好きな料理はエビフライ
花火大会も終わりに近づいたからか人々もまばらになっている中、シュウは生垣の裏にしゃがみ込んで風太郎の様子を窺う
「一花!」
「……っ!?」
階段の上から声を張り上げる風太郎に反応した一花が彼を見上げる
「髭のオッサンはどうした?」
「車を取りに行ってるとこ」
「……本当に戻る気はないんだな?」
「…………」
片膝をついて二人の会話に耳をすませている
「フータロー君、もう一度聞くね?なんでただの家庭教師の君がそこまでお節介焼いてくれるの?」
「俺とお前が協力関係にあるパートナーだからだ」
ハッキリと言い切る風太郎に口元が緩むシュウ。ソレは恐らく一花も同様だろう
そしてポツポツと経緯を語りだした
半年前に織田からスカウトされた一花は時々名無しの役を回されていたらしい
そして先程、それなりの知名度を持つ映画の代役のオーディションの話が舞い込んで来たらしい
「そうだ!折角だから練習相手になってよ。相手役がフータロー君ね」
「こ、断る」
「協力関係でしょ?」
「ぐっ……」
階段を降りた風太郎を追って屈んだまま飛び込み前転をしてもう少し近くに迫る
真下からちょうど見えない位置に陣取り、匍匐姿勢で聞き耳を立てる
どうやら練習をする流れになったようで台本を読み上げる風太郎。内容から察するに学園物のラストシーンのようだ
「あなたが先生でよかった。あなたの生徒でよかった」
「…………」
「あれ?もしかして私の演技力にジーンときちゃった?」
黙りこくる風太郎を茶化すような事を言う一花だったが
「あなたが先生でよかったなんてお前の口から聞けるとは……」
「あっ、そっちですか」
スニーキング中でなければズッコケていたなと思うシュウ
そうこうしているうちに織田の車が来たようで一花はいよいよ出発するらしい……が
パンッ
「ほえ?」
軽い叩くような音と気の抜けた一花の声
「その作り笑いをやめろ」
「ハハハ……え?」
「お前は何時も大事な所で笑って本心を隠す。ムカッと来るぜ」
すると今度は風太郎が自分の身の上話を語りだした
借金持ちでその返済の為に家庭教師をしているようだが、何の成果を得られないまま金を貰うのは忍びない。だからその分の義理を果たしたい。との事
それにつられるように今度は一花が己の本心をさらけ出す
「この仕事を始めてやっと長女して胸を張れるようになれると思ったの」
「…………」
「一人前になるまであの子達には言わないって決めてたから、花火の約束あるのに最後まで言えずに黙ってきちゃった。コレでオーディション落ちたら……皆に会わせる顔が無いよ」
そう呟く一花達の頭上で数々の花火が立て続けに打ちあがる
どうやらコレが〆のようだ
「……もう花火大会終わっちゃうね」
そう呟く一花の心境をシュウは理解していた
何かを得る為には何かを捨てる必要がある。ソレを身をもって知っているが故に
「それにしてもまさか君が私の細かな違いに気が付くなんて思わなかったよ。お姉さんビックリだ」
「俺がそんな敏感な男に見えるか?」
「自覚はあるんだ」
(自覚あるんか~い)
「お前の些細な違いなんて気づくはずもない。ただあいつ等と違う笑顔だと思っただけだ」
そんな言葉をかけた後、再度軽口の叩き合いを始める二人
(これなら大丈夫だな)
「一花ちゃん早く乗って!」
「は、はーい」
「…………まぁ、謝る時は付き合ってやるよ。パートナーだからな」
バタンッと扉が閉まる音がしてエンジンの音が遠ざかる
それなりに小さくなったのを見計らって立ち上がり、風太郎のいる所に飛び降りる
「シッ……!」(スタッ
「うっお!ビックリした~南里の親父さんかよ……」
「カハハハッ、悪い悪い…………追うか?」
突然の提案に「聞いてたんスか……」と苦笑する風太郎だが
「すんません。頼みます」
真っ直ぐに見据えてそう告げた
――――――――――――――――
