桜井志帆さんと桜井洋介少佐の弟君の勇介大尉と、大賀虎雄大尉の妹様…大賀晴香少尉……)」
蝶野亜美は、冷や汗を掻きながらベルリン駅で民間人を守った伝説の隊員を見て興奮していた。
そして、次に優華里が手を挙げて練習内容を聞く。
「教官!本日はどの様な練習を行うのでしょうか?」
「そうね、本格戦闘の練習試合。早速やってみましょう」
「え!?あの、いきなりですか?」
いになりの実戦に焦る小山柚子。
「大丈夫よ。何事も実戦!実戦!戦車なんてバーっと動かしてダーっと操作してドンっと撃てばいいんだから。それに、桜井勇介大尉殿達の実力も知りたいであります!」
「まぁまぁ一尉、俺たちはそんな大したテクニックじゃありません」
蝶野の説明にみんな不安そうな顔をする。
そんな下手な説明で戦車を操縦出来れば誰も苦労せず、こんな説明に関して彼らの戦車学校の教官の雑な指導はなかった。
勇介は、蝶野の前に謙虚な姿勢を向け、自身たちが搭乗するパンターⅡに向かった。
「それじゃあそれぞれのスタート地点に向かってね」
そう言われて各チームは皆、自身の乗る戦車に向かう。
「どうやって動かすのこれ〜?」
「知ってそうな友達に訊いてみようか?」
「ネットで聞いた方が早いんじゃない?」
戦車に触れた事も増して乗った事もない一年生チームが操縦出来るはずもなく戸惑う。
一方でバレー部チームは
「ここで頑張ればバレー部は復活する!!あの廃部を告知された日の屈辱を忘れるな!ファイトォー!!」
「「「 おおお~!! 」」」
バレーチームは戦車道で、悲願のバレー部を復活させる為に、キャプテンの磯部を中心に皆一致団結する。
また、歴女達は
「初陣だぁー!」
「車篝の陣で行きますかねぇ〜」
「ここはパンツァーカイルで」
「一両しかないじゃん」
と相変わらずブレない様子だった。
「はい!みんな早く乗り込んで!!」
「我々も乗り込みますか」
「うん」
手を叩いて指示する蝶野に言われ角谷は、38(t)戦車に乗ろうとしたが、車高が高くて登れなかった。
「河嶋〜」
「は!」
仕方なく河嶋を呼び、呼ばれた河嶋は角谷の所に行くと戦車の前で四つん這いになり角谷は四つん這いになった河嶋を踏み台にして車体に乗る。
「しかし、いきなり試合なんて大丈夫ですか。それに、桜井くん達は、本物の軍人ですよ!勝てますか?」
「まぁ、どうにかなるから」
「じゃぁ、各チームそれぞれ役割を決めてくれる。3名のチームは車長と砲手、操縦手。4名はそれに加えて装填手。5名は通信手ね」
とそれぞれのメンバー役割分担を各チームで決める様言われる。
そして勇介達は、搭乗するパンターⅡに向かっていた。
「いいか、君達!俺達の未来での最初の任務は大洗の乙女達とこの試合で勝つ事だ!戦死者の出ない戦いだ!だが、だからと言って備えを怠り慢心せず常に万全の状態で俺達は戦う!勝利を我が手に!」
「「「 はい!! 」」編成は、いつも通りでいいわね」
「そうですわね、とそれしか考えられないですわよね」
「それじゃあ、俺が車長を、パウラが装填手、アリシアが無線手、晴香が砲手だ」
「決まりですね」
「だけど車長、操縦手は…?」
「…っ!?」
その筈だった。
勇介たちパンターⅡ操縦手の豊田純子は、あの1945年の5月、地獄の様なベルリン駅で別れて数日、肝心な操縦手が欠けていた。
「…よし、…操縦は俺に…」
「ん…?」
勇介たちが相談する中、パンターⅡの操縦席から物音が鳴った時、パウラがMP-40を構えた。
「誰だ、出て来なさい!!」
すると、操縦席のハッチから一人の大洗女子生徒が両手を上げながら出てきた。
「わわっ…すみません!撃たないで…わたしは自動車部の者です!」
「あ…あ…あなたは…!」
「じ…純子…!」
アリシアは目を見開きながら驚愕した。その女子生徒の顔は、ベルリンで生き別れた豊田純子だった。
パウラは両手で彼女の肩を掴んだ。
「純ちゃん!あなたはいつ、どうやって…この時代にやってきたの…!?」
「あ…あの…人違いです…わたしは1学年の…沖田真澄です!」
「…沖田真澄…?…純ちゃんじゃないの…?」
「…純子は…わたしの曾祖母です!」
「なんだって…あんたが…純子の玄孫……」
沖田真澄がかつての操縦手、陸軍伍長の豊田純子の玄孫だと聞いたパウラは口を開いたままになりながら、驚きを隠せなかった。
「そうか…純子が無事に脱出し…生きていたんだ…」
勇介は晴香たちに背を向けながら、涙ぐみました。
彼の絶対の指示で、地獄絵図と化したベルリンを離脱、そして今、彼女に成り代わり。玄孫がこの大洗で再会したのであった。
「…桜井勇介さん…大賀晴香さん…アリシア・フェアバンクさん、パウラ・オットーさん……あなた方は曾祖母の純子さんから聞いています。このパンターⅡの操縦手に志願させて下さい!!」
真澄の熱烈な志望で頭を下げた。だが
「車長、あたしは反対です!この娘は純子の子孫であっても純子ではありません!」
「お願いします!!わたしは曾祖母から特殊車輛をイヤと言うほど習いました!」
「あたしもパウラの意見に同意するよ。戦車の操縦は他の車輛と容易くない。操縦手は、ただ扱う代物とは違う、仲間の命を預けるのも大事な使命なのよ!」
「車長……如何しますか……?」
パウラと晴香が真澄の操縦手搭乗に猛烈に反対する中、勇介が近寄って来た。
「手を見せろ」
「はっ…はい!」
真澄は勇介の前に手を見せ、彼はジィっと見つめた。
「…彼女の手に嘘はつかん…沖田真澄」
「はい!」
「ウチの…パンターⅡ操縦席に座れ…」
「はい!!」
その時点で、勇介は決断した。
「「車長!?」」
「今は大洗生徒との戦車試走と試射だ、生徒会と自動車部の方々を追及する。責任は俺が取る」
晴香とパウラがどよめいた時、アリシアに聞いた。
「なぁ、アリシアは反対か…?」
「いえ、わたくしは車長の決定に従います。あの方は、わたくしを見込み、スカウトした時の目になっていますゆえ」
勇介の目は変色し、輝きながら笑みを浮かべていた。
「(…沖田…俺の勘が正しければ、もしかしたら…兄貴の後輩の…)」