カラオケでよく歌うジャンルはユーロビート
日曜日の朝、久里須は自室でベッドに腰掛けながらスマホを弄っていた
金曜日に二乃と電話番号とLI〇Eを交換し、今朝届いたチャットに返信をしている所だ
二【今日の花火大会一緒に見に行かない?】
ク【すみません!】
【今日は両親が設営のお手伝いの依頼を受ける筈だったんですが】
【父が不在なので私が応援に行く事になってしまって(>_<;)】
二【あ~そっか。便利屋だったもんね】
【忘れてたわ】
ク【申し訳ありません、折角お誘いいただいたのに】
二【いいっていいって】
【残念だけど仕事ならしょうがないわ】
久里須はスマホの画面を消してベッドから立ち上がり自室にある仕事着に着替えながら一階に降りてそのまま外に出る
(確か現地集合だった筈ですよね……)
そう思いながら久里須は出発するのだった
―夜も更けて……―
「イヤ~悪いねクリスちゃん。お店の方手伝って貰っちゃって」
「いえいえ、お気になさらず。コレも仕事ですので」
タコ焼きの屋台で店の手伝いをしている久里須。慣れた手つきで調理を進めていく
「はいどうぞ!」
「300円になります。はい、ありがとうございました!」
「イヤーやっぱ美人さんがやってくれると映えるねぇ」
黒ロングの髪をポニテに纏めて接客をする様に店主のおっちゃんが茶々を入れる
「か、からかわないで下さいよ!」
「おっと、そうだ。コレ食べちゃって良いよ。まかないって事でさ」
そう言って店主が取り出したのは一セット分のタコ焼き
まだそれほど時間も経っていないのか湯気が立ち上っている
「え、良いんですか!?頂きます」
お礼を言って後ろの方に下がって食べ始める
数分後、後ろから賑やかな声が聞こえて来た
(団体のお客さんですかね?)
「お姉さんかわいいからオマケしちゃう!」
(調子の良い事を……)
すっと客側の方を見ると……
「あれ?南里さん?」
「ッ!?あっっっつ!?ゴホッガヘッ!」
……中野一花と中野五月
思いっきり知っている顔に出くわして驚いてしまい、むせてしまった。オマケに熱々のタコ焼きが喉にダイレクトアタックして悶絶する
「だ、大丈夫ですか?」
「わぁお一気に」
「ハァ……ハァ……すみません、お見苦しい所を……」
未開封の500mlペットボトルの水を一気に流し込んでいると遠くから急かすような声が聞こえて来た
「そうでした。急がないと……ほら、行きますよ」
「分かったから……じゃーねクリスちゃん」
「はい。お気をつけて!…………二乃さん、なんかヤケに張り切ってるみたいですね……」
離れていく6人を見送った後、そう呟いた。一握の淋しさを感じながら
「あの子達は知り合い?」
「クラスメイトの姉妹さん達です。五つ子なんですよ、彼女達は」
「五つ子!?ありゃーそりゃ申し訳無い事しちゃったね」
「ホントですよ」
「あっ、そうだ。店の事は良いから友達と花火見に行きなよ」
「え?」
そんな事を言われるとは思ってもいなかった久里須は驚いた表情で店主の方を見る
「せっかくの祭りなんだし楽しまなきゃ損でしょ」
「そういう事でしたら……」
とりあえずその好意に甘える事にして、彼女達を追いかける
――――――――――――――――――――――
(まだ遠くには行っていない筈ですが……)
コレだけの人混みの中だ。そこまで大きくは動けない筈だ
『大変長らくお待たせ致しました。まもなく開始いたします』
花火大会開始のアナウンスを皮切りに一気に人々が動き出す。それはもう波の如き様相で
「わっとっと……うわぁ凄い勢い……っ!?もしや…………!」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、足早に進もうとするが思うようにいかない
四苦八苦していると視界の端に鮮やかな光が映ると同時に『ドーン』という轟音が響いた
(確か花火が上がっている時間は一時間程だった筈……もしさっきの大移動ではぐれてしまっているなら……)
「いた……!」
人形焼きの屋台の前でスマホを片手に不安そうな表情の五月を見つけた
(あれ?名前はなんでしたっけ……いや、それは後っ!)
「中野さん!」
「南里さん!?お仕事の方は良いんですか!?」
「店の方は良いから花火を……って今はそれ所じゃないですよね!?」
事情を聴くと予想通り皆とはぐれてしまったらしい。加えて集合場所も分からないという
「分かりました。行きましょう」
「え?」
「ひとまず他の皆さんと合流しなくては。っといっても……」
「…………なぜ」
「はい?」
五月の手を掴んで人混みの中を進む久里須に疑問を投げかける
「なぜそこまで気を掛けてくれるんですか?私達、まだ数回しか話をした事が無いじゃないですか」
「なんだ。そんな事ですか」
「そんな事って……!」
文句を言う五月を尻目に歩みを緩めながら立ち止まり、彼女の方に向き直って更に続ける
「『例えはねのけられても良い、まずは手を差し伸べる事から始めろ』私が
「信条……」
「五月さん達にとっては余計なお世話かも知れませんし、私の自己満足である事も承知しています。でも……それでも手伝わせて下さい」
久里須のどこまでも真っ直ぐな言葉に思わず破顔してしまう五月。そんな二人に声を掛ける人物が
「五月」
「っ!…………なんだ、あなたですか……」
「残念さを少しは隠しなさい」
相手が風太郎と分かった瞬間一気に白ける五月とそれにツッコミを入れる当人
「そうだ上杉さん、他の皆さんの居場所はご存じですか?」
「南里……お前が五月を捕まえててくれたのか」
「捕っ……!」
「まぁ兎に角コレで行方不明なのは一花だけか。脇道に三玖が休んでる、四葉とらいはは時計台にいる」
「わかりました」
「
((?))
唐突なドイツ語―である事を二人は知らない―に疑問符を浮かべる二人
しばらく歩いていると風太郎が口を開いた
「……なぁ、一つ聞いていいか?俺達ってどういう関係?」
「なんですかその気味の悪い質問……」
「……………………」
しばしの沈黙。久里須は気を抜かずに周囲に目を光らせているが
「そうですね……百歩譲って赤の他人でしょうか」
「百歩譲っても!?」
「アハハハッ…………」
「イヤ笑い事じゃねぇよ!」
「すみません。仲が良いなと思いまして」
「「誰がコイツと/この人と!」」
そういう所なんですが……と思いながらも前から五月、久里須、風太郎の順で並んで歩いていく
「それに、私に聞かずともあなたはその答えを既に持ってるじゃないですか」
「え?なんだそれ」
「それにしても、一花さんは何処に行ったのでしょう…………ッ!あっ、そうだ。此処の花火大会、去年もやっていましたけれど五月さん達も見に行ったんですか?」
「はい、お母さんとの思い出なので」
「お母様との?」
足を止めた久里須の横に立ち、花火を仰ぎながら切り出す
「お母さんが花火が好きで、毎年揃って見に行ってたんです。お母さんがいなくなってからも、姉妹揃って」
「……亡くなられたんですね」
「はい……五年前に」
成る程、それならば二乃があれだけ張り切っているのも納得が行く
そう考えていると五月がハッとしたように後ろを振り返る
「どうしました?」
「上杉君がいません!」
慌てている五月をよそに久里須は別のことを考えるのだった
(一花さん、貴女は……)
この作品では初めての長編になりますね。予定としては後2話ほど続く予定です
口には出していませんが主人公は一花が風太郎を引っ張って行った事に気づいています
ちょくちょく意味深な表現が出て来ます。はい