オーディション会場前
「そういや、娘さんはなんて?」
「ん?あぁ、お前さんに伝言があるとさ『近場の公園で待ってる』。だとよ」
「へぇ……」
シュウの運転でオーディション会場であるビルの前に来た男二人は終わるまで世間話を始めた
話題は風太郎が一花を追いかけに行った時に久里須が事情を説明し、シュウに風太郎と一花の送迎と伝言を任せて三玖を約束の場所へ連れて行った事についてだ
「しっかしアレだな。お前さんも苦労してんのな……あっ、そうだ。俺とクリスはさ、実は血が繋がってねぇんだわ。いわゆる養子って奴だわな」
「えっ……?」
「俺と嫁の間にゃ子供が出来なくてな。それで迎え入れたのがアイツなんさ」
「俺と歳近いですよね?」
「美魔女っていう言葉があるだろ?ソレと似たようなもんよ」
再びカハハハッと笑うシュウに風太郎は自分の父親と似たようなモノを感じた
主に喋り方というか気さくさというかそういう所が
「で~……後はアレだ。クリスの奴は学校で上手くやれてるか?」
そう聞かれてバツの悪い顔をして頭をかく風太郎
「あ~……あんま話した事は無いですけど、結構噂は聞きます」
「噂?どっち方面の?」
「聞いた限り悪い方では無かったようなそうでないような……」
「そーかい。あんま話した事ねぇならしゃーないか」
時間を潰していると一花と織田が出て来た
「おっ」
「うわっ」
「ん?」
「手ごたえはどうだ、ミスター織田?」
各々別の反応をするなか真っ先に要件を告げるシュウ。仕事をしている成人男性同士だからこそ出来る軽い口調で出来を窺う
「うーん……どうでしょう」
見た目は自分達と変わらない年齢だがオーラが違うのを感じ取った一花は丁寧な口調で微妙な反応をする
「どうも何も最高の演技でしたよ。私は間違いなく通ったと思いますよ。それにしてもまさか貴方だったとはねぇ……その節はどうも」
「イヤイヤ。俺は俺の仕事を、お前さんはお前さんの仕事をしただけだ。たまたま同じ枠に入っただけさね」
「…………?」
ポカンとした顔をしている一花に風太郎が補足に入る
「この人南里の
ソレを聞いた一花は酷く驚いてシュウを見る
「えぇ!?同い年に見えるけど!?」
「おっとそうだ。ミスター、彼女を借りていいか?彼女の身内が待っているんでね」
「あーいえいえ!お気になさらず!では私はコレで」
車を出して事務所へと戻っていく織田社長を見送った三人は再びシュウが運転する車に乗り込み、皆の待つ公園に向かうのだった
ちなみに
「えっ、これフェ〇ーリ!?」
「そうよ~宝くじ当たって買った奴でね」
「……………………(チーン」
外車だとは知っていた風太郎だったが、二回目で一花と一緒に乗る時に有名なブランドの品と知って白目を向いていたのは余談である
――――――――――――――
「あいつらが待ってる」
「待ってるって……皆まだ会場にいるの?」
「イヤ、この近くの公園だ。二乃もついている筈だ」
車から降りて目的地の公園に向かっている最中に会話をする二人
皆祭りに行っていたからか住宅地であるが部屋の灯りは一つも点いておらず、所々にある街灯だけが鈍く光っている
「皆怒ってるよね……花火を見られなかった事謝らなくちゃ」
「まっ、そうだな。だが……花火を諦めるにはまだ早いんじゃないか?」
「ッ!?」
驚愕する一花の目に映ったのは手持ち花火をしている4人の様子だった
「あ!一花に上杉さん!我慢できずにおっ始めちゃいました」
あの時四葉がらいはに買ってあげた花火である。それがこんな形で役に立つとはあの時風太郎は思ってもいなかった。大手柄だ
ちなみに当のらいはは疲れて寝てしまっており、その彼女を久里須が膝枕をしている
「ちょっとキミ!久里須から聞いたわよ!散々うろつき回って手間かけさせたらしいじゃない!」
風太郎に気づいた二乃がいかにもといった様子で詰め寄ってくる
「あ~ソレは悪い。色々あってな……」
