座右の銘は『万里一空』
旭高校には図書室とは別に図書館棟が存在する
久里須はのんびりといつも座っている席に着いて読書をしていた
屋上がお気に入りの場所である彼女だが、図書館もまたお気に入りの場所でもある。本は知識を得るのに最も手軽な手段の一つだ。ましてや図書館はジャンルを問わず様々な本が置いてある為、ソレを利用しない手はない
ふと、背後から誰かが近づいてくるのを感じて振り返る
「三玖さん?」
気配の主は三玖だった。幾つかの本を持っており、よく見ると歴史系の本だとわかる
「歴史のお話……好きなんですか?」
「ッ!?えっ、えっと…………」
「実は私もなんですよ。ほら」
そう言って三玖に自分が読んでいる本の表紙を見せる。その本はかの大戦のスラバヤにてイギリス海軍兵400人余りの救助を命じた駆逐艦『雷』艦長の伝記であった
「そんな凄い人がいたんだ」
久里須から聞いたその人物が成した事の詳細を三玖は感銘を受けた様子で聞いていた
「はい。この話を知った時は本当に感動してしまって……三玖さんは何を?」
「わ、私!?」
逃げ道を塞がれた事に気づいてビクッと身体を震わせる三玖だったが観念して自分の話をする
「えっと……笑わない?」
「当然」
「…………好きなんだ。戦国武将」
「……そうですか」
思っていたよりも普通の内容で薄い反応が出てしまう
「それ、隠す必要あります?」
「だって、クラスの皆が好きなのはイケメン俳優に美人なモデル。それに比べて私は髭のおじさん……でもね」
「でも?」
「フータローが背中を押してくれたんだ。こんな私でも出来るんじゃないかって」
何があったのかは久里須には分からない。だが、彼が確実に彼女の
「それにしても意外でした。上杉さんは存外気遣いが出来ないって訳でも……って、失言ですねコレ」
「私もちょっと思った」
アハハハと頭を掻きながら苦笑いすると三玖もフフフッと笑いながらそれに同意する
二人のやり取りは風太郎、一花、四葉が来た事でお開きとなり、三人は勉強会を始め、久里須は読書の続きを始める
風太郎の横に三玖、対面で四葉と一花、彼に背を向ける様に久里須が座っている構図だ
本来風太郎達は勉強会の予定だったのだが
「アドレス交換!大賛成です!その前にコレ終わらせちゃいますね」
「…………一応聞くが何やってんだ?」
「千羽鶴です!友達の友達が入院したらしくて!」
「勉強しろぉぉぉぉぉ!!」
四葉の安定のお人よしが発動し、一向に進んでいなかった。おまけに教員にクラスの面々に配るノートも頼まれたものだから風太郎のイライラはさらに増していく
「そもそも俺はお前たちの連絡先なんて…………………………みんなのメアド知りたいなー……」
突然の変わり身に久里須は苦笑すると三玖が自身のスマホを差し出した
「協力してあげる」
「わーいやったぜー」
(清々しいまでの棒読み……)
「……足は平気か?」
その言葉で花火大会の事を思い出す。確かあの時に足を怪我したと言っていた事を思い出しながらページを捲る
「これでよし。五月と二乃は今度でいいだろ」
「その二人ならさっき見ましたよ。今のうちに聞きに行きましょう!」
「なんでお前も行くんだよ!ってか四葉、お前のアドレスは……」
「早くしないと帰っちゃいますよ!」
「やっぱ勉強する気無いだろお前!」
どうやら二乃と五月のアドレスを聞きに行く流れになったらしく、コレは助け船を出さなくてはと本を閉じて二人を追う
「上杉さん私もお供します!クラスメイトですから二乃さんの説得は私が適役かと!」
「マジか!助かる」
――――――――――――――――――
「お断りよ。お・こ・と・わ・り!」
「確かに私たちにはあなたのアドレスを聞くメリットがありません」
食堂に来た三人だったが予想通りの返答が帰って来た
しかし、風太郎はそれに怯まず
「これならどうだ!今なら俺のアドレスに加えてらいはのアドレスもセットでお値段据え置きお買得だ!」
「なんですかその悪徳商法みたいな売り文句は」
冷ややかなツッコミが飛んでくるが対する五月は
「背に腹はかえられません」
「それでいいんですか五月さん……」
「身内を売るなんて卑怯よ!」
将来が心配になる久里須。お次は二乃の番になるのだが
「二乃は教えてくれないのか?」
「当たり前よ」
(ん?二乃さんのアドレス?)
「仕方ない……では「あっ!」どうした?」
藪から棒に声を張り上げた久里須が風太郎達に自分のスマホの画面を見せながら
「二乃さんのアドレス、私持ってます」
と自己申告をすると三者三様のリアクションが返ってきた
「そういう事は早く言えよ!」
(しまった〜!そうだった!)
「南里さん意外とおっちょこちょいですねー」
風太郎にアドレスを見せている久里須に「裏切り者〜……」と恨み節を吐く二乃だったが「それはそれ、これはこれですよ」と切り返されてしまう。ついでにお互いのアドレス交換も済ませておく
「これで全員分揃いましたね」
「あと一人いるだろ」
「え?一花、三玖、五月、二乃……あー!四葉!私です!」
(やっぱコイツただのアホだ)
(四葉さんって実は条件反射だけで生きてます?)
改めてアドレスを貰おうとした風太郎だったがバスケ部の部長から電話があって四葉はソチラに行ってしまった
「アララ……えっと、これ以上お邪魔をするのもどうかと思いますので私はコレで失礼させて……」
「待って下さい南里さん。私とも交換してくれませんか?」
「えっ?上杉さんにはメリットが無いから交換する必要性が無いと仰っていたのに」
「うっ……み、南里さんは上杉君よりも柔軟な考えをお持ちですし、彼よりは頼りになりますから!」
腑に落ちない顔をしながらも久里須が五月とアドレスを交換して改めて立ち去ろうとすると、今度は横から二乃が口を挟んで来た
「改めて言っておくわ。この前の事、助けてくれたのは感謝してる」
「………………」
「勉強の事もそうだし、姉妹達と仲良くしてくれてるのもね。でも」
二乃が言い終わる前に足を止めた久里須は先は言わせぬとばかりに口を開いた
「…………解っていますよ二乃さん。所詮私は……」
「「?!」」
振り返ると同時に二人は目を丸くして呆気に取られてしまう。何故なら彼女が
「
自嘲、悲観、諦観……様々な感情の入り混じった表情をしていたから
(今の……何?えっと……ホントに何?あの顔……)
(南里さん……あなたは一体……)
第六話、いかがだったでしょうか
今回で主人公の真意の一端が見えましたね
まぁ賛否両論は必至だろうなと思い、敢えて概要の方で先にネタバラシしたのはご容赦をば。その分心境の変化を描写……出来たらなぁ