「アンタに一言言わなきゃ気が済まないわ!お!つ!か!れ!」
「ブフォッ!(見事なツンデレ……!)」
「ハイそこ!笑わないの!」
鮮やかなツンデレ振りに思わず噴き出した久里須にすかさず指差し込みでツッコミを入れる二乃
対して五月は一花に一緒に花火をしようと誘う
さて本格的に始めようという流れになった矢先。一花が謝罪をする
「みんなゴメン!私の勝手でこんな事になっちゃって……本当にごめんね」
「一花、そんなに謝らなくても」
「全くよ、なんで連絡くれなかったのよ。今回の原因の一端はアンタにあるわ。後、目的地を伝え忘れてた私も悪い」
「っ……!」
「私は自分の方向音痴に嫌気がさしました」
「私も……今回は失敗ばかり」
「よく分かりませんが、私も悪かったという事で!屋台ばかり見てしまったので」
「みんな……」
一しきり謝罪合戦が終わった所で改めて五人揃っての花火大会が始まる
「お母さんがよく言ってましたね。誰かの失敗は五人で乗り越える事。誰かの幸せは五人で分かち合う事。喜びも、悲しみも、怒りも、慈しみも、私たち全員で、五等分ですから」
(皆で分かち合う……か……)
五月の言葉に思う事があるのからいはの頭を撫でながら微笑ましい様子で眺める久里須
そんな様子に気づいたのか四葉が花火に誘う
「南里さんも一緒にやりましょうよ!」
「いえ、私はらいはさんを見ているのでお構いなく」
「イヤ、待てよ?あいつらは五人全員で花火をしている。らいはは満足して寝てるし、俺帰っても良いんじゃねぇか?」
こんな時でもそんな事を呟いている勉強馬鹿の風太郎だったが横から静かに声を掛けられる
「上杉さん」
「ん?」
「見て下さい」
久里須が指差したのは花火を無邪気に楽しんでいる五つ子達
「…………そうだな。もう少しだけ付き合うか」
彼女の意図に気づいたのか花火が尽きる最後まで花火を楽しむ五つ子を久里須と共に見つめるのであった
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後の祭りとなった所で一花が風太郎に礼を言うために座っているベンチに近寄っていく
「まだお礼言ってなかったね。応援して貰った分、私も君に協力しなくちゃ。パートナーだもんね、私は一筋縄じゃ行かないから覚悟しててよ?」
「………………」
反応が無い。ソレもそのはず
「Zzzz……」
この男、目を開けたまま寝ていたのである
「……もう!」
等と言いながらその顔は晴れやかであり、そっと風太郎に膝枕をしてやる一花
「頑張ったね……ありがとう。あっ、そうだ。もう一人にもお礼言わないと」
苦笑いしながらそのもう一人の功労者を労う
「クリスちゃんもありがとう。二乃から来たよ?五月ちゃんの事とか色々走り回ってたって」
「私がしたかったからしただけですよ。特別な事はしていません」
「え~?サラッとそんな事言っちゃうんだ?」
首だけを久里須に向けて笑いかける
今二人は上杉兄妹を仲良く膝枕をしている状況である
今一度五月に語った己の信条を語ると一花はそっか。と相槌を打つ
「えらいね~クリスちゃんは。同い年なのに、私よりずぅっとお姉ちゃんっぽいや」
「おだてないで下さいよ。私は経験も浅いですし、
「イヤイヤホントに立派だよ。中々自分からそういう事言えないよ~?うん」
褒めちぎる一花に顔を赤くして照れてしまう
「じゃあさ、お互い頑張んないとね」
「はい!勇往邁進していきましょう」
夜の公園で、二人の少女が互いの望みの為に頑張る事を誓い合うのであった
【プロフィール】
名前:シュウ・ガーランド
誕生日:10月17日
身長:178cm
体重:75.2kg
趣味:ゲーム
【どんな人?】
便利屋、『
眼光のせいで誤解されがちだが実際は気さくで面倒見のいいことに加えて多数の資格を所有している
常人離れの身体能力を有しており、かつて軍属だった疑惑があがっている